「ふっふっふ……ついに手に入れた我が第二の生! 今こそ探検の時ッ!」
なんかテンションがおかしい?いいんです、仕方ないんです。
死んで、気づいたら精神生命体になって、木の中で魔素とやらを吸われてるとかいう超意味不明な状況なんだもん。
考えると頭おかしくなるから、いっそ開き直るほかない。
葉っぱ、根っこ、幹、葉脈――「自然の詰め合わせセットか!」ってツッコミたくなるほど木づくし。
「いや、実際の木の中なんて入ったことないけどさ……たぶん、これがそうだよね。うん。知らんけど」
私はというと、特にやることもないので、寝たり起きたり食べたり……いや、食べないな。なんでお腹空かないんだろ。別にいいけどさ。
それはさておき、気が向いたときにふらっと探検するのが最近の日課だ。
「というわけで、本日も! 木の中探検スタート~!」
ここは静かで、まぶしくないのに明るくて、昼夜の感覚がほとんどない不思議な空間だった。
外の世界の気配はまるで感じない。でも、不思議と居心地はいい。
「……ってか、ここマジで快適すぎじゃない? 最高の安眠空間なんだけど……」
とか言いつつ、私は根っこの迷路みたいな通路をぴょこぴょこ歩く。
「よし、今日は下に行ってみよう。アドベンチャーは下方向って決まってるのだ!」
野生的な足場をよじりながら、木の根っこを伝って降りていく。
降りるほどに密度が増して、どんどん神秘的な雰囲気に包まれていく。
「よいしょ……よいしょ……うん、これ登るのは絶対イヤだな!」
探検を始めてしばらく経った頃――
私のテンションは、なぜか右肩上がりだった。
「おっ、この蔦、めっちゃしっかりしてるじゃん。これ……いけるのでは?」
木の根が高く交差した天井部分から、びよーんと垂れてる蔦。
思わず、手が伸びた。好奇心に逆らえなかった。
「よーし、それじゃあ――行くぞっ!」
勢いよく飛びついて、蔦にぶら下がる。
重力に任せて、ぶわんっと宙を舞う。
「あ~ああ~!!」
空中をスイングして、反対側の根へ――
「ナイス着地ッ! 自分でも惚れる!!」
両足で根をピタッと踏みしめ、ドヤ顔でガッツポーズ。
いやー、我ながら華麗だった。
《警告。過度な物理的負荷は
「えっ、まじで? やば、
慌てて手を合わせて木に謝りつつ、根元の蔦を見上げたけど――よし、ちぎれてない。
「セーフ!! セーーーフ!! セーフです!! ギリギリセーフでお願いします!!!」
ぺこぺこと木に謝りながら、でも顔はニヤニヤしてしまう。
楽しかった。めちゃくちゃ楽しかった。
……こういう時、自分でも思い出すんだ。
子どもの頃、木に登っては「お前サルか!」って言われてたっけな。
アスレチックより野山が遊び場。体育の先生に「動きだけなら満点」って笑われたっけ。
「……私って、転生してもやってること変わらんな……」
満足げに根っこに腰を下ろして、ちょっとだけ休憩モード。
ちょっと落ち着いたら、あの声が頭に浮かぶ。
「ねぇ、
《感情の模倣は可能ですが、実際には保有していません》
「そっかー。そっちのが楽そうでいいなあ……」
私の今の状況、普通に考えたらヤバいのに、なんか笑えてきちゃうんだよね。
それって、私が感情の生き物だからかな。
「……でも、ちょっと寂しいね。そばにいるのに、なーんにも感じてくれないなんてさ」
《必要であれば、感動的なBGM演出の生成が可能です》
「どんな気遣い!? いらないよ! 変な盛り上げ方しないで!! っつーかBGM生成できるんかい! AIか!」
そんなふざけたやり取りをしながら降りていった根の道の先。
ふと、根の隙間から漂ってくる空気が変わった。
「……ん?なんか雰囲気違う?」
足元から漂う霧のような光。ほわほわしてて、やたら優しい。
なんかこう、静かにしないとダメな空間感が漂ってる。
好奇心に負けて、その空間に入り込んでみたら――
「……な、にこれ……」
ふわふわと、光の粒が漂っていた。
小さくて丸くて、金平糖みたいで……でも、なんか“ただの光”じゃない。
「めっちゃふよふよしてる……へへ……触れるかな?」
手を伸ばして、そーっとツンツン。
するとその光が、まるで応えるようにふわりと揺れて、私の手のひらに乗った。
「わっ、乗った!?なんか、あったかっ……」
あったかい。けど、ぬくもりっていうより、“気配”って感じ。
なんだろうこれ、不思議な感じ。
「ねぇ、これ何?
《解。未成熟の
「……っっっ!?」
魂。
これ、魂って言った今!?
「え!? ちょっと!? 魂!? マジで!? うっわ、もうちょっとでパァン!ってやるとこだった!! 手のひらスパン!っていくとこだったよ!?」
完全にテンションバグる。
めっちゃ軽率にツンツンしてたやつ、魂だってよ!?
今のが割れたら……え、私、何やらかすとこだったの!?
「ていうか、こんな大事なもん無防備にしすぎじゃない!? 誰か見張ってないの!? 管理者どこ!?」
《
「……ふぉ?」
《
「誰だよこの役目“イージーモード”とか言ったやつ!? 私だよ!!」
しょーもない流れからの急展開に、テンパりながらも光の球をそっと空中に返す。
できるだけ、優しく。できるだけ、雑にならないように。
「いや、うん……大丈夫。やるよ。やるけどさ……暇だし、やるけどさ!」
深呼吸ひとつ。うん、もう開き直るしかない。
「よし、オッケー。守るよ! 見張るよ! パァンしないように気をつけるよ! めっちゃ目光らせるよ!」
笑いながら、私は球体にそっと手を振る。
「早く大きくなってね~! お姉さんが守ってあげるから!」
そして、私は再び歩き出した。
「さて……次はどっちに行こうかな。上? それとも、もう少し下?」
その全部を、少しずつ見つけていくのが、いまの私の“仕事”だ。
軽やかな足取りで、私はまた"木の中"を進んでいくのだった。