転生したら木の中でした   作:猫田やなぎ

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第八十七話

白氷宮の別室——そこでは、リンを中心に女性陣が熱気に包まれた戦場を繰り広げていた。

 

鏡の前に座らされ、まるで人形のように扱われるリンは、眉間に皺を寄せ、不満を隠そうともしない。彼女を取り囲むのは、ヴェルザード、ヴェルグリンド、ミザリー、そしてレインという豪華な顔ぶれだった。

 

「ちょっと、やめて!何度も言うけど、ドレスとか要らない!普段の服で十分だって!」

 

リンは必死に抵抗するものの、ヴェルザードの冷静な一言がその声を遮る。

 

「ダメよ。魔王たちの宴(ワルプルギス)に参加するならそれなりの恰好でないと。それにあなたの“普段の服”なんて、この場では失礼極まりないわ。ここは私の白氷宮。最高の装いで場を彩るのが礼儀よ」

 

その言葉を補強するかのように、ヴェルグリンドが微笑みながら続ける。

 

「そうよリン。このような機会に美しく着飾らないのはもったいないわ。さあ、もっと自信を持ちなさい」

「持ちたくないんだけどな!」

 

リンが声を荒げても、女性陣は全く意に介さない。むしろ、彼女の反応を楽しんでいるようだった。

 

まず始まったのはドレス選びだった。

ミザリーが手に持った純白のドレスを広げながら提案する。

 

「このデザインなんてどう?肩を出す形で少し大胆だけれど、リンに似合うと思うわ」

「却下。そんなん着るくらいならこの場から逃げる!」

 

リンがそう叫んだ瞬間、レインが素早く後ろから押さえ込む。

 

「逃げようとしても無駄よ、リン。ヴェルザード様の領域内で逃げられると思ってるの?」

「くっ……離せ!」

 

段々と口調を荒くしながら必死にもがくリンだったが、ヴェルザードが手を一振りすると、部屋全体が冷気で包まれた。逃げ場は完全に塞がれた状態だった。

 

「さあ、覚悟なさい。次は髪のセットよ」

 

髪を弄られるリンの苦闘は続く。

ヴェルグリンドが柔らかい笑みを浮かべながらリンの髪を指先で梳き、優雅に言葉を紡ぐ。

 

「あなたの髪、滑らかで美しいわ。少し巻き髪にして華やかさを出してみるのもいいかもしれないわね」

「巻くな!このままでいい!」

「大人しくしてちょうだい」

 

ヴェルグリンドが軽く指を動かすと、炎の熱で髪が整えられ、華やかな巻き髪が作り上げられていく。リンは不快感を露わにしながら叫ぶ。

 

「こんなことに炎を使うな!もっと別のことに使え!」

 

しかし、ヴェルグリンドは耳を貸さず、満足げに微笑む。

 

「どう?少し大人っぽくなったでしょう?」

「やりすぎ!」

 

そんなリンを見て、今度はミザリーが化粧道具を取り出し、真剣な顔で言い放つ。

 

「お顔の化粧も大切よ。リン、じっとしていてね」

「化粧なんかいらない!自然体が一番だろ!」

「女性としての礼儀よ」

 

ミザリーの言葉と共に、手際よく化粧が施されていく。リンは必死に顔を背けようとするが、レインが背後から頭を押さえ込んで動きを封じた。

 

「ほら、じっとしてなきゃ。化粧崩れちゃうわよ?」

「くそっ……やめろ!これ以上は本当に怒るからな!」

 

リンの怒号も虚しく、数分後には整えられた顔が鏡に映し出された。その顔を見たヴェルザードが満足げに頷く。

 

「完璧ね。あなた、もっと自信を持つべきだわ」

「自信なんかいらねえよ!」

 

リンは不満そうに叫び、鏡越しに自分の姿を睨みつける。彼女の表情は明らかに不機嫌さを隠せず、眉間には深い皺が刻まれていた。

 

しかし、女性陣はそんな彼女の不満も乱暴な物言いもまるで気にしていなかった。むしろ、その反応すら楽しんでいる様子だった。

 

最終仕上げとして、ヴェルザードが静かに立ち上がり、リンの肩に手を置く。

 

「大丈夫。あなたはとても美しいわ。この姿をギィやルドラに見せれば、彼らもきっと驚くでしょう」

「そんなのどうでもいい!余計なことしやがって……!」

 

リンの叫び声を背に受けながら、ヴェルザードは優雅に微笑む。

 

「さて、準備は整ったわ。あとはお披露目だけね」

 

そして、リンの頭には彼女の意志とは無関係に、小さなティアラが置かれた。

その瞬間、リンは怒りに震えながらも諦めたように肩を落とし、深いため息をつく。

 

「もう……好きにしろよ……」

 

そんなリンの様子に、ヴェルザードたちは満足げに頷き合う。彼女たちの中では、最高の作品を仕上げた達成感が溢れていた。

 

一方、白氷宮の応接室でリンを待つギィとルドラは、遠くから聞こえるリンの悲鳴と怒号を耳にしながら、どちらともなく苦笑を浮かべていた。

 

 

 

 

 

白氷宮の応接室に重厚な扉が音もなく開かれると、冷たい空気と共に一行の姿が現れた。その中心には、いつもとはまるで別人のように見えるリンがいた。

 

全身を純白のドレスに包まれたリンは、きらめく銀糸のような刺繍が施されたスカートを揺らしながらゆっくりと歩いてくる。ドレスの胸元や裾には繊細なレースが重ねられ、肩や腕は薄い透明な生地で覆われているだけで、品のある大胆さを漂わせていた。髪は美しい巻き髪にセットされ、後ろで優雅に流れるようにまとめられている。その上には、小さなティアラが載せられ、まるで本物の姫君のようだった。

 

しかし、その表情はドレスの華やかさとは裏腹に、不機嫌さがありありと滲み出ている。疲れ切った目元と、引きつった口元は、着飾られる過程でどれほど抵抗していたかを物語っていた。

 

ギィはその姿を見た瞬間、満足げに口角を上げる。

彼の赤い瞳には揶揄いの色が浮かんでいる。

 

「へえ、思った以上に似合うじゃねえか。どうだ、ルドラ?お前も驚いたんじゃねえか?」

 

隣で座っていたルドラは、一瞬目を見開き、わずかにまばたきをした。それほどまでに目の前のリンの姿は、彼の中のイメージを覆すものだった。

 

「……確かに、美しいな」

 

その素直な言葉に、リンはちらりとルドラを睨みつけた。その視線に気づいたルドラは、やや戸惑ったように微笑を浮かべる。

 

「いや、悪い意味ではない。似合っていると言っているだけだ」

 

その場面を見ていたギィが、低い声で笑い始める。

 

「ははっ、どうやらルドラも気に入ったみたいだな。おい、リン。お披露目成功だぞ」

 

その言葉に、リンは心底恨めしそうにギィを睨みつけた。そして、吐き捨てるように呟く。

 

「……ギィさん許すまじ」

 

その一言が応接室に響くと、ギィは腹を抱えて笑い出した。

 

「はははっ!何だよその顔!まさかそんな恨み言を聞くことになるとはな!」

「笑い事じゃない!こんな格好、全然落ち着かないし、恥ずかしいし……!」

 

リンは憤慨しながら声を上げるが、ギィの笑い声は止まらない。

 

「おいおい、もうちょっと余裕見せろよ。魔王たちの宴(ワルプルギス)に参加するんだぞ?オレの顔を立てるためにも、じゃじゃ馬が最高に着飾る必要があるんだからな」

「誰がじゃじゃ馬だ!」

 

怒りを滲ませるリンの声に、ギィはニヤリと笑って肩をすくめる。

 

「ま、いいじゃねえか。少しくらい我慢しろよ。その代わり、今日はお前を褒めてやるよ——似合ってるぜ」

 

その不意の褒め言葉に、リンは一瞬だけ目を見開く。しかし、すぐに顔をしかめて視線を逸らした。

 

(……素直に褒めればいいものを、いちいち揶揄うから腹が立つ)

 

女性陣の達成感は最高潮だった。

ヴェルザードが冷静な表情で満足げに頷く。

 

「完璧ね。やっぱり私の目に狂いはなかったわ」

 

ヴェルグリンドも微笑みながらリンのドレス姿を眺める。

 

「あなた、本当に美しいわ。自信を持ちなさい」

「持たないっつーの!」

 

リンが即座に反論するが、ヴェルグリンドは気にした様子もなく続ける。

 

「いえ、本当に誇りに思っていいわ。この姿は、きっとみんなを驚かせるはずよ」

 

ミザリーは化粧道具を片付けながら、手を打つように言った。

 

「リン、本当に素晴らしい仕上がりよ。次回もぜひ、このスタイルでいかない?」

「二度とやらない!」

 

リンの必死の抵抗も、ミザリーには効果がない。

レインが最後に微笑みながら付け加える。

 

「でもリン、今までで一番可愛いわよ。ギィ様やルドラ様もきっと気に入ってるし、今日はもうこのまま楽しんじゃえば?」

「楽しめるか!」

 

疲れ切ったリンの叫びに、応接室内は笑いと達成感で満たされた。ルドラはそんなリンに少し同情したように目を伏せるが、ギィは相変わらず腹を抱えて笑い続けていた。

 

(許さない……絶対に許さない……)

 

リンは内心でギィを蹴り飛ばす姿を想像しながら、不満を募らせるのだった。




魔王たちの宴(ワルプルギス)までしばらくお待ちください。

リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?

  • 樹界移動を進化させる
  • 聖域創造を進化させる
  • 万象再生を進化させる
  • 深淵樹霊を進化させる
  • 「神智核」一択
  • 魔王覇気とか
  • 特に思いつかない
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