自分を仮面ライダーと勘違いした一般改造人間系転生者 作:超高校級の切望
鴻上あきらは体を鍛えている。人より高い身体能力、五感を持っているからこそ、加減を間違えないよう身体を動かし感覚を常に掴んでおく為だ。
ふらわーの仕込みを終えて、ランニング。
ある程度走ったら公園の鉄棒を使い懸垂、腹筋、背筋など…………。
「……………む」
「あ、どうも………助けてくださ〜い!」
その帰り、木から降りれなくなった響を助けたりしながらふらわーに戻った。
出会ったばかりのいじめられ、俯いていた頃と違い、明るくなった。そして、趣味が人助け。
自罰的な程に人を助けようとする彼女に、思うところがないと言えば嘘になる。それでもあきらもまた独善者を名乗り人助けをするので、強くは言えていない。
貯めた資金で何でも屋でも開いて雇ってみようか、とは何度か考えた。仕事という形にしてルールを決めれば少しは大人しくなるかも……なるだろうか?
「それで、またあきらさんに迷惑かけたの?」
呆れたように半顔で見つめてくる未来に小さくなる響。
人助けを趣味とする響と、独善者を名乗り何気に人助けをするあきらだが、当然というか男で大人なあきらの方がやれる事が多く、最終的に響が頼ることも珍しくない。
学園内だけなら響と未来だけでもなんとかなることは多いのだが………。
「そんなに迷惑かけてないもん」
「先月、子供の落とし物探すだけのはずが暴走族一つ潰すことになったよね」
落とした場所を巡っていたら暴走族の溜まり場に迷い込み、最終的にあきらが全員病院送りにして二度と非行に走らないことを誓わせていたのを思い出す響。本当に、どうしてああなった。
因みに未来は知らないことだが、数日後暴走族のバックに付いていたヤクザが軒並み逮捕されたとか。
「あきらさん、次の日も普通にジョギングしてたけど………」
時折何者なのだろうと疑問に思うことは多々あった。まあ、彼が何者であったとしても2人にとっては恩人である事に変わりはないのだが。
出会いから経った一ヶ月で、響を取り巻く環境をなんとかしてみせた。ちょうど父親が蒸発したばかりの響にとって、頼れる男の大人がどれだけ心の安定に繋がったか……。
「でも、あんまり甘えちゃ駄目だよ?」
「未来こそ………」
「私はそこまで甘えてないもん。勉強だって、答えじゃなくてコツとか聞くだけだし」
結論、二人ともそこそこ甘えてしまっている。
ぷっ、と2人揃って吹き出した。
「そろそろ行こう? あきらさん、お腹空かせてるよ」
「あー。私もお腹空いてきたかも」
入学祝いにご飯を奢ってくれると約束したあきらに合流するために、2人は待ち合わせ場所に向かうのだった。
そして次の日。夜の仕込みも終えたあきらはおばちゃんに言われ趣味を楽しむ事にした。
事故物件で買い取ったガレージ付きの一軒家。競馬やパチンコで稼いだ金の殆どを使い切って買った家のガレージの中は機械類に溢れていた。
あきらは前世ではバイク屋の息子に生まれ、幼い頃から機械に触れてきた。
当然工業校に入学していた。その知識を今世でも生かし、こうしてバイクを改造している。
「…………ん?」
と、不意に聞こえてくる警報。どうやらノイズが出るらしい。本来ならシェルターに避難するべきだが、どうせノイズがシェルターに向かえば何の意味もないし、と面倒くさそうなあきら。
それにノイズが現れても問題ないし、どうせならこのままと考えていると携帯が震える。画面に表示されるのは、未来の名前。
「もしもし?」
『あきらさん! 今、何処にいますか!? シェルター!? 響は!?』
「ッ! 落ち着け未来………」
耳に近づける前から聞こえてきた大声。その声量で、スピーカーにノイズが走る。
『あ、ご、ごめんなさい……』
「何があった?」
聞けば、響が風鳴翼のCDを買いに行ったまま戻る前にノイズ警報が鳴ったとのこと。
「俺もまだシェルターには入ってない」
『そう、ですか…………』
「こっちでも探してみる」
『そんな!? 私、そんなつもりじゃ………』
「シェルターに向かう道中と、中でだよ」
『気を付けてくださいね…………』
あきらは電話を切ると机の上に置かれていた音楽プレイヤーを乱暴に掴み取る。
市販のものより一回り大きい音楽プレイヤーには、コウモリマークのボタンがある。
「行け」
《キキィ!!》
そのボタンを押すと音楽プレイヤーに線が走り、コウモリの形へと変形し、どう考えても力学的に飛べるはずもないのに飛行し飛び出していった。
「はぁはぁ………っあ、はぁ!」
響は、未来の心配を現実にしたようにノイズに追われていた。
小さな女の子を背負って。
逃げ遅れた彼女を庇い走る内に追い詰められ、シェルターからどんどん離れて工業地区にまで迷い込んでしまった。
建物も何もかもすり抜けるノイズの視界から隠れるように物陰へ走り、建物の屋上へ登り息を切らし倒れる。
「…………死んじゃうの?」
響は安心させようと微笑み首を降る。だが、世界は残酷。ここにはこの2人しか人間がいない。ならば、人間を炭素に変えるべく動くノイズは当然………
「っ!?」
音もなく何時の間にか接近していたノイズの大群。時間経過か、人を炭素分解する際の自滅以外で消滅しない厄災が、たった二人に対して数えるのも億劫になるほど集まっていた。
逃げ場は、ない。と……
【■■■■■】
「…………え?」
先頭のノイズの頭が何かに貫かれた。あれは、機械のコウモリ?
どうしてノイズに攻撃が当たるのだろう? いや、それよりも………このコウモリは、こちらを守っている?
自分達の周囲を飛びノイズを威嚇するようにキイキイと鳴く機械のコウモリに困惑する響。
しかし、コウモリがノイズを倒せても、ノイズの数が多すぎる。
「……………っ!」
私に出来る事。
出来る事がきっとあるはず!
「生きるのを諦めないで!!」
その時、響の胸の奥から………その歌は溢れ出した。
「♪Balwisyall nescell gungnir tron♪」
同時刻、あきらは携帯に送られてきた映像を見て舌打ちする。まさかノイズに追われるどころか囲まれているとは。大方一緒にいる少女を助けようとしたのだろうが。
【■■■■■■■■■】
【■■■■■■■■■】
言語なのか鳴き声なのか、或はただの起動音を鳴らしながら現れるノイズ。当然だ、響を追うと言うことは今現在ノイズに近付くということなのだから。
「退け」
何時の間にか、あきらの腰に機械的なベルトが巻かれていた。そのベルトに備え付けられているポーチから取り出すのは白い金属板。
あきらは尾を飲む蛇の文様が描かれたベルトのバックルに差し込む。
『フラットメタル』
響く機械音。ある程度の距離に近付いてきたノイズが走り出すと同時に、スイッチを押し金属板が完全にバックルの中に入る。
『アナリシス』
ノイズの群れはあきらを囲うように広がる円柱型のエネルギー波に触れ消し飛び、コンクリートが広がる円に合わせ赤い粒子となって窪を広げていく。
「変………身」
バックルを180度回転させる。周囲を待っていた赤い粒子があきらの体へと吸い込まれていく。心臓が痛いほど強く脈打った。
『リビルド!!』
衝撃波が発生し、その余波でノイズが吹き飛ぶ。
円形に抉れた地面の中央に立つのは、血のように赤い鎧を身に着けたあきら。
銀の線が各所に走り、昆虫の複眼のような青い目が輝いた。
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