ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
ハーマイオニーが相棒ポジになってます。
翌朝、いつもより少し早めにアミィは目を覚ます。時計を見るといつもならまだ眠っている時間だなと思い、再度ベッドに横になろうとしたが、何となく眠る気分じゃない。そこでアミィは少し早めに身支度を整えることにした。
シャワーを浴び、髪を乾かす。
ホグワーツにはマグル製品のドライヤーは存在せず、コンセントの差し口すらない。なので、髪を乾かせないと嘆いていたアミィだったが、スネイプに簡単な乾燥魔法を教えて貰っていた為、杖を振ると簡単に髪を乾かすことができるようになった。
少し熱い風で髪を乾かしていると、まだベッドで横になっているパドマが眠い目をこすりながら起床した。
「おはよう、パドマ。素敵な朝ね」
「おはよう、アミィ。……まだ早いじゃない」
パドマは欠伸を噛み殺しながら、アミィが髪を乾かしているのをぼんやりと見ていたが、数分後彼女はふらふらとした足取りでシャワールームに入っていった。
「……今日はどんな髪型にしようかしら」
そう思いながら、家から持ってきたファッション誌のページをめくる。アミィはおしゃれが趣味で、幼い頃からペチュニアが読んでいたファッション誌に憧れを抱いていた。雑誌の中のモデルは皆美しく着飾っており、いつかアミィもこんなレディになりたいと夢見ていた。
そんなアミィは、ホグワーツに来る前にペチュニアの持っていたもう処分する予定のファッション誌を幾つか貰って、おしゃれの参考にするためにホグワーツへ持ってきたのだ。
「……あ、これ可愛い」
アミィは今日の髪型を左右から後ろへ編み込まれたハーフアップに決める。そして、ピンクダイヤモンドのあしらわれた白いリボンのバレッタを飾る。鏡の前で頭を軽く振り、髪型をチェックする。
「うん、バッチリね!」
アミィがそう言うと、隣のベッドからハーマイオニーがのそのそと起き上がってきた。
「あら、おはよう。ハーマイオニー」
「……ああ、おはようアミィ。もう朝なのね」
ハーマイオニーは眠そうな声で答えた。
「ええ、そうよ。でもまだ時間はたっぷりあるから、安心して」
アミィがそう言うと、ハーマイオニーは安心したように肩の力を抜き、荷物の入ったトランクを開ける。その様子を見て、アミィもトランクを開け、中に入っている荷物をクローゼットや棚、机の上の本棚に整頓して仕舞っていく。それから数分後、ガチャリと音がしてパドマがシャワールームから出てきた。
「あ、ハーマイオニーも起きたのね。おはよう」
「おはよう、パドマ」
「おはよう、パドマ。次、使っても良いかしら?」
「ええ、もちろんよ!」
パドマはそう言うと、ハーマイオニーは軽く会釈をしてシャワールームに入っていく。
「あ、アミィ!その髪飾りとっても素敵ね!あなたによく似合っているわよ!」
パドマは髪を乾かしながら、アミィの身に付けているバレッタを楽しそうに眺める。
「ありがとう!これね、お母様が誕生日にプレゼントしてくれたの。私もこのバレッタが今の一番のお気に入りなのよ!」
「あら、そうだったのね!私も今日は、家から持ってきたお気に入りのリボンで髪を結ぼうかしら」
パドマがそう言うと、アミィは「良いわね」と言い、2人でおしゃれについてのガールズトークで盛り上がった。
ハーマイオニーがシャワールームから上がってから、アミィは椅子に座り入学祝いで貰ったクリアケースに入った高級ブランドのリップクリームを見つめる。開けようとしても、指先はそこで止まってしまう。ずっと憧れていた色付きのリップクリーム。しかしアミィはこのリップクリームを付けることができなかった。何故なら、まだ自分には早いと心の中のもう1人の自分が反対するからだ。
憧れは憧れのまま、綺麗なままにしておきたいのだと、もう1人のアミィは言う。だからアミィはリップクリームのケースを開けることすら出来ず、ただ見つめるしかなかった。
「ごめんなさい、お待たせ。さぁ、大広間へ向かいましょう」
ハーマイオニーの声でアミィはハッとし、リップクリームをポケットの中に放り込む。
「え、ええ。それじゃあ行きましょうか」
こうしてアミィはリップクリームを付けることなく、いつもの彼女のまま朝食を食べに向かうのだった。3人は大広間に着くとレイブンクローのテーブルへと向かい、朝食を食べ始める。
「あ、おはよう」
「おはようテリー」
しばらくするとテリーがやって来て、向かいの席に腰掛ける。
「今日の授業の時間割見たかい?空きコマが2時間もあるぞ」
テリーが嬉しそうにそう言うと、ハーマイオニーは悲しそうに俯く。
「ええ、見たわ。私たちが新入生だからと、学校は配慮してくれているんでしょうけど。私は残念でならないわね。せっかく魔法を学べると思ってたのに、実際の授業数は少ないんですもの」
ハーマイオニーはそう言って、ホットミルクを飲む。アミィも彼女に同意するが、アミィの本音は彼女の考えとは真逆にあった。
アミィはむしろ空きコマは好きなことを好きなだけやれるのだから、絵を描くことが好きなアミィにとっては有難い時間だと思った。しかし、レイブンクロー生としてこんな考えは不似合いなので、ここはハーマイオニーに同調し、仲間意識を高める必要があると考えたので、彼女に同意を示すことにしたのである。
「ええ、そうね。私も残念でならないわ。私は魔法界で育ったわけじゃないから、魔法界育ちの生徒と比べて何倍も劣ってる。授業時間が少ないのは少し困ってしまうわね」
アミィがそう言うと、テリーはギョッとした目でアミィとハーマイオニーを見つめる。
「……君たち、真面目すぎないかい?いくらレイブンクローだからって、そこまで授業に熱くなることないだろ?」
「……私もあなたに同意だわ」
パドマはそう言いテリーの言葉に頷いた。アミィはここで自分のスタンスを間違えたことに気付いた。レイブンクローは真面目で勉強熱心な生徒が多いと聞いていたが故に、排斥される恐怖からハーマイオニーに同調したのだが、どうやらハーマイオニーはレイブンクローではかなりの例外のようだ。
アミィは入学早々、身の振り方を間違えたことに酷く落ち込んだが、差別されるわけではないのだからと、気を取り直して話題を変える。
「確か今日の授業は魔法史と呪文学、闇の魔術に対する防衛術だったかしら?」
「ええ、そうよ」
「魔法史って魔法界の歴史についてよね?私とっても楽しみだわ」
アミィはセント・クレアに通っていた時から、英国史の授業のみならず、西洋史、東洋史と歴史の授業が大好きだった。眠くなるような歴史の授業を変わったアプローチで学び、時に面白い豆知識を教えてくれる教師が大好きで、毎回歴史の授業を楽しみにしていた。
「魔法史は確かハッフルパフとの合同授業だったわね」
「ハッフルパフは勤勉で真面目な生徒が多い。きっと有意義な時間になるはずさ」
しかし、アミィはホグワーツで魔法史の授業に参加してから、魔法史が大嫌いな科目となった。教授はゴーストで、彼が話し始めると次第に眉間が下がっていく。アミィは何とか抗ったが、ノートにメモをとることすら叶わず、ひたすら眠気に抗うだけの時間となってしまった。
「……最悪な気分よ。それにとても眠いわ」
ゴーストがひたすら教科書を読み続けるだけの授業には、楽しさも探究心も感じられない。これなら1人で自習をした方が数倍は有意義な時間を過ごせただろう。
アミィは眠い目をこすりながらなんとか廊下を歩き、動く階段を攻略し、呪文学の教室へと向かう。すると我らが寮監、フィリウス・フリットウイックがやって来る生徒に挨拶をし、新入生たちを歓迎した。
「……この授業は確か、グリフィンドールと合同だったかしら?」
「ええ、そうね!そのはずよ」
パドマの疑問にハーマイオニーが答える。するとちょうどその時教室の入り口からダドリーが入って来た。しかし、彼の顔色は悪く額には汗が浮き出ていた。アミィは慌てて彼に駆け寄る。
「ダ、ダドリー!そんなに汗をかいてどうしたの?ほら、このハンカチで拭いて!」
アミィはハンカチを差し出し、ダドリーに手渡す。ダドリーはハンカチを受け取り、額の汗を拭いながら話し始める。
「いや、それがさ。管理人のフィルチっているだろ?ロンの兄ちゃんが廊下で魔法を使って怒られてさ、その巻き添えを食らっちまって、走ってここまで来たんだぜ?」
ダドリーがそう言うと、後ろで昨日の昼間駅のホームで見かけた赤髪の少年が申し訳なさそうな顔で俯いていた。
「あなた、確か昨日駅でお会いしたわよね?」
アミィがそう訪ねると、彼は頷く。
「私はアメジスト・ダイアナ・ベスティアンよ」
「……僕はロン、ロン・ウィーズリー。よろしく」
「よろしくね、ロン!」
アミィはニコッと笑う。ロンは恥ずかしそうに頭をかきながら小さく返事をする。すると、ハーマイオニーが後ろからやってきて、2人の会話に入ってくる。
「あなた、ホグワーツ特急の中で変な呪文を唱えていた子ね」
「ゲッ、僕の魔法馬鹿にした奴じゃないか!また君と会うなんて最悪だよ」
「な、なんですって?!あなたが珍妙な呪文を唱えるのがいけないんでしょう!」
ハーマイオニーとロンは出会って3秒で言い合いを始め、彼らは授業が始まる30秒まで言い合いを続けていた。その後授業が始まると、授業は座学から始まり、後半になると杖を振り簡単な呪文を唱えることを許された。生徒たちは必死に杖を振り、魔法を成功させようと努力したが、この授業で完璧に成功させることができたのはハーマイオニーとテリーだけで、他は辛うじてダドリーとアミィが作用を与えることが出来た程度だった。
「……魔法って難しいわね」
アミィがそう言うと、パドマもうんうんと頷きため息を吐く。
「それにしてもあなたもそうだけど、あなたの義兄、彼もすごいのね。あともう少し時間があれば成功してたんじゃない?」
パドマがアミィにそう言うと、ハーマイオニーも頷く。
「ええ、本当にすごいわ!マグル育ちであそこまでの魔法が使えるなんて、相当才能があるのね!」
「……あはは、まあそうね」
アミィはそう答えるが、実際アミィとダドリーが多少マシな魔法モドキを扱えたのは、スネイプの指導あってのものだ。ダドリーはともかく、アミィについては才能なんて全くない。スネイプもアミィを物覚えが悪い子供だと言っていた為、本当に才能がないのだ。
「……せめて、並レベルの魔法は扱えないとね」
こうして、アミィはこの日から魔法に没頭していくのだが、マグルの通信教材の方が疎かになってしまい、ペチュニアに珍しく怒られてしまうのはまた別のお話。
そレから数日後、アミィは飛行術と防衛術の授業を受けたのだがその時ばかりは本当に生死の境をさまよった。
「では、全員箒に跨って!3、2、1、始め!」
マダム・フーチの掛け声に合わせて地面を強く蹴り上げると、アミィは勢いよく空に舞い上がり、気絶して箒から放り出された。
「いやあああっ!アミィ!」
「アミィ!」
ハーマイオニーとダドリーの悲痛な叫び声が聞こえた瞬間、気を失い、視界が真っ暗に染る。次に目を覚ました時は医務室で、校医のマダム・ポンフリーがおぞましい色の薬を飲ませてきた。この薬は見た目通り、二度と飲みたくない味だ。ちなみにかなりの高さから落ちたが、マダム・フーチの機転により軽い打撲ですんだそうだ。
「わ、私は闇の魔術に対する防衛術の教授を務めることになった、クィリナス・クィ、クィレルと申します」
闇の魔術についてアミィは禁じられた呪文程度しか知らないが、魔法界はあまり治安が良いとは言えないため、自衛手段を知るのは大切だ。アミィはこの授業をそこそこ楽しみにしていたのだが、クィレルが教室に入ってきてから数分後倒れた。
「く、臭い……」
「ア、アミィ?!」
「アミィ!大丈夫?しっかりして!」
酷いニンニクの匂いが充満し、換気をしても全く改善しない。そしてアミィには強すぎる激臭は、ついに彼女の意識までもを奪った。ちなみにこの事件から、クィレルは持ち歩くニンニクの量を減らすようマダム・ポンフリーに命じられ、匂いは多少マシになった。
ホグワーツに入学してから、2回も授業中に倒れたアミィはとても病弱な生徒なのだと思われ、何故かマグルを嫌うスリザリン生にすら心配されることが増えてきたのだが、別に彼女は病弱ではない。潔癖症の養母に育てられたが故に少し匂いに敏感で、びっくり箱や派手なサプライズが普通の人の10倍ほど苦手なだけの普通の女の子である。
「アミィって生まれつき体が弱いんだって?ホグワーツに入学する前はずっとベットで生活していたんだろ?もし困ったことがあればいつでも相談してくれたまえ」
「アミィ、あなた今まで何度も倒れてきたそうね?心臓が悪いんですって?本当に無理しないで。あ、次の教室には階段を登らないといけなかったわよね。先生を呼んで運んでもらいましょうか?」
「……」
このようにアミィはハーマイオニーやテリー、パドマから酷く心配され、謎の気遣いをされるようになるのだが、後にこの噂が嘘だと知っても、彼らは数日間アミィに付きっきりで行動するのだった。
「……私はベッドだけで生活してきたこともなければ、心臓が悪くもないわ!階段くらい歩けるし、荷物だって自分で持てるわ!」
噂に尾ひれが着くともう手を付けられない。アミィは今回の件でこの事実を改めて強く実感したのだった。
投稿遅くなってすみません。
次話は明日投稿します。
ハーマイオニーとロンはホグワーツ特急で出会ってる設定ですが、ロンが唱えたお日様雛菊とろけたバターの呪文を馬鹿にしたことで、二人の仲は険悪になっています。
ロンはダドリーの相棒ポジとなっているので、今後もちょくちょく登場していく予定です。