ラミリスとリンが話し込んでいると、ミリムが突然空気を破るように明るい声で話し始めた。
「そうだ!そういえばリンにワタシも魔素を与えたのだ!」
その一言に、ラミリスは目を見開き、リンのほうを勢いよく振り向いた。
「え!?リン、アンタまさか魔素を使いすぎて倒れたの!?」
「え、あ……う、うん、ちょっと魔素が切れそうになった時にミリムが魔素をくれたんだよね……」
リンが小さく答えると、ラミリスは深いため息をつきながら眉をひそめた。
「まったく、ほんっとリンは無茶ばっかり……ミリムもミリムで、もっとリンのこと考えなさいよ!アンタの魔素を与えたらこの子がどうなるかわかったもんじゃないわ!」
しかし、ミリムは意に介さず、むしろ誇らしげに胸を張って話を続ける。
「ふふん!ギィもラミリスもリンに魔素をあげたんだろ?ならワタシもリンに魔素を与えたから、お揃いなのだ!」
ラミリスはその言葉にムッとした表情で言い返す。
「だからってね!アンタ、私とリンは親友なの!そう簡単に張り合わないでよ!」
すると、ミリムも負けじと対抗心を燃やし、にらみ返した。
「ならばワタシもリンと親友なのだ!」
二人の間でぎゃあぎゃあと言い争いが始まり、リンはその様子に思わず苦笑した。しかし、ギィは頭を抱えている。
(リンは他の魔素の影響を受けやすいって言ったばかりだってのに、ミリムから魔素を……この先どうなっちまうんだか……)
リンに次々と関わり合いを持つ、強大な魔素を持つ者たちに少し呆れたようにため息をつくギィ。
しかし、そんな様子もお構いなしに、ラミリスとミリムは延々と言い争いを続けている。
そこで、リンはふと考え込んだ。
ギィとも友達になれたら、きっともっと賑やかで楽しくなるのではないか——そんな思いがふくらみ、意を決してギィに話しかけた。
「ね、ねえギィさん……友達になってくれない?」
ギィはその言葉に一瞬ぽかんとし、目を瞬かせる。
「は?」
リンは恥ずかしそうに顔を赤らめ、少しどもりながら勢いよく説明を始めた。
「いや、その……ラミリスさんやミリムとも友達だし、それにギィさんとルドラは友達なんだよね?それで……私もルドラとは友達になったから……ギィさんとも友達だと思うの!」
その理屈にギィは呆然とした後、過去の記憶がふと蘇った。かつて自分が、ヴェルダナーヴァとルドラが友なら、自分とも友だと思ったあの頃。思い出の中の懐かしさが胸に湧き、堪えきれずに吹き出してしまった。
「はははっ!お前、ホントに……!」
リンはギィが大笑いする様子にさらに顔を赤らめ、しょんぼりと肩を落とす。
「そんなに笑わなくても……」
ギィは笑い続けながら、ぽつりと呟いた。
「お前はホントに……おかしな奴だな」
やがて、仕方なさそうに肩をすくめ、微笑みを浮かべてリンの頭をわしゃわしゃと撫で回した。
「わかったわかった。まあ、お前のことはそれなりに気に入っているからな……友達ってことにしてやるよ」
リンは驚いた顔をしたが、次第に嬉しそうに笑い、ギィに感謝の言葉を告げた。
「ありがとう、ギィさん!」
その様子にラミリスがぷくーっと頬を膨らませ、リンに勢いよく抱きついてきた。
「リンの一番の友達はアタシよね!親友だしね!」
すると、今度はミリムが逆側からリンに抱きつき、ラミリスに対抗するように言い放った。
「ワタシも親友なのだ!そうだろう、リン!」
「リンはアタシのなんだから、すっこんでなさいよ、ミリム!」
「ワタシはリンが好きなのだ!リンが好きならば皆リンの友達なのだ!」
ミリムの無邪気な言葉に、リンは思わず微笑み、優しい声で答えた。
「ラミリスさんもミリムも、それにギィさんも大好きだよー」
その一言で、騒がしかった空間が一瞬和やかなものに変わり、みんなの顔に安らかな笑みが浮かんだ。リンは、自分が囲まれている温かい友達に感謝し、幸せな気持ちで満たされていた。
ルドラはリンの力によって、一時的にではあるが擦り減った魂の状態が回復したことを感じ、内から湧き上がるような活力を得ていた。長年、自身を苛んでいた魂の消耗に対する不安が少しだけ薄らいだことは、彼にとって驚きと喜びをもたらしていた。
その様子を見たヴェルグリンドは、何か思うところがある様子でルドラに近づき、ふと疑問を口にした。
「……リンが貴方に何かしたの?まるで別人みたいに元気じゃない」
ルドラは軽く笑って誤魔化し、あえて何も言わなかったが、ヴェルグリンドは彼の沈黙に違和感を覚えつつも、「まあ、貴方が元気ならそれでいいわ」と納得したように頷いた。そして少し考え込んでから、提案するように言葉を続けた。
「……貴方がそれほどリンを欲しているなら、私が彼女を攫ってきましょうか?」
その言葉に、ルドラは即座に首を横に振った。
「いや、そんな強硬手段を取れば彼女は決して協力しないだろう。リンは他者への信頼と絆を重んじる。その絆を裏切るような行動では、逆に彼女の意志を遠ざけることになる」
ヴェルグリンドは少し不服そうに眉をひそめつつも、納得したように頷いた。
「なら、彼女を支配してはどう?そうすれば、ずっと帝国のために彼女の力を使えるわ」
ルドラはその提案にも首を横に振り、静かに答えた。
「……リンが自分に纏わせている結界のような力を見たろう?あれを越えて支配するのは不可能だ。そして仮に支配できたとしても、彼女の力はその意志の強さに根差している。支配すれば、その意志も消えるだろう。それでは何の意味もない」
ヴェルグリンドは少し考え込み、理解したように頷いた。
「つまり、リンの自らの意志で協力させる他ないということね?」
ルドラも同意の頷きを返し、続けて語った。
「そうだ。だからこそ、彼女と協力関係を築くことが重要だ。彼女の信頼を得なければ、何も得られない」
ヴェルグリンドもその意図を理解し、少し離れた位置から彼を見つめた。
彼の言葉には嘘はないと信じているが、それでも彼がただ帝国の強化のためにリンを必要としているとは限らないのではないか……。そんな疑念が心に浮かぶ。
(やはりルドラには、帝国の強化以外の理由でもリンが必要なのではないの?)
そう考えたヴェルグリンドは、リンをこちら側に繋ぎ止めるためには、彼女の世界を守りたいという優しさに付け込むのが最善ではないかと思い至る。彼女の持つ強い意志と優しさを逆手に取り、帝国が彼女の望む世界の一部であることを示せば、彼女は自ら進んで協力するのではないか——。
一方、ルドラもまたヴェルグリンドとは異なる考えを巡らせていた。
彼はリンが「力尽きれば
(どうにかして、リンを帝国の側に留めておく方法はないだろうか……)
ルドラは、自分の魂の状態を回復させ続けるために、リンの存在が必須であることを認識していた。彼女の力を利用するだけでなく、信頼と協力を築き、共に歩んでいくための絆が必要であると、心の底から感じていた。
ヴェルグリンドもまた、ルドラの様子を観察し、彼がリンに対して特別な感情を抱いているのではないかという疑念を抱きつつ、冷静に考えを巡らせていた。
ミリムとラミリスが騒がしく言い争っている中、ギィはふと「リンとルドラが友達になった」という話が引っかかっていた。
(ルドラが友情なんて築ける男かよ…?)
ギィは過去のルドラを思い出す。かつては「勇者」として理想を掲げ、純粋な思いで人々を守っていた——とは言うものの、無鉄砲で計画性もなく、行き当たりばったりの行動が多かった男だ。戦闘においても「勝てば正義!」とばかりにセコイ戦法で乗り切ることもあり、子供っぽさすら感じさせる無邪気さがあった。だが、今のルドラは繰り返される転生によって魂がすり減り、かつての理想や熱意は失われている。今の彼が執着しているのは、もはやギィとの「ゲーム」に勝つことだけ。冷徹で計算高い男だ。
(そんな奴が、リンのような無鉄砲なじゃじゃ馬と友情なんて築けるか?)
ギィはラミリスとミリムの口喧嘩を微笑ましそうに見守るリンに目を向けて、少し間を置いて声をかけた。
「なぁ、リン」
リンはギィに呼びかけられ、軽く肩をすくめたようにそちらを向く。
「何?」
ギィはそのまま彼女の瞳をじっと見つめて言った。
「……ルドラと何があったんだ?今のアイツはそんな簡単に友達になれるような奴じゃねえだろう」
その言葉に、リンの表情が一瞬で強張り、視線をそらして俯いた。そして、ぽつりと小さな声で言った。
「本当に、友達になったの」
だが、その曖昧な態度や動揺した様子から、それが偽りであることは明白だった。ギィは思わずため息をつき、厳しい目つきでリンに言い放つ。
「嘘をつくならもっとうまくやれ。お前は顔に出過ぎだ」
リンはその指摘にしゅんと肩を落とし、しばらく口を噤んでいたが、やがて偽ることを諦めたように、ギィにすべてを正直に話し始めた。
「……ギィさんに黙って帝国に協力するのは、正直すごく怖くて、だからルドラと友人になったっていう体で協力関係になったとギィさんに話してもいいか、ルドラに聞いたの。そしたら……ルドラも了承してくれて」
ギィはリンの言葉を聞いて、なるほど、と納得したように小さく頷いた。
リンの顔にはまだ何か隠しているような影が見えたが、ギィはこれ以上問い詰めても彼女が口を開くことはないだろうと判断した。
「まあ、お前みたいなアホがルドラのそばにいれば、アイツも変わるかもな」
「アホはひどいよ…」
「お前みたいに大人しくせず、あっちこっち引っ掻き回すのはアホって言うんだよ」
リンは二の句が告げなくなり、ギィを見上げて困惑するような顔を浮かべた。ギィは微笑みながら、やや懐かしそうに語りかける。
「本来のルドラはお前に似てるからな。意外と気が合うかもしれないぜ」
その言葉に、リンは一瞬驚いた表情を浮かべ、やがて目を瞬いてから、にっこりと嬉しそうに笑みを浮かべた。
「そうなれたら嬉しいなぁ」
リンの純粋な笑みに、ギィも思わず微笑み返したが、リンの次の一言には思わず眉をひそめた。
「……ルドラが本来のルドラに戻れるように、私、頑張るよ」
ギィだけが聞き取れるほどの小さな呟きだったが、そこには決意と優しさが混じっていた。
(またコイツ、何かやらかそうとしてやがるな…)
ギィは心の中で苦笑し呆れながらも、ほんの少し期待するような思いを抱いた。
天魔大戦が突如終結し、
しかし、そんな不安が漂う中で、リンが張ってくれていた強力な結界が各地を守り、特にユーラザニア、ドワルゴン、そしてファルムスは比較的軽微な被害で済んだ。ルベリオスもまた、戦いの激しさに比例して被害は少なくなかったが、全滅は免れたことから、リンを知る者たちは安堵しつつもリンへの感謝と心配を胸に秘めていた。
ユーラザニアの王カリオンは、自国の守護に尽力してくれたリンの存在を改めて強く意識していた。彼は
「……リン、無事なのか?」
カリオンは眉間に皺を寄せ、結界が消えた瞬間を思い返した。天魔大戦が終わった後もすぐに動けるように準備を整えていたが、リンが無事かどうかがわからない以上、胸のざわつきは収まらなかった。
「リンが何かあったのなら…放ってはおけないな」
彼はすぐさま使者を派遣し、リンの所在を確認するための手配を始めた。頼もしい守護者として、そして友として、彼はリンの無事を何よりも望んでいた。
ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴもまた、リンの結界に守られていた一人である。結界が突然消えたことで、戦場から帰還したばかりのガゼルは、リンの身を案じていた。
「リンには世話になりっぱなしだったな…あの結界があってこそ、我らは持ちこたえられた」
彼は感謝を口にしながらも、同時に不安を隠しきれなかった。リンが危険な状態に陥っていないか、無事に帰還したのか——彼には確認する術がなかったが、その状況に心が重くなっていた。
「ドワルゴンの力をもってしても救えなかったとあれば、面目が立たん…」
彼は部下たちに指示を出し、リンの安否を確かめるべく行動を開始した。戦火を乗り越えた彼の胸には、リンへの強い思いがあふれていた。
ファルムス王国の魔導師ラーゼンは、天魔大戦の最中、ファルムスを救ってくれたリンに感謝の念を抱いていた。彼は、リンが自らの力で結界を張り、王国を守ってくれたことに驚愕と共に畏敬の念を抱いていたが、その結界が消えたことに違和感を覚えていた。
「……彼女に何かあったとすれば、それは一大事だ」
ラーゼンは
「ファルムスを守ってくれた恩人を、見捨てることはできん」
ラーゼンの中で、リンへの信頼と敬意がますます強くなっていた。
ルベリオスでは、ルミナス、そしてロイとルイが、リンの結界が消えたことで心配を募らせていた。彼らは自国を守ってくれたリンに深い感謝を抱いていたが、その恩人であるリンの無事が確認できないことが、彼らの胸を締めつけていた。
ルイは結界が消えた瞬間を思い出し、戦いで疲弊した身体を支えながら呟いた。
「……無事でいるといいのだが」
ルミナスもまた、深い憂いを隠しきれなかった。彼女の瞳には、リンに対する心配が浮かんでいた。
「我が民を守ってくれたのじゃから、礼を言わねばならん。それなのに…」
彼女はロイに指示を出し、リンの所在を確認するための情報収集を行わせた。そして、彼女自身もまた、その強大な力をもってリンの所在を探るために、なんとかして念話を送ろうと準備を始めた。
天魔大戦の終結とともに各地で感謝と不安が交錯し、リンの安否を確かめようと、ユーラザニアのカリオン、ドワルゴンのガゼル、ファルムスのラーゼン、そしてルベリオスのルミナスたちが動き出していた。
ギィさんとも友達だよ!拒否権はない!
ご覧いただきありがとうございました!
20241116:魔素と魔力を書き分けるため修正。
リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?
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樹界移動を進化させる
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聖域創造を進化させる
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万象再生を進化させる
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深淵樹霊を進化させる
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「神智核」一択
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魔王覇気とか
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特に思いつかない