転生したら木の中でした   作:猫田やなぎ

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遅ればせながらあけましておめでとうございます!今年の目標はリンとリムルの出会いまで話を進めること!今年もよろしくお願いします!


第九十話

天魔大戦の終結についての説明から始まり、各地の被害状況など、様々な議論が交わされた魔王たちの宴(ワルプルギス)も終盤に差し掛かり、ギィが最後の議題を提示した。

 

「さて、最後にリンの大霊樹(ドリュアス)を介した監視網についてもう少し掘り下げる。その活用方法についてだが、今後どうするか、改めて確認しておきたい」

 

ギィが話を切り出すと、魔王たちの視線が再びリンに集まる。緊張感が漂う中、リンは再びゆっくりと立ち上がった。

 

「既にお話した通り、大霊樹(ドリュアス)を通じた監視網は、天魔大戦の余波や異常事態を察知し、皆さんと情報を共有するためのものです。ただ、この監視網を運用するにあたり、皆さんの信頼を得ることが何よりも重要だと考えています」

 

リンの言葉は真剣そのもので、魔王たちも黙って聞き入る。彼女はさらに言葉を続けた。

 

「監視されているという誤解を招かないよう、情報の透明性を保ち、必要があれば皆さんの要望に応じて改善していくつもりです」

 

その言葉に、カザリームが口元に笑みを浮かべながら軽く肩をすくめた。

 

「まあ言いたいことは分かった。だが、それは結局お前の意志一つで全て決まるんだろう?」

 

挑発的な言葉にリンは一瞬たじろいだが、すぐに毅然とした態度で答える。

 

「はい。大霊樹(ドリュアス)は私の意思で動いています。でも、それが皆さんにとって不安材料になるなら、信頼を得るためにできる限りのことをします」

 

カザリームは少し驚いたように目を細め、挑発をやめて椅子にもたれかかった。

 

リンが説明を続ける間、彼女の意識は自分の内に存在するエリオンに向かっていた。

 

(ねえ、エリオン。大霊樹(ドリュアス)と接続したときに、大霊樹(ドリュアス)周辺の情報が流れ込んでくるやつって制御できる?)

『新たに植えられるものも含め、すべての大霊樹(ドリュアス)はリン様の意思一つで操作できる。情報共有が不要ならば、対象の大霊樹(ドリュアス)を意識して命じればよい』

 

その答えにリンは少しだけ安心すると同時に、新たな決意を抱いた。

リンは深呼吸をして再び円卓を見渡した。

 

「最後に一つ、私から提案があります」

 

全員の視線が再びリンに向けられる。リンは少し緊張した面持ちで続けた。

 

大霊樹(ドリュアス)の監視網について議論してきましたが、監視のためではなく、別の目的で新たに大霊樹(ドリュアス)を植えたいと考えています」

 

その提案に魔王たちの間にざわめきが広がる。ダグリュールが重い声で尋ねた。

 

「……どこに植えたいのだ?」

 

リンは少し考え込み、意を決したようにダグリュールに視線を向けた。

 

「ダグリュールさん。あなたの支配領域である『不毛の大地』に植えさせていただけないでしょうか?」

 

リンの言葉に、魔王たちの間に沈黙が広がる。不毛の大地——かつてミリムの暴走を食い止めるため、ギィとミリムが激突した余波によって荒れ果てた土地。その傷跡は今も癒えることなく、地上の一部を不毛のままにしている。

 

ダグリュールは目を細め、リンに問いかけた。

 

「なぜ、不毛の大地に?」

 

リンは深呼吸をし、正面からダグリュールの視線を受け止めた。

 

「そこはかつて、星霊樹(セレスティア)が蘇らせようとして果たせなかった場所です。星霊樹(セレスティア)が成せなかったことを、聖魔樹帝(ルフレス)となった私が受け継ぎたいのです」

 

リンの決意は固く、その眼差しには迷いがなかった。

 

「もちろん、私の力ではすぐに蘇らせることはできません。でも、小さな布石でもいい。今できることを少しずつでもやっていきたいんです」

 

リンの提案を受け、まずロイが静かに口を開いた。

 

「蘇らせる……か。確かに、お前にしかできないことだろう。だが、それには長い年月が必要だろうな」

「はい。でも、私はその年月をかけてでもやり遂げたいんです」

 

次に、ダグリュールが重々しい声で返答する。

 

「よかろう。貴様がその地に大霊樹(ドリュアス)を植えることを許す。その覚悟を見届けるとしよう」

 

リンは深く頭を下げた。

 

「ありがとうございます、ダグリュールさん」

 

ミリムが勢いよく拳を握り、笑顔を見せた。

 

「リンならきっとできるのだ!」

 

その無邪気な言葉に、リンは少しほっとした表情を浮かべた。

 

最後にギィが場を見渡しながら結論を下した。

 

「よし、この件はこれで決まりだ。リン、お前の覚悟と行動を信じるとしよう。ただし、途中で投げ出すんじゃねえぞ?」

「絶対に投げ出さないよ」

 

ギィは満足げに笑みを浮かべ、円卓を軽く叩き、全員に視線を巡らせる。

 

「さて、他に何か言いたいことがあるヤツはいるか?なければ、これで終わりにするぞ」

 

彼の言葉に一瞬の静寂が訪れたが、その空気を破るようにディーノが気だるげに声を上げた。

 

「……そういやさ、リンの瞳の色って前は緑だったよな?なんで今は赤いんだ?」

 

リンは思わず肩を震わせ、動揺したようにギィに視線を向ける。まさかここで瞳の色について問われるとは思っておらず、言葉に詰まった。

 

ギィはリンの様子を一瞥し、ため息混じりに説明を始めた。

 

「ああ、それな。リンの瞳の色が変わったのはオレの魔素の影響だ」

 

その発言に、魔王たちは一斉にギィを見やる。特にダグリュールは微かに眉を動かし、カザリームは興味深げな笑みを浮かべている。

 

ギィは気にする様子もなく続ける。

 

「リンの体質はちょっと特殊でな。他人の魔素の影響を受けやすい。オレが魔素を与えたせいで瞳の色が変わったんだよ」

 

その説明に、ラミリスが不機嫌さを隠さずにぼやく。

 

「そうねー。ギィのせいだよねー」

「せいって言うな。意図したわけじゃねえよ」

 

ギィは眉をひそめつつ、再度魔王たちを見回す。

 

「だから言っておくが、緊急時を除いて軽はずみにリンに魔素を分けるな。どんな影響が出るかわからねえからな」

(あっ……そういえばギィさんから注意されてたんだった……!)

 

内心で焦るリンは、先日原初の黒(ノワール)から魔素を分けてもらったことや、スキル「分身体」を進化させて「並列存在」にするためにヴェルグリンドから大量の魔素を分けてもらったことも思い出し、冷や汗が流れそうになる。

 

そんなリンの微妙な表情に目ざとく気づいたギィが、鋭い視線を向けた。

 

「……おい、リン。お前まさか誰かに魔素をもらったのか?」

 

ギィの問いにリンは言葉を詰まらせ、目を逸らす。

その沈黙を見て、ディーノが唐突に思い出したように口を開いた。

 

「あー、そういや、この前原初の黒(ノワール)に魔素を分けてもらったとか言ってたなぁ」

「ちょっ、ディーノさん!」

   

リンは慌てて声を上げるが、ラミリスがすかさず椅子を蹴って立ち上がり、リンに詰め寄った。

 

「はぁ!?アンタ何やってんのよ!」

 

ラミリスの怒気混じりの声に圧倒されるリン。その一方で、ギィは目を細め、不気味に低い声を漏らした。

 

「ほう……?原初の黒(ノワール)に魔素をなぁ……」

 

その声音に、リンは「ひっ」と小さく声を漏らし、身体を竦ませた。

 

「お前は本当にオレの話を聞かねえな……」

 

ギィは呆れたようにため息を吐き、リンを見据える。

リンはもごもごと言い訳を口にし始めた。

 

「つい忘れて……じゃなくて!前にギィさんから魔素をもらってるし、原初の黒(ノワール)はギィさんと同じ悪魔族(デーモン)だから大丈夫かなって……!私が頼んだわけじゃないし!」

 

捲し立てるようなリンに、ギィは眉間に皺を寄せ、肩をすくめた。

 

「アイツがオレと同じ原初の悪魔だってわかってんだろ……ったく、悪魔族(デーモン)にでもなる気かお前は」

 

その言葉にリンは驚きつつも恐る恐る尋ねる。

 

「いや、悪魔族(デーモン)はちょっと……ていうか、悪魔族(デーモン)になれるものなの?」

「お前の体質を考えりゃ可能性はある。その種族の魔素を大量に受ければ、進化するかもな」

悪魔族(デーモン)なんて却下却下!」

 

ラミリスが真剣な表情でリンに向き直り、勢いよく言葉を叩きつける。

 

「リン、アンタはそのままでいいの!これ以上ギィからも原初の黒(ノワール)からも魔素をもらっちゃダメ!わかった?」

 

ラミリスの勢いに圧倒されたリンは、慌てて頷いた。

 

「わ、わかった……!」

 

リンの中では焦りが渦巻いていた。

 

(……グリンド姉様からも魔素をめっちゃもらったんだよなぁ……大丈夫かな?)

 

彼女は頭の中でスキル千視ノ神(プロフェティア)に問いかける。

 

(ねえ、グリンド姉様と原初の黒(ノワール)からもらった魔素って影響ない?)

『個体名ヴェルグリンドから与えられた魔素は、「並列存在」獲得のために全て消費されています。リン様のお身体に影響はないものと思われます。また、原初の黒(ノワール)から与えられた魔素は、リン様の固有スキル「深淵樹霊(しんえんじゅれい)」に使用するためのエネルギーとして還元しましたので、こちらもリン様のお身体に悪影響を及ぼすことはありません』

(……還元したんだ…いつの間に…。ありがとう千視ノ神(プロフェティア)!)

 

リンはほっと息を吐き、ギィに向き直った。

 

「これからは気をつけるね!」

「お前の”気をつける”ほど信用できないものはねえよ」

 

その言葉に、リンは思わず目を逸らした。

 

こうして、魔王たちの宴(ワルプルギス)はギィの締めの言葉で終わりを告げたが、リンの軽率さが引き起こす波紋はまだ続く予感を残したままだった。

 

 

 

 

 

魔王たちの宴(ワルプルギス)の議題が全て終了し、円卓を囲む魔王たちの大半が立ち去った。壮大な会場には、ギィ、ラミリス、ミリム、そしてギィの隣に座るリンの4人だけが残されていた。

 

ミリムが大きく伸びをしながら、椅子に深く座り込む。

 

「ふう……やっと終わったな!疲れたのだ!」

「ホントよね。まあ、ギィのせいでリンまで無駄に疲れちゃったわけだけど」

 

ラミリスの冷たい視線がギィに向けられる。その意図を察したギィは鼻で笑い、軽く肩をすくめた。

 

「オレのせいってのは心外だな。コイツが勝手に成長した結果だろ?」

「勝手?何言ってるのよ!アンタが魔素なんか分け与えたから、リンが変な影響を受けてるんじゃないの!」

 

ラミリスが苛立ちを隠さず詰め寄る。リンは慌てて両手を振り、割って入った。

 

「ちょ、ちょっと待ってラミリスさん!ギィさんの魔素には助けられた部分もあって……その……悪い影響だけじゃないよ!」

 

その言葉に、ラミリスの瞳がさらに鋭くなった。

 

「悪い影響『だけじゃない』ってことは、やっぱりあったんでしょ!例えば瞳が赤くなったり、あの『深淵なんとか』ってスキル使ったときのギィっぽい感じとか!」

「そ、それは……まあ……」

 

リンは曖昧な笑顔で答えを濁す。ギィは隣で呆れたように頭を掻いた。

 

「オレがコイツに魔素を分けたのは、コイツが黄金卿(エルドラド)で無茶したからなんだがな」

「うっ……」

 

図星を突かれたリンは縮こまった。

 

昔、ギィと共に黄金卿(エルドラド)を訪れ、そこにあった大霊樹(ドリュアス)にリンは全力で魔素を注いだ。ギィからの制止も無視したことでリンは倒れ、ギィはリンを救うために自身の魔素を分けたのだ。リンの進化や瞳の色にまで影響を及ぼすとはさすがのギィも予想は出来なかったが、あの時はリンを助けることを優先せざるを得なかった。リン自身もその件については、ギィに感謝こそすれ責めるつもりは毛頭ない。

 

ラミリスは、理解はしてはいるが気に食わないといった様子でギィを鋭く睨みつけた。

 

「それは知ってるわ。でも結局、ギィの魔素のせいで今のリンになってるってワケでしょ?」

「オレの魔素だけでどうこうなったわけじゃねえ。コイツは自分で決めて、自分で乗り越えた。それだけの話だ」

 

その言葉に、ラミリスはさらに口を開こうとしたが、ミリムが無邪気な声で話に割り込んだ。

 

「だが、リンはリンなのだ!瞳の色が変わろうと、ギィっぽくなろうと、そこは変わらないのだ!」

 

ミリムが明るい笑顔でそう言い切ると、ラミリスは一瞬言葉を失った。

 

「……まあ、それはそうかもしれないけど……!」

 

ミリムは勢いそのままに椅子の背もたれに倒れ込むようにして笑った。

 

「リン、すごく頑張ってたのだ!ワタシだったら、あんな真面目な話なんて絶対無理なのだ!」

「ミリム、アンタは真面目な話に向いてないもんね」

 

ラミリスが少し和らいだ口調で返すと、ミリムが頬を膨らませながら手を振り回す。

 

「そんなことないのだ!……だがまあ、リンが困ったときは絶対に助けるのだ!」

「ありがとう、ミリム。本当に助かるよ」

「おい、ミリム。あんまり軽々しく助けるなんて言うなよ」

 

ギィが冷静な声で制止する。ミリムが不満そうに彼を睨む中、ギィは続けて説明を加えた。

 

「リンは自分で解決できる力を持ってる。それに、過剰に手を出すと、かえって自分の成長を妨げることになる。お前が助けたい気持ちは分かるが、それが本当にリンのためになるかどうかは考えろ」

 

ミリムは考え込むような表情を見せた後、真剣な顔で頷いた。

 

「うむ、分かったのだ。だが、リンが本当に困ってたら、絶対に助けるのだ!それだけは譲れないぞ!」

 

ギィはミリムの純粋な決意を認めるように、小さく頷いた。

ラミリスはそのやり取りを見て、小さくため息をついた。

 

「まあ、リンがちゃんと自分で考えて動いてるのは分かってるけどね。でも、これ以上ギィの影響で変なことになるのだけは許さないから!」

「だから、オレのせいだって決めつけんなよ」

 

ギィが肩をすくめる中、リンは小声で「ごめんね、ラミリスさん」と申し訳なさそうに言った。

 

ミリムが椅子から勢いよく立ち上がり、大きく伸びをした。

 

「よーし!次はリンがもっと面白いことをしてくれるのを期待してるのだ!」

「ミリム、あんまり振り回さないでよね」

 

ラミリスが注意するも、ミリムは全く気にせず無邪気に笑う。

 

「リンなら大丈夫なのだ!ワタシは信じてるからな!」

 

その純粋な笑顔に、リンは照れくさそうに頭を掻きながら答えた。

 

「ありがとう、ミリム。これからも期待に応えられるように頑張るよ」

 

ギィはそんなやり取りを眺めながら、低く呟いた。

 

「さて、この先どうなるか。リン、オレたちを飽きさせるなよ」

 

その言葉に、リンは複雑そうな表情で頷きながらも、最後に小さく笑みを浮かべた。

 

「飽きさせないために動いてるわけじゃないけど……精一杯頑張るよ」

 

笑い声が響く中、魔王たちの宴(ワルプルギス)の会場に静かな終幕が訪れた。




ふいー、魔王たちの宴(ワルプルギス)終わった…。不毛の大地は原作でヴェルドラが蘇らせますが、聖魔樹帝(ルフレス)として放置はできないのでちょっと手を加えることにしました。

リンが新しく獲得するスキルについてのアンケートは神智核(マナス)をお選びいただいてる方が圧倒的でした。皆様、ご回答ありがとうございました!

リンが新しく獲得するスキルはどれがいいですか?

  • 樹界移動を進化させる
  • 聖域創造を進化させる
  • 万象再生を進化させる
  • 深淵樹霊を進化させる
  • 「神智核」一択
  • 魔王覇気とか
  • 特に思いつかない
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