互いの力をぶつけ合うリンの分身体とミリム。分身体はミリムに向けて、冷静な目で次の一手を見極めていた。
ミリムは嬉しそうに笑みを浮かべ、両手を構えて準備を整えた。
「なかなか強いのだ。もっと見せてほしいのだ!」
その無邪気な言葉に対して、分身体は何の反応も示さず、ただ命令に忠実に行動を続ける。
「……
分身体が低く呟くと、周囲の空間が一瞬にして異様な静寂に包まれる。分身体の手がわずかに振動し、黒紫色の波動が凝縮されていく。そしてその凝縮された暗黒の波が、分身体の手からミリムへ向けて解き放たれた。
「おおっ!すごいのだ!」
ミリムは興奮気味に叫び、迫り来る
しかし——
「うーん、ちょっと冷たかっただけなのだ!」
ミリムはその波動の中心で、まるで何事もなかったかのように立っていた。分身体の放った
「再攻撃を開始……」
再びミリムとの距離を詰め、分身体は高圧の魔素をまとった拳を振り下ろした。ミリムは楽しそうに受け止め、次々と繰り出される攻撃に合わせて回避したり、受け流したりしながら、まるで戯れるように戦いを続けた。ミリムにとっては遊びでしかないが、分身体にとっては本気の攻撃であり、生存のための戦いだった。
「もっとすごい技はないのか?ワタシはまだ全然遊び足りないのだ!」
ミリムは挑発するように笑い、分身体に向かって一瞬で距離を詰めて拳を放つ。
分身体は冷静に分析し、ミリムに対抗する手段を模索する。目の前の相手はただの敵ではない。圧倒的な力を持ちながらも、その力を全て解放せずにこちらの攻撃を受け流している。分身体は、このままでは本体の命令に従い続けられないと判断し、さらなる魔素を解放する。
「
再び闇の波動が凝縮され、分身体は両腕を掲げて周囲に無数の影の刃を出現させた。刃は一つ一つが「
「
分身体の合図と共に、無数の影の刃がミリムに向かって一斉に放たれた。空を切り裂くように飛ぶ黒紫色の刃が、まるで捕食者が獲物に襲いかかるかのごとく迫る。だが、ミリムは軽々と刃を避け、時には手で掴み、笑いながら次々と刃を無効化していく。
「全然効かないのだ!」
ミリムは再び突撃し、分身体に容赦のない一撃を加えた。例によって
——この応酬は一時間ほど続いた。ミリムは笑顔で楽しそうに攻撃し、分身体はその都度反撃を繰り返し、生き残るためにあらゆる手を尽くしてきた。しかし、分身体の魔素も徐々に消耗し始め、
そのとき、分身体の耳に、本体であるリンからの通信が届いた。
『……あれ?なんでミリムと戦ってるの?』
(対象から攻撃されため、敵と判断しました)
『いやミリムは敵じゃないから!戦い終わり!』
分身体はその指示を受け、すぐに動きを止め、
「おーい、もう終わりなのか?ちょっと残念なのだ」
「……ミリム、何で私の分身体を攻撃してたの?」
「うえっ!?」
ミリムは身体をびくりと硬直させた。
分身体の表情は変わらず冷静なままだというのに、口調が全然違う——というより本体からの言葉であることをミリムは瞬時に察して、しどろもどろになる。
「い、いや、あのな……ちょっと遊びたくてな。まだ
「ふうん、修行を楽しみにしてるんじゃなかったの?私が頑張って皆を守ろうとしてるのに、ミリムがそれを邪魔するんだ?」
「違う!違うのだ!そんなつもりじゃなかったのだ!本当に倒そうなんて思ってないぞ!」
わたわたしながらミリムは分身体のそばまできて、手を握ってきた。冷や汗を掻きながら慌てる様子はまるで悪巧みを看過された子供のようである。
「ちょっとだけ遊びたかったのだ。リンならワタシが攻撃しても平気だろうと思って、つい力が入ったが怪我をさせる気はまったくなかったのだ!本当だぞ?」
「いや攻撃してる時点で矛盾してるんだけど……まあ私も配慮が足りなかったらこんなことになったんだよね、ごめんねミリム」
「別にいいのだ!ワタシはまったく気にしてないぞ!……あの、もう怒ってないか?」
初めて会ったときに
リンはミリムの様子に仕方ない子だなあとまるで姉のような母のような心境になりつつ、ミリムの手を握り返す。
「もう怒ってないよ。これからは分身体であっても攻撃しないでね」
「しないのだ!約束するぞ!」
「うん、じゃあこの話はこれで終わり。ちょっとミリムにお願いがあるんだけど」
「うん?」
お願い?と首を傾げるミリム。
——もうあまり時間はないが、この位置からならルベリオスはそう遠くない。リンはミリムに、分身体と共にルベリオスへ行き、
「……お願いできるかな?」
「それくらいお安い御用なのだ!」
「ありがとう!もう時間がないから大急ぎでね!」
「任せておけ!」
自信満々に胸を張るミリムに若干の不安を覚えたが、それでも任せるしかない。リンはもう一度「お願いね」と伝え、分身体へ主導権を返した。
「お、分身体に戻ったのだ。話は聞いてたか?」
分身体は頷くだけだったが、ミリムはそれに満足そうに頷き返す。
「全速力で行くぞ!」
その瞬間、二人の姿は遥か遠く——ルベリオス方面へと移動した。
ルベリオスへの伝言をミリムと分身体に頼んだリンは、ファルムスをどうしようかと考えていた。
(
『
(まあそうなんだけどね、
もはやファルムス王国に対して信用など微塵もなく、少し忌々しいものを見るような目で思索に耽るリン。
(……ここのことは私がいるからどうにか出来るけど、ファルムス王国を放置してたら大勢死にそうだよね……)
前世は平凡に過ごし、今世では守られながら過ごし、死に対する耐性は皆無であるリンは、多少自分が危険になろうとも犠牲は最小限にしたいと考えていた。もっとも、ここから出るつもりはないため、この場で出来ることを模索する。
(んー、ここはやっぱりユーラザニアやドワルゴンみたいに
『リン様は現在四カ所に
(推奨できませんってことはやるしかないね!そうだよね?)
『………』
『……
(よしよし、ありがとう
リンは深く息を吐いた。
リンは
ご覧いただきありがとうございました!
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。
リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?
-
樹界移動を進化させる
-
聖域創造を進化させる
-
万象再生を進化させる
-
深淵樹霊を進化させる
-
「神智核」一択
-
魔王覇気とか
-
特に思いつかない