ギィ・クリムゾンの支配領域「氷土の大陸」にて、ヴェルザードは日が落ち切った空を見上げていた。普段は深海色である瞳が金色に輝いており、探るように一点を見つめている。
「……あの子……」
ヴェルザードはぽつりと呟き、そっと瞳を伏せた。ここより遥か南方に位置する場所で、感じたことのない魔素が生じており、その中には今代の
今まで見たどの
少し前に、
――けれど、今はどうだろう。異様なまでの魔素が
(これは……
ヴェルザードはその正体がわからずに、少し眉を寄せた。さらに探ろうとする彼女に、声がかけられる。
「ヴェルザード」
「……ギィ、何かしら」
「この気配、お前ならわかるだろう。発生源は
「そうね。あの子、何をしたのかしら」
ギィはヴェルザードの言葉にフッと口元を緩めた。
「やはりそうか。本当に予想を上回るヤツだ」
「まだわからないわよ」
「アイツなら乗り越えるだろうさ」
リンを信頼しているようなギィの発言にヴェルザードは目を細めて不愉快さを表す。ギィはその視線を軽く流し、身を翻して城内へ向かう。
「貴方は行かないの、ギィ?」
「必要ない。ラミリスが向かったようだからな」
そう言って去っていくギィ。ヴェルザードは再び
「……少しは面白い駒かもしれないわね」
その言葉とは裏腹に、ヴェルザードは金色の瞳を鋭く光らせ、冷ややかな微笑を浮かべていた。
『――確認しました。個体名エリオンと個体名リンの完全融合により、条件を満たしました。これより、
世界の言葉を聞いたのは、リンの内側から彼女の進化を見守るエリオンと
『個体名リンの内部に
それはかつて、
『――個体名リンの進化を実行……成功しました。
ギィの魔素により、自然と調和する存在でありながら魔に属する者となるリン。その恩恵と言っていいのか、彼女は新たな能力に目覚めていく。
『新規固有スキル「
淡々と進化の状況を告げる世界の言葉に向かって、
『――告。ユニークスキル
『了。ユニークスキル
普段、リンが望まなければ
『……失敗しました。進化に充てられる魔素が不足しています。既存のスキルを生贄に再度実行します』
『……失敗しました。有効な手段を再検索――』
「――リン!!ちょっとしっかりして!」
外部からの声に、
「あああ、ホント無茶する……でも、そうか……進化してるのね……」
『……ユニークスキル
「えっ!?何、スキル?……あっ、リンのスキルか。ホントに喋るのね……魔素の譲渡ってリンに?」
『是。ユニークスキル
ラミリスはぽかんとした。リンの意識がないこの状況で、スキルが自発的に動いているという展開に一瞬混乱するが、リンのために必要なのだということは理解した。
「……なんかよくわかんないけど、リンのスキルならリンの味方よね。わかった、魔素をあげるわ」
『了。感謝します』
「いいって別に!成長してさっそくリンの役に立てるなら、こんなに嬉しいことはないわ!」
ラミリスはにっこりと笑い、徐々に形を成していくリンの手を握った。
今のラミリスは、小さな姿をしていなかった。小柄なリンよりも少し大きく、成熟した美しさを備えている。彼女が纏う柔らかなエネルギーは、揺らぐリンの魔素と混ざり合っていく。
「……リン、これでようやくアンタを守れるわ。一緒にいるからね」
『――保有魔素が規定量を満たしました。ユニークスキル
「……スキルが自発的に進化に挑戦って……ホント規格外な子ねぇ。アンタといると飽きないわ」
ラミリスは一旦魔素の譲渡をやめ、進化を見守ることにした。
――数えきれないほどの試みは、やがて遥か高く聳え立っていた壁を越える。
『――成功しました。ユニークスキル
意識のないリンの身体の主導権を一時的に貰い、目覚めたばかりのスキルを行使した。
「――
「えっ、リン?アンタもう起き……」
ラミリスは、いきなり起き上がったリンに対して驚き喜ぶが、雰囲気から彼女ではないことを察した。
「……リンじゃないわね。
「はい。
「自律型スキルねえ……なんかリンならありえるって思っちゃうわ」
ラミリスの苦笑を横目に、
「
淀みなくスキルを行使していく
「
「そんなことわかるの!?」
「現状ではほぼ間違いないと思われます」
「……とんでもないわね」
さすがは
「リン、進化したのよね?」
「はい。
「
「個体名ギィ・クリムゾンの魔素の影響により、進化先が変更されました」
ラミリスの表情が固まる。
誰の魔素?進化先が変更?誰の何が影響を――と数秒間考え、そして叫んだ。
「はあああああ!?なんでギィが出てくるの!?やっぱギィ、リンに何かしてたんじゃない!!アタシのリンに!とっちめてやるわ!!」
「個体名ギィ・クリムゾンは
「……
ラミリスは己の記憶を遡り、数年前にリンから報告された内容を思い出した。
そういえばそんなこと言ってたわ、とラミリスは落ち着きを取り戻し、誤魔化すように咳ばらいをした。
「――まあリンが無事に進化できたならいいわ。色々気になるけど……リンは今休眠状態でしょ?」
「はい。完全回復まで約7時間です」
「わかった。じゃあ、目覚めるまでアタシがそばにいるから。今のリンなら魔素切れは起こさないだろうけど、念のためにね」
「お任せいたします。――
ぱたりと倒れこむリンを、ラミリスがそっと受け止める。自身の膝を枕にするように彼女の頭を載せて、その柔らかな髪を撫でた。その表情は誇らしそうで、安堵しているようでいて今にも泣きそうな、感情が入り混じったものだった。
暗がりの中で男が思案するように口元に手を当て、瞳を閉ざしていた。
「……まさか、あっさりと消されるとは」
——不本意ながらも
状況から考えれば、あの結界も
考えられる可能性としては、進化だ。
「
「……さすがにギィが駒にしただけはある」
男に焦りは見えず、何かを渇望するように赤い瞳が揺れていた。
「——あれが手に入れば、余は……」
男は絞り出すような声で呟き、手のひらで目元を覆う。
今回の大戦はこちらが間もなく敗北するだろう。
予定よりもだいぶ早い終結であり、意義を満たしてはいない。
——だがそれでいい。
男の思考はもはや戦いの行く末ではなく、
「……すまないが、こちらへ来てもらう」
男は深く座り直し、さらなる
原初の悪魔の魔素なんてそりゃあ長く身体に残るだろうと思いまして、ギィさんの魔素の譲渡の結果はこんな感じになりました。そしてあの方を出したらなんだか一気にヤバそうな雰囲気。ご覧いただきありがとうございました!
20241102:リンの新たな固有スキルを修正
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。
リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?
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樹界移動を進化させる
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聖域創造を進化させる
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万象再生を進化させる
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深淵樹霊を進化させる
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「神智核」一択
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魔王覇気とか
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特に思いつかない