ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
流れる風景を見ながら、それぞれ思い思いに過ごしていると、突然コンパートメントの扉をノックする音が聞こえてきた。
午後13時、ホグワーツの大広間では何人もの教師たちが会議に参加し、入学者リストについての確認を行っていた。
「最後にアメジスト・ダイアナ・ベスティアン……以上が今年度の入学者になります」
緑色のローブに身を包み、とんがり帽子を被った女性──魔女、ミネルバ・マクゴナガルは入学者のリストを全て読み上げると、元いた席に着席する。
「今年は"あの"ハリー・ポッターが入学する年ですな。ようやく、魔法界の光にお会いできる」
小さな背丈に、眼鏡をかけた男性──魔法使い、フィリウス・フリットウィックは少し興奮気味にそう言うと、校長アルバス・ダンブルドアは彼の言葉に頷き、口を開く。
「ああ、そうじゃの……それにしても、今年の入学者は随分と、我の強そうな生徒が集まっているのう」
ダンブルドアはそう言うと、とある男子生徒のプロフィールが書かれた紙をテーブルに置く。その生徒の名前は──ダドリー・ダーズリー。
「……まさか、"あの"ハリー・ポッターを冷遇し、彼を馬鹿にしてきたダーズリー家の息子がホグワーツに通うことになるなんて、驚きです。彼らは、魔法や非科学的な現象を毛嫌いしているというのに……」
ダーズリー家は『ま』が付くものを禁止し、魔法や非科学的な現象、幽霊やエイリアンといった未知の生物を毛嫌いしており、自分たちは普通なのだと、嫌に強調している一家だ。
ダドリーが生まれて数ヶ月後、家の前に置かれていたハリー・ポッターを仕方なく育てるも、ハリーが普通ではないと分かると、ハリーを異常な存在として貶したり、罵倒したりと、虐待をしてきた。そんな家の息子が非科学的な存在とされている、魔法使いとして覚醒するだなんて、一体なんて最悪な悪夢なのだろう。
「……いっそ、何かの間違いであれば良かったのですがね。どうやらこれは現実のようです」
マクゴナガルは心底不愉快だと言わんばかりの表情、態度で憎々しげにダドリーのプロフィールが記載された紙を睨み付ける。
「……そういえば」と思い出したように、ふくよかな魔女、ポモーナ・スプラウトは口を挟む。
「確か、今年入学する女子生徒の中に、ダーズリー家が養父母として面倒を見ている生徒がいたはずですが、名前はなんだったかしら……ええと、確か……」
ポモーナはうーんと頭を悩ませる。
「……アメジスト・ダイアナ・べスティアン。マグル生まれの魔女で、英国貴族べスティアン家の血を引く娘です」
「ああ、そうでしたわ!ありがとう、ミネルバ!」
ポモーナがそう言うと、ミネルバ・マクゴナガルはコホンッと咳き込み、話を続けた。
「その女子生徒は、ハリー・ポッター、ダドリー・ダーズリーと共にダーズリー夫妻に育てられたそうですが、まあ、あのダーズリー家のことですから、何か裏があるのでしょうけど……」
ミネルバがそう呟くと、ダンブルドアはアメジストのプロフィールが書かれた紙を手に取る。
「アメジスト・ダイアナ・セルウィン……べスティアン伯爵家の養女、サファイアの娘。1980年10月28日、屋敷に強盗が押し入り伯爵夫妻とサファイア嬢が殺害される。その後、数日伯爵家で過ごした後、11月1日にダーズリー家に引き取られ、養父母の元で育てられる。ダーズリー家に引き取られてから、物心着く頃に絵の才能が覚醒する」
「……随分と、複雑な家庭事情ですね」
「そうじゃのう……魔法界では珍しいことではないが、アメジスト嬢の場合、父親の爵位は伯爵位……つまりは貴族じゃ。そんな貴族の娘が、なぜマグルであるダーズリー家に引き取られたのか……」
ダンブルドアがそう言うと、マクゴナガルは「確かに……」と頷く。そして、少し間を置くと口を開いた。
「まあ、そのことはおいおい分かってくるでしょう。今はまず、今日の入学式に集中しなければ……」
「そうじゃな。では、そろそろ……」
ダンブルドアはそう言うと、マクゴナガルに目配せする。マクゴナガルは小さく頷き、大広間を美しく飾っていく。
「さあ、入学式まで時間がありません。皆さん、準備を始めますよ」
マクゴナガルの一声で、教師たちは入学式の準備を始める。杖を振り、大広間をいつもよりほんの少し、豪華に美しく飾っていくのだった。
◇◇◇
ハリーたちがホグワーツ特急に乗ってから30分が経過した頃、コンパートメントの扉をノックする音が聞こえた。アミィが「どうぞ」と許可を出すと、扉はゆっくりと開き、そこにはニコニコ顔の中年女性が、沢山の品物が入ったカートの取っ手を握って、立っていた。
「車内販売よ。何かいりませんか?」
初めて見る魔法界のお菓子に私たちは目が釘付けになっていた。女性に幾つかおすすめを聞き、それらを全て購入する。
ハリーたちは、かなりの額のお小遣いを貰っており、少し使ったところで痛くも痒くもない。その為、大量のお菓子を購入したのだが、大食いのダドリー、裕福な暮らしをしてきたアミィはこれが大量だということに気付いていない。
「……そんなに使って怒られない?」
ハリーが心配そうに言うと、ダドリーはもしゃもしゃと百味ビーンズを食べながら喋り出す。
「べふにふつふだお?おまえもほほいんだがら、もっどぐえよ」
ダドリーが食べながら話すと、アミィは目を細めて冷たい声でダドリーを叱責した。
「ダドリー!食べながら話すなんてお行儀が悪いわ。それじゃあ、ダーズリー家の品位を落としてしまうわよ?」
「ごへんごへん」
ダドリーはすぐに申し訳なさそうに謝るが、食べながらの謝罪なので、アミィはさらに目を吊り上げる。ハリーはアミィに怒られたダドリーを見て、クスリと笑い合う。その頃には、今日買った量のお菓子が異常だなんてこと、ハリーの頭から綺麗に消え去っていた。
「……」
それから数分後、ハリーたちはそれぞれ好きに過ごす。ダドリーは持ってきた電池式のゲーム機をいじり、アミィはスケッチブックを取り出し鉛筆で何かを描き始める。ハリーは暇つぶしに、以前アミィの叔父に貰った小説を取り出し、それを読み始めた。
それから約2時間が経過した頃、突然コンパートメントの扉がノックされた。また車内販売かと思ったハリーは、すぐに飛びに向かって「どうぞ」と言う。
「失礼するよ……」
コンパートメントにやって来たのは、泣きそうな顔をした少年だった。アミィは今にも泣き出してしまいそうな彼に優しい声と表情で尋ねる。
「そんな顔をして、一体どうしたの?」
「それが……」
話を聞くと、彼が飼っていたヒキガエルが逃げ出してしまったらしい。
「それで、もしどこかで見ていたら教えて欲しいんだ」
少年はそう言うが、ハリーたちはコンパートメントに入ってから一度も外に出ていない為、当然ヒキガエルなんて見ていない。なんの力にもなれなさそうだ。
「ごめんなさい、ヒキガエルは見ていないわ。早く見つかると良いわね」
「そうだね……きっとすぐ見つかるさ」
アミィが励ましの言葉をかけると、彼女に釣られてハリーも少年を励ますように笑いかける。しかし、ダドリーだけは違った。
「……そんな、今死にも死にそうです!って顔で探して出てくるわけねぇだろ。飼い主なら、しっかり見ててやれよ。ホグワーツ特急には梟を飼ってる生徒が何人もいる。今頃、お前のヒキガエルは食べられてるかもな」
「ダドリー!」
ハリーは思わず声を上げた。すると、少年は顔を真っ青にし、目に涙を浮かべる。そして、そのまま走ってコンパートメントを出て行ってしまった。
「ちょっと!今のは酷いわよ!どうしてあんな事を言ったの!?」
アミィが怒りを露わにしながらダドリーを責め立てると、彼はムスッとした顔でそっぽを向く。
「だって、あいつがあんまりにも情けない顔してたから……喝を入れてやろうと思ってさ」
「だからって、そんな言い方ないじゃない!」
ダドリーはアミィに怒られ、バツが悪そうな顔で黙り込む。そんなダドリーにアミィは呆れ、溜め息を吐いた。
「……ダドリー、私は家族を傷付ける人間は大嫌いよ。如何なる理由があろうと、他者を傷付けて良い理由にはならないわ。でもね……もっと嫌いなのは、どんな理由があったとしても他者に迷惑をかける家族は大嫌いよ」
そう言うと、ダドリーはハッとした表情で困ったようにアミィを見つめる。そして数秒後、観念したようにこう言った。
「確かに、少し、少しだけ……言い過ぎた」
ダドリーはついに自分の過ちを認めた。あの頑固で人の言葉なんて素直に聞かないダドリーが、だ。ハリーは目を丸くして驚き、アミィはそんなダドリーを見て優しく微笑んだ。
「分かれば良いのよ。ダドリー、あなたは確かに横暴で我儘で、ずる賢い人よ。でも、あの嵐の日、ミスター・ハグリッドに連れて行かれそうになった私を守るように、ホグワーツに行くと宣言したあなたは素敵だわ。誰よりもかっこよかった。あなたには、確かに思いやりや優しがあるの。それをもっと色んな人に知ってもらえれば、きっとあなたのその性格も受け入れて貰えるはずよ」
アミィはそう言い、優しくダドリーの頭を撫でる。すると、ダドリーはそっぽを向いて、何度もうんうんと頷いた。その様子にアミィは満足そうに笑い、ハリーはやれやれといった様子でアミィに笑いかけるのだった。
その後、平和な時間が続き、ハリーは読書を再開し、ダドリーは菓子を食べながらゲームをし、アミィは描いた絵に色鉛筆で色を塗っていく。
それから数分後、またまたコンパートメントの扉がノックされた。
「どうぞ」
アミィがそう言うと、扉がガラリと開けられる。そしてそこには夢の中で怪物に襲われていた少女が立っていた。アミィは驚き目を見開く。
「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」
どうやら、先程コンパートメントしに来少年はネビルというらしい。どうやらこの少女は、彼の友人のようだ。
「さっき、その……えっとネビル?が来て、僕たちは見ていないって伝えたよ」
ハリーがそう言うと、少女は「そう」と言いコンパートメントから出ようとした。しかしその時、少女はアミィの膝にあるスケッチブックを見て目を見開いた。
「まあ!すごい!それってホグワーツ特急の絵よね?凄いわ!まるでプロの画家の絵みたいね!」
少女は瞳を輝かせ、アミィの手を握る。
「私はハーマイオニー!ハーマイオニー・グレンジャーよ!名前を聞いても良いかしら?」
アミィは少し照れ臭そうに笑い、夢の中の少女とそっくりのグレンジャーを見て混乱しながらも名を伝える。
「……わ、私はア、アメジストよ。良かったら気軽にアミィと呼んでちょうだい。よろしくね、ミス・グレンジャー」
アミィがそう言うと、ハーマイオニーは向日葵のように眩しい笑顔をアミィに向ける。
「ええ!よろしくね!私、あなたの絵がとっても好きになったわ。ぜひ仲良くしましょう!私のことも気軽にハーマイオニーと呼んでちょうだい」
そんな二人を見て、ダドリーも元気よく父親自慢がメインの自己紹介を始める。
「おれはダドリー・ダーズリーだ。おれの父さんは社長なんだ。どうだ?すごいだろ」
「僕はハリー。ハリー・ポッターだよ。よろしくね」
グレンジャーはダドリーの自己紹介をスルーし、ハリーを見て目を丸くする。その表情には驚きの色が見て取れる。
「まあ、ほんとに?私、あなたのこと全部知ってるわ。参考書を2、3冊読んだの。名前を言ってはいけない例のあの人に打ち勝った英雄、生き残った男の子……魔法界の奇跡だって言われているそうね」
ハリーはグレンジャーの言葉に、居心地が悪そうな顔で苦笑した。
「……って、長居しすぎてしまったわね。もしヒキガエルを見たら、また教えてちょうだい……じゃあ、またね」
そう言い、グレンジャーはコンパートメントを出て行った。グレンジャーがコンパートメントから出てから数分後、またもやコンパートメントがノックされた。
「今日は来客が多いわね」
アミィがそう呟くと、ダドリーとハリーも顔を見合せ頷いた。
「失礼するよ」
扉を開けて中に入って来たのは、輝くプラチナブロンドの髪に灰色の瞳を持った美少年だった。
ついにハーマイオニーとネビル登場です。
ロンが出てきていないのは、アンケートの結果によるものです。
次回、ドラコ・マルフォイVSダドリーです。
皆さん!お見逃し無く!
こうして原作は少しずつ崩壊していくのです(泣)