リンはゆっくりと覚醒していく意識の中で、賑やかな声を聞いた。
「……だからリンのそばにはアタシがいるから大丈夫よ!」
「ズルいのだ!ワタシも一緒にリンを守るぞ!」
「いやアンタ、ずっとあっちこっちで
「……う……ら、ラミリスだってリンが危険なときにリンのそばにいなかったのだろう!?」
「アタシはリンの進化の役に立ったもん!」
相変わらず仲が良いのか悪いのか、騒がしい二人にリンは少し笑いながらも、仲裁のために目を開けた。
「……二人とも、ケンカはダメだよ」
「「——リン!!」」
ミリムとラミリスは同時に叫び、リンの顔を覗き込んできた。
「大丈夫!?リン、気分悪くない?」
「心配したぞリン!ワタシがいるからもう安心していいのだ!」
「だからアンタは……まあいいわ。リン、起きれそう?」
リンは頷こうとして、動きを止めた。自分に膝を貸しながら、上から見下ろしてくる女性に目を瞬く。髪の色、瞳の色、顔立ち——間違いなくラミリスなのだが、自分の知るラミリスの姿ではなかった。
「……ラミリスさん、なんか大きいね」
「今そこ気にするの……?成長したのよ。ちょっと前にね」
「ああ、なるほど」
小さい彼女は可愛らしいが、成長した姿は美しい。リンは綺麗だねとふわりと微笑んだ。ラミリスはその言葉に照れたように笑い、アンタもねとリンの頭を撫でた。
ふと、ミリムがリンにぐっと顔を寄せてくる。
「……何、どうしたのミリム」
「離れなさいよ、リンが起きれないでしょ」
「おおー、見てみろラミリス。リンの目が……」
「ん?目?」
ラミリスもミリムに倣ってリンの顔を近くで眺めだす。あまりにも近い距離にリンは笑いそうになったが、ラミリスの顔が段々と険しくなっていっていることに気づいて首を傾げた。
「ラミリスさん、何かあった?」
「…………ギィのアホー!!」
「えっ!?」
突然のギィに対する罵倒にリンは身体をびくりとさせた。わなわなし出すラミリスとは真逆で、ミリムは愉快そうに笑っていた。
「ギィのせいだ絶対ギィのせいだあああ……アタシのリンなのにぃ〜……」
「よいではないか。綺麗だぞ?」
「リンはいつも綺麗よ!ああああ、アタシがずっとそばにいたら!!ギィのせいだ!」
何が何だかわからない。リンはただ困惑しながら、荒ぶるラミリスを宥めようと身体を起こす。
「あの、ラミリスさん。なんでギィさんに怒ってるの?」
「……ううう……ギィがアンタに魔素をあげたせいで進化に影響出た上にリンの目がああああ……」
「魔素……ああ、譲渡してもらったこと?あれは私が悪いんだし、ギィさんを責めなくても……」
嘆くように顔を手で覆っていたラミリスはくわっと勢いよく顔を上げてリンの両頬を掴んだ。
「わっ!?な、何、ラミリスさん……」
「アタシとお揃いの方が嬉しいわよね?そうよね?ギィとなんか絶対嫌でしょ?ね?」
「え?あ、あの……」
「今からでも遅くないかしら。いやでも、進化は終わってるし……いっそのこと目だけ取り替える?」
ぶつぶつと何やら恐ろしいことを呟き出したラミリス。リンはどうしたものかと、救いを求めるようにミリムに視線を移した。
「あの、ミリム、ラミリスさんどうしちゃったの?」
「ラミリスは拗ねてるだけなのだ。リンの目がギィとお揃いになったからな」
「は?」
意味がよくわからず、さらに首を傾げたリンに、ミリムは魔力感知で自分の姿を見てみるように言った。リンは言われるがままに魔力感知の視点を切り替える。
腰まで伸びた薄緑の髪、白い肌、そして——赤い瞳。
「んん!?」
「お、見れたか?ギィと同じ色なのだ!」
似合ってるぞ、と笑うミリムに対してラミリスが似合ってるけど似合って欲しくない……と恨み言のように呟く。リンは翡翠色の瞳が鮮やかな赤になっていることに戸惑いを隠せなかった。
「な、なんで……」
「はぁ……ギィから魔素をもらったんでしょ。ギィは原初の悪魔で、通常よりもずーっと強い魔素を持ってるの。それがアンタの体内に残り続けてて、進化のときに影響を及ぼして、そのせいで……はああ〜……ギィのアホ」
「……うーん、まあ別にいいか。見えるし」
「アタシは嫌だけどね!アンタがいいって言うなら仕方ないけど!」
ムスッとするラミリスだったが、リン自身が受け入れるのならば自分も受け入れざるを得なかった。
「なあなあ、リン。進化したのだろ?前よりずーっと強くなってるし、まさか覚醒したのか?」
「いや、えーっと、ちょっと待ってね」
リンは先ほどから耳にする「進化」という単語に心が躍りそうになった。たしか
そんな疑問に答えたのは
『
(あ、そうなんだ。よかった……)
『尚、
(……やっぱり私進化したの?え、あの、エリオンは?)
『——そなたの内にいる、主よ』
「うわっ」
頭の中に響く声は、確かに
いきなり声を上げたリンに、ラミリスが心配し、ミリムはキラキラとした目を向けてくる。
「え、どうしたのリン?」
「覚醒してたか?どうだ?」
「い、いや、覚醒はしてない……かな?(だよね、
『はい。
「ぶふぅ!」
たまらず吹き出したリン。いつの間にか
「だ、大丈夫?具合悪いの?」
「なんでもない……
「おお!
「……ギィのせいでね」
呟きながらまたも不機嫌になるラミリス。リンはラミリスが怒る理由がいまいちわからなかったが、ギィから分けられた魔素の影響で
「リン、それだけ強くなったのなら
「ええ……ちゃんと戦えるかわかんないよ……」
「大丈夫!もしものときは守ってやるのだ!」
「まったくもう……リンは天魔大戦の間は外に出ちゃダメなのよ!魔素の供給しなきゃいけないし、ここに留まって
「えー!」
不満そうに頬を膨らませるミリム。さすがに
(うーん、分身体を行かせようかな。それなら何かあっても大丈夫なはずだし。どう思う?えっと…
『分身体を向かわせることは有効な手段といえます。私の能力である
(……
『
(あー、なるほど。分身体の視界を使えばさらに広い範囲が把握できるのか)
『その通りです』
なんとまあすごい進化を遂げたものである。これは他にもとんでもないスキルを手に入れたに違いないと、リンは内心で苦笑する。
進化の結果をじっくり確認したいところではあるが、いつまた
『
(
『はい。特定の人物や状況の未来を映し出し、次に起こり得る可能性を映像として視認することができます。未来予測では断片的な予測しかできませんでしたが、進化により精度が飛躍的に向上しました』
(進化ってすごい……)
なんでも新しいスキルに加えて
(それじゃ
『はい。
パッと頭に流れてきたスキル諸々にリンの頭は一瞬停止した。
(——いや、多いから!っていうか物騒!何気に
まさかこんな形であの人からの魔素の譲渡による影響が出るとは思わなかった。リンの頭にはギィが笑顔で威圧してくる様子が浮かんできており、これは絶対に隠し通そうと誓った。
(はあー、使いこなすのに時間かかりそうだなぁ。そういえば、進化前に持ってたヤツはどうなったの?)
『各種スキル、耐性は再取得に成功しています。ですが、ユニークスキル
リンは絶句した。
しかし——。
(……ええ……と、まず同一化ないと私、外に行けないんじゃ……)
『いいえ。
(えっ、そうなの?本当?エリオン)
自分の中のもう一つの存在に問いかけると、すぐに返答があった。
『事実だ。我と主はすでに同一の存在となっている』
(同一……私の一部になったんだっけ。——あれ?じゃあこの
『我はすでにそなたの中へと移っている。この
青白い光が漂う空間の雰囲気は変わらないのに、抜け殻とはこれ如何に。
(自然を守るのに
『大元となる
(……えっと、魔素の供給は?ここ、
『主が存在する限り、主の魔素がそのまま自然を守り、豊かにし、各地の
それを聞いて、リンはホッとした。これまでと変わりない生活を送りながらでも、あの
そこで次に気になるのが自身の「運命」にかかわることだ。この
(……あの、魔素を完全に使い果たしたら……?やっぱり吸収?)
『我が主の一部となったことで、それが可能な
(そこは変わらないのね!まあ、魔素を使い果たさないように気をつけるよ)
進化により、一応は「運命」を回避できたらしい。リンは安堵しながらも、己の存在の重要性が増していることを自覚しだした。
——自然を、世界を守ることは変わらない。けれど守るべき
一層過酷な運命が待ち受けていそうではあるが、それでも諦めずに生き続けようと強く思うリンだった。
こんな感じで一旦は
20241102:リンの新たな固有スキルについて修正
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。
リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?
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樹界移動を進化させる
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聖域創造を進化させる
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万象再生を進化させる
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深淵樹霊を進化させる
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「神智核」一択
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魔王覇気とか
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特に思いつかない