転生したら木の中でした   作:猫田やなぎ

77 / 97
天魔大戦前。ルミナス様とのデート話。


二人だけの夜、そして朝

夜の帳が降り、ルベリオスの街は静寂に包まれていた。しかし、ルミナスとリンにとって、この夜は特別なものだった。

 

「——リン。妾とデートをするのがそんなに嬉しいのか?」

 

ルミナスが微笑むように言う。彼女の目には輝くような光が宿っており、その美しさは周囲の闇をも引き寄せるかのようだった。だが、その姿に隠された神々しさを誇示することなく、あくまでもリンの前では優しく、そして少し照れくさそうだ。

 

「え、そりゃやっぱりお願いした通りにデート出来るので、もう嬉しいとしか言えませんよ!」

 

リンは少し照れながら答えた。デートの約束をしたのはいいが、最初に言い出した時の衝動的な「デートしてください!」という一言が、今では少し恥ずかしく思えてきた。でも、心の奥底では確かに楽しみで仕方がなかった。

 

「ふふ、そうか。ならばしっかり楽しませてもらおう。妾に任せるがよい」

 

ルミナスはにっこりと笑って、リンの手を取った。その笑顔が、リンの心をどこまでも温かくしてくれる。

 

ルミナスは人々の目に触れるべきではない。故に、二人のデートは夜に行われることに決まった。月明かりの下、少し神秘的な雰囲気が漂う。

 

「どこか行きたいところはあるか?」

 

ルミナスが質問を投げかける。彼女の視線は、リンに優しく向けられていたが、その裏に隠された深い知恵と力を感じさせる。

 

リンはしばらく考えてから答える。

 

「うーん、どこか夜景がきれいな場所がいいです」

「夜景か。ならば、妾がとっておきの場所を知っておるぞ」

 

ルミナスは少し考えてから、すっと指を空に向けた。すると、ふわりと光が集まり、その光が二人を包み込むように輝いた。

 

「おお、なんかすごい感じになってきた……!」

 

リンが目を見開いて驚くと、ルミナスはにっこりと笑った。

 

「今から見せるのは、少し特別な場所じゃ」

 

その言葉にリンは胸を高鳴らせながら、ルミナスの後ろを追いかけるように歩き出した。

 

しばらく歩くと、二人は高台に辿り着いた。そこから見える景色は、言葉では表現しきれないほど美しかった。月光に照らされた街並み、遠くに見える灯りが星のように輝いている。まるで、二人だけの世界が広がっているかのようだった。

 

「ここが……」

 

リンが息を呑んで見上げると、ルミナスが少し嬉しそうに肩をすくめた。

 

「どうじゃ?気に入ったか?」

 

リンはその美しさに心を奪われ、思わず声を上げる。

 

「すごいです!本当に、こんな場所があるなんて……ありがとうございます、ルミナス様!」

「ふふ、そなたに喜んでもらえて何よりじゃ」

 

ルミナスは少し照れくさそうに微笑んだ。そして、リンの手をしっかりと握り、また歩き出す。

 

二人はそのまま高台で星を眺めながら、言葉を交わし、時間を過ごした。どんな景色よりも、隣にいるルミナスが一番美しく感じられる。

 

時折、夜風が二人の髪を揺らし、静かな時間が流れる。

しかし、静けさの中に潜む不安の兆しが、リンの心をわずかに占めていた。

 

「あの、ルミナス様……」

 

リンがぽつりと呼びかけると、ルミナスはすぐに彼女の顔を見た。その視線には優しさが宿っていたが、どこか鋭いものも感じ取れる。

 

「どうした?なにか気になることでもあるのか?」

 

リンは少し考えてから、静かに答える。

 

「最近、色々なことが続いていて、頭がごちゃごちゃしてるんです。天魔大戦のことも、もっと私にできることがあるんじゃないかって……」

 

ルミナスはしばらく黙ってリンの顔を見つめた後、ふっと微笑みながら言った。

 

「リン、妾にできることがあるならば、何でも言ってみるがよい。いつでもそなたの力になろう」

 

その言葉に、リンは少し驚く。強い意志と力を持っているルミナスが、こんな風に気遣ってくれることが嬉しかった。

 

「ルミナス様……ありがとうございます」

 

リンが感謝の気持ちを込めて言うと、ルミナスは照れたように目をそらしながらも、リンに向けて手を差し伸べた。

 

「じゃが、今は妾とのデートじゃ。時間を忘れるくらいに楽しもうぞ」

 

リンはその手をしっかりと握り返すと、二人は再び夜の街を歩き始めた。何も言わずに並んで歩くその姿は、まるで時間が止まったかのような、穏やかな瞬間だった。

 

しばらく歩くと、ルミナスがふと足を止めた。

 

「リン、目を閉じろ」

「え?どうしたんですか?」

 

リンは不安そうに尋ねたが、ルミナスは微笑んだままで指示を続ける。

 

「目を閉じるのじゃ、ほれ」

 

リンは不安げながらも、言われた通りに目を閉じた。ほんの数秒が経ち、何も起きないかと思ったその瞬間、何かが彼女の体を包み込んだ。

 

「……うわ!」

 

リンが目を開けると、目の前に広がっていたのは、美しい光景だった。空一面に煌めく光が舞い降り、星々が輝く幻想的な世界が広がっていた。まるで天国にでもいるかのような、素晴らしい景色だった。

 

「これは……!」

 

リンは言葉を失い、ただその美しさに圧倒される。

 

「これは妾が作ったものじゃ。見せたのはそなたが初めてじゃぞ」

 

ルミナスの言葉にリンは驚き、そして感動の気持ちがこみ上げてきた。

 

「こんな素敵な光景、どうして私だけに?」

「そなたには少しでも心を癒す瞬間が必要じゃと思っての」

 

その言葉に、リンはまたもや感動し、思わず涙が浮かんだ。

 

「ルミナス様、ありがとうございます。本当に嬉しいです……」

 

ルミナスは優しくリンの手を取って、静かにその手を握った。

 

「そなたが笑顔でいられるように、妾はいつでもそなたの味方でいよう」

 

夜空に浮かぶ星々を見上げながら、リンは深く息を吸い込んだ。彼女の中で、少しずつ確かな決意が芽生えてきた。

 

「私は、守りたいです。この世界を、みんなを、そして大切な場所を」

 

ルミナスはその言葉を聞いて、ただ静かに頷いた。

 

「その気持ちがあれば、必ずうまくいくぞ。大丈夫じゃ」

「はい、ありがとうございます」

 

リンはルミナスの手をしっかりと握り返す。今の自分にできることをしっかりと見つけ、どんな困難が待っていようとも、決して諦めないという強い意志を胸に刻みながら。

 

「でも、ちょっとだけ……まだこの景色を楽しんでいたいです」

 

リンがそう言うと、ルミナスは軽く笑って答えた。

 

「ならば、遠慮せずに楽しむがよい」

 

二人はしばらくその幻想的な夜空を見上げ、心が穏やかに満たされるひとときを過ごした。まだ先の見えない戦いが待っていることは分かっている。だが、今この瞬間だけは、リンとルミナスの間にある絆が、何よりも大きな力になることを信じていた。

 

 

 

 

 

幻想的な夜空の下、静かな時間を過ごしていたリンとルミナス。

 

ルミナスは、ふとリンの髪に手を伸ばした。その動きに驚いたリンが振り向くと、ルミナスは「少し乱れているだけじゃ」と微笑む。だが、そのまま指先でリンの髪をそっと梳くように撫で始めた。

 

「ルミナス様……?」

「美しい髪じゃの。月の光に照らされると尚更美しい。妾の国の装飾にも劣らぬ輝きじゃ」

 

ルミナスの声には穏やかさと、どこか名状しがたい親しみが込められている。だがその親密さにリンは少し戸惑いを覚えた。

 

(なんだろう、この距離感……ルミナス様、いつもこんなに……触れてきたっけ?)

 

そう思う間にも、ルミナスはさりげなく距離を詰め、リンの肩に手を置いたり、気が付けば身体を寄せてきたりと、スキンシップが増えていく。

 

「リン、疲れておらぬか?妾が支えてやろうか?」

「え、えっと、大丈夫です……ルミナス様こそ、お疲れじゃないですか?」

「妾はそなたと共にいるだけで癒されるゆえ、疲れなど感じぬ」

 

そう言いながら、ルミナスはまるで甘えるようにリンに寄り添った。

 

やがてデートも終盤に差し掛かった頃、ルミナスはふと思いついたように提案する。

 

「リン、妾の寝所で朝まで語り合わぬか?」

「……えっ?」

 

突然の誘いに、リンは目を瞬かせる。言葉そのものには特に問題はないはずだが、ルミナスの微笑みと、その視線に妙な圧を感じ、背筋に冷たいものが走った。

 

(なんだろう、この感じ……いや、でもルミナス様だし、きっと深い意味はないよね?)

 

「え、えっと……おしゃべり、ですか?」

「その通りじゃ。そなたと語り合いたいと思っただけじゃぞ?」

 

ルミナスの声は至極穏やかで、どこか楽しげですらある。それを聞いて、リンは僅かに肩の力を抜いた。

 

「わかりました。ぜひお邪魔させていただきます」

 

そう答えると、ルミナスは嬉しそうに微笑み、リンの手を取った。

 

「では、行こうかの」

 

ルミナスの寝所は、以前、土地の強化のために入った奥の院の大霊樹(ドリュアス)がある場所よりもさらに奥にあった。

 

そこに足を踏み入れたリンは、その荘厳さに目を見張った。部屋全体が夜空のような深い色合いでまとめられ、煌めく星のような装飾が散りばめられている。神聖さと美しさが融合した空間は、まさにルミナスそのものを象徴しているかのようだった。

 

「すごく綺麗です……!」

「ふふ、気に入ってもらえたなら嬉しいのう。ここでそなたと過ごす時間が妾には何よりの喜びじゃ」

 

ルミナスはベッドに腰掛け、リンを促すように手を伸ばす。

 

「さあ、隣に来るがよい」

「は、はい……」

 

リンは少し緊張しながらルミナスの隣に腰を下ろした。二人はしばらく他愛もない話をし、穏やかな時間が流れる。

 

だが、ルミナスの手がそっとリンの髪に触れた瞬間、再びリンの心はざわめき出す。

 

「そなたの髪は、本当に美しい。ずっと触れていたいくらいじゃ」

「え、えっと……ありがとうございます……?」

 

ルミナスは満足そうに微笑むと、今度はリンの肩を抱き寄せた。その距離の近さに、リンは動揺を隠せない。

 

「ルミナス様、ちょっと近いような……」

「遠慮する必要はないぞ。そなたと共にいるだけで、妾は心が満たされるのじゃ」

 

そう言いながら、ルミナスはリンの首筋に顔を埋めるように近づき、その香りを楽しむように深く息を吸い込む。

 

「え、えっと、ルミナス様……?」

 

リンの声は僅かに震えていたが、ルミナスはそんな彼女を愛おしそうに抱きしめる。

 

「安心せよ、そなたを傷つける気など毛頭ない。妾はただ……そなたを感じていたいのじゃ」

 

そう言いながら、ルミナスはリンの頬にそっとキスをした。そして、甘えるようにリンの首筋を軽く噛む。

 

「!? え、血を吸われる流れ……!?」

 

リンは驚いて硬直するが、ルミナスはくすりと笑いながら首を振った。

 

「血など吸わぬよ。ただ、妾の少しばかりの愛情表現じゃ」

 

そう言うと、ルミナスはリンをさらにしっかりと抱きしめ、その耳元で囁く。

 

「そなたが可愛すぎて、つい……な」

「……ルミナス様って、意外と甘えん坊なんですね……」

 

リンは赤面しながらも、もう抗うことをやめ、ルミナスに身を委ねることにした。

 

やがて、語らいが続く中で、リンの意識は徐々に薄れていった。

 

「リン、眠いのかえ?」

「……大丈夫です……でも……」

 

返事をする間もなく、リンはルミナスの腕の中でそのまま眠りに落ちた。ルミナスは少し残念そうにため息をつきながらも、腕の中で穏やかに眠るリンの顔をじっと見つめる。

 

「……全く、可愛い奴じゃのう」

 

ルミナスはそっとリンの髪を撫でながら、その寝顔を堪能する。やがて満足したのか、彼女も静かに目を閉じた。

 

夜は深まり、二人の間には穏やかな静寂が広がっていた。

 

 

 

 

 

微睡みの中で、リンは僅かな違和感を覚えた。温かい何かが自分を包み込んでいる。その心地よさにもう少し眠っていたいという気持ちが勝ちかけたが、どうにも視線を感じる。

 

(……ん?)

 

ゆっくりと目を開けると、視界いっぱいにルミナスの顔が飛び込んできた。

 

「——っ!?!?」

 

リンは一瞬で目を見開き、身体を起こそうとしたが、動かない。それもそのはず、ルミナスがしっかりと抱きしめたままの体勢だった。

 

「おはよう、リン」

 

朝の光に照らされたルミナスは微笑んでいた。美しいという言葉では表せないほどの気品に満ちた笑みだが、今のリンにとってはそれどころではない。

 

「え、えええ!? ルミナス様、なんでそんな近くに——!?」

「そなたが妾の腕の中で眠ったからじゃろう?」

 

ルミナスはあくまで冷静だが、リンはその落ち着きが信じられなかった。

 

「そ、それはそうですけど……そんなに近いっていうか、なんか……恥ずかしいというか……!」

「ふふ、そんなに慌てることはなかろう。そなたが可愛い寝顔を見せてくれたから、つい見惚れていただけじゃ」

「見惚れて……!」

 

リンの顔が一気に赤く染まる。さらにその反応を楽しむかのように、ルミナスは笑みを深めた。

 

「そなたのその反応もまた、妾には愛らしい。もっと見ていたい気もするが、朝は忙しいゆえ、そろそろ起きねばなるまい」

 

ルミナスはリンをそっと放すと、自らもベッドから起き上がる。その優雅な動作に、リンは改めて彼女の格好良さを感じつつも、気恥ずかしさから目をそらした。

 

身支度を整え、聖神殿の奥の院の一室で朝食を共にする二人。ルミナスは上品に紅茶を嗜みながらリンを見つめている。その視線に気付いたリンは、頬を赤くしつつも、何か話題を振らねばと思案した。

 

「えっと、ルミナス様。昨日はデートにお付き合いいただいてありがとうございました」

「礼には及ばぬぞ。妾も楽しかったゆえな」

「そ、それならよかったです……あの、また……」

 

リンがそう口にした瞬間、ルミナスの目が輝きを増した。

 

「ほほう。また誘うと申すのか? 妾としてはいつでも歓迎じゃが?」

「い、いや、そういうわけじゃなくて! あの、気が向いたら、というか……!」

「ふふ、そなたは本当に面白いのう。妾を誘うなど恐れ多いと感じぬところが、そなたらしい」

 

ルミナスの笑い声に、リンはさらに顔を赤くして俯いた。それでも彼女の心は穏やかで、この短い時間でも十分に満たされているのを感じていた。

 

朝食を終え、いよいよ帰る準備を整えたリンは、ルミナスと共に聖神殿の奥にある大霊樹(ドリュアス)の前へと向かった。

 

「さて、そなたも忙しい身ゆえ、長く引き止めるわけにはいかぬのう」

「はい。でも、本当に楽しかったです。ありがとうございました、ルミナス様」

 

リンが軽く頭を下げると、ルミナスは満足そうに微笑み、そっとリンの頭を撫でた。

 

「妾こそ感謝しておるぞ、リン。そなたとの時間は妾にとって特別なものとなった」

 

その言葉に、リンの胸が温かくなった。しかし次の瞬間、ルミナスの言葉が彼女を慌てさせた。

 

「——そなたが望むなら、いつでも妾の寝所に戻ってくるがよい」

「えっ!? いや、それはちょっと……!」

「ふふ、冗談じゃ。しかし、いつでも訪ねてくるがよいぞ。そなたがここに来ることを、妾は心から待ち望んでおるゆえな」

 

ルミナスの真剣な瞳に、リンは照れつつも頷いた。

 

「……はい。また来ますね」

 

そう言って、リンは樹界移動(じゅかいいどう)の準備を始める。大霊樹(ドリュアス)を通じて魔素が流れ、周囲の空気が揺れる中、リンはもう一度ルミナスに向き直った。

 

「それでは、また……!」

「また会おうぞ、リン」

 

ルミナスの穏やかな微笑みに見送られ、リンは自らの住まう大霊樹(ドリュアス)へと転移していった。

 

ルミナスは消えていくリンの姿を見送りながら、静かに呟いた。

 

「……妾の可愛いリンよ。またすぐに会いに来るがよい。次はさらに楽しい時間を過ごさせてやろうぞ」

 

その顔には満ち足りた笑みが浮かび、まるで次の計画を練るかのように、寝所へと戻っていった。

 

一方、自身が住まう大霊樹(ドリュアス)の中で息をつくリンは、ルミナスとの特別な時間を思い出しながら小さく笑みを浮かべていた。

 

(ルミナス様って、本当に不思議な人……でも、また会いたいな)

 

そうして静かに新たな一日が始まる。




なんだか雰囲気がアレなので「R-15」タグを追加しました。ルミナス様夢じゃないぞ!

リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?

  • 樹界移動を進化させる
  • 聖域創造を進化させる
  • 万象再生を進化させる
  • 深淵樹霊を進化させる
  • 「神智核」一択
  • 魔王覇気とか
  • 特に思いつかない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。