本当にこれでいいのだろうか。
皆が命がけで戦っているこの瞬間に、安全な場所で戦争の終結を待つなどどうしても性に合わない——と思う自分がいることを初めて知った。
(……失敗しないように、ちゃんと見なきゃ)
前世、愚かにも左右確認を怠ったことで事故死したリン。その失敗を生かして、今度こそはと思い、手に入れたのがユニークスキル
これまでにこのスキルの権能「未来予測」を使った回数はごくわずかであり、戦闘らしい戦闘の経験などない自分には持て余す能力であることをリンは自覚していた。
(役に立つために私にできることは、まずは知ることだ)
この場に留まりながらも出来ることはあるだろうか。リンは今自分に何が出来るのかを知るために、
(
『了。いつでも発動可能です』
(ありがとう。よし、あとは……)
リンは同一化の準備をする。もちろん外へ出るわけではない。
今回はそれを使うつもりである。
多少は消耗するだろうが、あの頃よりも自分は成長している。
リンは覚悟を決めて、
(
『……一度に同一化すれば——』
(油断すれば
やらずに後悔するよりも、やって後悔する方が自分的には納得できる。
リンの意志の固さを感じたのか、
『試練の際、そなたは各地の
(それは朗報だねえ。ではやりますか)
リンは目を閉じて、
(——もう一度、私に力を貸してもらうよ)
そう思うのと同時に、リンは自身の魔素を放射線状に放つイメージで各地の
(
『了。情報収集および整理を開始します』
——ユーラザニアは
ドワルゴンの様子を認識した瞬間、リンは
「
『了。武装国家ドワルゴンの現在の状況について収集完了。「未来予測」を実行します』
瞬間、未来の映像が見えた。
間もなく
多くの種族が暮らしていたあの場所が、瞬く間に崩壊するその光景にリンはぞっとした。
(……だめだ、絶対にそんなことさせない)
『告。現在の状態を維持したまま、エクストラスキル
(やって)
本来なら魔素の供給のために、魔素の消費は抑えなければならない。ただでさえ魔素を消費する
けれどリンは迷わなかった。
魔素などいくらでも捻り出してやる。守れなければ、自分の存在に意味などないのだと強く思った。
『——遠隔設置の準備が完了しました。
「……っ……!」
『……成功しました。
(……大丈夫、まだいける)
リンは深く息を吐き出して、ドワルゴンの様子を注視する。
さすがにガゼル王の国は判断が早い。
しかし、攻撃が通らなくなったことで
距離を取り、何かを仕掛けてくるような様子にリンは
(……
『否。生命体の反応は確認できませんでした』
(そっか。……誰もいないことはよかったけど、元に戻るといいな)
その後も
リンはこれなら持つかもしれないと、ドワルゴンに注意を払いつつ他の地についても監視していくことにした。
ドワルゴンの王宮へ、一人の兵士が駆け込んだ。その先で戦況報告を待つガゼル・ドワルゴへ現状を報告するためである。
「陛下、先ほどの正体不明の結界が
「……そうか。ならばそのまま結界内より攻撃を仕掛けよ。近接戦闘をする者は十二分に警戒するように。怪我人は結界の中心へ運べ」
「はっ!」
すぐさま立ち去る兵士を見送り、ガゼルは思索に耽る。
——正体不明の結界。それは害あるものでは決してなく、自分たちを守るために張られたものだった。いったい誰が、などとガゼルは思考することもなく、それが誰の仕業なのかわかっていた。
(……
本来であれば目にかかることも難しい存在、それが
しかしリンはギィからの頼みもとい命令で分身体を覚え、
さらには自らの足で土地の強化をして回り、魔物たちと交流する。
これまでの
(この大戦の後に、我が国へ招待するのもよかろう。あの者との繋がりが、この先のドワルゴンを支えるかもしれん)
ガゼルはリンと次に相まみえる機会を楽しみにしながら、天魔大戦を乗り切るための次なる一手を講じることにした。
(……ドワルゴンはひとまず大丈夫……かな。
『解。数体の
(ルベリオス!?……ルミナス様とロイさんとルイさん……いや、あの人たちなら大丈夫だろうけど、街に被害が出たら……いやでも余計なお世話かなぁ)
ルミナスのリンへの好感度は不思議なほどに上り調子だが、法皇ルイはともかく魔王ロイ・ヴァレンタインのリンに対する態度は冷ややかなものだ。下手に手を出せば何を言われるかわからない。リンはひとまず静観することにした。
(
『告。今しがた、個体名ロイ・ヴァレンタインの攻撃により消滅しました』
(はやっ)
やはり大丈夫そうである。リンは一応は注意しておくように
『告。ユーラザニアに進行中の集団を確認。約2時間後にユーラザニアと交戦中の
(……ん?
『是。ファルムス王国の軍であると思われます』
リンは頭を抱えて「あのオッサンの国か……」と低く唸った。恨みはある。だが守りたい。
ていうか、この非常事態に何してんだアホかよと毒づきながら、リンはどうすべきか考えた。
(んー……たぶん天魔大戦に乗じてユーラザニアを潰しに来たんだよね。どうしようかな)
『告。ユーラザニアは現在、
(ファルムスにはお帰りいただくことにして……何かいい方法ある?)
『解。ファルムス王国の軍の進行方向にある
(遠隔すげぇ。というか
リンは素敵なスキルをくれた世界に感謝しつつ、
(そんじゃ、やっちゃって
『了。対象の
(……魔素、だいぶ使っちゃったな)
『成功しました。「未来予測」にて結果を予測します……確認しました。ファルムス王国の軍はユーラザニアから離れ、自国へ帰還するものと思われます』
リンはホッと息を吐いた。
今のところ、大きな被害は出ていない。このままいけばいいが、そうはいかないのが現実である。
引き続き戦いの様子を
そのうち
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。