アングラ系ヒーローは逃げられない 作:ピ・ポポ
やる気が浮上したり沈下したり。
フィッシャー、オーバーレインの二人と別れて数刻。
災害現場から離れたこともあってか、人々の行き交う声で活気のある場所までやってきた。
「あ゙っづ」
流石ハロワナ。
俺の元いた世界ではちょうどハワイに当たるような場所、ということもあってか凄まじく暑い。
で、そんな日差しが照りつける中、俺たちは何をしているのか、というとだな……。
「ね、ね、これどうよ」
「ううむ、お前さんにはデカすぎる気がするがのう」
「もう一回り小さいほうがいいかなぁ」
あんなことがあった直後なのに、ショッピング継続中である。
良くも悪くもヒーローというのは図太い生き物。
(帰りたい……)
早く帰ってゆっくりしたいが、他人の買い物中にケチをつけるのめんどくさいのは前世で学んでいるため、俺は仕方なく荷物持ちに徹している。
「というか博士、テメーは本来こっち側だろ」
「なんじゃ。爺だって買い物ぐらいするわい」
「そー言う意味じゃねぇよ」
はぁ、と深くため息を一つ。
まるでG.オーシャンみたいだ。
「良いため息だねぇ〜……」
ふと、真後ろから耳元で囁くような声がする。
(このダウナーかつ、気怠げな声は……まさかッ──!?)
「ジッ──!」
俺が振り返り言葉を発する前に、口元に手を当てられそのまま押されて二人の視線外に。
俺は抵抗しようかと一瞬考えたが、場所が場所なだけに戦闘になるのはマズイと、一先ずされるがままに奥へと押されていく。
そうして商品の脇の物陰に押されたところで、ようやく手を離す。
顔を見れば間違えようもなくG.オーシャンの姿がそこにあった。
相変わらずのガスマスクだったが、その格好はいわゆる地雷服ってやつをハロワナに合わせてラフな感じにした……まぁ、なんとも言い難い格好だった。
「なんの用だ、G.オーシャン」
「はぁい、そう警戒しなくてもいいんじゃない〜?」
「するに決まってんだろ!? 昨日の今日でだぞ!?」
「うるさい〜……」
俺が声を荒げると、周りに気づかれることを恐れてか体を押し付けながら口を塞ごうとしてくる。
が、それよりも先に体を押し付けられたことにより、こう……豊満な肉体がな……健全な男子には大変よろしくない光景となってしまっている。
明らかに柔らかい何かを押し付けられている。
いつもヴィランとして対峙してるし、いつも気怠げな姿勢だったから気づいていなかったが、こいつ全体的にデカいんだよな。
まぁ、そもそも。
恐らく日本人ならぬ日達人ではないだろうし。
人種的に体格差というものがあるのだろう。
……にしても、俺が押し潰されそうな現状は一体。
何はともかく。
この状況は非常にまずいので一旦離れてもらうことに。
「わ、わかった。静かにするから、一旦離れろ……!」
「……わかった〜」
むぎゅっ、と言う音が聞こえてきそうな動きで少し離れる。
精神的にも少し落ち着いた俺は一瞬の後に思考を巡らす。
奇襲……というわけではなさそうだ。
つまり何かしらあってここにいる。
(戦闘ではない、ということは伝言? ……いや、伝言ならWを使えばいい話だ。ならば一体──)
当然、考えているだけでは分からない。
「で、なんでここに来た? 昨日戦ったばっかだろ」
「ん〜……ちょっと、事情が変わってぇ〜……」
「事情? RとWは?」
「それが問題なんだよね〜」
どうにも言い淀む様子から、何か言いづらい事があるらしい。
……絶対ろくでもない。
(一切関わりたくないが……もし大事になれば、奴は間違いなく能力を広範囲にぶち撒ける。それだけはダメだ)
「……はぁ、何があったんだ」
「捕まった〜」
「いいことだろ。誰が捕まえたのか知らないが」
「捕まえたのが、『チェシャ』、だとしても〜?」
「………………おい待て。なんでその名前が出てくる」
今、最も聞くはずのない名前に俺は一瞬思考が停止。
だがなんとか意識を取り戻すと、困惑に揺らぐ頭で聞き出す。
大量にヴィランが出ていて整理しきれていない状況下で、まだ増えるという事実に震えながらも。
「ど、どういうことだ」
「奴がめちゃくちゃしてる〜、引き渡し先は、『ジャンヌ・ダルク』〜」
「なんで!? え、え? 何がしたいの!?」
「わからないから、ここに来た〜」
『チェシャ』。
ある組織に所属するヴィランの一人だ。
奴はまぁ……端的に言えば、場をめちゃくちゃに荒らして放置して帰る、かき混ぜ役とも言える人物だ。
いつもいつもこうやって急に来ては荒らしていく。
意味不明だ。
「オーケー、一旦纏めよう。『ジャンヌ・ダルク』はもう来てるんだな?」
「うん〜。それは確認済み〜」
「で、『チェシャ』のクソったれがやりやがったと」
「そそ〜」
「Aは?」
「潜伏中〜、喧嘩してるからねぇ〜……」
ダメだ。
また一人増えた、変なのが増えやがった。
A,G,R,W、こいつらだけでも手一杯だって言うのに。
チェシャにジャンヌ・ダルクが来やがった。
ジャンヌ・ダルクは……まぁ、ある程度の宗教が根付いたこの地域ならば、そう暴れることもないはずだ。
(だが、何故RとWを?)
「……なんでこうなるんだ」
もはや泣きたくなる現状に、今するべきことを脳内で駆け巡らせる。
Gは一旦置いといていいだろう。
先制攻撃さえされなければ、ほとんど無害みたいな存在だ。
Aも潜伏しているならば、出てくるような状況下でもないだろう。
問題はジャンヌ・ダルクに手元にあるRとWだ。
そしてこの街で何かをしようとしているチェシャ。
「ふぅ…………」
深く、強く深呼吸を一つ。
白い天井を見上げた後、Gの顔を見て一つだけ聞いた。
「何をして欲しいんだ」
「助けてほしい〜」
「……冗談で言ってる?」
「別に〜。でも、貴方にとって……いや、
「どういうことだ、博士が一体──」
その瞬間だった。
「トーヤ?」
酷く冷たい声がGの後ろから響く。
顔を横にずらして声の方向を見ると、そこには酷く冷たい視線を向けるサバイバと、面白そうにニヤニヤとこっちを見る博士の姿。
「ちょ、ち、ちがっ──い、いや何も違わないと言うか──」
「……ふーん。何も、違わないもんねぇ〜」
何か思いついたのか、突然Gはそんなことを言い出すと、何故か急に腕を広げて俺に抱きついた。
「お、おまッ──!?」
「あーッ!! ちょっと!! なにしてるのッ!!!」
そう言って飛び出すサイバル。
ニヤニヤする博士。
抱きつくG。
チェシャが来るまでもなく、もはや現場はめちゃくちゃだった。
一年ぶりに書くと今まで何書いてたのかイマイチ覚えてないという災害に見舞われる。
つまり私のせい。