ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
そのことを知り、バーノンとペチュニアは真っ青になりながらも、手紙について説明をする。
その後、全員でアミィの希望で美術館に行き、夜には美味しいケーキを食べる。
最後にハリー、ダドリー、アミィだけの秘密のパーティーもあったりする。
「手紙だとぉ?ダドリーとアミィに届くならともかく、お前に届くわけがないだろう。さぁ、早く貸しなさい」
ハリーは渋々といった様子で、バーノンに手紙を手渡す。バーノンは訝しげな顔で手紙を受け取り、封を開ける。するとそこには、見慣れた字が並んでいた。そしてそこには驚きの内容が書かれていた。
「な、なんだと?……ホ、ホグワーツから、だって?」
バーノンは真っ青な顔で今にも倒れてしまいそうなほどだが、何とかペチュニアに手紙を手渡す。ペチュニアは手紙の内容を読み、多少血色の良い肌は青白く染っていく。
「……そんな、あの子達をホグワーツにだなんて、無理よ!私は、私は絶対に嫌ですからね!」
ペチュニアは、アミィを抱き締めぶるぶると震える。
「あぁ、なんてことなの……」
「お、お母様、一体どうされたの?ホグワーツとは一体なんのですか?」
ホグワーツとは何か、ホグワーツに行けば何があるのかと、目を白黒させる2人にバーノンが急いでダドリーを呼び寄せ、話しを始める。
「……ハリー、お前さんが来てからウチは何度窓を貼り替えた?階段にある傷、お前の部屋にある破れたクッション、それが一体何故そうなったのか分かるか?」
バーノンが詰め寄り尋ねると、ハリーは嫌そうな顔をぐっと堪え、目を閉じて口を開く。
「ぼ、僕に不思議な力があったから」
「あぁ、その通りだ」
バーノンはハリーの答えに頷き、話を続ける。
「その力とは非科学的で忌々しい、魔法使いの力だ。そして、ホグワーツ魔法魔術学校は、魔法使いが通う学校だ」
ハリーは驚いた顔をしたがすぐに顔を青くし、ダドリーとアミィを交互に見つめる。2人はそんなハリーを見つめ返していた。
「……じゃあ、ダドリーとアミィも?魔法使いってこと?」
「そんな馬鹿げたことがあって良いものか!ダドリーとアミィが魔法使いだと?そんなもの、何かの間違いに決まっておるだろ!私は、絶対に!何があっても信じないぞ!」
「そ、そうよ。だってダドちゃんもアミィちゃんも、至って普通の子だったんだから。窓ガラスが割れたり、急に洋服が縮んだり、突然家中のものが浮いたりしたことなんて、ないんだから!」
「あぁ、そうだ。だから、2人ともホグワーツになんて行く必要はない!ダドリーはスメルティングズ男子校へ、アミィはセント・クレア女学院へ通うんだ」
バーノンはそう言い切った。ダドリーとアミィは、ホグワーツに通わなくて良いという言葉にほっとし、2人で顔を見合わせる。しかし、ハリーは違った。
「じゃ、じゃあ、僕は?僕はこれからどうなるの?」
「……お前は近くの公立中学にでも通っておけ。良いな?その手紙と魔法のことは忘れるんだ。良いか?ダーズリー家は超常現象なんて起きない、普通の家なんだぞ!分かったな?」
「……わ、分かりました」
ハリーは魔法学校からの手紙と聞いて少しわくわくしていたが、バーノンの発言により近くの中学に通うのだと聞かされて心底がっかりした。
ダーズリー家はハリーに当たりが強い。いくらアミィが優しくとも、それだけでは補い切れないほどの悪意を主にバーノンから感じていた。しかしそれもマシになった方なのだ。アミィは人を傷付ける人が嫌いだ。バーノンは愛娘が嫌いな男になりたくないからか、ハリーが善悪の判断ができるようになってから少しして、ハリーの存在を無視することが多くなり、たまに小言を言いはするが、多少はマシな生活ができるようにはなった。
だが、それでもハリーは早くこの家から解放されたかった。自分の両親を悪く言うバーノンとペチュニア、自分を馬鹿にするダドリーが嫌いだった。アミィのことは大切だし、大切な従姉だと思っているが、3人への嫌悪と憎しみはアミィへの愛だけでは相殺できないのだ。
「……さぁ、話は終わりだ。今日はアミィの誕生日、9時から美術館へ行くからそれまで支度を整えなさい。あそこの美術館にはアミィの観たがっていたゴッホのひまわりもあるからな。さぁさぁ、みんな準備をするんだ……勿論、ハリーお前もだ」
「……わ、分かりました。私は上で着替えてきます」
アミィは素直に頷き、2階に向かう。その顔は少し強ばってはいたが、美術館を楽しみにする年相応の子供らしい表情だった。ダドリーは不服そうにハリーを睨みつけ、ハリーはダドリーからの視線を鬱陶しそうに感じながらも、そそくさと階段下の自分の部屋へと向かう。部屋の中で着替えていると、ドンと大きな振動が加わり、それがわざとなのだと言うことも同時に理解した。
「……ダドリーの嫌がらせか。またかよ」
そして時間はあっという間に過ぎ、9時になると3人は車に乗り込み美術館へと向った。道中で車は事故に遭うこともなく、無事に美術館に辿り着く。
美術館ではアミィが嬉しそうに好きなだけ絵を眺め、バーノンは小難しそうな顔で絵を鑑賞する。ダドリーはすぐに飽きてしまい、つまらなさそうな顔で次の絵へと進んでいく。ハリーはギリギリアミィが視界に入る位置で彼らの後をゆっくり着いて回った。
美術館から帰ると、アミィは届いたプレゼントを仕分けし、クローゼットとタンスの中に仕舞っていく。ダドリーはアミィのおまけに貰ったラジコンカーを嬉々として操縦し、何度も壁にぶつけていた。ハリーはというと、おまけとして貰ったシャーロック・ホームズの小説を暇つぶしに読みながら過ごした。
夜、アミィ(と一応ハリーも)の誕生日パーティーが始まると、アミィはケーキの火を吹き消し、皆に感謝を告げる。
「みんな、私とハリーにとっての特別な今日を!祝ってくれてありがとう!」
「どういたしまして!可愛いアミィ!」
「お誕生日おめでとう、私の天使!」
ダドリーとペチュニアは上機嫌でそう言ってワイングラスを掲げた。ダドリーはというと、相変わらずハリーを睨みつけている。ハリーはそんな視線を無視しながら料理を食べ進める。
「お父様!お父様がくださったファーバー・カステルの120色の水彩色鉛筆!私大切に使いますね!それと、ずっと欲しかったウィンザー&ニュートンの油絵の具と水彩絵の具のセット!新しい筆に画用紙までいただいて、感激です!ありがとうございます!」
「いいんだよ、アミィ。お前とダドリーの欲しい物を買うために私は働いているんだからね!」
バーノンはそう言ってアミィに優しく微笑む。ハリーはその笑顔の裏では何を考えているんだろうかと思いながらスープをちびちびと飲み進める。
「次にお母様!素敵なワンピースとブレスレット、可愛らしい髪飾りに靴まで!本当にありがとうございます!次のお出掛けにはいただいた物を身に付けていきますね!早く次のお出かけの日にならないかしら!うふふ、とっても楽しみだわ!」
「あぁ、アミィちゃん!大したものでもないのにそんなに喜んでくれるなんて、あなたは本当に良い子ねぇ!」
ペチュニアはそう言ってアミィを抱き締める。ハリーはそんな2人を見て愛情と憎悪は紙一重なのだと実感した。
「ダドリー!あなたがプレゼントしてくれた綺麗な額縁!すっごく気に入ったわ!高級感があって、次描きたい絵と合いそうなの!描けたら一番にあなたに見せるわね!」
「ほ、本当?アミィがおれのプレゼントを気に入ってくれて良かったよ」
ダドリーは顔を赤らめて嬉しそうに微笑む。しかし、ハリーと目が会った瞬間、彼はそっぽを向いてしまったが。
「そして最後にハリー!あなたがお母様を手伝って作ってくれたケーキ!凄く美味しかったわ!あなた、もしかしたらパティシエの才能があるんじゃない?うふふ」
「そ、そうかい?喜んでくれたなら良かったよ」
ハリーは内心アミィにケーキを作ったのはほとんどペチュニアだと言いたかったが、アミィに失望されるのが嫌で反論することは出来なかった。
アミィは毎年、誕生日パーティーの夜にプレゼントを渡した家族にそれぞれ1人ずつ感謝を述べる。お小遣いを貰えないハリーは、毎年ペチュニアのケーキ作りを手伝い、そのことをペチュニアがアミィに伝えることで、彼女はハリーには毎年ケーキに対する感謝を述べていた。そんなことでしか感謝を貰えないことを不満に思いつつ、そんなことでもこんなに喜んでくれるアミィをハリーは心から愛おしく思っていた。
誕生日パーティーは夜が深くなるまで続き、酒に酔い潰れたバーノンはそのまま眠ってしまい、ダドリーは腹が満たされたからか幸せそうな顔で寝室に入って行った。ペチュニアはダドリーを連れて2階に上がり、おそらくそのまま眠るのだろう。
「誕生日おめでとう、ハリー!これ、私からのプレゼントだよ」
7月31日になる寸前の時、アミィはハリーに綺麗にラッピングされた箱をプレゼントした。
「ありがとう、アミィ。今すぐ開けても良い?」
「うん、勿論よ!」
ハリーが箱を開けると、中にはケーキを模した11の数のロウソクを立てられたアロマキャンドルと、新品の綺麗な革靴が入っていた。
「うわぁ、凄いね。まるで本物のケーキみたい。こっちの革靴はなんだか高そう。本当に貰って良いの?」
「勿論よ!私は毎年ハリーからケーキを貰っていたわ。そのお礼がしたくて、長く持つアロマキャンドルをプレゼントしたの。火を付けて吹き消せば、いつでも11歳の記憶が思い出せるでしょう?今日は私だけじゃなくてあなたにとっても大切な日。あなたにも、今日という日が良い記憶で終われれば良いなと思ったの。あ、靴はダドリーのお下がりだとそこが擦り切れているし、少しみっともないでしょ?サイズは23cmなんだけど、どう?履けそう?」
アミィはそう言ってにっこりと微笑む。ハリーはその笑顔を見て胸が締め付けられた。彼女が本当に自分の誕生日を心から祝っているのだと、そう実感できたから。
「サイズはピッタリだよ。本当にありがとう、凄く嬉しいよ!ねぇ、このアロマキャンドル、早速今使っても良いかな?」
「もちろん!じゃあ火も点けてあげるね!」
ハリーが頷くと、アミィはライターで11本のロウソクに火を灯していく。蝋が溶け始めると、部屋の中に甘い匂いが充満し始める。
甘い香りに浸っていると、階段の方からドタドタと降りてくる足音が聞こえる。階段の方に視線をやると、数秒後寝巻き姿のダドリーが現れた。
「なんか、甘い匂いがするな」
「ダドリー、眠そうにしてたのにまだ起きてたの?」
アミィがクスクスと笑いながらダドリーに尋ねると、彼は眠そうな顔のままハリーをじろりと睨みつけた。
「突然甘い匂いがしたから、誰かこっそりケーキでも食べてるんじゃないかと思って降りてきたんだ!それよりアミィ、そのケーキはなんだ?おれへのプレゼントか?」
「違うわよ。これはハリーの誕生日プレゼントなの」
「ああなんだ、ハリーか。それ今から食べるのか?」
ダドリーは相変わらず食に関することになると、周りが見えなくなってしまう。そんな子供っぽいところがアミィは大好きで愛おしがった。
「これはアロマキャンドルよ。ロウソクに火を灯すと、蝋が溶ける過程で甘い匂いがするのよ」
「ふーん」
ダドリーは興味が無さそうに返事をすると、アロマキャンドルをじっと見つめる。そして数秒後、ダドリーは突然歌い出した。
「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデーディアハリー。ハッピバースデートゥーユー」
ハリーとアミィは呆気にとられていたが、数秒後正気に戻り、ハリーが泣きそうな顔で笑い、蝋を吹き消した。
「……っ、ありがとう、ダドリー、アミィ」
アミィはダドリーと顔を見合せ、クスクスと笑い出し、ダドリーは眠そうな顔で欠伸をする。
「気にしないでよ、ハリー。これからだって毎年あなたの誕生日を祝うわ!だから、泣かないで!笑ってちょうだい!」
「ふわぁ……アミィがそう言うんなら、祝ってやらないこともない」
ハリーはその言葉に頷きながら目に涙を浮かべる。こんなに幸せな日は産まれて初めてだった。アミィが、最高のプレゼントを贈ってくれて、あのダドリーが誰に言われるまでもなく、誕生日を祝う歌を歌ってくれたのだ。それも大嫌いなハリーの為に。
「もう1度、蝋燭の火を吹き消してもいい?」
「えぇ!勿論よ!」
アミィがそう言うと、全ての蝋燭に火をつけ、ハリーはロウソクの火を吹き消した。パチンパチンとテキトーに拍手をするダドリーと、嬉しそうに何度もおめでとうと連呼するアミィを目に焼き付け、ハリーは幸福な気持ちのまま眠りについた。
7月30日は、ある意味3人にとって最高で最悪の、記念すべき日になったのだった。
ついに、アミィ、ハリー、ダドリーの3人の運命が変わる分岐点へとやってきました。
なんとまさかのダドリーにもホグワーツからの手紙が。
ペチュニアはとても複雑な心境でしょうね。
ホグワーツに行きたくても行けなかった彼女が、まさか息子の元にホグワーツからの手紙が届くなんて夢にも思わなかったでしょうし、リリーの息子と親友サファイアの娘にも手紙が来るんですから、神様による運命のいたずらを憎むのか、それとも少し嬉しいのか、はたまたどちらの気持ちもあるのか、私には理解できませんが、ペチュニアにとってこの出来事が過去の憧れや後悔を払拭する良い機会であることを願います。