ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
赤子はサファイアの娘だが、父親が誰なのか不明で、数日後には孤児院に入れられてしまうそうだ。
そんな赤子を憐れむ召使いと話していると、伯爵の息子である少年がやってきて赤子をあやし始める。
あやしながらも、少年は何度もごめんと謝り続け、この赤子が孤児院に送られるという事実を改めて実感した。
「……伯爵と夫人が亡くなるだなんて、本当に残念だわ」
「ノルマン公も葬儀に参列したそうだが、長時間棺の前で悲しみに暮れていたそうだよ」
「ベスティアン家はこのままいけば、伯爵夫妻の長男が爵位を継ぐのだろうか」
「まさか、伯爵邸に強盗が入るなんてな。警備兵は一体何をしていたんだ?」
ペチュニア・ダーズリーは、葬儀に参列しヒソヒソと噂話をする参列客たちに不快感を感じながらも、棺までしっかりとした足取りで歩いて行った。
彼女がかつて、ボーディングスクールに通っていた時、唯一自分の悲しみや苦しみを理解し、愛してくれた友人は死んだ。屋敷に押し入った強盗に殺されてしまった。
しかし、今日葬儀に参列した客たちは伯爵とその夫人の死を悲しみはしても、2人と共に殺された養女のことは一言も口にしなかった。そのことが、ペチュニア・ダーズリーは不思議でならなかった。
イギリスの上位貴族の娘が殺されたのだ。本来なら、皆が悲しみに暮れる事件だろうに。棺の前で黙祷を捧げたペチュニアは、足早に伯爵邸を去ろうとした。しかし、その時ペチュニアは召使いであろう女性に抱かれた1人の赤子を目にする。
「まあ、その子……サフィにそっくりね」
ペチュニアがそう小さく呟くと、召使いの女性は悲しそうな顔で笑った。
「この子は、サファイアお嬢様の娘です。坊ちゃんがこの家を継げば、父親の名が分からないこの子は孤児院へと送られてしまうかもしれません。サファイアお嬢様は、養女ですから平民の血が流れていますし、坊ちゃん1人でこの子の面倒を見ることは難しいでしょうし。なんて哀れで可哀想な……アメジストお嬢様」
召使いの女性は、目に涙を浮かべた。女性は、棺の前のベビーベッドにそっとサファイアを横たわらせた。すると、伯爵夫妻の長男が赤ん坊に駆け寄る姿が目に入った。彼は赤ん坊を優しく撫で、小さな声で聖歌を歌いその子を宥めようとする。
「……ごめんね、アミィ。僕だけじゃ君を守れないんだ。ごめんね、ごめんね」
ペチュニアは、その様子を不思議そうに眺めた。自分と血の繋がらない、父親すら分からない赤子を少年は優しく宥め、愛しているように見えた。赤ん坊は、そんな少年の頬を小さな手でそっと撫でた。そして、その少年はまるで宝物のように赤ん坊を抱きしめた。
「その子、本当にサファイアによく似ているわね」
「あ、葬儀に参列していただいた方ですね。本日はお越しくださり、ありがとうございます。もしかして、姉のお知り合いですか?」
ペチュニアはサファイアのことをよく知っていた。同じボーディングスクールに通い、2つ違いの学年で、同じ寮で生活をしていた。
「私はペチュニア・ダーズリー。サファイアは私の後輩だった。初めて授業をサボった日、屋上に行ったら彼女が空を眺めてたの。なんで授業中にそこにいるのかと尋ねたら、彼女雲の形について話し始めてね、毒気を抜かれてつい話し込んでしまったわ」
『ねぇ、どうしてあなたはここにいるの?』
『私?私は空を見るためにいるのよ』
空を眺めるために屋上にいる、そう答えた彼女は空を眺めながら笑った。灰色の瞳に、青い空を映す彼女の横顔はとても美しかったことをペチュニアは覚えていた。
「……そうなんですね。姉にもちゃんとした友人がいたんですね。僕は弟として、凄く嬉しいです。姉にも居場所があったと知って、安心しました」
彼は、嬉しそうに笑った。彼の笑顔が、姉の笑顔と重なりペチュニアは切なくなった。ボーディングスクールに入学したてのサファイアを彷彿とさせるような無邪気な笑みに、思わずペチュニアは彼の手を取った。なぜ、そんなことをしたのか分からなかったが彼に触れた瞬間懐かしい気持ちになったのだ。
突然ペチュニアに手を掴まれた少年は、瞳に涙を溜めながら笑った。彼は、非情な参列客を軽蔑し、姉を弔うペチュニアを見て、自分が本当は泣きたかったのだと気付かされたのだ。
「……ダーズリーさん、お願いがあります。この子を、姉の子を、僕が成人するまでの間、守ってくれませんか?」
「と、突然何を言うのよ!」
ペチュニアは、突然の提案に驚き慌てて少年から手を離した。彼は、真剣な表情でペチュニアを見つめる。
「明日、伯爵家に僕の後見人として祖母がやってきます。祖母は養女である平民の血が流れる姉を毛嫌いしており、この子も孤児院に入れようとするはずです。しかし、僕はこの子を愛しています。僕のたった一人の姪なんです。この子の血筋や父親なんて関係ない、この子は僕の唯一の家族なんです」
少年は、小さな手で赤ん坊の頬をそっと撫でた。
ペチュニアは親友の哀れな娘、アメジストと親友の血の繋がらない義弟に心底同情し、かつて仲の良かった妹リリーを思い浮かべる。魔法族の男ジェームズと結ばれ、一人息子を授かるもすぐにその生涯を終えた哀れな妹。しかし、自業自得でもあった。
ペチュニアは彼女の死後、あの憎きアルバス・ダンブルドアの手紙により、リリーの息子ハリーを育てることになってしまった。もう二度と魔法界と関わりたくないと願っても、妹に似たあの目を見た瞬間、私はハリーを育てなければならないという使命感に駆られた。
そして何の因果か、親友は死に、その娘は孤児院に捨てられる寸前だ。しかし、子供を3人も育てるとなると、お金がいくらあっても足りない。バーノンは社長として、裕福な暮らしをしているが、3人を教育するとなれば話は変わってくる。
ペチュニアが悩んでいると、少年はハッとしたようにこんなことを言い出した。
「養育費については、勿論、我がベスティアン家がお支払いします。面倒を見ていただけるのであれば、養育費とは別に謝礼もお渡しします。また期限は、彼女が高等学校を卒業する日までとし、それ以降は我が家で面倒を見ます。お願い、できませんか?」
ペチュニアは、少年の真剣な瞳を見つめる。こんなに誰かにお願いされたのは久々だった。かつて、親友のサファイアにとあるお願いをされて以来だった。
「……分かったわ。その子は、私が面倒を見ましょう。その代わり、面倒な手続きは全てそちらでお願いするわ」
ペチュニアがそう言うと、少年は嬉しそうに笑った。そして、サファイアそっくりの赤ん坊を再び腕に抱き、力強く抱きしめた。
家に戻ると、バーノンはペチュニアの腕に抱かれた赤子を見て目を見開いた。
「そ、その赤ん坊は一体?」
「今日、サファイアの葬儀に行ってこの子が孤児院に入れられるという話を知ったの。サフィの娘であるこの子の父親は不明、平民の血が流れるサフィは家の中でいつもひとりだった。この子が孤立するのも時間の問題だった。だから、だから……」
ペチュニアの目から一筋の雫が落ちる。
「この子を私の娘として、育てたいの。お願い、バーノン、許してちょうだい。私は、サフィを愛してる。大切な、たった一人の私の親友なの。」
ペチュニアの涙を見たバーノンは、ペチュニアを強く抱き締める。
「サファイアはあのろくでもない魔法使いとは違って、私たちに礼儀を持って、誰よりもお前と私の結婚を祝福してくれたな。私だって、彼女には恩がある。勿論だ、その子はこれからダーズリー家の子だ」
バーノンの許しを得たペチュニアはぼろぼろと涙を零す。サファイア、あなたはいつまでも私たちの親友よ、とそう心の中で呟きながら、赤子をそっと抱き締めた。
それから、すぐに手続きが行われ、毎年アメジストの誕生日になると、ベスティアン家の少年──ベスティアン小伯爵から沢山のプレゼントが届いた。その日には、ダーズリー家にも気を遣ってか、ダドリーとハリーにも感謝を表すプレゼントが必ず届いた。
バーノンは、初めこそハリーへのプレゼントを捨てていたが、アメジストが物心着くようになり、善悪の判断ができるようになると、彼女に叱られ、渋々ハリーにプレゼントを渡すようになった。
「11歳のお誕生日おめでとう、アミィ!い、一応、ハリーもオメデトウ」
ダドリーは愛する妹に祝福の言葉を述べ、愛する妹の手前一応ハリーにも祝福の言葉をかける。
「ありがとう!ダドリー!」
「あ、ありがとう、ダドリー……誕生日おめでとう、アミィ」
「ハリーもありがとう!ハリーも誕生日おめでとう!2人に祝ってもらえるなんて、すっごく素敵な最高の誕生日だわ!」
アメジスト・ダイアナ・ダーズリー、通称アミィは7月30日、11歳の誕生日を迎えた。誕生日の日には決まって、たくさんの宅配物が届く。送り主はバーノンの仕事関係者と女学校の数人の友人、そしてとある貴族の男性だ。この貴族の男性は、アミィが生まれてから毎年欠かさずプレゼントを贈ってきており、アミィからしたら謎でしかなかった。
アミィがダイニングに向かうと、テーブルの上には美味しそうな料理がズラリと並んでいた。
「おはようございます、お母様様、お父様」
「あら、アミィ!お誕生日おめでとう!あなたももう11歳なのね!」
「おめでとう、アミィ。最高のプレゼント用意したからな、朝食を食べたら見てみなさい」
「ありがとう!プレゼントも嬉しいけど、毎年こうして祝ってもらえてとても嬉しいです!」
アミィは、そう言ってバーノンとペチュニアに微笑んだ。ダドリーとハリーもアミィの誕生会に参加しようとダイニングにやってきた。そして、テーブルに並ぶご馳走を見て目をキラキラと輝かせた。
「おはよう、ダドリー!今日はアミィの11歳の誕生日だ!さぁ、席につきなさい!」
バーノンは、ダドリーを席に着かせると、立ったままのハリーに目配せをし、ハリーは仕方なさそうな顔で席に着く。
「さぁ、アミィちゃん、11歳のお誕生日おめでとう!今夜はあなたが食べたいといっていたフルーツたっぷりのシャルロットケーキよ!楽しみにしててね!」
「ありがとう!お母様!」
そして、4人はグレープジュースで乾杯し、朝食を食べ始めた。ペチュニアはそんな4人の様子を微笑ましく眺めながら、サファイアを思い浮かべる。
それから数分後、一足先に食事を終えたダドリーは自室へ、ダドリーと数秒遅れで食べ終わったハリーは庭へ水やりに行ってしまった。
「ねぇ、お父様。私宛に毎年たくさんのプレゼントを送ってくる貴族の方がいるじゃない?あの御方と私には一体どんな関係があるの?」
アミィが不思議そうな顔で尋ねると、バーノンは困り顔でペチュニアに助けを求める。ペチュニアは目を伏せ、数秒後観念したように2回ほど小さく頷いた。
「その貴族はね、アミィ。君の叔父にあたる人なんだよ」
「ってことは、お父様かお母様のご兄弟なの?」
ペチュニアが口を閉じる。バーノンは何か言いたげな顔をした後、重い口を開いた。
「……アミィ、君の本当の両親はな……」
バーノンが真実を話そうとした瞬間、庭からハリーが三通の手紙を持ってやって来た。
「あー、その、バーノンおじさん。僕とダドリーとアミィ宛に手紙が届いたんだけど」
「て、手紙、ですって?」
ペチュニアが目を見開き驚いたような顔で固まる。バーノンは間が悪いといわんばかりの顔で、仕方なさそうにハリーを手招きした。この手紙がハリー、ダドリー、アミィの未来を変えることになるのだが、そんなことを予想できる者はペチュニア以外誰もいない。
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評判良かったらこれからたまにやるかもしれません。
登場人物の登場人物に対する簡単な思考を紹介してるつもりです。
〈本日の登場人物思考紹介〉
■アメジスト・ダイアナ・ダーズリー?
ペチュニアお母さん、バーノンお父さん、ダドリー、ハリー、みんな大好き!
ずーっと一緒に居られたら良いな!
毎年誕生日とクリスマスにプレゼントを贈ってくれる貴族の人は誰なんだろう?
→え、叔父さん?実の両親ってどういうこ「あー、その、バーノンおじさん」……ハリー、邪魔しないでよ!気になるじゃない!
■ペチュニア・ダーズリー
可愛いアミィちゃん、お誕生日おめでとう!
あら、ダドちゃんったら随分早起きね?
ハリー、こんなに大きくなって……どんどんあのろくでなしの魔法使いに似てきているわね。
バーノン、アミィちゃんに真実を告げる時が来たのね
て、手紙ってホグワーツからじゃ、ない、わよね?
■バーノン・ダーズリー
可愛い可愛いアミィの誕生日だ、最高の日にしてやらんとな!
一応ハリーの誕生日でもあったか、仕方ない、今日はこき使うのをやめてやるか。
ダドリー、早起きするなんて偉いな!流石我が息子だ!
ハリーに手紙だと?一体どこのどいつからだ?
嘘だったらただじゃおかんぞ!
■ダドリー・ダーズリー
可愛い妹のアミィもこんなに大きくなって、兄として嬉しい限りだぜ。
それにしても、今夜のケーキが楽しみだな!
ハリーの誕生日?まあ、一応、祝っといてやるか。
アミィの誕生日の日って、俺にもプレゼントが届くんだよな。今回のプレゼントはなんだろう?
■ハリー・ポッター
アミィは毎年僕の誕生日を祝ってくれる大切な家族だ。
ダドリーもこの日だけは、一応アミィの前だと祝ってくれるんだよな。
この日だけはバーノンおじさんもあんまり怒らないし、ペチュニアおばさんも早起きして家事を手伝えって言わないんだよなぁ。
そういえば、この日は毎回僕にもプレゼントが届くんだよな。
アミィのおまけだって知った時は少しがっかりしたけど、律儀な人だよな。
■クリストファー・ルーカス・ベスティアン
アミィの父親が不明だろうと、姉さんの娘だという事実は変わらない。
たとえ貴族の血が流れていなかろうと、アミィ大切な家族なんだから、絶対に守らなきゃ。
ダーズリーさんは姉さんの大切な居場所だったみたいだし、この人ならアミィを守ってくれるかもしれない。
アミィ、誕生日おめでとう。君の幸せを誰よりも強く祈っているよ。
ついに主人公が登場しました。
アメジストちゃんが今作の主人公です。
次回から本格的に賢者の石編が始まるので、今回の後書きにて主人公の説明をさせていただきます。
〈主人公〉
■氏名 アメジスト・ダイアナ・ダーズリー(ベスティアン)
■年齢 11歳
■性別 女
■好きな物 ペチュニアの手料理、おしゃれ、読書、家族
■嫌いな物 暴力、他者を平気で傷付ける人、
■家族構成 養父 バーノン・ダーズリー
養母 ペチュニア・ダーズリー
義兄 ダドリー・ダーズリー
義弟 ハリー・ポッター
実母 サファイア・アンバー・ベスティアン(故人)
実父 不明
実叔父 クリストファー・ルーカス・ベスティアン
■特記事項
元々伯爵家の養女サファイアの娘だったが、血筋が問題視され、高等学校を卒業までの間ダーズリー家に預けられる。
実母は彼女が赤子の時に強盗に押し入られ、亡くなったとされている。
現在は女学校に通っており、長期休暇の間は友人数人と文通している。