自分を仮面ライダーと勘違いした一般改造人間系転生者   作:超高校級の切望

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プロローグ

 鴻上あきらは転生者である。神に会ったことはない。

 親もいねえ、友達もねえ、つーか戸籍ねえホームレス。

 強いて特別かというと身体能力が超高いことだが、この前、超すごい視力で水の上を片足が沈む前に片足を上げて走るスーツの男や庭で岩を持ち上げて訓練するおっさんもいたから、こっちの世界じゃ弱い方だろう。

 

 文明レベルは元の日本よりも上。知識無双なんて出来やしない。マヨネーズはそこらの店で買えるのだ。

 

 マヨネーズ………お好み焼き食いたい。

 

「腹減ったなあ…………」

 

 橋の下で雨を凌ぎ、残飯を漁る日々。

 なんだってこんな生活を…………と、橋台で寝転がっているあきらは何やらしたが騒がしい事に気付く。

 覗き込めば、一人の少女が複数の少女に壁際に追い詰められていた。

 

 追い詰めている女の一人の手に髪の毛。頭を掴んで連れてきたのだろう。乱暴なことだ。

 

「この人殺し! どの面下げて学校に来てるのよ!」

「ち、ちがっ………私、殺してなんて」

「嘘つき! そのくせ、税金まで受けとってさ」

「貴方が死ねばよかったのにね〜」

 

 大方ライブ事件の生き残りだろう、と眺めるあきら。

 この世界に存在するノイズという認定特異災害がつい最近大勢の命を奪ったらしく、行き場のない怒りをその事件の生き残りに向けていると電気屋のテレビで言ってた。

 

「反省しろ人殺し!」

「ていうか学校くるな!」

 

 まあ、あれは明らかに楽しんでいるだけだろうが。

 マジョリティ………他の皆も言ってるからと己の正当性を疑わず……間違いだと知りながら責められない暴力に酔っている。

 

「そう言えばさぁ、小日向さんも人殺しかばってたよねえ」

 

 だからこうして標的を増やそうとするし、それを聞いて慌てる友達想いを嗤えるのだ。

 

「み、未来は関係ないでしょ!?」

「っ! 触んじゃねえよ人殺し!!」

 

 服を掴む女を蹴り飛ばす女。

 腹を押さえゲホゲホと咳き込む彼女に、新たな暴力を行おうと近付く女の顔に、あきらの靴裏がめり込む。

 

 鼻の軟骨がペキペキ音を立て折れた。

 

「ぶべっ!?」

「は? だ、だれ?」

「ちょっ!?」

 

 あきらはそのまま吹き飛び倒れた少女の鞄を奪うと財布を取り出し、カードや学生証を鞄に詰め川に落とす。

 

「な、なんなのよあんた!?」

「ん〜? 正義の味方。駄目だよ虐めは。お腹とか蹴られたら痛いから。こんなふうに」

「うぐぅ!!」

 

 倒れた女の腹を蹴る。もちろん加減をしている。

 あきらがたまたま見たやばい奴等は少数で、基本的にはあきらの身体能力は戦闘力たったの5のゴミには負けないのだ。

 

「っ! こ、こいつは人殺しで………」

「へぇ、人殺しに喧嘩売れるとは勇気があるな。よし、ちょっと勇気見せてみろ」

 

 倒れた女の頭を踏みつけるあきらに、当然彼女達は手を出せない。彼女達は人殺しも、暴力も、相手にする勇気なんてないからだ。

 

「………………」

「ん?」

 

 逆に、彼女達が虐めていた少女があきらの足を掴む。

 

「……や、やめて……」

「此奴は感謝なんてしないよ? 他も逃げてるし」

 

 あきらの視線が彼女に向いた瞬間には、人殺し退治とやらに来た女達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 

「…………………」

「そうか。優しいね………おら、とっとと失せろ」

 

 あきらが軽く小突くと、女は大慌てで逃げていった。

 見たところ中学生。財布の中身は、二万円。まあまあ持ってる方だろうか?

 

「………ぁ」

「おっと、忘れるところだった」

 

 と、あきらが片手を向けるとビクリと震える少女。

 肩に手を触れられ、恐怖から目を瞑る。しかしすぐに違和感を覚えた。

 

「あ、あれ?」

「もう痛まないか?」

「はい……………これ、何が」

「さあ? 俺も知らねえ。泣きわめくガキがうるさくてどうしたもんかと狼狽えてたらなんか出来た」

「子供を治すような人が、どうして………」

「善悪の区別がつくくせに、善と言い張り悪だと認識する輩って嫌いなのよね俺。女だろうと男だろうと蹴り飛ばしてやる」

 

 友達でないどころか自分をいじめていた相手だが、容赦なく蹴り飛ばしていた男に恐怖を覚えなかったといえば嘘になる。だが、乱暴だが悪い人ではないらしい。

 

「響ー!」

 

 と、不意に聞こえてきた声に少女が振り返る。恐らくは彼女の名前だろう。

 あきらは面倒事は嫌なのでさっさとその場から去ることにした。

 

「あ、あの! 貴方は!?」

「通りすがりの独善者だよ。君みたいないい子は関わっちゃ駄目な男だ」

 

 

 

 

「わぉ………」

「ど、どうも………」

 

 そんな別れをしたばかりの3日後、お好み焼き屋で再会した。

 

「ど、どうしてここに?」

「ひったくりをぶっ飛ばした際、心優しいおばちゃんに住処をもらった」

 

 響がおばちゃんに目を向けると微笑むおばちゃん。

 

「ちょっとばかり乱暴だが、悪い子じゃないみたいだからね」

「あの…………」

 

 黒髪に白いリボンの少女、小日向未来が彼に語りかけるのを見て響が慌てて紹介しようとするが……。

 

「あきらさん、響と知り合いだったんですね」

「未来ちゃんもね」

「え、知り合い!?」

「朝ランで知り合った」

 

 朝ランとかするんだ、この人。とあきらを見つめる響。むしろ未来の方が2人が知り合いであることにとまどっているようだ。

 

「響は?」

「あ、えっと………いじめられてるところを、助けられたと言いますか」

「じゃあ、あきらさんが響の言ってた? あ、ありがとうございます」

「気にしなくていい。ただの独善者だからな」

 

 響はこの前も言ってたなと思い出す。口癖なのだろうか?

 

 

 これが立花響と小日向未来が鴻上あきらに出会った経緯。ここから長いだけならともかく、深い付き合いになるとは、この時誰も思っていなかった。

 

 鴻上あきらには秘密があるから。しかし、その秘密は何時しか響達も関係することになる。

 

 

『アナリシス』

「変………身」

 

『リビルド!!』

 

 

 

「お前は、何者だ………?」

 

 風鳴翼は、ノイズを倒した血のように赤い鎧を纏う謎の人物を警戒する。

 

「仮面ライダーラスティ。通りすがりの、独善者さ」

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