自分を仮面ライダーと勘違いした一般改造人間系転生者 作:超高校級の切望
大量のミサイルにより爆炎に包まれた公園の一角。大丈夫だろうか? あの子、生きてる?
「くっそがぁ!!」
「あ、生きてた」
煤だらけながらも目だった怪我はない。あの鎧の性能だろうか?
『抹殺失敗。対象脅威、上方修正』
すごく物騒な事言った、このロボット。
「こ、殺しちゃ駄目だよ!?」
響の言葉にロボットは振り返り、またネフシュタンの少女に目を向ける。
「スクラップになりやがれ!!」
『
キャタピラを高速回転させ鞭を回避したロボット。ガチャンと音が鳴って、三角キャタピラが収納され、体が半分に開き…………。
「はっ、大した変化じゃなさそうだな!!」
『バトルモード』
現れたのは鎧を纏った人間にも見える人型ロボット。ネフシュタンの少女はバイザーの隙間に指を入れ目を擦り、もう一度見る。
「…………なんでだ!?」
『ピピ?』
「今の変形過程の何処にその姿になる要素があった!!」
『企業秘密』
「企業なのか!?」
少女が驚愕する中ロボットは大地を蹴り接近する。
「………なんだ、あのからくりは」
「翼さん!」
翼はその光景を見ながら眉毛を寄せる。
突如現れた謎のロボット。それが、自分の因縁とも呼べる鎧を纏った少女と争っているのだ、何も思わぬ訳が無い。
『スイッチオン・コレダー』
飛び上がったかと思うと足が槍のように変形し、放電しながら迫る。少女は鎖の先端にエネルギーを圧縮させ放つ。
「はっ! ちったあやるが、ネフシュタンの敵じゃねえなあ!!」
吹き飛ばされたロボットは地面に着地しながらネフシュタンの少女を見据える。げに恐ろしき完全聖遺物。
神が遣わした炎の蛇より民を救う青銅の蛇の名を冠する鎧は、不死の象徴たる蛇に相応しい無限修復と、無限に等しいエネルギー。
出力自体は低くとも、長期戦は不利だ。
「遊んでろ!」
と、大量のノイズを召喚する。先程ノイズを蹂躙したロボットは、しかし先程より殲滅速度が遅い。弱くなっているのではなく、単純に多対一と一対一をコンセプトとした機能の違いだろうが。
「っ! またぁ!」
響へ接近する粘液を放つノイズ。二度目ゆえに回避するも、通常のノイズも迫ってくる。
「さぁて、それじゃあついてきてもらうぜ」
と、少女は再び響に詰め寄ろうとする。
「っ! どうして、どうしてこんな事を!?」
「はっ。自分がどういう目に遭うかに、どんな理由があるか知らなきゃ満足出来ねえか? 甘ったれんな日向者!」
何処か不愉快そうな少女。と、そんな少女に向かって飛んでくる剣。
翼の放った剣だ。少女は舌打ちしながら弾く。
「ちょっせえ!!」
【NIRVANA GEDON】
先程のエネルギー弾よりもエネルギーを込めた一撃が翼を吹き飛ばす。
「翼さん!」
「ふん。まるで出来損ない」
響が叫び、少女が嘲笑する。ロボットは、足のパーツが開いて飛び出したアンカーが地面に突き刺さる。
「確かに、私は出来損ないだ」
「あん?」
「この身を一振りの剣と鍛えてきたはずなのに、あの日無様に生き残ってしまった。出来損ないの剣として、恥を晒してきた。だが、それも今日までの事。奪われたネフシュタンを取り戻す事で、この身の汚名を雪がせて貰う」
剣を杖に立ち上がる翼。満身創痍、とまではいかずとも少なくないダメージを受けている。
「そうかい、脱がせるものなら脱がして………何!?」
とどめを刺そうとした少女は、しかし体が動かない。何かに引っ張られるような感覚に見れば、己の影に翼が放った剣が突き刺さっていた。
【影縫い】
「くっ! こんなもんで私の動きを!」
そもそも、動きを封じた程度で何が………。
「っ! まさか、お前!?」
「月が覗いている内に、決着をつけましょう」
「歌うのか、絶唱を!?」
「翼さん!?」
「防人の生き様、覚悟を見せてあげる! 貴方の胸に焼き付けなさい!」
と、翼は響に剣を向け叫ぶ。己の生き様を、その胸に灯る覚悟を示すために。
「やらせるかよ! 好きに、勝手に!!」
必死に動こうとするが、月は登り影はそのまま。少女は動くことかなわない。
「♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪」
「っ!!」
響くは破滅を招く歌。聖遺物の力を解放し、その代償に使用者の身を焼く諸刃の剣。
「♪Emustolronzen fine el baral zizzl♪」
歌を紡ぎながら少女へと歩み寄る翼。響の側でキュイイと音が鳴る。
「♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪」
少女は錆びついた人形のような動きで体を動かしノイズを召喚するが、狙いは外れ翼の遥か後方に召還された。その後の命令も送れず棒立ちのノイズ。
「♪Emustolronzen fine el zizzl♪」
そして翼が少女を抱きしめた。シンフォギアから放たれるエネルギーは余波でノイズを消し飛ばす。当然、至近距離で食らった少女も吹き飛んでいく。
「ぐ、あ………」
されど鎧型の完全聖遺物。装着者たる少女の命を守り切る。しかし、この鎧はそれでも人の手に余る。
「あ、あああ!?」
砕けた鎧から覗く少女の肌に根を張るネフシュタンの鎧。再生しながら使用者の傷口から入り込み蝕んでいく。これ以上は…………!
「チィ………!!」
少女は撤退を選択し、その場から飛び立つ。まさにその瞬間、ロボットの腹から突き出した砲身が輝く。
『チャージ完了。システムオールグリーン! 滅殺消滅ビーーーーー厶!!』
「はっ? きゃあああああああ!?」
少女は極大の光の柱に飲み込まれた。
「つ、翼さん………翼さん!!」
響は翼に駆け寄ろうとするも先程の衝撃波でボロボロになった地面に転んでしまう。そして同時に車が1台飛び込んできた。
「無事か、翼!!」
降りてきたのは弦十郎。了子も乗っている。
「……私とて、人類守護の務めを果たす防人。こんなところで、折れる剣じゃありません」
振り返った顔は、目や口から溢れる血で赤く染まっていた。
それでも気丈に笑みを浮かべていた翼は、しかしその場で倒れた。
「……………! 翼さーーん!!」
また生き残った。また無事だった。
自分だけが、助かった。
「くっそ、あのビックリドッキリ変形ロボめ………」
路地裏をふらふらと歩くネフシュタンの鎧の少女。現在は鎧を体から剥がしコンパクトサイズにしてポケットにしまったが、体内に侵食した一部はそのまま。
自らを崇めぬものを殺す神の罰たる炎の蛇に全身を這われ噛まれるような激痛に、少女の肌に球のような汗が噴き出る。
「………はぁ、っ………フィー、ネ」
ドサリとその場に倒れ込む少女。意識が闇に飲まれていく。
「大変! あきらさん!」
そんな声が、完全に気を失う前に聞こえた。