リンは、
進化を目指して新しいスキルを獲得するために、
「念には念を入れよう」
リンは自分に言い聞かせるように呟き、エクストラスキル
「よし、これで行こう」
リンは
——先日の黒髪の女性はリンに危害を加えるつもりはなかったようだが、いつ敵意を向けてくる者が現れるかわからない。リンは
そこでふと、女性から言われた「天魔大戦では決して外に出ないでほしい」という言葉を思い出す。
天魔大戦がどれだけの壮絶な戦いになるのか、想像すらできなかった。ギィが
ギィからの命令、黒髪の女性からの頼みは、共通した内容である。それを無視する気は毛頭ないが、もし天魔大戦で自然を、みんなを失うようなことがあれば、自分がここにいる意味などない。
何かあったとき、すぐに駆けつけられるようになれたら——リンはそこまで考えて、転移について思い出した。ギィが使っていたもの、さすがにあの荘厳な扉を出そうとは思わないが、ファルムス王国でリンを助けに来てくれたギィが、リンを抱えてラミリスのところ——自身の居城まで転移していた。
あんな風に長距離を一瞬で移動できるのであれば、危機回避にも役立つし、次に土地の強化を行うときにも便利だろう。是非とも覚えたいスキルだ、とリンは気合いを入れながら、少しでも早く魔素が回復するように眠りに入ることにした。
暗闇の中、リンはまたこの夢かと思った。何度も何度も見ている、自身が木の根に囚われる夢。手足を、身体を、魂を絡め取り、意識までも呑み込もうとする——いずれ訪れるかもしれない、リンの未来を示唆している夢だ。
相変わらずこちらの身体に無作法に巻きついてきて、胸の中心——魂までたどり着く根。リンは少しうんざりしながらも、以前のような恐怖はさほど感じなかった。何度も見ている夢だから慣れたのだろうか。今は過去の恐怖とは違い、冷静に根の動きを観察する余裕があった。
黒く染まる意識の中で、鮮やかな色が目に入る。リンはその色を知っていた。
冷たい、でもどこか温かい、怖い、緊張する、安心する、楽しい、嬉しい、ちょっと寂しい。
その色を視界に入れるたびに色々な感情が浮かぶ。
あの色は、あの人の——。
リンが黒の中に映える色に手を伸ばそうとして、そこで目が覚めた。
「……あれ?」
夢から覚めたリンは、虚空に向かって手を伸ばしていた。何をしているんだろうと考えるが、夢の内容は思い出せなかった。
まあ思い出せないなら必要ないのだろうとリンはすぐさま思考を切り替え、自分の魔素の回復具合を
(
『解。全快時の8割回復しています』
それを聞いたリンは「よし」と立ち上がり、
(
『……各地の
(……どうすればいい?)
『我を含む全ての
全ての
だが転移能力は欲しい。背に腹はかえられないか。リンはため息をついて、
(わかった。やるよ)
『承知した。気を緩めれば、そなたの
(先に言ってくれ……まあ頑張るけど)
リンの身体に
「——ひっ……いやあああああ!!」
思わず逃げようともがくが、いつの間にか
これでは、あの夢のようではないか——。
リンは己の体内で蠢き続ける魔素をなんとかしようと、張っていた
「うぅ……!この……言うこと聞きなさいよ……!」
——道を作る。
——そなたと各地の
繋がりがあるのならば、干渉することもできるだろう。そうだ、土地の強化でさんざんやったではないか。リンは土地の強化をしたときのように、自身の魔素を各地の
言うことを聞け。
私はあなたたちに使われる存在じゃない。
私があなたたちを使うんだ。
従え。
「——従え!!」
リンの魔素が一気に放出され、
リンの意識がぼんやりとした中で、自分の魔素を各地の
各地の
そして、やがて一番気になっている場所——「
あれだけ魔素を注いでもなお、その存在感は希薄だった。しかし、あの魔素の濃い環境下で生き続けているのもすごいことだ。リンは薄れていく意識の中で、そっと微笑み、心の中で呟いた。
(——また行くね)
その瞬間、意識はさらに深い暗闇に引き込まれていく感覚を覚えた。
リンが意識を取り戻したとき、身体に巻き付いていた根はなく、自由に動けることを確認した。魔素を消費したことで倦怠感はあるものの、
試練はどうなったのだろうか——。
リンが
『……道は繋がった。今後は
(えっ……)
本当にできるようになったのか、と驚くリンの頭の中に声が響く。
『告。エクストラスキル「
世界の言葉だ。つまり、本当に手に入れたのだ。リンはその瞬間、嬉しさが胸に広がるのを感じた。
「……——やったぁ!!」
これで少しは楽に……いや、皆の役に立てる機会が増えるかもしれないと、リンは飛び上がって喜んだ。
この喜びを誰に伝えようか、やはり友人であり主である彼女だろうか。
リンはさっそく念話をラミリスへ飛ばそうとして、思いとどまった。
「……進化、できてない……よね?
『解。
「やっぱり……あー、どうすれば進化できるのかなぁ」
リンは肩を落とし、ラミリスへの報告はちょっとやめておこうと考えた。そのまま寝床にごろりと転がり、柔らかな光に包まれた天井を見上げた。
(……私、天魔大戦の後も生きてるのかな……)
ギィは今のリンなら耐えられるだろうと言っていた。しかし、永くは持たないだろうとも言っていた。彼女の心に不安が渦巻く。
——消えたくない。
リンは自身の奥から湧き上がってくるその想いに蓋をするように目を閉じた。
意識を失ったその瞬間、彼女は再び自分の役割を全うするために強くなりたいと願った。その思いが、彼女を支える力になっているのだと、信じていた。
転移スキルゲットだぜ!現実でも欲しいですね、転移スキル。ご覧いただきありがとうございました!
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。