ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
あらすじ書くより、多分見た方が早いです。
ペチュニアは学生時代のとある冬休みの日の夢をみた。
『チュニー聞いてよ!私ね、セブと一緒のスリザリン寮の先輩に目の敵にされてるのよ!』
ああまたか、とペチュニアは思った。長期休暇でリリーが帰ってくると、彼女は毎回両親に学校であった"良いこと"を話し、ペチュニアには学校であった"嫌なこと"を愚痴るのだ。ペチュニアはうんざりしながらも、それでも妹も苦労しているのだからと話を聞き続けた。
『あのね、私とセブが二人で図書室で勉強していたら、スリザリンの上級生が突然男好きとかビッチとか、尻軽って、って罵ってきたの!別に私は男好きでも尻軽でもないのに。ただ、女子の友達が出来なくて、男子といる方が楽だからそうしてるだけなのに。酷いと思わない?』
『……』
『シリウスやジェームズ、ピーターやリーマスは気にするなって言うけど、やっぱりずっと言われっぱなしは嫌なのよね。シリウスたちに話したら、俺がアイツらを懲らしめてやるって言ってたけど、そんなことさせるわけにも行かないし。はあ、一体どうしたら良いのかしら……』
ペチュニアはリリーを哀れに思いながらも、リリーにも原因があるのだということを悟った。
ペチュニアが近くのエレメンタリースクールに通っていた時、男子生徒とばかり仲良くする女子生徒は、同じ同性の女子生徒から嫌われていた。仲間外れにされたり、陰口を叩かれたり、散々な目に遭っていた。そんな女子生徒を男子生徒たちは庇い、男子と女子の対立は次第に大きくなっていくのだ。リリーは今、その状況とほぼ同じ状況に置かれているらしい。
だが、リリーが男子生徒とばかり仲良くしていれば、女子生徒から反感を買うのは仕方がない。それにリリーにそんなつもりはなくとも、判断するのは他者なので、ペチュニアにはどうすることも出来ない問題だ。
リリーがその悪口を言われるのは自業自得なのだ。しかし、それをそのまま伝えることは姉として出来なかった。
『大丈夫よ、リリー。あなたは可愛いもの。そんなのに屈するなんて、あなたらしくないわ。あなたは花のように気高く、前だけむいていれば良いのよ』
ペチュニアはリリーを励まし、リリーもペチュニアの言葉に勇気づけられていた。しかし、その上級生の女子生徒はその後も事あるごとにリリーに嫌がらせをしてきたらしい。そしてとうとう、決定的な事件が起こった。
『……セブが、セブがね!』
『セブルスがどうかしたの?』
『……私のことを"穢れた血"って、そう呼んだの』
『えっ……?』
リリーの話によれば、突然セブルスがリリーと会いたくないと、一緒にいたくないと言い、リリーがしつこく理由を聞こうとしたら最も彼女が傷付く言葉をかけたそうだ。リリーを誰よりも愛している、あのセブルス・スネイプが。
『セブは、スリザリンに入ってから変わってしまったわ。でも、きっと私と距離を取りたかったのね。私がセブと一緒にいたせいで、グリフィンドールのシリウスやジェームズたちにからかわれたり、虐められたりしてたわ。私のことなんて、きっと嫌いだったのよね……』
リリーは肩を落としていた。そんなリリーにペチュニアは何も言えなかった。ペチュニアが励ます暇もなく休暇の時間は一瞬の風のように過ぎ去り、リリーはまたホグワーツへと旅立って行った。
休暇が明け、ペチュニアが学校へ通うと、久しぶりに授業をボイコットした日、天気は雨だった。屋上に行ったところできっとサファイアはいないだろう。そう思いつつも、ペチュニアは傘を持って屋上に向かう。扉を開くと、赤い傘を差したサファイアの姿がそこにあった。
『雨なのに、今日も空を見に来たの?』
『うん。チュニーこそ、なんで屋上に来たの?今日の天気は雨なんだよ?』
『何となくよ』
ペチュニアはサファイアの隣に立ち、空を見上げる。そこには、厚い雲で覆われたどんよりとした空が広がっていた。いつもと違って、雨粒が地面に打ち付けられているが、二人の間には気まずい沈黙が流れる。先にそれを破ったのはサファイアだった。
『……チュニー、チュニーは、予知夢って信じる?』
『突然どうしたの?』
『……私ね、時々予知夢を見るの。今日みたいな雨の降る日に、誰かが死ぬ夢を見たの。でもその"誰か"が誰なのかは分からない。でも、私はそれがこの学校の人間なんじゃないかって、そう思ったんだ……』
サファイアは今にも泣き出しそうな顔をしていた。ペチュニアはそんなサファイアを慰める言葉も見つからずにただ黙っていた。
『……夢は夢でしかないの。予知夢なんて非科学的なもの、存在しないわ。大丈夫よ、何起きないわ』
『……そう、だよね。うん、分かってるんだけど、実はこの夢を見た翌日に、毎回私の周りの人が死んだり、消えたりするんだ。』
サファイアはそう言うと、傘を放り投げ、雨に打たれ始めた。
『ち、ちょっと何してるのよ!』
雨に濡れるサファイアを急いで引き寄せ、傘の中に引入れる。ペチュニアの傘は1人用なのでかなり窮屈だが、そんなこと考えられないくらいには、サファイアの身を案じていた。
『もう!何してるのよ!風邪でもひいたらどうするのよ!』
『ごめんなさい、チュニー。……ねぇ、私ってやっぱり疫病神なのかな』
サファイアは雨で濡れた顔をペチュニアの胸に押し当てながら呟いた。その声は泣きそうな声で震えていた。
『そんなことないわよ!あなたはただの人間よ!そんな非科学的なもの、あるわけないわ!良い?この世にね、魔法だとか、超能力だとか、幽霊だとか、そんなものは存在しないのよ!科学的根拠があるもの以外、存在しないの!分かったわね?サフィ!』
ペチュニアはそう強く否定すると、サファイアは目をぱちくりとさせながら、何度もうんうんと頷いた。
『そっか、そうだよね。そんなものあるわけないよね……うん、チュニーが言うんだから、そうに決まってるよね』
サファイアはそう言うとペチュニアに抱きつき、えへへと笑った。ペチュニアもまた、そんなサファイアを抱き締め返したのだった。
ペチュニアは妹リリーと似ても似つかない、お淑やかで、不思議ちゃんで、優しくて、たまに自分を卑下するサファイアを愛していた。リリーに姉らしくできない自分を嫌い、その分サファイアに姉らしく接し、自尊心を必死に守った。
ちなみに余談だが、サファイアの予言が当たったのか外れたのかは不明だが、翌日の朝、下級生の女子生徒が学校を退学したと言う噂話が流れていた。死んだのか、生きているのかは不明だが、その事実をこれ以上考えないように、ペチュニアは自分に言い聞かせたのだった。
◇◇◇
翌日の夜、アミィは晩餐の時間に額縁に入れられた1枚の絵を家長であるバーノンに手渡した。
「みんなのプレゼントのおかげで最高の時間を過ごせました。これは私のほんの気持ちです」
「ほう、そうか。今年もまた絵を描いてくれたんだな」
アミィは毎年、誕生日の翌日の夜に送られた画材を使って、プレゼントや誕生日の日をイメージした絵を描き、ダドリーがプレゼントした額縁に入れてそれをバーノンに手渡していた。アミィは幼い頃から絵を描くのが好きで、度々受賞されるほどの腕前だった。だからか、必ず誕生日プレゼントのお返しとして、ダーズリー一家とハリーに対する一枚画をプレゼントしていた。
「今年の絵はこちらです」
今回描かれた絵には、ビールを飲むバーノン、新しく手に入れたラジコンを傍に置きチキンを頬張るダドリー、ワインを飲むペチュニア、その横でスープを飲むハリーがいた。そして、中央に置かれたバースデーケーキは、ペチュニアとハリーが作ったものに、ハリーのアロマキャンドルに施されていた装飾を付け足したもので構成されており、皆が皆幸せそうな顔をしていた。
「私とハリーの誕生日、そしてみんなが私たちを祝福してくれた時の嬉しさ、感動を描いたつもりです」
「実に良い絵だ。アミィ、お前はやはり天才だな。これからも、どんどん絵を描きなさい」
「アミィ凄いよ!特にこのチキンなんて本物みたいじゃないか!」
「アミィちゃんは本当に絵が上手ね!綺麗に描けてるわ」
「ありがとうございます。そう言って貰えて、とても嬉しいです」
アミィはにこりと微笑むと、自分の席に戻りスープに口をつける。
アミィにとって、家族とはバーノンとペチュニア、ダドリー、ハリーたち全員のことを指す。たとえ仲が悪くとも、せめて絵の中でだけは笑っていて欲しい、理想の家族でいて欲しい、そんな願いを込めて絵を描いている。そんな感情が伝わったのか、伝わっていないのかは不明だが、毎年絵を玄関のよく見えるところに飾ってくれるバーノンを見れば、その答えは明白だった。
「来年もみんなで過ごせますように……」
アミィは小さな声で天に祈ると、その瞬間庭にあるスノードロップの花が突然開花したのだが、そんなことを知る者は誰もいない。
それからというもの、アミィは必死に学校の勉強についていけるよう、宿題以外にも多くの予習をした。ダドリーは入学前の事前学習を終わらせられるよう、努力し、ハリーはペチュニアに口煩く勉強をさせられ、3人はひたすら勉強三昧の生活をしていた。
「アミィちゃん、リンドスター家のメリーちゃんと、マーティン家のヘレンちゃんからお手紙が届いているわよ」
「まあ、本当?すぐに返事を書かなきゃ!」
アミィはペチュニアから手紙を受け取ると、すぐに封を切り、中の手紙に目を通す。
『アミィへ、元気?今年はウチの家族はフランスに旅行へ行ったのよ!イギリスと違って、料理全てが美味しくてやみつきになったわ。特にホテルのディナーが最高でね、あのシェフをウチのお抱えにできたらとどれだけ思ったでしょう。あなたにも是非食べさせてあげたかったわ。夏休み明けにはフランス土産を渡すから楽しみにしていてね』
メリーの手紙を読んだアミィは、彼女の元気の良さについクスリと笑ってしまう。メリーの明るさはアミィにとって太陽の光と同じで、なくてはならない存在だったため、勉強漬けのアミィからしたら最高に嬉しい手紙だ。
『アミィちゃん、お久しぶりです。元気にされていますか?私は夏風邪にかかって、少し寝込んでいました。しかしもう回復したので、夏休み最後の旅行は何とか参加できそうです。夏休みが明けたら、私は今年から寮生活になります。ヘレンの話と見学をした時の感想として、人が多いというのは難点ですが、そこそこ過ごしやすそうだと思いました。アミィちゃんも、寮生活の体験を申し込んではいかがですか?私としては、仲の良いアミィちゃんがいてくれたらすごく助かるので、もし良かったら検討してみてください。では、また新学期にお会いしましょう』
ヘレンの手紙を読んだアミィは、その文面から寮生活に対しての不安な様子がよく伝わってきた。確かに、ほとんど話したことも無い人たちと同じ部屋で過ごさなければいけないのは、アミィも想像するだけで息が詰まりそうになる。ヘレンとは仲の良い友人だ。そんな友人の力になれるのであればと、アミィは前向きに検討してみようと考えた。
「お母様、もし私が寮生活に興味があるって言ったらどうする?」
アミィがペチュニアにそう言うと、ペチュニアは持っていたカップを床に落とした。
「あ、大丈夫?お母様」
幸い床はカーペットが敷かれていたので、カップが割れることは無かったが、中に入っていた紅茶が零れてしまった。ペチュニアは呆然とした様子で、アミィを見ると口を開いた。
「ごめんなさいね、急にそんなことを言われて驚いてしまったわ。私としては、アミィちゃんにはこの家で過ごして欲しいのだけど、どうしてもと言うのならバーノンにも話してみるわ。……って、あらやだ、私ったらカップを落としてしまうなんて。急いで拭かないとね」
「私がやるわ」
ペチュニアが立ち上がり、布巾を取りに行こうと歩き出した瞬間、ダドリーの部屋から耳をつんざくような悲鳴が上がった。
ペンが進むうちに、色々書いておかないと忘れてしまいそうで怖いですね。
超スピード投稿してますけど、多分どこかで失速します。
早くダイアゴン横丁とかホグワーツ特急の話書きたいです。
ペチュニアの過去編とか、色々お察しかもしれないですけど、今後の重大な伏線的なのが書かれてるので、ぜひ読んでみてください。