自分を仮面ライダーと勘違いした一般改造人間系転生者 作:超高校級の切望
仮面ライダーラスティへの変身後に不足するのは血液。撒き散らされている赤黒い液体は、死毒に侵された正真正銘の血なのだ。
実は改造人間であるあきらは血液の生成が人間より早いし、何なら『リビルドライバー』の機能の一つである『アレフリスティン』はあきらの余剰な血液を蓄え、新鮮なまま保管しているが、それでも変身後には血がそこそこ減る。
連日連夜戦い、疲れも溜まる。
風鳴翼は協力体制が納得いってないのか足並みを揃えないし響はずぶの素人。
実質翼とあきらのみが戦い、ノイズは三方向に散るから少し楽、程度。あきらは響のフォローに回る分、余計に疲れる。改造人間と言えど無敵ではないのだ。この世界、明らかに改造人間よりやばいのもいるし。
「響が、何か隠し事してるんです」
「年頃だからなあ」
「あきらさんは年頃じゃないですよね?」
「大人は隠し事だらけなんでな」
未来に相談があると呼び出されてみれば、この一ヶ月響の様子がおかしいということだった。帰るのが遅かったり、お風呂入って直ぐにベッドに飛び込んだり、授業中寝る時間も増えた。
何か隠れてやっているのは間違いない。同じく隠し事をしているであろうあきらに尋ねるも、答える気はないようだ。
「………やっぱり隠し事してるんですね」
「大人だからな」
「隠し事をしてることは、隠さないんですね」
響はきっと、何でもないと言ったのだろう。あきらはどうせ何かあることは察せられていると割り切っている。
「でも聞かないんだな」
「…………………」
聞いたところで隠される。隠し事をしていることすら隠されるのは、辛い。親友に話してもらえないことに、胸の奥がモヤモヤする。
「あきらさんの隠し事は、響に関係あることですか?」
「ああ」
「でも、響はあきらさんが知ってることを知らない」
「ああ」
「それは、私にも出来ることですか?」
「いいや」
「……………私には、何もできませんか?」
「いいや」
質問に答えられる度に俯いていた未来はその言葉に顔を上げる。
「飯でも風呂でも、帰ってきた響を労ってやれ。彼奴の日常がそこにあると証明してやりゃ、彼奴も気が休まるだろ」
「非日常的なことでもしてるんですか?」
「そこは言えない。まあ、話さなくてもいいから隠し事があるかは聞いておけ。それで何も教えてくれないなら、喧嘩の一つでもすれば良い」
喧嘩という言葉に、不安そうな表情を浮かべる未来。響と喧嘩して、仲違いして、仲直り出来ないかもと不安なのだろう。たった2年、されど2年近く見てきたあきらからすれば余計な心配だ。
「お前等は仲直り出来るさ。どんなに喧嘩していてもな。俺が保証してやる」
「…………じゃあ、仲直り出来なかったら責任取ってくれますか?」
「ああ、3人で遊園地に連れてってやる」
「そんな単純じゃ………ああ、いや…」
でも、響だしなあと言葉を飲み込む未来。
「私が仲直りしたくないと思うかもしれませんよ?」
「未来が? その場合は………どうしよ」
響なら楽しいところに連れて行って飯でも渡せば機嫌は直るだろうが、未来となると。
「誠心誠意謝る以外思いつかん」
「……………私、どう思われてるんですか?」
「割と面倒くさい女」
「怒りますよ?」
もう、と頬を膨らませる未来。少しは元気が出たようだ。
「あきらさんも、何時か話してくださいね」
「…………ああ、何時かな」
「そうだ! 忘れるところだった。あきらさんって、車持ってましたっけ?」
「バイクだけだが」
「そっかあ…………」
その言葉に落ち込む未来。
「その、明日の流れ星が…………」
「ああ………サイドカーつければ3人で行けるが、門限は?」
流れ星を見たいという理由で夜間外出が許されるのだろうか? そう尋ねるあきらに、未来は人さし指を唇に添える。なるほど…………。
「悪い女だ小日向未来」
「内緒、ですよ?」
「デュランダル?」
ここ一ヶ月のリディアン音楽院を中心としたノイズの出現。異様な数の、異様な頻度。これを人為的なものと判断し、ならば何が狙いかと問われれば完全聖遺物デュランダルだと翼は言う。
それは二課本部のさらに地下、アビスと呼ばれる最深部に保管され、政府の管理下のもとに研究されている聖遺物らしい。
「翼さんのアメノハバキリや、響ちゃんの胸のガングニールのような欠片は、装者が歌って、シンフォギアとして再構築しないとその力を発揮出来ないけど、完全状態の聖遺物は一度起動すれば100%の効果を発揮し、さらには装者以外の人間でも使用可能だという研究結果が出ているんだ」
因みにこれも了子が提出した櫻井理論だ。ただし、完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要。
今の翼ならあるいは……しかし起動実験に必要な認可が下りるかは解らない。それ以前に安保を盾に米国が引き渡しを要求しており、下手につつけば国際問題に発展しかねないそうだ。
「まさかこの件、米国政府が糸を引いてるなんてことは」
「調査部からの報告によると、ここ数ヶ月数万回に及ぶコンピューターへのハッキングを試みた形跡が認められているそうだ。流石にアクセスの出処は不明。それらを短絡的に米国政府の仕業とは断定できないが」
勿論痕跡は辿っている。本来はそういった事こそが彼等の本領の筈なのだ。
と、そこで翼を迎えに来た緒川慎次。表向きには翼のマネージャーらしい彼は、アルバムの作成があるらしく、翼を連れて行った。
「私達を取り囲む脅威は、ノイズばかりではないんですね」
「うむ………」
「何処かの誰かがここを狙っているなんて、あんまり考えたくありません」
「大丈夫よ」
不安そうな響に、了子はニッコリ笑ってみせる。
「なんてたってここは、テレビや雑誌で有名な天才考古学者櫻井了子が設計した人類の砦よ。先端にして異端のテクノロジーは悪い奴らなんか寄せ付けないんだから」
「よろしくお願いします」
「ええ」
『どうして人類って争うんでしょう』
「………それ最後には力で黙らせる俺に聞くか?」
響からの電話にあきらは肩を落とす。時折なんでも屋をやるあきらは、不良やヤクザなんかは最終的には力で黙らせるのが早いと判断するのだ。
「人と人が争う理由ねえ………んなもん動物でも同じだろ」
『う〜ん。でもほら、人類には言葉があるわけで』
「じゃああれだ、祝福」
『祝福、ですか? 了子さんと逆だなあ』
誰だ了子って。
「人と人が違う証拠だ。一人一人として存在してるから、喧嘩もするし、だけど仲良くなったりする」
『おー、なんか……それっぽい!!』
どうやらあきらの答えはお気に召したらしい。
『それじゃあ、また明日! 流れ星、楽しみにしてますね!』
「ああ」
そして翌日。リディアンから程近い公園にて響達を待つあきら。そろそろ集合時間だが…………。
「…………あきらさん」
「未来……一人か?」
やってきたのは未来一人。申し訳無さそうな顔をしているが、俯く理由はそれだけではあるまい。
「…………その、響が急に用事ができたって」
「………………」
携帯を見るあきら。連絡は届いてない。連絡を未来に任せたのだろう。それだけ慌てていた…………ノイズか? しかし警報は………。そこそこ離れた場所だったのか?
「待ってもらったのに、すいません」
きっと、未来はギリギリまで待とうとしていたのだろう。でも来そうにないから、待たせたあきらに直接謝ろうと…………。
「……………………」
仮にもノイズ対策兵器のシンフォギア。雑兵の如きノイズなど、響でも余程のことが無い限りは怪我をしないだろう。
「ほら……」
「え?」
投げ渡すのはヘルメット。
「カメラ貸してやる。響に、流れ星を撮ってやれ」
「あきらさん…………ありがとう」
「俺も流れ星見たいからな」
未来をサイドカーに座らせたあきらは、ハンドルを捻り流れ星がよく見えるスポットへ向かった。