ラミリスの迷宮の一角。静けさが戻った部屋で、リンは小さく深呼吸をした。
心の奥に残っていた不安や痛みが、ラミリスの言葉に少しだけ和らいで、ぽつりと口を開く。
「ねえ……ラミリスさん。これまでの
問いかけた瞬間、ラミリスの顔が曇る。
普段ならすぐに返してくれるはずの彼女が、なぜか躊躇っていた。
(あ……触れちゃいけない話だったのかな……)
そう思った時、ラミリスはふっと目を伏せ、ぽつりと語り始めた。
「……すごく昔の話よ。百万年、いやそれ以上前かもね。
ラミリスの瞳には遠い記憶が蘇っているようだった。彼女の言葉には重みがあり、慎重に選ばれた言葉でその歴史を語っていく。
「
ラミリスの言葉は少しずつ重みを増していく。
「超魔導帝国ソーマ……聞いたことある?」
首を振るリンに、ラミリスはゆっくりと話を続ける。
「かつて栄華を極めた帝国よ。でもその愚かさで、自分たちの技術のために、ミリムの大事な親友だった子竜を殺したの。それに怒り狂ったミリムが、ソーマを滅ぼしたのよ」
その言葉を聞いた瞬間、リンは息を呑んだ。
ミリムの親友が殺された……その壮絶な出来事が、どれだけの破壊と悲しみをもたらしたのか、リンは想像を絶するほどのものだと感じた。
「でも、それだけじゃ終わらなかったの。ミリムの暴走は止まらなかった……ギィが彼女の暴走を止めるために戦い、アタシもミリムの怒りを中和しようと必死だった。そしてね、その時アタシは力を喪失すると同時に邪悪な魔と竜の妖気を浴びて、それが原因で精霊女王だったアタシが堕落して、今の魔王になったんだ。転生を繰り返すようになったのもこの時からなの」
ラミリスの声には痛みが混じっていた。彼女自身がその戦いの中で、かつての自分を失い、魔王として生きることを余儀なくされたこと。リンは、その話を聞きながら胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
「その時の戦いで、ギィとミリムがぶつかり合い、空間すら歪むほどの力が放たれて、
世界を救おうとして、自らを削りきった存在――
「その後、彼女の中には大量の妖気が蓄積されて……やがて、姿を変えたの。いまの
空気が冷たくなった気がした。
それは、過去の痛みを誰よりも知る者が放つ、静かな哀しみ。
「それからずっと……
「そんな……みんな、消えちゃったの……?」
「うん。全員、
それが、“運命”。
「戦いの中で、自然の回復のために力を使い果たしたり、魔素が尽きたり。たとえ自分の意志があっても……最後には、取り込まれてしまうの。
その話を聞いて、リンは言葉を失った。
目の前のラミリスの声は、すごく優しかった。
でも、その分、痛みが深く染みた。
「私も、そうなるのかな……」
リンの呟きに、ラミリスはしばし黙った後、そっと微笑んでみせた。
「それでも、アンタは今ここにいる。そして“変えたい”って言った。その言葉だけで、アタシは嬉しいの」
「でも……変えられるのかな。全部が決まってるなら、私の頑張りって……意味、あるのかな」
震える声に、ラミリスは一歩だけ近寄り、ポン、とリンの頭に手を置いた。
「リン、アンタは生きてる。泣いたり笑ったり、傷ついたりしてる。……それだけで、意味はあるわよ」
涙がこぼれた。
「運命がどうこう言ったってさ、それって“選ばれた存在”だからこそ背負わされるものでしょう? だったら、選ばれたからって全部言いなりになる必要はないのよ。ね?」
ラミリスの笑顔が、まぶしかった。
「……ありがとう」
小さな声で呟く。
それが、リンにとって、強さの第一歩だった。
まあこんな感じで今の