転生したら木の中でした   作:猫田やなぎ

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第七十一話

リンは樹界移動(じゅかいいどう)を用い、ユーラザニア王宮近くの大霊樹(ドリュアス)から姿を現した。風に揺れる白の衣が神秘的な雰囲気を漂わせ、王宮を警備する兵士たちは突然の出現に驚き、武器を構えた。

 

「何者だ!?」

 

リンが一歩前に進み、落ち着いた声で答える。

 

「すみません。私はリンといいます。カリオン様にお会いしたいのですが、お願いできますか?」

 

その名を聞いた兵士たちは一瞬固まり、次の瞬間には地面に跪いて敬意を表した。

 

「……リン様。お待ちください。すぐに確認いたします!」

 

騒ぎに気づいたのか、そこへ颯爽と現れたのは三獣士の一人、「黄蛇角」のアルビスだった。彼女はリンを見るなり柔らかな笑みを浮かべ、すぐに事情を察したようだった。

 

「リン様、いらっしゃいましたか。カリオン様にお会いしたいと?」

 

リンが頷くと、アルビスは迷いなく道を開け、扉の奥を指した。

 

「どうぞ、すぐにご案内いたします。カリオン様から、リン様がいらっしゃったらすぐに通すよう仰せつかっております」

「そんな……ありがとうございます」

 

少し照れながら、リンはアルビスに頭を下げた。道中、兵士たちが敬意をもって見送る中、リンはアルビスの案内で王宮へと進んだ。

 

 

 

 

 

通されたのは玉座の間ではなく、落ち着いた応接室のような部屋だった。カリオンが到着するまで、リンはソファに腰を掛けるでもなく、落ち着かない様子で室内をそわそわと歩き回っていた。

 

扉が開く音がして、カリオンが現れる。

 

「リン!」

 

その声に振り向いたリンは、カリオンが彼女を見てホッとしたように笑うのを目にした。

 

「無事だったか……良かった。報告は受けていたが、直接顔を見ないことには安心できなくてな」

「カリオン様……ありがとうございます」

 

リンは恐縮しつつも、深々と頭を下げた。そしてまず、ドワルゴンで語ったことと同じように、事前に天使族(エンジェル)の再度侵攻のタイミングが分かっていたのに報告しなかったことを謝罪する。

 

「報告がなかった? そうか、そんなことがあったのか」

 

カリオンは驚いたような表情を見せたが、次の瞬間には豪快に笑った。

 

「気にするな。リンが結界を張ってくれたおかげで、俺たちはこうして生きている。それだけで十分だ」

「でも……再侵攻について報告していれば、被害を減らせたかもしれません」

「——リン」

 

真剣な眼差しで名前を呼ばれ、リンは思わず口を閉じた。

 

「過ぎたことを悔やんでも仕方ない。お前がやれることをやってくれたのは、俺がよく分かっている。それ以上のことはないさ」

 

その言葉に、リンの目が揺れる。自分がやれること——それを考えすぎたせいで結果的に迷惑をかけたのではと胸を痛めていたが、カリオンの寛大な言葉に救われた気がした。

 

 

 

 

 

カリオンがリンを促すように座ると、彼の背後には三獣士が控えていた。黄蛇角のアルビス、黒豹牙のフォビオ、白虎爪のスフィア。それぞれが静かにリンを見守っている。

 

リンは改めて話を切り出した。

 

「実は……天魔大戦を起こしていたのは、東の帝国の皇帝ルドラでした」

 

その言葉に、一同の目が見開かれる。

 

「ルドラだと? 本当なのか?」

「はい。ルドラに会って、話をしました。そして、私が協力する代わりに、もう二度と天魔大戦を起こさないと約束させました」

 

続けて、リンは今後自分がルドラを見張り、約束を守らせるつもりであること、帝国にはどうか手を出さないでほしいと頼み込む。

 

「ふむ……お前がそこまで言うなら信じたいが、正直、簡単には納得できんな」

「そうですよね……」

 

沈黙が流れる中、カリオンが重い口を開いた。

 

「分かった。お前の頼みならば帝国には手を出さない。だが、覚えておけよ。お前が1人で抱え込む必要はない。この国はお前に救われた。その恩を返すために、俺たちはどんなことでも力になろう」

 

その真摯な言葉に、リンは目を潤ませた。

 

「ありがとうございます。でも……自分のやりたいことに他の人を巻き込みたくはありません。どうしようもなくなったら頼るかもしれませんが、なるべく自分でなんとかします」

「本当に頑固だな、お前は」

 

カリオンはため息をつき、次の瞬間には朗らかに笑った。

 

「だが、それもお前らしいな」

 

そう言った後、思い出したように声を上げる。

 

「そうだ、お前に紹介したい奴らがいる」

 

カリオンが合図すると、三獣士が一歩前に出てきた。黄蛇角のアルビス、黒豹牙のフォビオ、白虎爪のスフィア——三者三様の個性が際立つ彼らが、それぞれに深々と頭を下げる。

 

「こいつらは俺がいないときのサポート役だ。必要ならいくらでもこき使ってやれ」

「いやいや、そんなわけには……」

「気にするな」

 

三獣士もそれぞれに「いつでもお力になります」と恭順の意を示し、ようやくリンも恐縮しながらも笑顔で応じた。

 

 

 

 

 

カリオンとの謁見を終えたリンは、王宮を後にして街の復興に向かう。まずは怪我人の治療だと考え、重傷者たちが集められている場所を目指した。

 

そこでは、無数の負傷者が息も絶え絶えに横たわっていた。その光景に、リンの心は締め付けられるようだった。

 

リンは中央に立つと、緑色の輝きを放つ万象再生(ばんしょうさいせい)を使用した。その光が負傷者たちを包み込み、瞬く間に傷を癒していく。

 

「これは……奇跡だ……」

「ありがとうございます、リン様……!」

 

人々が次々とリンに感謝の言葉を述べるが、彼女は首を振った。

 

「どうかお気になさらず……私は、ただやれることをやっているだけですから」

 

その後もリンは街の外れに向かい、壊れた建物や森の修復を続けた。魔素の消費は激しかったが、彼女の心は満たされていた。

 

 

 

 

 

数日後、復興を終えたリンは再び王宮を訪れ、カリオンに別れを告げる。三獣士に見送られながら、カリオンが最後に言った。

 

「またいつでも来いよ、救世主様」

 

その言葉に、リンは微笑みながら頷いた。

 

「はい、それではまた」

 

樹界移動(じゅかいいどう)で姿を消したリンを見送り、カリオンと三獣士は顔を見合わせて笑った。

 

「とんでもないヤツだな……まさか天魔大戦を終わらせるなんてな」

「ですが、あの強さで何もかも1人で抱え込みそうなのが気がかりです」

「それがリン様なのですよ」

 

感心と心配の入り混じった彼らの思いは、街に広がる聖魔樹帝(ルフレス)の名と共に、ユーラザニアの人々の中で語り継がれていった。

 

 

 

 

『——魔素の過剰使用が確認されました』

 

ユーラザニアから離れた大霊樹(ドリュアス)に転移した後、近隣の土地を修復し終わったところで、千視ノ神(プロフェティア)からの警告があり、リンは苦笑する。

 

「そりゃそうか。これだけ使ってたらそうなるよね」

 

まだまだ行きたい場所はあるのだが、倒れては意味がない。

リンはひとまずは大霊樹(ドリュアス)に戻って休むことにして、その場で樹界移動(じゅかいいどう)を発動する。

フッと景色が慣れ親しんだ空間に切り替わってリンは改めて便利になった樹界移動(じゅかいいどう)に感謝した。

 

「いつかどこにでも転移できたらいいなぁ。出口が大霊樹(ドリュアス)のみってわかりやすいけど不便だし」

 

頑張れば樹界移動(じゅかいいどう)も進化できるはず。

そんなことを考えながら大霊樹(ドリュアス)の実を頬張り、魔素を回復していくリン。

 

「……次はファルムスかな」

 

あの時ここに使者を寄越した国、そして自分が聖域創造(せいいきそうぞう)を展開した国の一つ。油断ならない国ではあるが、ここで諸々を報告しなかったらとんでもないことになる気がしていた。

ここはラーゼンの様子を伺いがてら天魔大戦終結の説明をするとしようと決めるリンだが、一悶着ありそうな予感が止まらなかった。

リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?

  • 樹界移動を進化させる
  • 聖域創造を進化させる
  • 万象再生を進化させる
  • 深淵樹霊を進化させる
  • 「神智核」一択
  • 魔王覇気とか
  • 特に思いつかない
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