転生したら木の中でした   作:猫田やなぎ

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第四十二話

リンは、分身体が土地の強化を進める中で、大霊樹(ドリュアス)の中にこもり、次に何をすべきか思案していた。この一年と数ヶ月であらかたの土地を強化し終え、残す大きな場所はギィの支配領域である北方に位置する「氷土の大陸」と、南方の大地「黄金卿(エルドラド)」だけだった。氷土の大陸はその過酷な環境から大霊樹(ドリュアス)が存在するとは思えず、自然とリンの目は南方、黄金卿(エルドラド)に向かう。しかし、海を越えねばならないというハードルがあり、果たして無事にたどり着けるのかと不安が頭をもたげていた。

 

そんな時だった。

 

「リン!今日こそ修行だー!!」

 

リンの思考を一気に吹き飛ばすような声が響き、大霊樹(ドリュアス)の空間にミリムが勢いよく飛び込んできた。黄金卿(エルドラド)のことを一旦頭の隅に追いやり、リンは笑顔を浮かべた。新たに獲得したスキル、真界領域(しんかいりょういき)をミリムとの修行で試す、その機会がやってきた。

 

「ミリム、ちょっと待ってね。ラミリスさんにも見てもらいたいから、念話を送ってくるわ」

 

リンはラミリスにすぐに念話を送り、修行の見守りを頼んだ。ラミリスは快諾し、すぐに大霊樹(ドリュアス)に飛んでくることになった。

 

その間、ミリムと向かい合ったリンは、新しいスキルを試すために少し頼みごとをすることにした。

 

「ミリム、お願いがあるんだけど……私が新しいスキルを発動したら、それを壊すつもりで攻撃してくれる?」

 

ミリムは瞬きをし、少し考えた後、満面の笑みを浮かべて元気よく答えた。

 

「任せるのだ!全力でやるから覚悟しておけ!」

 

その力強い言葉に、リンは一瞬不安がよぎった。ミリムの「全力」がどれほどのものか、過去の修行で身に染みて知っている。しかし、今は真界領域(しんかいりょういき)を本番で試す前に、ミリムとの修行でその頑丈さを確かめる必要があった。ミリムに耐えられるなら、今後の自信にもなるだろう。リンは深呼吸をし、気合を入れ直した。

 

しばらくして、ラミリスが大霊樹(ドリュアス)に飛び込んできた。

 

「リン!ミリム!待たせたわね!」

 

いつもの元気な声に、リンは心強さを感じた。ラミリス、ミリム、リンの三人はそのまま異空間に移動し、修行を始めることにした。

 

 

 

 

 

リンは真界領域(しんかいりょういき)を発動した。瞬時に周囲を包む透明な結界が形成され、大量の魔素がリンからごっそりと消費される感覚が襲ったが、彼女は踏ん張った。ここで倒れては意味がない。

 

「ミリム、お願い!」

 

リンの声を合図に、ミリムの魔素が一気に膨れ上がった。次の瞬間、猛烈な魔素の塊がリンに向かって飛んできた。続けざまにミリムの拳や蹴りが結界に激突する。リンは目を閉じることなく、全身に集中してスキルを維持し続けた。全身を通じて結界が圧力を受けるが、破れる気配はない。

 

「むう……なかなかやるのだ!」

 

ミリムは一旦攻撃をやめ、少し悔しそうに、しかし楽しそうに笑った。その笑顔は無邪気でありながら、次の一手を考える策略家のようでもあった。

 

「リン、ワタシのとっておきを食らってみるか?」

 

ミリムの言葉に、リンは一瞬迷ったが、これも修行の一環だと思い、頷いた。

 

「お願い、ミリム……!」

 

ミリムはニヤリと笑い、全身から放たれる魔素が一気に変化した。彼女の身体が変化し、背には翼が生えている。その威圧感はこれまでとは比べ物にならなかった。

 

(これ、まずいかも……)

 

リンはそう思ったが、これを耐え切れたなら大きな自信になるだろうと自らを鼓舞し、真界領域(しんかいりょういき)の精度を高めようと集中した。

 

ミリムの魔素がさらに膨れ上がり、凝縮され、やがて解放された。

 

「——竜星爆炎覇(ドラゴ・ノヴァ)!!」

 

放たれた一撃は、異空間を一瞬で歪め、全てを消し去るほどの威力を持っていた。リンは全身に震えを感じながらも、真界領域(しんかいりょういき)が何もかもを防いでいることを確認し、息を呑んだ。

ミリムの「竜星爆炎覇(ドラゴ・ノヴァ)」が全て無効化されていたのだ。

 

ミリムはしばらく呆然とした後、驚きの声をあげた。

 

「えええええっ!?すごいぞリン!!どうやって……!」

 

ラミリスも、ミリムの技を耐えきったリンに戦慄し、言葉を失っていた。

 

リンは全身に疲労を感じつつも、嬉しさと驚きが入り混じる感覚を抱いていた。まさかミリムの技に耐えられるとは。これで彼女のスキルが本物であると証明された。

 

三人はしばらく無言でその場に立ち尽くし、互いの健闘を称えるような沈黙の中、リンは心の中で密かに大きな達成感を抱いていた。

 

 

 

 

「うぅ〜、悔しいのだー!!」

 

ミリムは悔しがりながらリンに飛びついた。自分の「とっておき」が完全に無効化されるとは、さすがの彼女も予想外だったようで、じゃれつくようにリンに体をぶつけてくる。リンはそんなミリムを苦笑しながら受け止めた。

 

「やっぱり、リンはすごいのだ!ワタシの技を全部防ぐなんて、ギィだってあそこまでの防御はしないのに!」

 

ミリムの瞳が輝いている。彼女は本当に楽しそうに、リンの肩を揺らしながら笑顔を見せた。ミリムに褒められたことで、リンは少し顔を赤らめた。まさか、ここまで評価されるとは思っていなかった。

 

「そ、そんな……ミリムが手加減してくれたから……」

 

リンは謙遜するが、ミリムは首を振りながら真剣な顔で答える。

 

「手加減なんかしてないのだ!全力でやったのに!リン、本当にすごいのだ!ワタシ、次の修行が楽しみなのだ!」

 

ミリムは無邪気にリンにじゃれつきながら、次の修行のことを考え始めていた。リンは真界領域(しんかいりょういき)を解除して、そんなミリムに付き合う。

 

その様子を、ラミリスはじっと見つめていた。彼女もまた、リンの真界領域(しんかいりょういき)の強さに驚愕していた。

 

「……リン、アンタ本当にやったわね……あのミリムの技を無効化できるなんて……本当に信じられないわ」

 

ラミリスは呆然とした表情でリンを見つめた後、急に笑顔を浮かべて大きく拍手をした。

 

「本当にすごいわよ!これならどんな相手だって守りきれるんじゃないかしら!」

 

リンは、ラミリスの言葉に少し気恥ずかしそうに笑いながら答えた。

 

「ありがとう、ラミリスさん。でも、私だってまだまだこれからだから……」

 

彼女は謙虚に返事をしたが、内心では違った感情が渦巻いていた。真界領域(しんかいりょういき)の防御力を自らが実感したことで、確かに強力なスキルだという自信がついた。しかし、それ以上に気になるのは、このスキルが「エクストラスキル」の範疇に収まっているのかという疑念だった。

 

(……これ、エクストラスキルでいいんだよね?)

 

リンは心の中でつぶやく。真界領域(しんかいりょういき)は確かに強力だ。だが、エクストラスキルとは思えないほどの絶対的な防御力を持っている。それに伴う魔素の消費量も尋常ではなかった。維持には問題ないとはいえ、発動時に感じた魔素の消費の大きさは、今まで経験したことがないほどのものだった。

 

(もし、これがただのエクストラスキルじゃないとしたら……)

 

リンは自分の胸の内でその考えを押し殺そうとしたが、疑念は消えない。もしかしたら、彼女の力はさらに進化しつつあるのかもしれない。しかし、それがどのような意味を持つのか、まだ彼女には見当がつかなかった。

 

そんな考えを抱えながらも、リンはミリムとラミリスの前で表情を崩さずにいた。とにかく、今はこのスキルを使いこなすことが重要だ。次の戦い、天魔大戦に備えるためにも、もっと自分の力を磨かなければならない。それだけは、確実にわかっていた。

 

ミリムが再び嬉しそうにじゃれつく中、ラミリスはそんなリンの心中を察したのか、静かにリンの肩を叩いた。

 

「まあ、何か不安があるなら、私たちがいるわよ。アンタ、これからも成長し続けるんだから、焦らなくていいの」

 

ラミリスのその言葉に、リンは少しだけ肩の力を抜くことができた。

 

「……ありがとう、ラミリスさん。そうだよね、焦らないでいこう」

 

心の中で、疑念はまだ消えなかったが、リンは今はその成長を受け入れるしかないと決意した。そして、いつかその真実が明らかになる時を静かに待つことにした。




リンの魔素をほとんど使用して発動する真界領域(しんかいりょういき)のエグさを書いてみました。エクストラスキルだとしても強すぎだろ!って思うかもしれませんが、理由については追々。

ご覧いただきありがとうございました!

20241116:魔素と魔力を書き分けるために修正。
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