天魔大戦が終結し、約束通り各国に説明を行うべく動き出したリン。その最初の訪問先はルベリオスだった。主従関係でもないのに念話を使えるルミナスに「さすがルミナス様だなぁ」と感心しつつ、リンは自分から念話できないかと試してみたが、何度やっても成功しない。仕方なく、
「……誰もいない?」
ひっそりとした空間に、リンは首をかしげた。ここでどうしようかと考えていた矢先、廊下の向こうから足音が聞こえてきた。その主は、魔王ロイ・ヴァレンタインだった。
「リン……!?」
リンの姿を目にしたロイは一瞬驚き、すぐさまツカツカとこちらに近寄ってきた。その鋭い視線にリンは思わずたじろぎながらも、控えめに頷いて無事を伝える。
「無事だという報告は受けていたが……」
ロイは安堵したように息を吐きつつ、少し逡巡してから口を開いた。
「……ルベリオスの土地を強化してくれたこと、感謝する。おかげで
その言葉にリンは、天魔大戦中の光景を思い出す。ルベリオスの兵たちが次々と倒れる姿、中級の
「お礼なんて言わないでください……もっと早く結界を張っていれば、あんなことにはならなかったんです」
震える声でそう告げるリンに、ロイは眉をひそめた。少しの間を置いて、静かに言葉を紡ぐ。
「お前がどう思おうと、ルベリオスはお前に感謝している。それだけは覚えておけ」
その真摯な言葉に、リンは反論することもできず、ただ俯いて黙り込む。そんな彼女の様子に、今度は別の声が響いた。
「妾の国を救っておいて、感謝を受け取れぬとはな」
いつの間にか現れたのは、この国の支配者ルミナス・バレンタインだった。彼女はすっと距離を詰めると、リンを力強く抱きしめた。
「そなたが無事で本当によかった」
突然の抱擁にリンは目を瞬かせたが、そっとルミナスを抱き返す。
「ルミナス様もご無事で何よりです……」
その言葉に、ルミナスはリンを抱きしめる手を緩め、微笑みながら彼女の肩に手を置いた。
「妾の国を守ってくれたこと、心より感謝する。土地を強化し、結界を張ってくれたおかげで、このルベリオスはこうして無事でいられるのじゃ」
改めてそう礼を述べるルミナスに、リンは小さく首を振りながら「感謝なんて……」としょんぼりと呟いた。ポツポツと言葉を続ける。
「もっと早くに結界を張っていれば、あんな被害は出なかったのに……。考えが足りなかった私のせいで……」
言葉の端々に滲む後悔と自責。だが、ルミナスとロイは揃って呆れたような表情を浮かべた。
「そもそも、そなたの役割は魔素を供給して自然を守ることじゃ。それ以外の土地の強化など、本来はそなたの役目ではない。国の防衛も各国が自ら行うべきことじゃ」
そう語るルミナスに、ロイも頷く。
「だが、お前は役目を超えた働きをしてくれた。それに感謝こそすれ、責める者など誰もいない」
ロイの言葉に同意するように、ルミナスがリンに優しい目を向ける。
「感謝しておるぞ、リン」
その言葉に、リンの目から大粒の涙がこぼれた。感謝される資格などないと思っていた彼女の胸に、その言葉は深く響いた。気づけば、ルミナスにしがみつき、声を上げて泣いていた。
泣き疲れたリンが落ち着いた後、ルミナスが微笑む。
「会いに来てくれて嬉しいぞ」
リンは照れくさそうに頬を赤らめる。
「約束しましたから。それに、天魔大戦の終結について説明しなきゃいけないので」
「……そう言えばルイからそのような報告があったな」
ルミナスがルイを呼び出し、程なくして現れたルイもまたリンの無事を喜んだ。ルミナス、ロイ、ルイの視線を集める中、リンは天魔大戦終結の経緯を説明する。
「……天魔大戦を引き起こしていたのは、東の帝国の皇帝、ルドラでした」
その名前にルミナスたちは目を見開いた。続けるリンの声は、どこか力強かった。
「彼に協力する代わりに、天魔大戦を二度と起こさないと約束させました。今後は私がルドラを見張り、約束を守らせます」
一同、しばし沈黙。そして、やがてルミナスが愉快そうに笑い出した。
「まさか、このような形で天魔大戦が終わるとは……」
ロイとルイもつられて笑いを堪えきれず、リンは首をかしげる。
「……なぜ笑われてるんでしょう?」
ルミナスが肩を揺らしながらリンに答える。
「そなたの行動は予想外すぎるのじゃ。じゃが、信じよう。妾はそなたを信じる」
ロイとルイもそれに頷き、リンは安心したように微笑む。
「ありがとうございます。ルドラが約束を守るよう、ちゃんと見張りますので、帝国に手を出すのはやめてくださいね」
「妾がそんな面倒なことをすると思うか? そなたがそう言うなら、尚更手を出さぬ。そなたの選んだ道を尊重しよう」
ルミナスのその言葉に、リンは深々と頭を下げた。そして、温かい空気の中で、リンの覚悟はまた一つ深まったのだった。
リンは聖神殿を後にし、ルベリオスの街を歩いていた。復興の途上にある街には、まだ戦の爪痕が生々しく残されていた。
崩れた建物、負傷した人々、活気の失われた空気。目を覆いたくなるような状況だったが、リンは目を逸らさなかった。
「まずは怪我人を……」
リンは
血に染まった包帯で身体をぐるぐる巻きにされた者。かろうじて息をしている者。四肢を失い、茫然自失とする者。すすり泣きがあちこちから響き、場を覆う絶望的な空気は、リンの胸を締め付けた。
「……こんなことに……」
リンは呟き、震える手を握りしめた。
もっと早くに
後悔や自責が再び胸に込み上げたが、すぐに頭を振って気持ちを切り替える。悔やんでいる暇があるなら、今は一人でも多くの人を救わなくてはならない。
「
リンが力を解放すると、辺りに暖かな緑色の光が広がった。光は負傷者たちを優しく包み込み、壊れた身体を再生させていく。欠損していた四肢が再び形を成し、瀕死だった者が目を開ける。人々の苦痛の声は、次第に驚きと歓喜の声へと変わっていった。
「……治った?」
「俺の腕が……戻った……」
呆然とする彼らに、リンは満足そうに微笑み、一礼してその場を後にした。背中越しに聞こえてくる感謝の声や賞賛の言葉に、リンは少し照れくさそうに微笑む。
負傷者の治療を終えたリンは、崩れた街並みを見つめながら
(
『可能です。ただし広範囲の再生や同時多発的な使用は推奨しません。対象を限定して使用してください』
目の前にある崩壊した建物に向かい、手を差し出す。
「……
光が建物を包み込み、倒壊していた屋根や壁が再び形を成していく。見事に元通りになった建物を前に、リンはほっと安堵の息をついた。
「よし、これなら……」
その後もリンは街を巡りながら、倒壊した建物を次々に再生させていった。作業を続ける中、遠巻きにこちらを見てくる人々の視線に気づく。
「……目立ちすぎたかな」
リンは苦笑しつつも、人々の畏敬の念に満ちた視線に気づき、少しだけ肩をすぼめた。それでも足を止めることなく、彼女は街の復興を続けた。
数日間をかけて街の復興をほぼ終えたリンは、高い場所からルベリオスの街を見下ろした。
「……これで、大丈夫そうだな」
達成感とともに、心の中に広がるのは安堵だった。リンは最後にルミナスに挨拶をして街を出ることを決め、ルミナスがいる奥の院へと向かおうとしたが、1人では奥の院には入れないかもしれない。
どうしようかと考えるリンに
『リン様は既に
「えっ、マジで!?」
その便利すぎる新事実に目を輝かせたリンは、早速聖神殿の奥の院の
瞬時に移動し、いつものように
「……本当に便利になったなぁ」
その場でこっそり喜びを噛み締めていたリンだが、いつの間にか近づいてきたルミナスに気づき、びくっと肩を跳ねさせた。
「そなた、ご機嫌そうじゃな。何かあったのか?」
微笑むルミナスに、リンは少し照れながら進化の話を伝える。
「実は……天魔大戦の最中に進化して、
キラキラとした目で興奮気味に話すリンに、ルミナスは「進化」「完全融合」という単語に驚きを隠せない。
やがて、ルミナスはくすくすと笑いながら言った。
「そなたはまことに規格外じゃな」
「規格外?」
「“すごい”ということじゃ。妾が褒めてやろう」
そう言って、ルミナスはリンの頭を優しく撫でる。その仕草に、リンは照れくさそうにしながらも嬉しそうに微笑み、次の国に向かうことをルミナスに告げた。
「そうか……それでは仕方あるまい。そなたのやりたいことを止めることはしたくないからの」
残念そうにしながらも、ルミナスは優しい微笑みを浮かべる。
「また、いつでも来るがよいぞ」
「はい! ありがとうございました!」
ルミナスに深々と頭を下げたリンは、
リンが去った後、ルベリオスの住民たちは
天魔大戦後の話をしていきますぞ!ちなみにまだまだ原作開始前の話は続きます。オリジナル満載にはなりますがお付き合いいただけますと幸いです。
リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?
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樹界移動を進化させる
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聖域創造を進化させる
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万象再生を進化させる
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深淵樹霊を進化させる
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「神智核」一択
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魔王覇気とか
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特に思いつかない