自分を仮面ライダーと勘違いした一般改造人間系転生者 作:超高校級の切望
目撃者たる未来は二課本部に連れて行かれたが、あきらは怪我人なので一度病院に連れて行かれた。
輸血してもらったが、別に必要ないのだが。
医者も怪我の割に出血量が少ないと驚いていたが、実際は出血こそすれ補充されているだけだ。
「それで、いろいろと聞かせてもらいたいのだが」
赤髪の巨漢、風鳴弦十郎は神妙な顔で尋ねる。
「俺については俺よりもあの変な女のほうが詳しそうだがね。人とズレているとは思っていたが、まさか人でなしとは」
「報告にあったフィーネという女か………君自身は、本当に何も知らないのか?」
「さっぱり」
「米国で行方不明の間、何があった」
「…………………米国?」
その言葉に首を傾げるあきら。
「君について調べさせてもらった。本名、暁なぎさ……………幼少期家族旅行中、事故に遭い一応の死亡届が出されている。しかし実際は妹共々死体は見つかっていない」
「……………………妹?」
やはり首を傾げる。
「………俺に、家族がいたのか」
ここ数年部しか記憶にないあきら。それ以前の記憶となると前世の物だけ。だが、着ていた服は前世でも着たことがないもの。つまり此方で手に入れた過去があった。
それは
元々この世界にいた誰かの身体を奪ったのだとしたら、同じく行方不明となった妹が生きていた場合どんな顔をすればいいのか。
「………すまない、不躾だったな」
そんな態度をどう思ったのか弦十郎が謝罪してくる。
「話を変えよう。君が見た、響君と翼、そして彼女のまとっていた鎧だが……………」
シンフォギア。
櫻井理論にて提唱された聖遺物の活用法。
聖遺物とは古代の遺物でありながら現代技術でも再現不可能な
恐らくノイズもこれに該当するのだろう。そしてそれはノイズに対抗する力を持つが、遥か古代の遺物故に原型を保つものは少ない。
その欠片に力を与え発生させたエネルギーを纏うのがシンフォギア。起動させるのは歌の力、誰の歌でもいいわけではなく適合者の歌である必要がある。
だから戦いながら歌っていたのか。
「この事は国家機密で、吹聴すれば政治犯として扱うことになる」
「穏やかではないですね。まあ別に誰かに言うつもりはないですが」
「うむ。響君や、君自身の為にも頼む」
ペコリと頭を下げてくる弦十郎。頭が低い男………というわけではなく、本当に良い人なのだろう。
「それから、可能であれば君にもノイズを倒す力を貸してほしい、と言いたいところだが」
「…………………」
ノイズの炭素分解への耐性のみならず木々をへし折る力で吹き飛ばされても目立つ傷の負わない響達と違い、あきらは明確に肉体的なダメージを受けていた。
「無茶はしないでくれよ。ノイズに触れられると言っても、元々連中はコンクリートだって容易く破壊する」
そういう貴方も震脚で路面を剥がしていたが、と思うあきらであったが、あの時はラスティとして目撃していたので言わない。
「俺に出来ることがあったら何でも言ってくれ!」
「……………じゃあ、俺の家族についてもう少し詳しく教えてもらえますか?」
「解った。後日資料を持っていこう」
「妹………」
話しぶりからして両親は死んだようだ。妹は不明。自分がこうして生きているのだから生きている可能性はあるが、その場合自分と同じく妙な力を移植された可能性もある。
と、考え事をしているとノックが聞こえた。入っていいぞ、と声を掛けると扉が開く。
「…………あきらさん」
「未来か………そう言えば、俺が響の秘密知ってたこと、黙ってくれていたんだな」
未来には響の隠し事を知っていることは伝えていた。知っていることを響が知らないとも。だが弦十郎の態度からしてその事実を知らないようだった。未来が黙ってくれていたのだろう。
「怪我……」
「ん? ああ、気にするな。明日までには治る」
「そんな訳無いじゃないですか…………」
それがあるんだが………。
「私、どうすればいいんでしょう………」
「………………」
「響に怪我してほしくない。でも、それは私の我儘で………響が誰かのために頑張る人だって、知ってるのに」
響らしく居てほしい。だけど、危険な目に遭ってほしくない。昔ノイズのせいで死にかけた響が今はノイズと戦っているなんて、心配でたまらないだろう。
「こんなんじゃ、私………響の友達で居続けるなんて!」
それを我儘と言い切るのは、相変わらず自分に厳しく響に甘いというか。
「難しく考えすぎだ馬鹿」
「んにゅ!」
俯く未来の鼻をつまみ無理矢理上を向かせるあきら。赤くなった鼻を押さえながら涙目で睨む未来。
「誰かの為に………言葉にすれば美徳だが、言っちまえばこれだって響の我儘だ」
「我儘なんかじゃ………」
「我儘に行ってるだけさ。誰かを助けるためだろうと、行動を決めたのは自分なんだから」
そう、自称独善者は言い切る。
「友達だろうと我儘がぶつかって喧嘩することはあるさ。喧嘩するな、仲直りしろなんて言わねえよ。けど、たかが喧嘩で友達を辞める必要なんてねえ」
「でも…………」
「今はそのまま喧嘩でも何でもしてりゃいいさ。だけど、お前の今の思いは響を想っての思い。それを否定してやるな」
今度は優しく頭を撫でる。
「いいんでしょうか、こんな事考えて、響の友達で居たいと思って」
「いいんだよ」
「響の顔も、まともに見れないのに」
「気持ちの整理に時間は必要だ。友達辞めるかなんて、その後考えろ」
「…………考えて、答えが出なかったら?」
「約束通り遊園地に連れて行ってやるよ。お前等なら一緒に遊んでりゃ仲直りの一つ簡単だろ」
本当はどっちもお互いが大好きなのだから。
「じゃあ、響と仲直り出来たら遊園地に連れて行ってください」
「…………ああ、いいよ」
「あきらさん! 怪我大丈夫ですか!?」
未来が帰った後、今度は響がやってきた。
「問題ない」
「だって、穴空いてたのに………」
まあ普通なら大怪我だ。
「あの女曰く俺は人じゃないらしいからな」
「そういえばノイズ素手で触ってましたね。でも、人ですよ………」
「…………そうか」
まあ改造人間だとしても人間は人間か。何か知ってそうな女の言い方からして、元は人間らしいし。
「…………ごめんなさい」
「あ?」
「巻き込んじゃって………」
まあクリスの狙いは響っぽかった。けどノイズに関しては狙われていたのはクリスだ。それ以前に巻き込まないよう距離を取ろうとした響についていったのはあきらだ。
「気にすんな。向かったのは俺だ」
「でもそれは、私を心配して」
「実は奥の手があったが隠していた結果だ。だから俺のせい」
変身すればあの程度なんともなかったのだ。
「お、奥の手? なんか、かっこいいですね!」
「そうか?」
たまに思うが、響ってこういう感覚少年って感じだ。
「…………あの、あきらさん。あの子と仲良くなる方法、あるでしょうか」
「え、仲良くなる気なのか? まじで?」
「はい! だって、話せば伝わる同じ人間なんです!」
「それだけで仲良くなれるなら世界はもっと平和だろうよ」
全ての人間が一つの意思で統一されるとしたら、それは最早人間とは言えまい。
「ぶつかりあっても、最後には分かり合いたいんです!」
「う〜ん…………」
ここで『例えばお前をいじめていたやつでも』と尋ねるのは簡単だ。最終的には『だとしても』と返すだろうが、多少考え込む時間を作ればするだろう。だが………
「まあ、これからは頑張れとしか言えねえなあ」
「……………そうですか」
「難しく考えるな。殴って気絶させてベッドに縛り付けてから聞けば良いだろ」
「そ、そんな野蛮な!」
「え、あの威力で人を殴るお前がいうの?」
つまり響にとってあれは話し合いの範疇だったのか。肉体言語………言葉の壁のない真の言語が彼女の言葉か。
「まあ、今日みたいに穏便に暴力で説得してみろ」
「はい! って、全然穏便じゃないですよ!?」