ペチュニア・ダーズリーと偉大なる子供たち 作:野菜生活
そこで彼らは、アイスクリームを食べながら休憩し、その後スネイプの意向で梟を購入することにした。
杖を買い終わり、店を出るとハリー、ダドリー、アミィは微妙な面持ちで呆然としていた。その様子を察したスネイプは、先ほどダドリーが言っていたアイスクリームを思い出し、3人に着いてくるよう命じ、その店に向かった。
「……どこまで歩くの?おじさん」
しばらく歩いたことで、少し顔色が回復したダドリーが、スネイプをおじさんと呼び遠回しに疲れを訴える。
「黙って歩くんだ。貴様に発言権はない」
「……おじさんはもっと愛想良くした方が良いよ?きっとママもそう思ってる」
「つべこべ言わずに黙って歩け。さもないと……アイスクリームはお預けだ」
「アイスクリーム?!やったあ、わかったよ!おじさん!おれ、黙って歩くよ!」
ダドリーはアイスクリームにつられ、再び笑顔で嬉しそうに、黙って歩き出した。ハリーとアミィもその後に続く。
「ダドリー、君って本当に単純だね……」
ハリーは呆れながらダドリーに話しかけたが、アミィはクスクスと笑っていた。
「でも、2人が元気を出してくれたみたいで良かったわ」
「アミィって、本当に優しいよね。ダドリーとバーノンおじさんも、君の優しさを少しは見習ったらどうかな?」
「私は優しい訳じゃないわ。ただ、家族を大切に思っているだけだよ。」
そんなことを言っていると、スネイプが足を止めた。そしてダドリーが瞳を輝かせ、窓ガラスから店内の様子を覗き見る。
「わあっ!あのパフェみたいなの!あれ食べたい!」
ダドリーが指を指し、スネイプの方を見ると、スネイプは鬱陶しそうに彼の発言をスルーし、店内に入って行く。
「ま、待てよ!」
ダドリーは慌ててスネイプの後を着いていく。ハリーとアミィも彼らを追って店内に入る。するとすぐに外が良く見える窓際の席へと案内された。
「さあ、好きなのを選びなさい」
「おれはこのジャンボアイスクリームパフェにする!」
ダドリーはそう元気よく言い、この店で最も高く、最も量の多いパフェを選んだ。
「私は……ミックスベリーのサンデーにしようかな」
アミィは様々なベリーが使用された、サンデーを注文することに決めた。
「僕はチョコバナ「全員決まったようだな。では注文しよう」……え?」
何故かスネイプはハリーがメニューを決める前に店員を呼び寄せる。ハリーが困惑しながら、スネイプを見つめているが、彼は気にも止めず淡々とメニューを注文していく。
「ジャンボアイスクリームパフェを1つ、ミックスベリーのサンデーを1つ、チョコレートとカフェオレのカップのダブルを1つ……ああ、それからコーヒーを1つお願いします」
スネイプが注文を終え、ハリーとアミィの方を向き直ると、2人は驚いた顔で彼を見つめていた。
「吾輩の顔に何か着いているのかね?」
「い、いえ、何も着いておりません。ただ……」
アミィが言いにくそうに目を逸らすと、スネイプは冷たい眼差しをアミィに向ける。
「……はあ、言いたいことがあるのならはっきり言ってはどうかね?」
「えっと……その……」
アミィが言いにくそうにしていると、ハリーが真剣そうな顔でスネイプに問う。
「スネイプ先生、僕はバナナチョコアイスのサンデーを頼みたかったんです。どうして、メニューを選ぶ途中で店員を呼んでしまったんですか?」
「……そんなことか。」
2人の間に沈黙が流れ、ハリーとアミィは不思議そうにスネイプを見つめると、彼は心底どうでも良いとでも言いたそうな顔で口を開いた。
「吾輩はてっきり、メニュー表をなかなか見ないから、メニューを決めきれないのかと思って"善意"で注文を決めてやっただけだ。済まなかったな、ミスター・ポッター。だが、今更注文を変更すれば店に迷惑をかけてしまう。名高き英雄である、ポッターならば分かってくれるな?」
「……」
スネイプは意地悪な笑みを浮かべ、ハリーの反応を楽しんでいるように見える。ハリーはそんなスネイプの態度に腹が立ちつつも、言い返す言葉が見つからずに黙り込んでしまう。
「お待たせいたしました」
気まずい沈黙の中、注文したメニューが運ばれて来た。ダドリーは嬉しそうにパフェを頬張る。アミィもミックスベリーのサンデーをスプーンですくって口に運び、その美味しさに顔を綻ばせた。
「……まあ、とっても美味しいわ!」
「うめぇ!ねぇおじさん、もう1個別のも頼んでも良い?」
「ダメだ。他の物が食べたいのなら、また次きた時に頼めば良かろう」
「分かった!おれ、次来た時も必ずここに来るぞ!」
ダドリーは満面の笑みでサンデーを食べ進め、アミィも小さな口でゆっくり味わってサンデーを味わう。ハリーは自分の食べたい物を食べられないことを不満に思いながらも、こんなスイーツはなかなか食べられないと思い、渋々アイスクリームを口に運ぶ。
「……あ、意外とこの味も美味しいかも」
すると、あまりの美味しさに顔を綻ばせ、頬を抑えて緩む顔を抑えるのだった。
「……懐かしいな、彼女もこのアイスが好きだった」
スネイプのそんな呟きは、スイーツを楽しむ彼らに聞こえることはなく、ダイアゴン横丁の喧騒の中へと消えていったのだった。
スイーツを食べ終わると、スネイプは会計を済ませ店を出て行くので、アミィたちも慌てて彼の後を着いて店を出る。
数分歩き続けると、スネイプの足はとある店の前で止まった。
「こ、ここってペットショップか?」
ダドリーがそう尋ねると、スネイプは首を横に振る。
「……ここは『イーロップの梟百貨店』だ。君たちは魔法界について知らんだろうから先に話しておくぞ。良いかね?魔法界には君たちの世界でいう通信具、電話は存在しないのだ」
「ええ?!じゃあどうやって連絡を取り合うんだ?!」
ダドリーが驚いたように声を上げ、アミィとハリーも顔を見合せて驚く。
「その手段は手紙だ。イーロップの梟百貨店には、数多くの種類の梟が居る。ふくろうは昔から賢く人の言葉を理解すると有名だが……ここにある梟は人の話す言葉を理解している。だから、彼らに手紙などを運んでもらうのだ。君たちは今から……飼う梟を選ぶのだ」
スネイプの説明を聞いたダドリーとアミィ、ハリーはペットを飼えるという事実に瞳を輝かせながら、店内へ足を踏み入れ。店に入ると、様々な種類フクロウたちがショーケースの中に居たり、籠に入れられ飼育されていたりしている。ハリーとアミィは種類の多さに圧倒され、店内を見渡して目を白黒させる。
「この子……この白い子が良いな。すごく綺麗、雪みたいに真っ白だ」
ハリーはすぐに自分のパートナーとなる梟を選び、嬉しそうに梟を見て笑みを浮かべる。
「うーん、どいつが一番カッコイイかなぁ……」
ダドリーはかっこいい梟を選ぼうと、随分悩んでいるようだ。アミィはそんな彼を他所に、店内を回って自分に合う梟を探し始める。すると、籠の中にいるオレンジ色の目をした梟と目が合った。。アミィが立ち止まると、それに気づいたスネイプが話しかける。
「アフリカオオコノハズク、か。少し小さいが、初心者にも飼いやすい梟だな。あまり重い荷物は運べないが、手紙や小さな小包を運ぶ分には問題なかろう」
そう言い残し、スネイプは梟を決めあぐねているダドリーの元へ向かっていった。アミィは籠の中にいる梟をじっと見ていると、梟は唐突に毛繕いを始め、其の顔がお世辞にも可愛いとはいえない顔へと変貌し、その様が愛らしいと感じた。
「……うふふ、可愛い子ね。ねぇ、良かったら私と一緒に来ない?」
アミィがそう言うと、梟はパタパタと籠の中で羽を動かしアミィをじっと見つめホーと鳴いた。その瞬間、アミィはこの梟を飼うことを決めたのだった。
「うーん、コイツはあんまり強そうじゃないなあ……」
「まだ決まらんのか」
ダドリーはかっこいい梟を探して店内をうろついていると、後ろから突然スネイプに声を掛けられた。
「なんだ、スネイプおじさんか。大きい梟の方がかっこいいと思ってたけど、なんかみんな眠そうにしてるし、全然カッコ良くなくてさ。他に梟を売ってる店はないの?」
ダドリーがそう尋ねると、スネイプは呆れたようにため息をついた。
「ここ、ダイアゴン横丁で梟を販売しているのはこの『イーロップ』だけだ。早く決めなさい、日が暮れると君の御両親がさぞかし心配するだろう」
スネイプにそう言われ、ダドリーは急ぎ足で店内を歩き始める。しかし、どの梟を見ても飼いたいとは思えなかった。
「うーん……」
ダドリーが悩んでいると、ダドリーの横からひょっこりアミィが現れて、天井に吊るされている大きな鳥籠を指さした。
「ねぇ、ダドリー。あの籠の中にはどんな梟がいるのかしら?」
「うわぁ?!……アミィ、足音をころして忍び寄るなよ。お前はジャパニーズ忍者かよ?」
ダドリーはいきなり背後から忍び寄って来たアミィに驚き、バクバクと跳ねる心臓を落ち着けながら皮肉を言う。しかし、アミィは全く気にも留めず、興味津々な様子で鳥籠の中を覗いている。すると、そこには黄色い嘴に黒い羽を持ち、鋭い目をした大きな鷲がいた。
「……ここって梟を扱う専門店じゃなかったのかしら?鷲もいたなんて……」
アミィが不思議そうにそう呟くと、ダドリーがその鷲を見て瞳を輝かせる。
「おじさん、おじさん!早く来て!」
ダドリーは大きな声でスネイプを呼び、嬉しそうに大鷲を籠の中から見上げる。そして、満面の笑みを浮かべてこう話した。
「コイツ、すげぇカッコイイ!今日からお前はおれのパートナーだ!」
すると、アミィもすぐに鳥籠に駆け寄り、興味深そうに大鷲を見つめる。
「確かに、とても強そうね」
「ああ!おれはこの大鷲にするぞ」
ダドリーは迷わずそう答え、真っ直ぐにスネイプを見る。しかしスネイプは首を横に振った。
「ダドリー、残念だがそれは無理だ。何故なら、その鷲の入った籠が客の見えないところに置かれているのは、その鳥が凶暴で飼育困難だからだ。君はまだ動物を飼ったことがないだろう。だから、他の梟を選びなさい」
スネイプにそう言われ、ダドリーは鷲を飼う事を諦める。しかし、その瞬間鷲がガタガタと中で暴れ始め、ついには籠を破壊して外に飛び出でる。大きく翼を広げ、威嚇するようにダドリーの前へ出た。
「う、うわぁ……」
ダドリーは情けない声を出すが、数秒ダドリーと鷲は互いに見つめ合い、鷲の方が折れて羽を仕舞い、ダドリーに向かって頭を垂れた。ダドリーは、この大きな鷲の主として認められたのである。
「な、なんと!……この凶暴な大鷲に主として認められる人間が現れるとは!あなたはなんて幸運なんだ!」
店員は駆け寄ってくるや否や、ダドリーに握手を求め、興奮気味に息をする。ダドリーは満更でもないといった様子で、目を細めにやけ顔で店員の握手を受け入れる。そして、スネイプの方を見て、どうだと言わんばかりの表情を浮かべて胸を張る。
「おれは鷲に選ばれたんだ!だから……コイツを連れて行っても良いだろ?」
「……あ、ああ。そのようだな。仕方ない、その鷲を飼ってもよかろう」
こうして、ハリーは白い梟を、アミィは少し小さめの灰色の梟を、ダドリーは大きな大鷲を飼うことになったのだった。
しかし、スネイプはダドリーが大鷲を連れて家に戻れば、ペチュニアがヒステリックに怒り、八つ当たりをしてくることが予測される。その為、憎々しげにダドリーを見つめるが、ダドリーは大鷲に夢中でそんなこと気付きもしない。
スネイプは腹いせに、帰るまでの道中、ハリーに幾度となく八つ当たりをすることで、溢れ出ようとする不満と怒りを必死に抑えるのだった。
道中、とある店の前を通り掛かった時、アミィが足を止める。
「……わあ、何あれ?とっても可愛いわ!」
店の中をふよふよと浮遊しながら移動する謎の生物に、アミィは興味津々だった。その生物が淡いピンクという女性が好きそうな色だからか、アミィはこの不思議な魔法生物に夢中だ。
「……スネイプ先生!この子!この子を飼いたいわ!」
「……は?」
スネイプが呆れてものも言えなくなっていると、ダドリーが魔法生物を見て「へぇ、良さそうだな」と気に入った様子を見せ、ハリーも「アミィが好きそうな動物だね!」と肯定的に受け入れた。
ハリーの緑色の瞳を見たスネイプは、かつての想い人がパフスケインを優しく撫でて微笑んでいた記憶が蘇り、ダドリーの顔を見てまだペチュニアとも仲の良かった子供時代を思い出した。アミィが優しい顔でパフスケインを眺める姿を見れば、さらに追い打ちをかけるように過去の記憶が蘇る。
こうして、スネイプは魔法界に来て初めてのアミィの我儘を叶えざるを得なくなってしまった。
「仕方ない、今回だけだぞ」
「ありがとうございます!スネイプ先生!」
ちなみに余談だが、アミィが飼おうとしたパフスケインは変異種で、たまたまこの個体が淡いピンクに変化してしまったらしく、中々お目にかかれないレアなパフスケインだそうだ。もちろん、アミィはそんなことを知らずこの個体を選んだので、このパフスケインの価値など1ミリも知らない。
「……この水色の子が、この子から離れてくれないわ」
アミィが家に連れていこうとした、淡いピンク色のパフスケインを逃がすまいと、水色のパフスケインが引っ付く。その様子にアミィが困っていると、ダドリーが鶴の一声ならぬ迷惑な一声を彼女にかける。
「なら両方連れていけば良いだろ。ウチはそんな貧乏じゃないし、せっかくだから2匹とも飼えば良いだろ」
スネイプはこの発言に頭を抱えた。
ペチュニアに渡された大金はダドリーたちの価値の高い鳥とホグワーツの制服、そこそこ高い杖、まあまあな値段のスイーツで底を尽きかけていた。ギリギリパフスケインを1匹買える金額が辛うじて残っているという状況で、アミィの飼いたいパフスケインに他の個体が引っ付いて離れない。つまり、アミィが折れるか、スネイプが自腹を切らなければ、一向に家に帰ることができないのである。
「……スネイプ先生」
泣きそうな顔でスネイプを見つめるアミィ、スネイプを睨み付けるダドリーを見て、スネイプは深いため息を吐き、懐から財布を取り出す。
「ありがとう!先生!あなたは私の恩人です!」
スネイプは涙を流し、感謝を述べるアミィに何かを言う気力はなかった。帰ればきっとペチュニアが血相を変えて、ヒステリックに怒り狂うのだ。そして、引率していた自身に理不尽に喚き散らすに違いない。その事を考えると憂鬱で、面倒で仕方がなかった。
「うーん、名前はどうしようかな……」
「……僕はヘドウィグにしようと思う。なんとなく、この子を見てたら頭の中にこの名前が浮かんだんだ。」
ハリーがそう言うと、アミィは「素敵な名前ね!」と言いハリーに微笑んだ。
「……おれは、強い名前が良いな。アミィ、なんか良い名前はないか?」
ダドリーに名前の案を求められ、アミィはじっと大鷲を見つめる。すると、ひとつのラテン語が脳裏を過ぎ去った。
「……ヴィルトゥスはどう?」
「ヴィルトゥス?どういう意味なの?」
ハリーがアミィに尋ねると、アミィは意味を説明する。
「ヴィルトゥスは、ラテン語で力や勇気を意味するわ。ダドリー、私はあの嵐の日、あなたが一緒に着いてきてくれると言ってくれて、とても心が軽くなったの。あなたに勇気づけられたわ。だから、きっとあなたの相棒さんも勇気溢れる素敵な鷲さんだと思うの。それでこの名前を考えてみたんだけど……どうかしら?」
アミィが不安そうな顔でダドリーを見つめると、ダドリーは感心したようにうんうんと頷き、大鷲に向き直って笑った。
「良い名前だな。ヴィルトゥス、ヴィルトゥスか。じゃあ今日からお前はヴィルトゥスだ。よろしくな、ヴィル!」
ダドリーは一度籠を開け、ヴィルトゥスをひと撫ですると、すぐに籠の中へ戻す。そして再びアミィの手を引いて歩き出した。ハリーも遅れないように2人の後を追って歩き始める。
「アミィ、お前はなんて名前をつけるんだ?」
アミィは腕に抱えた2匹のパフスケインと籠の中にいる小さめの灰色の梟を見て、考える。
「……そうね、この梟はシルヴァ。星を意味する名前にしましょう。このモフモフは……」
アミィは名前を知らないので、パフスケインをモフモフと呼んでいるのだが、スネイプは何故かそれを指摘しない。もしかしたら、彼の人生で過去にこの生物を擬音で呼んだ人間がいたのかもしれない。
「シェリーとウィニーにしましょう。淡いピンク色の子がシェリー、水色の子がウィニーよ。」
「そうか、良い名前だな」
ダドリーはアミィが付けた名前を褒めると、ハリーも彼の言葉にウンウンと頷いた。こうして、3人はこれからの人生にほんの少しの期待を抱き、前を向いて突き進んでいくのだった。
美味しいアイスクリームを食べて、梟を飼って、パフスケインまで連れ帰る……なんだかスネイプ先生が日曜日のお父さんみたいで面白いですね。
ちなみに、アイスクリーム屋さんでのハリーとのやり取りはただの嫌がらせですが、過去にリリーが美味しいと言って食べたアイスクリームをハリーに与えたという秘密が隠されていたりします。
■ハリーのペット
・白い梟
・名前はヘドウィグ
■ダドリーのペット
・大鷲
・名前はヴィルトゥス
■アミィのペット1
・梟
・名前はシルヴァ
■アミィのペット2
・パフスケイン(淡いピンク色の変異種)
・名前はシェリー
■アミィのペット3
・パフスケイン(水色の変異種)
・名前はウィニー