リンは
「この島に
彼女はふと悩み、これまでの経験からも、この特殊な場所を無視してよいものか疑問を抱かずにはいられなかった。
「……やっぱり、ここはギィさんに相談するべきか」
リンは通信用の水晶を取り出し、ためらいつつも、ギィ・クリムゾンに連絡を入れた。すぐに水晶越しにギィの声が響く。
『お前か。何か用か?』
ギィの低く落ち着いた声に、リンは少し緊張しながら
「実は、
リンの言葉に耳を傾けていたギィは、しばらく沈黙して考え込んだ。
『……確かに、
「それなら、やっぱり強化の必要はないのかな?」
リンが不安げに尋ねると、ギィは少し笑った。
『まあ、そう急ぐな。オレもあの地がどうなっているかは気になっていたし、見に行ってもいいだろう。オレもついていくから、現地で確認するのが手っ取り早い』
ギィの言葉に驚いたリンは、思わず口元がほころんだ。
「本当に一緒に来てくれるの?」
『ああ、オレも興味があるしな』
ギィのその軽やかな返事に、リンは安堵と共に心強さを感じた。
「ありがとう、すぐ準備するね!」
『しっかり準備しておけよ。あそこは、なかなか興味深い場所だからな』
リンは、ギィが同行してくれると決まった瞬間から、少しずつ高まってくる期待と不安の入り混じった気持ちを抑えきれずにいた。
しばらくして、リンが住まう
「ギィさん、準備できた!」
ギィは短く頷くと、リンをじっと見つめて少し微笑む。
「それじゃあ、行くぞ。ついてこられないなら置いていくからな」
ギィの冗談めかした言葉に、リンも思わず笑顔を返す。
「大丈夫、全力でついていくから!」
ギィが先頭に立って空へ舞い上がり、リンもそれに続いた。最初はやや距離が離れてしまったが、リンはスキル
「リン、無理に追いつかなくていい。お前のペースで来い」
ギィが振り返りながら声をかけてくれた。リンはその言葉に少し安堵し、自分のペースで飛ぶことにした。広大な空と大海原を背に、ギィの姿を見失わないよう注意を払いながら進む。
やがて、
島が近づくにつれ、リンはその魔素の濃さに驚きを隠せなかった。魔素が肌に触れる感覚がしっかりと感じ取れ、まるで自分自身がその空間に溶け込んでいくような錯覚さえ覚える。リンは小さく息を呑んで、ギィに問いかけた。
「……本当に、ここには誰も住んでいないんだよね?」
ギィは少し考え込むように空を見つめた。
「ああ、少なくとも普通の人間が住める環境じゃない。だが、魔物なら話は別だな。ここに棲む生き物は、全てがこの異常な環境に順応しているはずだ」
リンはうなずきながらも、島の中央に広がる魔素の塊がひときわ強烈に感じられ、ぞくりと身震いした。
「じゃあ、まずは島の中心に向かってみる?」
「そうだな。ただ、油断はするなよ。この地はただの場所じゃない。あの二体がかつて暴れ回った痕跡だ。もしも
ギィの言葉に、リンは再度気を引き締め、ゆっくりと
しばらく進むと、突然、強烈な風が吹き抜け、地面がごうごうと震える音が響いた。リンは驚きに足を止め、周囲を見回す。すると、巨大な竜骨のような岩や、深い亀裂の入った大地が目に飛び込んできた。かつての戦闘の爪痕であることが明らかで、リンの背筋は冷たくなった。
ギィは周囲を冷静に観察しながら、かつてヴェルドラとヴェルグリンドが戦った様子を思い返しているようだった。
「この島が生まれ変わるためには、お前の力が必要なのかもしれんな」
ギィの静かな言葉に、リンは強く頷いた。彼女は自らの使命を胸に刻み、ゆっくりと目を閉じて
「どうだ、見つかりそうか?」
ギィが問いかけると、リンは少し眉を寄せて答えた。
「うーん……魔素が濃すぎて、すぐには見つけられないかも。けど、もう少し探ってみる」
彼女は再度集中し、体内に流れる魔素を高めながら
「ギィさん、なんだか……地下に何かの気配を感じる。
「ほう、地下か。予想以上に根深いところにあるようだな。……よし、確かめに行くぞ」
ギィの言葉に、リンも意を決して頷いた。
「本当に地下に
リンが周囲を見渡しながら、ギィに尋ねると、ギィは片眉を上げ、少し考え込むような表情をした。
「この辺りには何かしらの痕跡が残ってるかもしれん。だが、探すのに手間取るつもりはない」
ギィは言葉通り、ほとんど躊躇せずに歩みを進め、岩の合間や古びた地形の変化を見逃さないよう観察し続けた。リンも負けじと後に続き、周囲を見渡していたが、時間が経つにつれて、どうもそれらしい入口が見つかる気配はない。
やがて、ギィは少しうんざりした様子で足を止め、低く息を吐いた。
「……まったく、隠れた道を探すなんて面倒だな」
リンは思わず苦笑し、ギィの不満げな表情を見て、少し緊張が和らいだ。
「隠し道を探すのは、やっぱり大変だね。私もなんとか探してみるけど……」
そう言いながらリンが再度魔素を集中させ、地下からの気配に神経を研ぎ澄ませようとしたその時だった。
ギィが突如、片腕をぐっと掲げ、大地に向けて力を込め始めた。
「もういい、こうすりゃ早いだろ」
その声と共に、ギィの手から放たれた強烈な魔素が、地面に向かって炸裂する。瞬間、地面全体がぐらぐらと揺れ、音を立てて大地がひび割れ始めた。そして、次の瞬間、まるで大地が音を立てて割れるかのように、巨大な亀裂が地面に走り、目の前にはぽっかりと開いた巨大な穴が現れた。
リンは驚きで目を見開きながら、思わず後退した。
「……ギィさんも、ミリムみたいなことするんだね」
そう呟くと、ギィは微かに笑いながらリンを振り返った。
「何を言ってる。アイツとは違う。こっちは力の加減もちゃんと考えてるからな」
「そう……だね」
リンは小さく苦笑しつつ、再び視線を大穴へと戻した。地面を一撃で割ってしまうギィの圧倒的な力を目の当たりにし、改めて彼の実力の凄まじさを思い知る。それでも、どこか面倒くさそうにやってのける彼の姿に、少し親しみを覚えたのも事実だった。
ギィが先にその穴の中を覗き込み、注意深く地中の奥を見つめてから、リンに視線を戻す。
「行くぞ、リン。
「うん、わかった!」
リンはギィの背に続き、躊躇せずに大穴の中へと飛び込んだ。
ギィはたまに豪快なことしそうなので地面割らせてみました。レオンの支配領域となる前の
ご覧いただきありがとうございました!
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。