自分を仮面ライダーと勘違いした一般改造人間系転生者 作:超高校級の切望
拳が爆ぜた。少女は吹っ飛んだ。
木々より高い爆炎が昇る程の爆発だったが少女は人の形を保っていた。鎧の力だろうか?
「あぐ……!」
鎧は再生を始めるが、明らかに少女の肉体を侵し始めている。自分が言えた義理ではないが随分デメリットの大きい力を使う。
「っ! お前、馬鹿にしてるのか!」
少女は目をつぶった響を見て叫ぶ。
「アタシを……雪音クリスを!」
「あ、名乗った」
「そっか、クリスちゃんっていうんだね」
名前が聞けた響は嬉しそうだ。というか普通に嬉しいのだろう。敵であろうと誰かに繋がれることが。
「ねえクリスちゃん、こんな戦いもうやめようよ。ノイズと違って私達には言葉がある。ちゃんと話をすればちゃんと分かりあえるはず。だって私達、同じ人間だよ!」
「……………響」
人の善意を信じた、いっそ善性に縋る言葉にあきらは何とも言えない顔をする。悪意に理由を求めるそのあり方は、彼女の過去を……壮絶ないじめを仕方ないと思うための防衛か、本気で人を信じているのか。どちらにしろ、綺麗事は人には大概刺さらない。
「お前くせぇんだよ。嘘くせえ、青臭え!!」
再び響へと襲いかかるクリス。木々を数本圧し折りながら吹き飛ぶ響。
クリスの力もそうだが、その威力の蹴りを食らってすぐに立ち上がれる響も人間の範疇を超えている。シンフォギアと鎧、どちらもとんでもない力だ。
「っぐうう………!」
が、クリスが苦しげに呻く。鎧にその身を侵食されているのだろう。あそこまでいくといっそ鎧に食われていると言えるかもしれない。
「クリスちゃん………」
「っ!」
苦しむクリスを心配する響だが、その反応はむしろクリスを煽る。
「吹っ飛べよ! アーマーパージだ!!」
「「!?」」
その言葉と同時に鎧が光り砕け、周囲に飛び散る。
鎧とタイツのような格好をしていたクリスは当然のごとく全裸だ。
「あわわ! 見ちゃ駄目ですあきらさん!」
「あぶな!」
目を塞ごうと飛びかかってくる響だが今の響の膂力は車すら簡単に破壊する。咄嗟に避けると後ろの木にぶつかり木を圧し折った。
「♪Killter Ichaival tron♪」
「あ?」
「この歌は………」
何処からか楽器の音が聞こえてくる。この現象は、響や翼と同じ。
「見せてやる、イチイバルの力だ!」
現れたのは体のラインをそのまま晒すインナーと赤い金属パーツのような鎧。その姿は響や翼のシンフォギアを連想させる。
「クリスちゃん、私達と同じ…………」
「歌わせたな………」
先ほどの美しい歌声とは打って変わって、底冷えするほどに怒りを孕んだ声を絞り出すクリス。
「アタシに歌を歌わせたな! 教えてやる、アタシは歌が大っ嫌いなんだよ!」
「歌が、嫌い?」
その言葉に響が困惑する。その隙を逃す理由もなく、少女は構えていたボーガンから紫のエネルギー弾を放つ。形は矢。
「いちい………弓………狩猟神ウルの弓か!」
しかし物騒な歌だな。傷ごと抉るとか火山のような殺伐とか………。と、ボーガンがガトリングに変形し足のパーツからミサイルが現れる。
「弓………?」
飛び道具って意味では同じなのか?
「巻き込まれたくねえなら下がってな!!」
「チッ。ガキがなめやがって」
と、あきらは音楽プレイヤーを取り出す。バットプレイヤーが真の姿を現し怪音波をクリスに向かって放つ。
「ぐっ! この、うるせえ!!」
『キキッ!』
慌てて回避しあきらの手元に戻ってきたバットプレイヤー。どういう理屈か巨大化し、それをブーメランのように投げつける。
「ちょっせえ!」
雨のように降り注ぐ銃弾に弾かれた。
クリスはそのまま響を狙う。破壊の暴風の如き銃弾は、いかに人知を超えた鎧を纏う響と言えど無事では済むまい。当たればだが…………。
「………盾?」
「壁?」
巨大な鉄の板が響に降り注ぐ銃弾を防いでいた。その正体は………
「剣だ!」
風鳴翼のシンフォギアの足のパーツから生えた巨大な剣であった。
「死に体でおねんねと聞いていたが、足手まといを庇いに現れたか」
「もう何も、失うものかと決めたのだ」
クリスの挑発に乗らず告げる翼。何か変わった?
響へ八つ当たりしていた時の追い詰められている感じがなくなっている。
「翼さん……」
「気づいたか立花。だが私も十全ではない……力を貸してほしい」
「っ! はい!」
「それと、貴方も避難を」
と翼はあきらに視線を向けると同時にクリスがガトリングをぶっ放す。飛んで回避し空中で軌道を変えながら銃弾の雨を掻い潜り切り結ぶ。
背後に移動に振り向こうとしたクリスのガトリングを柄打ちで弾き背中を合わせた状態で首筋に剣を当てる。
「翼さん、その子は!」
「わかっている」
互いに獲物をふるい距離を取り向き合う。一触即発、まさにその瞬間空から何かが降ってきた。
「ノイズ!?」
飛行型ノイズ。攻撃の際身を捩り槍と化すノイズがクリスのガトリングを貫き砕く。
数は3匹。最後の一匹がクリスへと迫り。
「くそ!」
響が駆け出すが当たりどころか悪くなるのは目に見えた。あきらも駆け出し片腕を突き出す。
右掌が貫かれるもそのままノイズを握り潰す。
【■■■■!!】
ヒビ割れたノイズはそのまま炭素の塵へと還った。
「あきらさん!?」
「っ! 全身に広がる前に腕を切り落とす!」
「落とすな馬鹿! 俺は平気だ!」
地面を赤く染めながら叫ぶあきら。赤く染まる。つまり血が出ている。血の一滴すら残さず人を塵へと変えるはずのノイズに触れて。
『なるほど。ノイズが殺すは人のみ。その身、既に人の身ではないか』
「「「「!?」」」」
突如聞こえてきた女の声。振り向けば離れた場所に長髪の女が佇んでいた。幅の広い帽子にサングラス…………顔がよく見えない。
「フィーネ!」
「
「終わりの名を持つ女………」
フィーネ? フィーネ………何処かで聞いたことがあるようなないような?
「こんな奴いなくても、戦争の火種ぐらいアタシ一人で消してやる! そうすればあんたのいうように、人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」
「呪い?」
話が見えてこない。とりあえず分かるのはあのトリガーハッピーは世界平和を目指しており、それをあの女に良いように利用されたようだが。
「もうあなたに用はないわ」
「っ! なんだよ………それ」
迷子の子供のような表情を浮かべるクリスを無視して女が手をかざすと飛び散った鎧が粒子に代わり女の手に吸い込まれていく。
女はそのままY字のような何かを向ける。
ヘリのプロペラのように回転するノイズが襲いかかってきた。その隙に女は逃げ出し、クリスは慌てて追いかける。
「……………貴方にも色々と聞きたいことがあります」
「ノイズを倒した方法について聞かれても無理だ。俺も何でこんな身体か知らねえもん」
翼があきらを見つめる。鋭い眼光は逃がしはしないと訴えかけていた。
「そ、そんな事より! あきらさん、手! 手ぇ! すごい血が出てますよ! 止めなきゃ、輸血しなきゃ! 私の血って使えますか!?」
「俺Rhソイル式だから無理」
一致する血液型は140万人に一人の稀なる血液、稀血である。そこそこの規模の病院でなければ置いていないだろう。