ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
そんな気持ちで書く話。
賢者の石編が始まったら、主人公とその母親、貴族の少年の設定を出す予定。
リリーに友達がいたように、ペチュニアにも寂しさを埋めるような親友がいたら良いなって思いました。
感想や評価、沢山してくれたら嬉しいです!
プロローグ
私は友人だと思っていた少女たちに影で馬鹿にされていた。その事実は私の胸に深々と刺さり、終ぞ終わることのない痛みを背負うことになってしまった。
「そ、そこで何してるの?今は授業中よ!」
授業をサボり、必死に涙を堪え屋上に向かうと、そこには大の字で寝転がる見知らぬ少女の姿があった。
「ねぇ、あの雲見てよ。魚の形をしているわ。その下の小さな雲はケーキみたいで美味しそうね」
私の問いかけを無視して少女は私に話しかけてくる。
「ねぇ、どうして泣いているの?何か悲しい事でもあったの?」
「な、泣いてなんかない!目にゴミが入っただけよ!」
「そう。なら良かったわ」
そう言って少女はまた空を眺め始めた。
私は少女の隣に腰を下ろし、同じように空を見上げる。雲は風に流されるように形を変えながらゆっくりと流れていく。
「ねぇ、どうしてあなたはここにいるの?」
「私?私は空を見るためにいるのよ」
そんな訳の分からない事を言って少女は微笑んだ。
「ねぇ、どうしてそんなに空を見上げるの?空が好きなのかしら?」
「だって、空を見ている間は悲しい事を忘れられるでしょう?それに空はどんな時も変わることなくそこに居てくれるもの」
少女は立ち上がり両手を広げて大きく深呼吸をした。
「だから私は空を見上げるのが好きなのよ」
そう言って少女はまた笑う。私も思わず笑みを溢してしまう。少女と話していると自然と心が軽くなった気がしたのだ。
それからというもの、私は毎日のように屋上へと足を運び、少女と一緒に空を眺めた。
「そういえば、まだ名前を聞いていなかったわね。私はペチュニア・エバンズよ。あなたの名前を聞いても良いかしら?」
少女は空を見たままそう問う。
「素敵な名前ね!私の名前は……よ!」
「ごめんなさい、風の音で聞こえなかったわ。」
「私の名前はサファイアよ。サファイア・アンバー・ベスティアン。よろしくね」
そう言って少女は手を差し伸べる。
「ベスティアンって、あのベスティアン伯爵の?」
「私、ベスティアンの一員だって言われても実感がないんだ。何故なら私は養女、だから」
私は寂しそうにそう呟いたサファイアの顔が今でも忘れられない。家族だけど、血の繋がりもない赤の他人だという事実がどれだけ彼女を苦しめているのかは分からないが、何故か彼女を抱き締めたくなった。
「わあっ、どうしたの?ペチュニア」
「……別に、少し寒いからアンタで暖を取ろうとしただけよ」
「うふふ、そうね。少し肌寒いものね」
それが私とペチュニアの出会いだった。
「はぁ」
9月1日、学年がひとつ上がった日の放課後のこと、いつものように2人で空を眺めていると、私は昨日のことが忘れられず、ついため息を吐いてしまった。
「どうしたの?ペチュニア。浮かない顔をして、何かあったの?」
「実は、ね。妹と喧嘩をしてしまったの。私も言い過ぎてしまったとは思うけど、でも両親が妹ばかりを気にかけてるのも悪いのよ?私だって!……」
「チュニー?」
「……私だって、同じ娘なのに。」
サファイアに昨日のことを話すと、自然と本音が漏れてしまった。
「なぁんだ、そんなこと」
「そんなことってなによ!私は真剣に悩んでいるのよ!?」
私がそう言うとサファイアは優しく微笑み私を抱きしめてくれた。
「ペチュニア、私がベスティアン家の養女となる前に、私にも妹がいたの。その子の名前はアリアネル。銀色の美しい髪を持った美少女だったわ。でもその子と私はよく比べられ、妹ばかり不当な評価を付けられていた。私は妹を不憫に思いつつも、何もしなかった。でもある日、私は妹より劣っていると判断されて家族に捨てられたの。最後の慈悲として、貴族の家に引き取られたのは不幸中の幸いだったわ。私はね、気付いたんだ。自分がいかに嫌な女だったのか、を。その点、ペチュニアは酷いことを言ってしまったとすぐに理解してる。あなたは私と違って良いお姉ちゃんよ。」
「サファイア、あなた……」
「でも!だからこそ、妹さんと仲直りしないとね。ペチュニアは妹さんが嫌い?」
「そんなことないわ!リリーは大切な妹よ!」
私が即答するとサファイアは嬉しそうに笑う。その笑顔を見ると胸の奥が熱くなるのを感じる。
「なら、やるべきことは1つだね」
「……そうね」
9月3日、私は初めてホグワーツに通う妹に手紙を送った。すると翌日には家に手紙が届き、姉妹は仲直りを果たした。
「サファイア、私、妹に酷いことを言ってしまったわ」
「でも仲直りできたんでしょう?なら大丈夫よ。ペチュニアの思いはきっと伝わったわ」
サファイアは私に優しく微笑んでくれる。そんな彼女の笑顔を見ていると不思議と心が安らいでいく。
「ねぇ、サファイア」
「なぁに?ペチュニア」
「……ありがとう、いつも私の話を聞いてくれて。あなたのおかげで、私は少し人生が楽しくなったわ。」
私がそう言うと彼女は少し驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの優しい表情に戻る。
「私もよ、ペチュニアと過ごす時間は私にとってとても大切で楽しい時間だわ」
そう言って私たちは笑い合う。
あぁ、本当に私は幸せ者だ。
それからというもの私とサファイアは毎日のように一緒に過ごし、時には喧嘩もしたけどすぐに仲直りをしてまた笑い合った。
「ねぇ、チュニー」
「なぁに?サフィ。」
私はゆっくりと深呼吸して彼女を見つめる。
それから数年が経過し、私が20歳、サファイアが18歳だった年のとある日、サファイアが涙を流しながら学校近くの公園の花時計の目の前で彼女は蹲っていた。
「私がベスティアンの一員になる前、私には、好きな人がいたの。」
「前、そんなことを話していたわね。それがどうしたの?」
優しくそう尋ねると、サファイアは顔を上げ涙でぐちゃぐちゃになった顔を私に向けた。
「さっき、学校の授業が終わってね、公園で空を眺めていたら、その人が現れて。その人ね、私を殺さなきゃいけないんだって。」
「えっ、どういうことなの?なんでそんなことになったの?警察には伝えた?」
「警察には言えないわ。そういう決まりなの。それに、私もよく分からないわ。でも、彼、凄く苦しそうで、辛そうだったの」
サファイアはそう言ってまた涙を流した。私は彼女の身体を優しく抱き寄せ頭を撫でる。すると彼女は私に体重を預けてきたので、そのまま彼女を抱きしめる力を強める。
「ねぇチュニー、私、死にたくないよ」
「……そうね」
「もっと生きていたいよ」
「……うん」
「まだやりたいことが沢山あるのに……」
「そうね」
私はただ相槌を打ちながら、彼女の背中を優しく摩り続ける。すると次第に落ち着いてきたのか、サファイアは顔を上げて私を見つめる。その目には大粒の涙が浮かんでいた。
「……チュニー」
「なぁに?」
「私ね、殺されるって分かっててもあの人が好き。私が家から追放されて、妹が婚約者になったみたいだけど、それでもあの人が好きなの。大好きなの、愛して、いるの。」
サファイアは泣きながらも懸命に思いを伝えようとしている。
そんな彼女の姿を見て、私まで泣きそうになる。
「私もね、あなたを愛しているわ。あなたは私の可愛い可愛い後輩で、スカイクラブの仲間で、そして誰よりも大切な親友よ」
そう言うとサファイアはさらに涙を零す。私はそんな彼女の身体をもう一度強く抱きしめた。
「ねぇチュニー、もし私が死んだら……その時は……」
「……っ!そんな縁起でもないこと言わないで!」
思わず声を荒らげてしまう。そんな私を見て彼女は優しく微笑むと、ゆっくりと口を開いた。
「そうね、ごめんなさい。でも、私はね……本当は死ぬのが怖いわけじゃない。ただ、好きな人に会えなくなるのが怖いだけなのよ」
そう言って彼女は涙を流しながら微笑んだ。そんな彼女を見ていたら、今度は私の目に涙が溜まっていた。サファイアは私の目に溜まった涙を優しく拭う。
「……沢山泣いたら、お腹すいちゃった。近くのピザ屋さんに行かない?あそこのピザ、美味しいって有名なの」
そう言って彼女は立ち上がる。私も立ち上がりサファイアの手を取った。
「そうね、行きましょうか」
こうして私たちは公園を後にした。
その後、私たちは今日のことをなかったことにし、美味しいものを食べたり、空をぼんやりと眺めたり、バーノンの惚れけ話をしたりと、普通の友達として接し続けた。
ペチュニアは21歳の誕生日にバーノンと結婚し、盛大な式が執り行われた。
その式に妹リリーは参加しなかったが、親友であるサファイアが参加し、2人の結婚を涙ながらに祝福した。
「おめでとう、チュニー。バーノンさんとお幸せにね!」
「ありがとう、サフィ。あなたももっと幸せになるべきだわ」
ペチュニアにとって人生最大の幸福な日だった。殺されるかもしれないと話したサファイアが生きていたことに涙を流し、彼女は永遠に私の前から消えないのだと確信を持った。
しかし、そんなものは思い上がりで、ただの願望だった。サファイアは結婚式の日を最後に、私の前から忽然と姿を消したのだ。
ペチュニアが22歳の時、一人息子のダドリーを授かった。それから約4ヶ月が過ぎた頃、妹が死んだと報せがきた。そして彼女の一人息子を育てることになる。何度もバーノンとハリーを育てることでぶつかるが、最終的にバーノンが折れてハリーを育てることが決定した。
そんな頃、私の元にベスティアン家から訃報が届いた。伯爵夫妻とその娘である親友のサファイアが、押し入った強盗によって殺され、亡くなったそうだ。
「ああ、なんで、どうして、サフィまで死んでしまうなんて」
私は涙を、悲しみを、慟哭を抑えられず、みっともなく子供のように泣いた。バーノンはそんな私を見て、強く抱き締め、優しく背をさすった。
「バーノン、わざわざ会社を休ませてごめんなさいね」
「仕方ないことだ。まさか、サファイアが亡くなってしまうなんてね。それも、こんな時期に」
バーノンは忌々しそうなものを見る目でハリーを見つめる。
「ダドちゃんと……ハリーを頼んだわ。じゃあ、行ってくるわね」
「……行ってらっしゃい、チュニー」
私はベスティアン伯爵家へと向かった。
「サファイア、あなたの訃報が届く前に届いたあの手紙、あの手紙が真実だとしたら、私たちは本当に似た者同士だったのね。サフィ」
私は彼女から届いた手紙を取り出し、その場で破り捨てた。