自分を仮面ライダーと勘違いした一般改造人間系転生者 作:超高校級の切望
廃ビルのとある一室。カップ麺が転がる部屋にて蹲るクリスは不意に聞こえてきた足音に立ち上がりギアを構える。何時でも歌い出せるよう息を吸い込み………。
「よお」
「っ! お前………」
やってきた人間、あきらの姿を見て動きを止めるクリス。片手にレジ袋。
「飯だ」
「……………林檎は?」
「なんだ林檎が良かったのか。菓子パンと牛乳だ」
「………別にいいけどよ」
ドカリと乱暴に座るクリス。大人しくあきらからレジ袋を受け取った。
「ああ、それと俺仮面ライダーなんだわ」
「そうかよ…………………はぁ!?」
もしゃもしゃ菓子パンを食ってたクリスはその言葉にギョと顔を上げ叫んだ。
「え、は? お、お前が仮面ライダー?」
「そうだ」
「っ! なんで、なら………アタシを助けんだよ」
「お前が子供で俺が大人だからな」
「また、それかよ………大人なんて………!」
「お前の知る大人と俺は違うからな」
「何も知らないくせに!」
「当たり前だろ、こちとら大人になりたてだぞ」
それ以上何も言わずに黙り込むクリス。
「そもそも年で区切んな。せめてギリギリ所属で分けろ。どうしてお前等は極端に括るんだよ」
「うるせえよ………」
拗ねたように牛乳を飲むクリス。自分でも自覚があったのだろう。或いは今したか。
「ていうかそれならお前こそ大人だからって理由で子供助けんじゃねえよ」
「俺『が』
「はっ! なりたいと来たか! 結局そうさ! お前等大人は何時だって、出来もしねえことを得意気にやろうとして、周りの迷惑を考えねえ!」
「鏡いるか?」
「はあ!?」
「お前は戦争の火種は消せたか?」
「っ!!」
その言葉に再び押し黙るクリス。レスバ弱いな、と思ってたらその瞳がうるみ涙が溢れる。これには流石のあきらも言い過ぎたかとあきらも慌てる。
「な、泣くなよ………ええと、こういう時は」
『頭を撫でるデス!』と誰かに言われたような気がしたあきらはとりあえず撫でてみる。肩を震わせたクリスだが腕をはらったりはしなかった。
「でも………だって、パパとママは殺されたじゃんか………歌で救えるもんかよ。戦争する奴を片っ端から全部ぶっ潰す………それ以外に方法なんてあるかよ!」
「自分の意見を通すために力に訴えりゃそれは力で抗われる。それが戦争だ」
「!!」
「歌で世界を救う、ねえ。可能かはさておき、俺は嫌いじゃねえよ。夢がある………夢なんざで世界が救えるならもっと昔からこの世界は平和だけどな」
少なくともどれだけの人間が世界平和を夢見ても、結局今も世界の何処かで戦争、紛争は起きている。
「なら…………」
「だけど、平和にしたいって夢がなきゃそもそも平和にすら近づかねぇ。んで、これは俺の持論。命かけて平和を作りたい奴ってのは大抵、大切な誰かの為に平和を残したい連中ばかりだ」
「……………誰かの」
「お前のパパとママなら、まあお前だろうよ………結果が伴ってないからと笑うのも、それでもと受け継ぐのも自由にしろ。少なくとも、お前も平和が欲しかったんだろ?」
その言葉にクリスは胸の前で手を握る。
「あたしに大事な奴なんて………」
「残したいとはいったが、別に生きてる奴の為とは言ってねえよ。お前は戦争の無い世界を誰に見て欲しかった」
「……………………パパと、ママ………フィーネに、ソーニャ………」
「その過程が間違っていても、その願いは間違いじゃねえと俺は言ってやるよ」
クリスはあきらの胸に飛び込む。
「クリ──」
「うるせえ。みんな………」
ポタリと床に落ちる雫を見て、あきらはそれ以上何を言うこともなくただただ少女の気が済むまでその場に残り続けた。
「あ、あきらさん!」
「なんだ、待ってたのか」
家に戻ると未来と響が居た。なんとこの2人合鍵を持っているのだ。
「いやぁ〜、猫ちゃんを一目見たくて」
「猫?」
「あれ、野良猫を保護したんじゃ………」
そう言えば野良猫に餌をあげる的な事を言った気がする。
「…………あれ、あきらさん。服が少し伸びてますよ」
「ん? ああ、猫に引っ付かれて伸びた」
「……………これも猫の毛ですか?」
未来が長い銀髪を見つけつまむ。クリスの毛だ。猫と言い張るには長い。
「この長さ………女の人の髪の毛ですよね? 服につくほど密着したんですか?」
「え、そうなんですかあきらさん!?」
「鴻上あきら…………か」
館にて女は呟く。何故その名前が出てきたのか。無論、神として記される名だ。知っているものは知っているだろう。
だが『エンキが
『神が人と訣別するために』言葉を奪った呪い。嘗て誰もが持っていた繋がる力……統一言語を消し去った呪詛。
彼女の目的は統一言語を取り戻し人々を纏め、神として君臨し彼に並ぶ事。神ならざる身故に並び立つ事を拒絶されたのなら、並び立てる存在となり彼に会いに行く。
何千何万と言う時をその為に費やした一途な愛に生きる女。それが
だから解る。このような男、エンキの知り合いに居ない。エンキに近付く女は当然として男もそれなりに覚えている。
エンキからバラルの呪詛を張った理由を聞かされているような発言………それなりの仲となると自分が知らないはずが無い。エンキが去った後知ったのだろう。
(…………理由)
自分を拒絶する為に星から去り、追いかけてこないよう呪詛を残した。それがフィーネの出した見解。だが………。
『彼奴がいの……』
いの、の後に続く言葉…………命? 命をかけて? 命を賭して?
そこまでして自分を拒絶するだろうか。いや、する。するに決まっている。人と神とはそれだけの差があるのだ。
フィーネはそう決めつける。
だってそうじゃなかったら。もし、自分達を拒絶するためじゃなく、『何か』から守るために命を賭していたのなら、ひょっとしたらエンキはもう…………そんな考えに至らぬ為に、女はせめてマシな方に都合よく考え直す。懸けても賭しても、そこに危険がないなら生きている可能性は大幅に上がるのだから。
「待っていて、エンキ………今度はちゃんと対等になるから。貴方の隣に立つに相応しい女になるから」
その姿はまるで迷子の子供のようだ。そしてその迷子の手を引く誰かは、まだここにいない。