転生したら木の中でした   作:猫田やなぎ

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第五十五話

思考加速の中でリンは進化した自身のことを一通り把握した。次は究極能力(アルティメットスキル)となった千視ノ神(プロフェティア)についても知っておこうと問いかける。

 

千視ノ神(プロフェティア)、今のあなたが出来ることを教えて。無限視界(むげんしかい)未来映写(みらいえいしゃ)以外には何があるの?)

『新たに加わった権能として、無限視界(むげんしかい)未来映写(みらいえいしゃ)以外では「運命収束(うんめいしゅうそく)」があります』

運命収束(うんめいしゅうそく)?)

『未来の分岐を操作し、最も望ましい結果を引き寄せる能力です。あらゆる可能性を選別し、成功に至る最適な道を選択することで、運命の流れを操ります』

 

必ずしも成功するわけではないらしいが、とんでもない能力だなとリンは思った。なんでも自分が進化後に眠りについたとき、千視ノ神(プロフェティア)は自身の権能や新たに獲得した固有スキルを使用して、危機に陥っていたドワルゴンとユーラザニアを守り、天使族(エンジェル)の侵攻を一時的にではあるが阻止したとのことだ。

 

(なるほどねえ……前からすごかったけど、さらにすごくなったね千視ノ神(プロフェティア)

『ありがとうこざいます。これからも、(マスター)をサポート出来るよう精進します』

(……なんか話し方変わった?)

 

おしゃべりになったというか、流暢になったような気がする。先見者(ミトオスモノ)はもっと淡々としていたはずだよなぁとぼんやり考えた。

 

『進化による影響です。お気に障りましたら改めます』

(いやいや、むしろ嬉しいから!もっと砕けてもいいよ?友達みたいにさ)

 

なんならタメ口でもいいくらいだと思い、リンは千視ノ神(プロフェティア)に仲良くなりたい意志を示す。だが千視ノ神(プロフェティア)はやや口調は柔らかくなったものの、それ以上の変化は見せなかった。

 

『私は(マスター)のために存在するため、友達など畏れ多いことです』

(えー……じゃあせめて(マスター)じゃなくて名前で呼んで?あ、エリオンも私のことリンって呼んで!お願い!)

『承知した。ではリン様と呼ばせてもらう』

 

あっさりと承諾するエリオン。リンの望みは全力で叶える姿勢がより際立ってきたように思う。

千視ノ神(プロフェティア)はしばらく黙り込んでいたが、主の望みならば仕方ないと諦めた。

 

『……承知いたしました。私も今後は(マスター)をリン様とお呼びいたします』

(やった!ありがとう二人とも!これからもよろしくね!)

『はい』

『よろしく頼む、リン様』

 

なんだかエリオンとも以前よりも距離が近くなったようで、リンは嬉しくなった。現実での数秒間で、リンは二人とより絆を深めるのだった。

 

 

 

 

 

——時を少し遡り、リンのユニークスキル先見者(ミトオスモノ)が進化を試みていた頃。

リンが遠隔で展開した真界領域(しんかいりょういき)が突如として消えたことで、ドワルゴンではかつてないほどの混乱が広がった。天使族(エンジェル)の猛攻が再び凄まじさを増し、ドワルゴンの戦士たちは応戦を続けながらも圧倒されていく。

 

正規軍の指揮官であるバーンは、自らの配下の状況を見つめながら冷静さを保とうとしていた。しかし、天使族(エンジェル)が迫る姿を見ると、心の奥底から不安が湧き上がってくるのを感じた。彼は戦略の再構築を急いでいるが、天使族(エンジェル)の数は予想を遥かに超えており、次々と繰り出される属性魔法によって、ドワルゴンの守備線が徐々に崩れていくのが見て取れた。

 

「全軍、後退せよ!後衛を守れ!」

 

バーンの命令が響き渡るが、混乱した戦士たちはその声をすぐに理解できず、指示の通りに行動する者は少なかった。彼らの目の前で、天使族(エンジェル)たちが空を飛び交い、魔法の矢が雨のように降り注いでいた。

 

一方、ドワルゴン王直属の秘密部隊、ドルフ率いる天翔騎士団(ペガサスナイツ)は、敵の動きを見極めながらも状況の厳しさを痛感していた。彼らは高い機動力を誇り、空中からの奇襲を行うことができる部隊だが、天使族(エンジェル)の数に圧倒され、次第に反撃の機会を失っていく。ドルフは自らの部隊を指揮し、仲間たちに連携を呼びかけながら必死に戦い続けていた。

 

「ドルフ、状況は?」

「厳しい、司令官。敵の数が多すぎる。このままでは……」

 

ドルフは冷静を装おうとしながらも、心中では焦りが募っていた。彼が感じる危機感は、彼自身だけでなく、ドワルゴン全体を包み込んでいく。

 

ドワルゴンは劣勢に陥りながらも、全力で戦っていたが、次第に敵の攻撃が加速してくる。天使族(エンジェル)たちは容赦なくドワルゴンの兵士を叩き潰し、戦場は悲鳴と怒号に満ち溢れていた。

 

「……ダメだ、これは……」

 

バーンは自らの無力さを感じながら、周囲の状況が悪化する様子を見守るしかなかった。

自分たちを守っていた結界が消失したことで、戦況は急速に変化し、ドワルゴンの未来は暗い影に包まれつつあった。彼は、目の前で仲間たちが倒れていく様を見ながら、何とかこの状況を打破する方法を模索し続けていた。

 

 

 

 

ドワルゴンの王宮にて、戦況が厳しさを増す中、ガゼル・ドワルゴは重い表情で外を見つめていた。戦場では、次々と倒れゆく仲間たちの姿が彼の心を重くする。部下の一人が急ぎ足で彼のもとへ駆け込んできた。

 

「陛下、緊急報告です!我々を守っていた結界が消失しました!」

 

その言葉にガゼルは一瞬固まり、内心で動揺が広がる。

 

まさか樹妖精王(ドリュアス・ロード)に何かあったのだろうか——。

リンの存在は、今後のドワルゴンにとって非常に大きな支えとなるはずであった。この戦いにおいても、彼女の力が無ければ戦況はさらに厳しいものとなるだろう。ガゼルはすぐさま部下に問いただす。

 

「あれは樹妖精王(ドリュアス・ロード)が張ったものだ。何か情報はあるか?」

樹妖精王(ドリュアス・ロード)……!?あ、いえ、大霊樹(ドリュアス)は遠方にあるため詳しいことは分かりませんが、この国を狙う天使族(エンジェル)の数が増加しており、結界が失われたことで、我々の劣勢が決定的になったようです」

 

ガゼルは、リンが危険にさらされているのではないかという不安が胸を締め付ける。自然と命を守るために自らの力を惜しまない彼女が、今何を感じているのか想像もつかない。

 

(……無事であればいいが)

 

その願いとは裏腹に、彼は戦況を立て直すことを優先しなければならなかった。彼は深く息を吐き、戦略を練り直すために思索を開始する。

 

「あの結界がなくなった以上、被害は免れん。だが、打って出るしかあるまい」

 

その時、彼の心に一つの決意が芽生えた。冷静さを保ちつつ、彼は指示を出すことにした。部下たちに状況を確認させ、迅速に連携を取らせる。周囲の士気を上げるためにも、彼自身が前に立って戦う必要があった。

 

「全軍、天使族(エンジェル)を迎撃せよ!防御を固め、反撃の準備をするのだ!」

 

彼の声は、部下たちに勇気を与え、戦士たちは一斉に動き出した。ガゼルは今、彼らが必要とする王であろうと心に誓い、決意を新たにして戦場へと向かっていく。

 

 

 

 

 

ユーラザニアの街は、騒然とした空気に包まれていた。突然消失した真界領域(しんかいりょういき)により、守りを失った街は、天使族(エンジェル)の襲撃を受ける危険にさらされていた。城壁を見上げる者たちは、不安と恐怖に満ちた表情で騒ぎ立っていた。

 

「カリオン様、どうしますか!?」

 

部下の獣人が慌ててカリオンに問いかける。カリオンは鋭い眼差しで周囲を見渡しながら、冷静に判断を下そうとしていた。

 

「全員、戦闘準備を整えろ!天使族(エンジェル)どもを叩き出してやれ!」

 

獣人たちは一斉に動き出し、カリオンの指示に従って戦闘の準備を進める。彼は心の中で不安を感じていたが、ここで動じてはならないという強い決意を持っていた。

 

天使族(エンジェル)の数は今はどれほどだ?」

 

彼の言葉に応えるように、フォビオが近づいてきた。

 

天使族(エンジェル)の数は尚も増加しているため正確な数は不明ですが、街の外から無数の気配が感じられます。早急に対策を講じる必要があります!」

 

カリオンはフォビオの言葉を受けて、状況を整理する。天使族(エンジェル)の力は未知数であり、奴らが一気に襲い掛かってくる可能性もある。彼は次の言葉を口にする。

 

「スフィア、天使族(エンジェル)の様子を見て来い」

 

スフィアは力強い視線を向けて、街の上空へ飛び上がる。周囲の景色を見渡しながら、彼女は鋭い感覚で敵の動きを探ろうとした。

 

天使族(エンジェル)が続々とこっちに向かって来ているぜ!」

「それならば、俺たちがやるしかないな。さあ、皆、各自の持ち場につけ!」

 

カリオンの声が街中に響く。その姿は威厳に満ち、部下たちの心を鼓舞した。

 

「俺たちは決して屈しない。今こそ獣人の力を見せる時だ!」

 

その言葉に続いて、獣人たちは士気を高め、武器を握りしめる。カリオンは彼らの姿に感動しながらも、これから待ち受ける戦いに対する緊張感を強く感じていた。

 

だが、その直後、空が暗くなり、天使族(エンジェル)が大空から襲いかかってくるのを見て、彼の心は一瞬で引き締まった。

 

「来たぞ!全員、構えろ!」

 

ユーラザニアはさらに激しい戦場へと変わっていった。カリオンは自らの力を振るい、獣人たちを鼓舞し、国を守るために立ち向かう覚悟を決めた。無数の矢が空を舞い、剣と魔法が交錯する中、彼は仲間たちと共に戦い抜くことを誓った。

 

ユーラザニアを襲う天使族(エンジェル)たちはその後も数を増し、獣人たちに容赦なく攻撃を仕掛けてくる。攻撃の音と共に、街が揺れ、恐怖の波が押し寄せる。しかし、カリオンと獣人たちは決して後退することはなかった。

 

 

 

 

——ドワルゴンとユーラザニアがそれぞれの場所で天使族(エンジェル)を迎え撃っていたそのとき、戦場の空気が変わった。

 

先ほど消失した結界とは違う、だがこれも自分たちを守ろうとするものであることを、彼らは理解した。

 

夥しい数の天使族(エンジェル)からの攻撃が何かによって防がれ、街中にまで入り込んでいた天使族(エンジェル)が消滅していく。なんだこれは、と誰もが思った。先の結界を張ったのが樹妖精王(ドリュアス・ロード)であることを知る者だけが、これが彼女による行いであることを察していた。

 

どんなスキルなのかは不明だが、さらに強固になった守りはどういうわけか戦闘により倒れた仲間たちを癒やしている。

 

——また助けられた。

 

だがこれで戦況はこちらが有利になる。なおも攻撃を仕掛けてくる天使族(エンジェル)へ己の武器を向けながら、カリオンとガゼルはかの存在に深く感謝した。




スフィアならぴょーんって飛んで把握するとかやりそう。ご覧いただきありがとうございました!

20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。

リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?

  • 樹界移動を進化させる
  • 聖域創造を進化させる
  • 万象再生を進化させる
  • 深淵樹霊を進化させる
  • 「神智核」一択
  • 魔王覇気とか
  • 特に思いつかない
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