リンとヴェルグリンドは、再びドレスに関する話題で盛り上がっていた。最も、楽しそうなのはヴェルグリンドの方であり、リンはドレスを着なければならないことに終始渋い顔をしている。
「ああああ……明日が近づいてくる……ギィさんのお迎え……」
頭を抱えるリンと対照的に、ヴェルグリンドは愉快そうに笑う。
「ギィのお迎えってことは白氷宮に行くの?」
「うん……そうなると思う。前もそこでドレスに着替えたし」
「いいわね。明日、私も白氷宮に行こうかしら?」
突然ヴェルグリンドが提案すると、リンは驚いて顔を上げた。
「えっ、なんで?」
「だって、リンが着るドレスを選ぶんでしょう?私も手伝いたいのよ」
リンは目を瞬かせながら、ふと考え込む。
「でも、ギィさんがいるし。私がドレスを着ることはギィさんからの命令だから、たぶんギィさんが選ぶんじゃないかなぁ。もしかしたらミザリーさんかレインさんかもだけど……」
ヴェルグリンドは楽しげに笑いながら、さらに言葉を続けた。
「そうね。ああでも、ルドラのそばをあまり離れたくないのよね。ルドラも誘おうかしら?」
「ルドラを?ドレス選びに?」
ヴェルグリンドの微笑みは変わらないままだったが、リンは思わず頭の中でぐるぐると考えを巡らせる。ルドラとギィが行っている「ゲーム」のことを思い出し、ルドラを白氷宮に誘ったとしてギィがどう思うのか、さらに言えば二人を会わせて問題ないのか疑問が湧いてきた。
(まあ、ギィさんとルドラは友人だから、会うのに問題はないよね?でも、今は敵対関係にあるし……どうなんだろ)
リンは心の中で迷いながらも、ヴェルグリンドがすっかりルドラを誘うつもりでいるのを見て、ますます混乱してきた。
「ねえリン、私とルドラも明日白氷宮に行ってもいいかしら?」
再度ヴェルグリンドが尋ねてきた。リンは首を捻りながら答えた。
「うーん、私はかまわないんだけど、ギィさんがどう思うかなあ…ちょっと聞いてみるから待ってくれる?」
「ええ、お願いね」
ギィとの連絡手段である通信用の水晶はリンが住まう
リンの別身体は少し戸惑った様子でありながらも了承し、手元の通信用の水晶でギィに連絡を取る。
『なんだ、リン?』
ギィの姿が水晶に映し出され、リンの別身体が少し遠慮がちに、そして慎重に話し始めた。
「ヴェルグリンドさんからのお願いなんだけど……明日、ルドラとヴェルグリンドさんも白氷宮に行ってもいいかな?」
ギィは少し沈黙し、やがて不思議そうに言った。
『……何のために来るんだ?』
「ルドラは本当に行くかはわからないけど、ヴェルグリンドさんは、私が着るドレスを選びたいんだって」
『なんだそりゃ。ま、来たいなら好きにしろ。戦うわけじゃねーしな』
リンの別身体はほっと胸を撫で下ろし、感謝の言葉を述べてから、通信を終了させた。
「ギィさんが「来たいなら好きにしろ」って言ってくれたよ」
別身体からの報告を受けたリンはヴェルグリンドに伝え、ヴェルグリンドは満足そうに微笑んだ。
「それじゃあ、私もルドラに話してくるわね」
ヴェルグリンドは部屋を出て行った。残されたリンは、内心で感じていたドキドキを抑えきれなかった。
(なんかすごいことになってきた気がする……)
その頃、ルドラは自身の執務室で仕事に集中していた。ふと、扉がノックされる音が聞こえ、入ってきたのはヴェルグリンドだった。
「ルドラ、明日、一緒に白氷宮に行きましょうよ」
ヴェルグリンドからの唐突な誘いに、ルドラは目を瞬きながら、少し戸惑った。
「いきなりどうした。白氷宮に何かあるのか?」
「リンが明日、
「リンが
ルドラは驚き、少し目を見開いた。どうやらギィからの指示で参加することになったのだろう。議題は天魔大戦の終結についてであろうと、ルドラは推測を巡らせる。
「ねえルドラ、一緒にリンのドレスを選びましょう?きっと楽しいわよ。それにリンと仲良くなれるかもしれないし、そうすれば彼女からの信頼も得られやすくなるはずよ」
一緒に過ごす時間を増やすことでリンからの信頼を得られやすくするという目的の中に、リンを着飾りたいというヴェルグリンドの思いが透けて見え、ルドラは苦笑した。
「いや、そうかもしれないが……さすがにギィが許さないだろう」
「ギィにはリンから確認を取って、許可をもらってるから平気よ」
「……ギィが許したのか。まあ、戦いに行くわけではないからルールを破るわけではないが…それにしても意外だな」
「リンはギィのお気に入りのようよ?リンが間に入らなかったらこうはならなかったでしょうね」
「ギィの気に入りか……なるほどな」
「ふふ、どれだけ気に入っているのかは明日わかるわ。楽しくなりそうね」
ルドラは、心の中で少し心配しながらも、ギィの許可を得たなら問題はないだろうと、明日白氷宮に向かうことを決めた。
白氷宮の一室で、ギィは豪奢な椅子に深く腰掛け、指を軽く組みながら、明日の予定について考え込んでいた。
「ルドラとヴェルグリンドが来るか……」
その声には微かな困惑と期待が混ざっていた。数千年ぶりにルドラと再会することになる。あの理想に燃えた勇者が、どのような姿で現れるのか——正直、少し楽しみだった。
だが同時に、最後に会ったときのルドラの冷徹な姿が脳裏をよぎる。あの頃のルドラは理想を見失い、他者を顧みることのない危うさを感じさせていた。果たして明日はどんな展開になるのか……。
「何か考え込んでいるみたいね?」
ふわりとした優雅な声が響き、ギィが顔を上げると、そこにはヴェルザードが立っていた。白氷竜らしい冷たさと美しさを持つ彼女は、ギィの様子を伺うように少し首を傾げている。
「大したことじゃねぇよ。ただ、明日ルドラとヴェルグリンドが白氷宮に来るって話でな」
「……また唐突ね。戦うの?」
「いや、それはない。直接戦うことはしないルールだしな。ルドラの野郎は何しにくんのかわかんねえが、ヴェルグリンドはリンが着るドレスを選びに来るんだとさ」
「まあ」
ヴェルザードは驚きつつも納得したように頷いた。
「リンが関わると予想外のことばかりだな。頭が痛くなりそうだが……まあ、面白くはある」
ギィは肩をすくめながら笑った。そして考えるだけ無駄だと判断し、深く息を吐く。
ヴェルザードは「そう」と短く答えたが、その瞳には楽しげな光が宿っていた。
「久しぶりにヴェルグリンドちゃんに会えるわね。それに、一緒にリンを着飾ることも楽しみだわ」
ギィはヴェルザードが意外とこういったことを楽しむ性格であることを知っていたが、改めてその様子を見て、内心少し笑ってしまった。
そんな二人をよそに、ミザリーとレインはせっせとリンのためのドレスや装飾品を用意していた。
「どうせなら彼女を華やかにしたいわね。リンには特別なものを用意しなきゃ」
ミザリーが楽しげに言うと、レインがすかさず反論する。
「華やかもいいけど、彼女の小柄な体型には縦ラインのスッキリしたドレスが合うと思う」
「でも、脚を見せればさらに魅力的じゃない?」
「いやいや、髪型も重要よ。結い上げて可愛らしさを引き立てるのがいいわ」
二人は意見を交わしながら次々と案を出していく。その熱量に引き込まれるように、ヴェルザードも加わった。
「リンは華やかでもいいけど、動きやすさも考慮すべきね。彼女らしさを損なわないようにしたいものだわ」
「……それは確かに」
三人は真剣に議論を交わしながら、ドレスの細部を詰めていく。
そんな様子を眺めながら、ギィは小さく笑い、ぽつりと呟いた。
「……ホントに好かれやすいな、アイツ」
ギィの瞳には、リンの特異な魅力に対する理解と納得が宿っていた。リンは自然を守る存在であり、この世界にとって不可欠な存在だ。そのため、「世界」そのものがリンを守ろうとし、彼女が愛される流れを作り出している。
だが、それは心を操るわけでも、洗脳するわけでもない。あくまで愛される環境を整えるだけであり、その中で他者の心を掴むかどうかはリン自身の魅力と行動次第だ。
もしリンが間違えば、嫌悪の対象となることもあるだろう。それでも、リンはその自然体のまま、多くの人々を惹きつけていく。
ギィ自身も、少なからずリンを気に入っている。それは、彼女の存在が興味を引き、刺激を与えるからだ。だが、その感情は予定調和ではない。ギィは自分の意志でリンを認めているのだ。
(これからもアイツは傷つくことがあるだろう。あらゆる負の感情にさらされて、壊れるかもしれない。それでも世界は、リンを手放さないし、逃がさない)
それが
(アイツは気づいているか?
ギィは重く息を吐き、椅子に深く沈んだ。そして、静かに決意を固める。
(だからこそ、オレが守ってやる。調停者として……そして友人としてな)
そう思いながら、ギィは窓の外に広がる白い世界を見つめ続けていた。
ルールに反しない(直接戦わない)程度に交流させていく予定です。
リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?
-
樹界移動を進化させる
-
聖域創造を進化させる
-
万象再生を進化させる
-
深淵樹霊を進化させる
-
「神智核」一択
-
魔王覇気とか
-
特に思いつかない