ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
スネイプがホグワーツでは、ダーズリー家で見せた顔や態度とは全く違うことを知り、アミィはショックを受け、彼に対してとある理由で嫌悪感を抱くようになる。
「この授業では杖を振ったり、ばかげた呪文を唱えたりしない。良いかね?魔法薬調合の絶妙な科学と芸術的な技を諸君が理解できるとは期待していない。だが、一部の素質のある選ばれた者には伝授してやろう。人の心を操り感覚を惑わせる技を。名声を瓶の中に詰め栄光を醸造し死にすら蓋をする、そういう技を」
初めての魔法薬学の授業で、アミィはスネイプを見て驚愕していた。ダーズリー家でアミィたちに勉強を教えてくれた、厳しくもあるが多少の気遣いをしてくれるスネイプはそこにはいなかったのだから。
「ところで、諸君の中には自信過剰の者がいるようだ。すでにホグワーツに来る前に力を持っているから授業など聞かなくてもいいというわけか。ミスター・ポッター。その名も高きミスター・ポッター!」
スネイプはそう言い、ハリーの元へ近付き彼にとある質問をする。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になる?」
するとハリーは分からないといった様子で俯く。ハリーが何も答えないことを確認し、隣に座るハーマイオニーが挙手をするが、スネイプは彼女を無視してまたハリーに質問をする。
「では、もう1問。ベゾアール石を見つけるにはどこを探せばいい?」
「……分かりません」
ハリーは素直にそう言うと、スネイプは僅かに笑みを浮かべ、また意地悪な質問をする。ハリーは指名されても何も言えないという状況に酷く落ち込んでいるようで、困ったように周囲をキョロキョロと見回す。
「……これも分からない?では、モンクスフードとウルフベーンの違いは?」
この質問にアミィはハッとした。これはスネイプがアミィたちに豆知識として教えてくれた内容だ。つまり覚えていれさえすれば答えられる問題である。ハリーはこの質問に心当たりがあるのか、うーんと唸って考え始める。
「……え、えっと同じ植物なので、違いはそもそもありません。」
「ふむ、正解だ。しかし、君は随分予習を怠っていたようだ。ミスター・ポッター、君には特別な課題を出して差し上げよう」
ハリーはスネイプの発言に顔を青く染め、この世の終わりのような絶望感溢れる顔で机に突っ伏した。しかし、スネイプのその発言にハーマイオニーは羨ましそうにハリーを見つめる。流石は勉強熱心なレイブンクロー生である。
「では、アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になるか……ミス・グレンジャー」
「はい!アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると『生ける屍の水薬』になります」
「正解だ。レイブンクローに5点」
その発言にスリザリンの生徒たちがあからさまに不機嫌そうな顔をする。そしてそれ故か、スネイプは次にスリザリンのノットに質問をする。
「ミスター・ノット。ベゾアール石を見つけるにはどこを探せばいい?」
するとノットと呼ばれた背の高いひょろっとした少年は、淡々と質問に答える。
「山羊の胃の中です」
「正解だ。ミスター・ノットは勤勉で真面目な生徒ですな、スリザリンに10点」
スネイプはレイブンクローに与えたポイントの2倍をスリザリンに与えた。明らかに自分が寮監を務めるスリザリンを贔屓している。その事実にアミィは顔を顰め、スネイプを睨み付ける。
「ミス・ベスティアン。モンクスフードとウルフベーンは同じ植物だが、その別名を何と言うか知っているかね?」
アミィは突如質問をされたことで一瞬固まるが、すぐに記憶を手繰り寄せ回答する。
「えっと……アコナイトです」
アミィが正解していることを祈りながらそう言うと、彼は不満気な顔で「正解だ」と言った。
「……レイブンクローに3点」
質問に答えたのに5点すら貰えないだなんてと苛つきながらも、表情には出さないよう必死に抑える。アミィは心の中で何度もスネイプに抗議したが、彼女の理不尽を訴える感情が彼に届くことはない。
「スネイプ先生ってスリザリン贔屓なのね!酷いわ!」
ハーマイオニーがヒステリックにそう叫ぶと、アミィも苦笑しながら頷く。
「……私が通っていた学校ならすぐに問題になって、解雇されるでしょうね。魔法界って常識も全く違うのね」
「ええ。同じ人間は思えないわ!」
アミィとハーマイオニーは授業が終わってから、延々とスネイプやに対する文句を言いあった。寮に戻り先輩に愚痴るとスネイプのスリザリン贔屓は新任の頃からだと伝えられ、2人は彼に何かを期待することは間違っているのだと気付いた。
(……だとしても、よ?入学前はあんなに熱心に指導して下さったのに、どうして学校ではここまで露骨にスリザリンを贔屓するのかしら?特にハリーなんて、スリザリンに所属しているのにあんな意地の悪い質問をされるなんて。本当にどうかしているわ!)
アミィはハリーを心配し、大切な家族が悪戯に傷付けられたことに腹を立てるが、教師の前で生徒は無力だということを知っていたがため、抗議することはできなかった。
◇◇◇
10月になり、少し肌寒くなってきた。アミィはいつもの制服にカーディガンを羽織り、中庭に出る。
部屋から持ってきた真っ白なキャンバスに鉛筆を走らせ、中庭にある花壇の写生を始める。遠くで聞こえる小鳥の囀りに、行き交う人々の足音に囁き声。生のあたたかさを感じながら集中して指を動かす。
「アミィ」
突然背後から声をかけられ、アミィは驚きながら振り返る。するとそこには、少し申し訳なさそうな顔をしたハリーが立っていた。
「……あ!ハリー、ごきげんよう。久しぶりね!」
「ごめん、驚かせた?今日は何を描いてるの?」
ハリーはそう言いながらアミィの隣に腰掛ける。
「そこにある花壇の花を描いてるの。お誕生日にお父様からいただいた、ウィンザー&ニュートンの水彩絵の具を試そうと思って。それに、せっかくこっちの学校に通っているのだから、思い出に色んな場所の絵を描いておきたかったしね」
アミィは、優しく筆を滑らせながら説明する。ハリーはその隣で納得したように頷く。
「へぇ、そうだったんだ。君って本当に絵が上手だよね。僕も君みたいに絵が上手ければ良かったのになぁ……」
「ふふ。ハリーも描いてみる?道具ならあるよ?」
そう言うと彼は少し迷った後、首を左右に振り遠慮すると答えた。そして何か言いにくそうに口をモゴモゴとさせ後、アミィの目を真っ直ぐ見て言った。
「あのさ、アミィ。君にお願いしたいことがあるんだ」
「なぁに?」
ハリーのいつになく真剣な声に、アミィは筆を置き、彼の方へ向き直って問い掛ける。
「……マルフォイが君の絵が欲しいみたいなんだ。タダでとは言わない、報酬は弾むって言ってたよ」
アミィはマルフォイという名を聞いて、思い出した。
(入学式の日、コンパートメントで描いた私の絵は動いていた。あれは一体何故なのか、魔法画家とは何なのか、彼なら知っているはずよ。このチャンスを逃してはいけないわ)
「もちろん無理にとは言わない。僕は正直、君がマルフォイにまた傷付けられるんじゃないかって心配だし、僕のほうから断っておくこともできるよ」
「いいえ。……引き受けるわ。少し、気になることがあるの」
アミィがそう言うとハリーは一瞬驚いた顔をするが、すぐに「分かったよ」と言って頷いた。
「絵といっても色々あるけど、なんの絵を描けば良いのかしら?」
アミィがそう言い首を傾げる。するとハリーは思い出したようにこう言った。
「あ、忘れてた。マルフォイ曰く、肖像画を描いて欲しいみたいだよ」
「肖像画……?私は経験が無いのだけど、大丈夫かしら?」
「アミィならできるよ」
ハリーはそう言い微笑んだ。そしてマルフォイに承諾の旨を伝えておくと言って、去って行った。アミィはその後、ひとまず何も考えずに写生を続ける。そして絵が完成すると、片付けを済ませ寮に戻り、机の上に画用紙を置いて乾燥させる。
「少し画力が落ちた気がするけど……まあ、何度も描いていればじきに元に戻るわよね」
アミィはそう言い、画用紙に描いた自分の絵を見る。決して良い出来だとは思えないが、今はこの出来に満足しておこうとそう思った。
「肖像画と言えばやはりモデルが必要よね。誰かモデルに最適な人はいないかしら?」
アミィが肖像画のモデルについて悩みながら、学内を歩いていると1人の生徒とぶつかってしまう。
「あ、ごめんなさい……」
「いえこちらこそ……って貴女は」
アミィが顔を上げ謝罪の言葉を述べると、相手も同じように謝罪をする。そして相手の顔を見て少し驚いた顔をした。
「まぁ……なんて美しい方なの?」
アミィは同じレイブンクローの制服を着た女子生徒の美貌に息を飲み、目を輝かせる。
「あの、良かったら私の絵のモデルになっていただけませんか?」
「え?」
アミィの言葉に彼女は驚き、戸惑うように視線を揺らす。しかしそんな反応に構わずアミィは続けて言う。
「実は私、絵を描くことが趣味でよく描いているんです。最近、絵の依頼をいただいたんですが、依頼されたものは肖像画で、モデルの方が決まっておらず困っているんです……あなたにお会いした瞬間、神に愛されたお方なのだと感じました。あなたの美しさ、絵に残させていただけませんか?タダでとは言いません。報酬はお渡しします」
アミィがそう言うと女子生徒は少し考え込んだ後、少し恥ずかしそうにして言った。
「あの、そう言って貰えて嬉しいわ。私で良ければ喜んで」
その答えを聞き、アミィはパァッと顔を明るくさせて喜ぶ。
「本当ですか!ありがとうございます!」
女子生徒はその言葉に、柔らかく微笑んだ。アミィはそんな彼女に微笑みを返し、改めて自己紹介をする。
「私は、アメジスト・ダイアナ・ベスティアンと申します。よろしくお願いしますね」
「私はチョウ・チャンよ。よろしくね。気軽にチョウと呼んで」
「では、私のこともアミィとお呼びください」
チョウとアミィは握手を交わし、いつどこで絵を描くかについて決め、その場で別れた。
それから数日が経過し、休日になるとアミィはチョウと共に天文台へ向かう。チャイナドレスに身を包んだチョウは自身の美しさをより引き立たせており、とても美しいが少し物足りない。アミィは画材の入った鞄の中から小さなブーケを取り出す。
「こちらを持っていただけますか?」
カーネーション、桃色の薔薇、カスミソウの使われた小さなブーケをチョウは抱き抱える。アミィは少し離れたところにキャンバスを置き、鉛筆を持って下描きを始める。
「……」
「……あ、多少は動いても大丈夫ですよ!楽にして下さい」
アミィがそう言うとチョウは頷き、リラックスして絵のモデルとなる。そして下描きが終わり、本格的に絵を描き始める。鉛筆から筆に変えて、色をのせていく。
「ねぇ……アミィ」
チョウはキャンバスを真剣に見つめるアミィに声をかける。すると彼女は手を止めて顔を上げた。
「どうしましたか?」
「その……どうして私をモデルにしたいと思ったの?私は貴女とあまり接点が無いし……」
その質問に、アミィは真剣な表情で答える。
「理由は貴方がとても美しいからです。美しさとは外見は勿論、所作や話し方モデル大切です。私は画家ではありませんが、絵に対する情熱はプロにも負けないと自負しています。貴方はとても美しく、出会った瞬間この美しさを永遠に残したいとそう思ったんです。私の魂が、あなたの美しさを求めたのです」
アミィがそう言い切ると、チョウは頬を赤く染めて恥ずかしそうに目を逸らした。そんな可愛らしい反応に、思わず笑みが溢れる。
「ふふ……可愛いらしい人」
「もう!からかわないで!」
アミィのからかいに、彼女は少し怒ったような仕草をする。そしてアミィは、また真剣な眼差しで筆を動かす。アミィはチョウを見て、彼女の美しさを永遠に残すためなら何だってできると、そう強く思った。
次第に時間は経過し、約半日が経過した。アミィはまだ完成途中の絵を見て、謎の達成感に駆られた。
「そろそろ日も落ちてきましたし、そろそろ戻りましょうか」
「あら、もう良いの?」
「後は細部の修正と加筆を少々……という感じなので、大丈夫です。本日はモデルをしていただき、ありがとうございました。」
「いいのよ。私もアミィとのお話はとても楽しかったし、良い経験になったわ。もし完成したら見せてくれる?」
「ええ、勿論です!」
そう言ってアミィはチョウに微笑むと、彼女もアミィを見つめて微笑んだ。その後、2人は片付けを行い、レイブンクロー寮に戻った。アミィ画個室に戻ると、ハーマイオニーがアミィの絵を見て興奮気味に感想を述べ、パドマも凄いとアミィを褒め称えるのだが、アミィは褒められることに喜びつつも、気恥しさを感じるのだった。
ついにハリー登場です。
スネイプ先生、流石に自寮の生徒からは減点しないみたいですね。
それにしても、ハリーに対する質問攻めは普通に可哀想ですよね。
やっぱり、ジェームズに似てるから葛藤があるのでしょう……
原作ではハーマイオニーが得点を得ることはありませんでしたが、今回は彼女はレイブンクローなのでポイントも貰えます。
今のところ、ハーマイオニーが原作より幸せそうでちょっとほっこりしますね。