ユーラザニアではカリオンら獣人たちが
カリオンも
「
カリオンはそう思いながらも、彼の心には不安が広がっていた。守るべき者たちが、無事でいてほしいと願っていた。
一方ルベリオスでは、続々と現れる
「こんなにも力が増しているとは……」
ロイは
(
ロイはリンの存在を心の中で反芻し、普段はあまりよく思っていない彼女に対して、この時だけは感謝の念を抱いた。
ルミナスはその傍らでロイの戦いを見守りながら、彼の肩を叩いた。
「ロイよ、リンのおかげで以前より力を発揮できておるようじゃな」
「ええ。彼女の土地の強化がなければ、
ロイはルミナスの言葉に頷いた。ルミナスはどこか誇らしげに微笑む。
「貴様はリンを気に食わないようじゃが、今回ばかりはそうもいくまいな」
「……仰る通りです」
「リンに感謝するがよい。尤も、リンは「大したことはしていない」と言うじゃろうが……」
「大戦が終わり次第、礼を伝えます」
ロイはそう言わざるを得なかった。リンに感謝していることは事実だが、ルミナスの視線が冷ややかを通り越しており、ここで拒否すれば消されるかもしれないと危惧したからである。
「それでよい。——ほれ、羽虫どもが沸いてきよったぞ」
「はっ」
ルベリオスでの戦場は余裕すら感じられるほどに圧倒的にルミナスらが優勢で、リンは
『警告。魔素の残量が一定値に割り込みました。各地の
「一度、魔素の回復と供給のみに専念すべきかな……」
ひとまず監視は中断し、気怠い身体を動かしてリンは
(私ができること、必ず全部やり遂げてみせる……)
その静かな空間の中で、リンは自身の思いと共に、戦いが続く世界の行く末を見つめていた。彼女の心には、不安や焦りが残るものの、自然を守り、皆を支えるために全力を尽くすという決意が揺るがないことを自覚していた。
一人の男が頬杖をつきながら、一体の
世界の至るところで見られる力。その特異性から、持ち主が何者であるかは想像に難くなかった。
視覚を操作して、力の持ち主である存在が住まうであろ大樹を映す。
あらゆる生命を強化できる力を秘めたもの。
うっかり壊してしまおうものなら世界そのものが危うくなるという、諸刃の剣のような場所である。
「……迂闊に手は出せぬか」
おそらくアレは駒だろう。
こちらが手を出せば阻まれる可能性もあるが、駒が自ら動いたならば手に入れられる隙も出来るかもしれないと、男は考える。
「いや……
ではどうすべきだろうかと、男は思考を続ける。
そしてルール上、自分は動けない。ならば駒が自ら動くように仕向け、育てれば、あるいは——。
「……仕方ない」
視覚を借りていた
男は引き続き
リンが
「何!?
驚いたリンは、
『告。複数体の
「えっ……」
恐怖が走る。
(自分でなんとかしなきゃ……)
魔素がほとんど回復していない状態で、どこまでやれるか不安を抱えながらも、リンは
「……分身体を作って、迎撃に向かわせよう。
『了』
リンは自身の力を振り絞って分身体を作り、
分身体の視覚を借りつつ、
(なんでもっと備えなかったんだろう。いくら
自然を、皆を、世界を守ると誓ったのに、
それでも、守らなければ。ここは大切な居場所なのだから。
(……
リンはそっと念話を飛ばす。
(今の私じゃ世界もあなたも守れない。だけど、私は諦めたくないの)
(これからもずっとずっと、ここで生きていきたい。守り続けたい。何があっても諦めない。だからお願い、力を貸して欲しい)
『…………共に生きる覚悟があるか、主よ。終わりのない生に身を投じることは、そなたが考えている以上に厳しい』
(……そうだね……きっと、今までの
永い時の中で味わうのは幸せなものばかりではない。幾多の争いで生み出される悲劇。守れないことで痛感する無力。己の力を狙う者たちから向けられる欲望。それらはこちらの心に深く残り、抉ってくる。
守り続けて、やがて疲弊すれば、終わりを望む者だって出てくるだろう。最後の役割として
役割を果たしたことへの充足感か、終わりが来たことへの安心感か。最後まで
(……私はすぐ悩むし落ち込むし頼りないかもしれないけど、根性だけは人一倍あるつもりだよ。それに、一人じゃないしね)
自分を支える存在。ラミリス、ミリム、ギィ——そして
彼らとの絆があれば、乗り越えていけるとリンは固く信じている。
(
『……やはり、そなたは違うのだな』
(え?)
『これまで、我を対等に扱う者はいなかった。我を一つの存在として認める者も……
想像でしかないが、どこか悲しそうな
(
『そなたほど、この空間を満喫している者もいないな』
(あはは……まぁ楽しければ勝ちだからね)
一瞬和やかな空気になるが、
(——で、
『是非もない。そなたがそれを望むならば叶えるだけだ』
(あなたの意志が重要なんだけど……ま、時間もないから今はそれでいいや)
分身体は
(
『——我に名付けを行うがよい』
(……えっ、名前?)
『名を貰い、そなたを唯一の主とすることで、我はそなたの一部となる』
名付けとは進化のきっかけになったりするアレだろうか。リンの頭の中にラミリスが名前を付けてくれたときのことが蘇った。
——しかし、名付けには確か膨大な魔素が必要なはずである。今の自分ではそれに耐えられるかわからない。
(……
『解。
(そうかぁ……なら耐えるしかないね。そうでなきゃここで終わりだもん)
リンは迷わない。それが必要だと思えば意地でも貫く意志は、一種の無謀だが、今このときにおいては「きっかけ」を掴む一つの要素だった。
「……ネーミングセンスは勘弁してね、『エリオン』」
その名を口にした瞬間、リンの意識が弾け飛んだ。
あの方を出すつもりはなかったけど、ここでちょっとご登場。ご覧いただきありがとうございました!
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。