原神×仮面 〜剣‹ブレイド›、『永遠』の地にて〜   作:ジュンチェ

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漂着者

 

 

 テイワット大陸… 七柱の魔神がそれぞれの国を治める世界である。

 

 

 基本、どの国も互いに隣接しあっているのが大抵の場合なのだが、雷神バアルが統治する『稲妻』のみが他国と海を隔てて独立する形となっている。故に国同士交流するには交易船くらいしかないのだが…当のこの国は雷神こと雷電将軍の意思によって絶賛、鎖国中である。よって、物も人も最低限かそれ以下といった有様。行商人たちも離島に閉じ込められ、稲妻城城下は愚か本島にさえ足を踏み入れることすら出来ない。

 

 

「――全く、相変わらず不便この上ないったらありゃしない。」

 

 

 現状の稲妻のあり様を嘆きながら、城下町から遥々離れた離島を目指す少女。名は『千織』……呉服職人の見習いである彼女は師匠からの使いを頼まれその道中。結構な距離をわざわざ歩かなきゃならないのは中々の時間も体力も使う…商人が、城下町まで来てくれればこんな手間はいらないのにとつくづく思う。

 

 そんなボヤいているうちに本島の端にある離島へ到着。異国人と稲妻人が入り乱れる独自の活気がある港町は今日も今日とて両者の争いが絶えないのだが…まあ、自分にとっては関係ないし興味も無い。

 

 

「さて、彼は何処かしら…… ああ、いたわね。」

 

 

 離島の中心にあたる桜の木の下で見つけた顔馴染のツンツンオレンジ頭。約束の時間通りだ…。

 

 

「待たせたわねトーマ。」

 

「お、千織! 頼まれた物は揃ってるぞ。確認してくれ。」

 

 

 気の良い青年はトーマ…この離島の顔役で交易商の団体である万国商会と稲妻の商人・客との間を取り持っている。それ故、離島で取引をする上で彼の存在は余計なトラブルを避けるには必要不可欠なのでここを度々訪れる千織とも顔見知りの仲になるのは必然だった。

 

 彼の用意してくれていたのは服の材料となる衣や染料…島国の稲妻では手に入りにくい種類のものだが、千織の顔は険しい。

 

 

「――また質が落ちたわね。」

 

「仕方ないなソレばかりはさ。年々、稲妻を相手にする行商人も減る一方だし…。詫びと言っちゃあれだがウチの荷車使うかい?」

 

 

 品を確認すると『お願いしようかしら』と彼が用意していた荷車にお使いの品を置く。荷台には恐らく城下町に持っていくであろう品々も積まれている…挟まれたり潰されないよう気をつけなくては。 ―――ん? 雑費に紛れこませてあるこの四角い袋は…

 

 

「今回、手に入ったの?」

 

「ああ。贔屓にしてる商人に都合してもらったんだ。一応、ご禁制の品だから目につくと面倒だ…代金(モラ)は後で良い。」

 

「……ありがとう。」

 

 

 ご禁制の品と言えば大層なものと聞こえるが、袋の中身は海を越えた遥か先…芸術の国フォンテーヌで発行されているファッション誌だ。稲妻には存在しない数々の流行の最先端をいくデザインの服の写真、化粧品の紹介コラムなど様々なお洒落関係の情報が掲載されており、千織にとっては崇高な教科書であり宝だ。

 昔は城下町の書店・八重堂なんかにも置いてあったが、『目狩り令に伴った鎖国の強化』『勘定奉行(無能な老人)』の最低な組み合わせで諸外国の娯楽品の締め出しにあい、今や手に入れるには交易商の顔役であるトーマを頼るしかない。

 彼に感謝しつつ、あとでゆっくりと拝ませてもらおう。

 

 

「――さて、これで全部かな。早速、城下に運んで…」

 

「おーい、待ってくれ! これも頼む!」

 

 

 うん? 早速、荷車を出そうとしたトーマだが駆け寄ってくる役人とおぼしき侍に呼び止められた。何やら両手に抱えるほどの包みを持っているが…

 

 

「ん? これは……」

 

「城下の九条沙羅様のところまで送ってくれ! 中身は『こわれもの』…くれぐれもよろしく頼むぞ!!」

 

「は? オイ!?」

 

 

 男は強引に荷台に置くと拒否する暇もなく押し付けられてしまった。いくらトーマも一応は役人であれど、これは中々迷惑この上ない…思わず『ハァ…』と溜息が洩れてしまう。

 

 

「やれやれ…」

 

「こういうこといつもなの?」

 

「いや。だが、まあ扱いが悪いのはいつものことだし? 大事なものだったら面倒だろ?」

 

「大事なものは他人に押し付けたりしないものよ。」

 

 

 取りあえず、運ばないわけにはいかない…放置などして勘定奉行あたりから小突かれる口実になるのも面倒極まりないし。そう自分に言い聞かせ、共に出島を後にするトーマと千織。

 

 そんな後ろ姿を先、荷物を押し付けた侍が険しい顔で物陰から見送っていた……

 

 

「くれぐれも頼むぞ……大事な大事な『こわれもの』なのだからな。」

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 稲妻城が見下ろす城下町…その近郊の砂浜。

 ザァザァと打ち付ける波は予定外の厄介事を運んできたらしい。天領奉行配下の役職に名を連ねる九条沙羅は部下から報告を受けやってきたのだが…

 

 

「沙羅様、コチラが例の土左衛門です。」

 

「…そうか。」

 

 

 気丈に振る舞う沙羅だが内心は『うっ…』と忌避感を覚えてしまう。土左衛門…要は水死体のこと。藁の敷物を被せているアレのことだろう。

 この土左衛門、何が厄介かと言えば遺体が長時間、水に浸かっていればふやけてしまう上に魚などに啄まれればまあ見るも悲惨な姿になってしまう。遺留品でもなければ身元確認も難儀な上にそもそもメンタル的に良くない。

 

 

(――これも仕事のうち…)

 

 

 自分にそう言い聞かせ、藁の敷物をめくる沙羅。すると…

 

 

「……これは…」

 

 

 幸い、遺体は見たところ大した損壊は無い……が…

 

 茶髪の男…稲妻人のようだが、サングラスにフォンテーヌ人のような黒い服(にしては装飾が少ないが)を着ている。恐らく年齢は20前後……そして…

 

 

「……緑色の血?」

 

 

 頬の傷口が不気味な蛍光色の緑。

 人間は勿論、動物や妖に至るまで概ねの生き物は赤い血なのは常識だが…なら、この男はいったい? 新手のアビスの魔物か何かなのだろうか。

 

 

「沙羅様、どういたしましょう?」

 

「ふむ…念の為、身元がわからないか調べておけ。あと遺体そのものも検める必要があるな。」

 

 

 嫌そうな部下の侍たちに命令をかけ、敷物を戻して立ち上がる……さて、これ以上は面倒事が増えなければ…

 

 

「沙羅様!報告致します!!」

 

「…」

 

 

 ――思っていた傍から… まあ、報告してきた部下に罪はない。

 

 

「なんだ?」

 

「は! 見廻りからの連絡でこちらに向かって大量の魔物が押し寄せてきているようです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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