第七十五話:その手が導くのは、理想か滅びか
ルドラが天魔大戦を終わらせたという知らせが、帝国の中枢を揺るがせていた。天魔大戦は、帝国の拡張政策の一環であり、ルドラの悲願でもある世界統一のための重要な一手だった。それが終結したという事実に、帝国陣営の主要な者たちは一堂に会し、その真意を確かめるべくルドラを待っていた。
広間の中央に座するルドラの左側には、ヴェルグリンドが静かに佇み、その場にはフェルドウェイ、グラディム、マルコ、ナジム、ガルシア、ミナザ、グラニートらが集い、さらにダムラダとガードナーの姿もあった。
重苦しい空気が漂う中、ルドラは穏やかな表情で口を開いた。
「……確かに、天魔大戦は終わらせた。今後
その一言に場がざわめく。最初に口を開いたのはフェルドウェイだった。
「ルドラ様、そうなると今後我々の方針に大きな変更が必要になります。
その問いに、ルドラは静かに微笑んだ。
「問題ない。リンが協力する限り、魔王側の戦力がどんなものであろうとも、我らが優位に立てる」
その名前を聞いた瞬間、場に再びざわめきが広がる。
「リン……ですか?」
ダムラダが静かに問いかけた。その声音には疑念が込められていたが、ルドラはそれに構わず説明を続けた。
「
その説明に、一同は目を見開いた。ヴェルグリンドも静かに口を開く。
「確かに、彼女の力はただの再生能力ではないわ。自然の調和を保つという役割に基づき、生命そのものを強化する力を持っている。これを活用すれば、帝国のさらなる発展が見込めるでしょう」
「しかし……」
フェルドウェイが口を挟む。
「その協力を得るためにどうなさるおつもりですか?
その言葉に、ルドラは小さく頷いた。
「確かに、彼女は中立の立場を崩すつもりはない。だからこそ、我らはまず彼女の信頼を得る必要がある」
「具体的には?」
グラディムが短く問いかけた。ルドラは穏やかに微笑みながら答える。
「彼女の『自然を守る』という役割に協力するのだ。守るために動くという姿勢を見せれば、彼女は心を開くだろう。そして、力を貸してくれる可能性が高まる」
その言葉に、ヴェルグリンドが同意するように頷いた。
「そうね。まずは信頼を得る。それが最優先」
「なるほど……」
一同が納得した様子を見せる中で、ダムラダはふと目を伏せ、過去の記憶を思い返していた。
(ルドラ様……。あなたはかつて、私にこう仰いましたね)
──「勅令だ。俺が俺じゃなくなったら、お前の手で俺を殺してくれ」──
それは、ルドラが転生を繰り返す中で避けられない運命として受け入れていることだった。その時を想定し、ダムラダは生涯をかけてその使命を果たす覚悟を決めていた。
だが、今。
(リン……。彼女の持つ再生の力を使えば、ルドラ様の魂と自我を維持できるかもしれない)
そう考えた瞬間、ダムラダの胸には一筋の希望と疑念が交錯した。
(もしかすると、ルドラ様もそれを期待して、彼女の要求を呑んだのではないか……?)
しかし、どちらにせよ結論は変わらない。ルドラの望むことならば、それを叶えるために全力を尽くす。それがダムラダの揺るぎない信念だった。
(リンを帝国側に引き入れるためには……信頼を得るしかない。まずはその策を練らねばなるまい)
一方で、フェルドウェイは苛立ちを隠せなかった。
(厄介な存在が現れたものだ……)
フェルドウェイは、ルドラの持つ
(もし
フェルドウェイは冷静に考えを巡らせた。ルドラに、リンを支配下に置くよう進言する案も浮かんだが、それが不可能であることはルドラの行動が示している。
(つまり、彼女には支配が通じない……。ならば、どうする?)
フェルドウェイは深い思考の末、一つの結論に至った。
(
フェルドウェイの目が鋭く光る。
(いずれにせよ、今後の彼女との関わり次第だな)
一通りの意見が交わされ、ルドラが会議を締めくくる。
「まずはリンとの関係を築くことが最優先だ。必要があれば、お前たち一人ひとりに彼女との接触を任せることもあるだろう」
その言葉に、一同は静かに頷き、それぞれの役割を胸に刻んだ。こうして、帝国は新たな戦略の下、動き始めるのだった。
帝国宮殿の地下深く、誰も足を踏み入れることを許されない聖域があった。そこには、帝国の守りの一つである
広大な空間に広がる静寂。薄暗い中で、巨大な
「……こうしていると、不思議と心が安らぐな」
ルドラはぼんやりと
ルドラが思考の海に沈んでいたその時、突然
「……なんだ?」
僅かな光の波紋が広がると同時に、樹の幹から人影が飛び出してきた。そして——。
「きゃっ!」
短い悲鳴が響き、その勢いのまま人影がルドラにぶつかる。
「……!」
ルドラは咄嗟に腕を広げ、その体を受け止めた。突然の出来事に目を丸くするルドラ。その腕の中で顔を上げたのは、小柄な少女だった。
「リン……?」
「……え、ルドラ?」
状況を把握するまで一瞬の沈黙が流れた後、リンは顔を赤くして飛び退いた。
「ご、ごめんなさい! つい
慌てて頭を下げるリン。その様子に、ルドラは困惑するよりもむしろ微笑を浮かべた。
「いや、怪我はないか?」
「う、うん……あ、もしかして怒ってる?」
「怒ってはいない」
「本当? 本当に本当?」
自分の行動が失礼だったのではないかと不安そうにしているリンを見て、ルドラは少し面白そうに口元を緩めた。
「それで、わざわざここに現れたのには何か用があるのだろう?」
ルドラが促すと、リンは慌てた様子で頷き、要件を話し始めた。
「えっと……その……少し回復したから、様子見も兼ねて伝えておきたいことがあって」
「ふむ。続けてくれ」
「えっとね、この前
その説明に、ルドラは少し驚きの色を見せた。
「そんなことができるのか……便利な力だな」
「うん、私が
ルドラはその提案に頷き、言葉を続けた。
「ありがたい話だ。ただ、余が直接連絡することよりも、配下の者たちがその役目を担うことになるだろう」
「配下かぁ……会えたりする? 一応、顔合わせくらいはしておきたいんだけど」
その言葉に、ルドラは即座に頷いた。
「もちろんだ。では、すぐに会わせるとしよう」
身を翻したルドラだったが、その背中にリンの声が飛んだ。
「ま、待って! その前に、ルドラの魂の回復を先にするから!」
そう言うと、リンはルドラの手をそっと取った。
リンの掌から暖かな光が溢れ、ルドラの身体に流れ込んでいく。
(……本当に躊躇がないな)
ルドラは、何の躊躇いもなく自分のために力を使うリンを見て、小さく息をついた。その胸中には、彼女への感謝とともに、ある確信が芽生え始めていた。
(この存在が、余の理想を実現するためには不可欠だ……)
曖昧になりかけていた世界統一と恒久平和への思い。それが再び明確な目標として浮かび上がり、ルドラは無意識にリンの手を握り返していた。
「……?」
その行動に気づいたリンは目を瞬かせたが、特に何も言わず、目の前の治癒に集中した。
やがて光が収まり、リンが手を離そうとすると、ルドラがぽつりと呟いた。
「助かった。感謝する」
「……まあ、協力するって言ったからこれくらいはするよ」
あくまで大したことではないと言わんばかりの態度のリンに、ルドラは思わず苦笑を浮かべた。
「さて、配下に会いたいと言ったな。案内しよう」
そう言ったルドラだったが、気づけば未だに繋がれたままの手。リンが困惑した表情でちらりと見上げたが、ルドラは何事もなかったかのようにそのままリンの手を引いて歩き始めた。
「え、ちょ、手……?」
「気にするな。行くぞ」
ルドラの堂々とした態度に、リンは少しだけ戸惑いながらも、その手を引かれるまま後をついていく。
その後、ルドラの配下たちとの顔合わせがどのようなものになるのか、リンは少しだけ不安と期待を胸に抱きながら、静かに歩みを進めた。
キャラの口調がいまいちわからないので願望込みでいきます。フェルドウェイがリンに振り回されるところを見たいものですね。
リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?
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樹界移動を進化させる
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聖域創造を進化させる
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万象再生を進化させる
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深淵樹霊を進化させる
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「神智核」一択
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魔王覇気とか
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特に思いつかない