原神×仮面 〜剣‹ブレイド›、『永遠』の地にて〜   作:ジュンチェ

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はじまりを告げる雷光

 

 

「センパイ、わたしを追ってわざわざテイワットまで来たんですね。―――嬉しい…」

 

 

 

 稲妻どころかテイワットにすら不相応な黒いゴスロリのワンピースを着こなす少女はブレイドの来訪に恍惚に微笑み嘲笑う。銀髪に真っ白な肌…20歳前後といった外見だが、人間味を失った紅い瞳は美しくも不気味…

 愛らしい声色も何処か残虐性を帯びているような気がするのは気のせいか。

 

 

「ああ、愛おしくて可愛そうなセンパイ…やっぱり、わたしたちは運命の糸で結ばれてるんです! はやくはやく、イジメてイジメて抱きしめてあげないと!!」

 

「おいおい、それが仮にも想い人にかける言葉かい? その気色悪い言葉を垂れ流す口を閉じてくれると助かるんだが?」

 

 

 そのとなりで辟易とした様子で毒を吐く笠を被る少年。散兵と名乗る彼はこの世界で暗躍する組織ファデュイの執行官のひとり……諸々の訳あって彼女と一緒にいるのだが、その関係性は高揚を台無しにされた少女の冷たい瞳が物語る。

 

 

「あなた、恋とかしたことないでしょう? 愛する人が世界の壁を越えてまで会いに来たのなら喜ぶのは当然です。」

 

「恋がどうかはともかく…キミのしてきたことは聞く限り、恨まれて然りだろう。わざわざ星の海を渡って来るのなら…彼の増悪は相当なものだな。」

 

 

 全く、こんな心身ともにイカれ尽くした怪物に好かれる…いいや執着されるなんてご愁傷さまと心の中でブレイドに同情する散兵。おまけに故郷を滅ぼしたともなれば尚の事。

 それはそれとして、新しい来訪者は自分たちファデュイの敵になる可能性は高い。あの戦いぶりを見るにこの女か自分が直々に相手をしなくてはならないくらい強いという見立て……個人的にはバケモノはバケモノで仲良く潰しあってほしいもの…………ん?

 

 

「―――!」

 

 

 曇天……しかし、瞬いた紫色の雷光にキッとキツいと目つきを更に鋭くした散兵。

 あの紫色を帯びた雷は人為的に雷元素が収束している証…ましてや、それが天候を操れるほどのクラスとなれば…

 

 

「――『あいつ』が来る。」

 

「アイツ?」

 

 

 少女は首を傾げる。まだテイワットに来てから日が浅い故に事態への理解が出来ていないのだろう。

 

 そんな彼女に眉間に皺を寄せて教える散兵。

 

 

「来るんだよ……この稲妻を統べる統治者がね。」

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ 

 

 

 

 

 

「…?」

 

 

 黄金王獣を倒したブレイド・キングフォーム…だったのだが、異変に気がつく。

 

 空が急に暗くなり…なんだが、周りの空気が文字通りにビリビリする。絶え間なく静電気が起こっているようで、心なしかパチ、パチッと周囲から音がするような? それに、まだ生き残っている魔物たちもまるで何かに怯えている様子である。

 

 

「■■■…(なんだ? ―――はっ!?)」

 

 

 視線。振り向き見上げた先は稲妻城……その天守閣にはひとりの女性がこちらを冷たく見下ろしている。

 

 長い黒髪に動きやすいように改造したとおぼしき和服を纏い、その美しさは遠目ながら息を呑むほどだが、魔物なんて比較にならない威圧感が決してか弱い人間ごときではないと本能が告げる。――何者なんだ?

 

 

「――将軍?」

 

「■■?」

 

 

 沙羅から呟かれた単語…… 『将軍』。

 

 そう彼女こそがテイワットを統べる七神に連なる魔神バアル… 稲妻の主『雷電将軍』。心無しか、曇天に走る雷光すら彼女に付き従うように見えるのは気のせいか……

 

 

「…」

 

 

 周囲の人間たちもどよめく中、雷電将軍は開けた胸元に手を翳す……すると、雷元素を圧縮したような刀の柄が出現し豊かな胸からこの一太刀を抜き天に切先を掲げる。

 唐突なトンチキ地味た行動にブレイドは『ヴェ!?』と思わず面食らってしまったが、沙羅など周囲の人間たちは違う。将軍が刀を構える意味は外敵を討ち祓うため…つまり、

 

 

「いかん!? 総員退避、城下に急げ! 『無想の一太刀』が来るぞ!!」

 

 

「■■? …??」

 

 

 沙羅の警鐘に人間たちは次々と我先にこの場から一目散に逃げ始める。

 タイミングを同じく、雷電将軍の刀から曇天に目掛け雷撃が放たれ…目が眩むほどの激しい稲光と心臓にすら届く轟音が響き渡った。すなわち、彼女の最大の奥義が放たれる合図であり無法を働く輩が最期に見る光景……

 

 

 

「――稲光、すなわち永遠なり。」

 

 

「■■!」

 

 

 気がついた時にはもう遅い。回避する間もなく、振り下ろされた雷光が一瞬のうちにブレイドを呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

「走れ千織! とばっちりを喰らうぞ!」

 

「言われなくたって…!」

 

 

 全てを破壊する勢いの雷を背に全力疾走するトーマと千織。雷電将軍の最大奥義・『無想の一太刀』を拝むのはふたりとも初めてだが、よりにもよって眼前で振るわなくても…! さっさと逃げなくては余波で自分たちも塵と化してしまいかねない。

 

 一方、奥義を放った雷電将軍。彼女も違和感を覚えていた…

 

 

(おかしい… 民は巻き込まないように加減したはずですが…)

 

 

 無想の一太刀はあくまで稲妻に仇なす敵を討つための奥義。一応、処刑などにも用いたりはするものの…無辜の民、ましてや武士として務めを果たす幕府軍を巻き込んだりはしない。仮にも『武神』とまで称される自分が力加減を見誤るなど……

 

 

「…!」

 

 

 待て。落とされた雷光の中で影が見える…?

  

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

「うおおおおぉおおおおお!?!?」

 

 

 冗談ではない!

 天から荒れ狂い牙を剥く雷元素の激流をキングラウザーを盾に受けるブレイド。キングフォームかつ、融合しているメタルトリロバイトの『防御強化』と同じくタイムスカラベの『時間停止』が無ければ危うく塵ひとつ残らず消しとんでいただろう。アンデッドにも電撃を操るサンダーティアーがいるが、外見的には人の身でありながらそれを凌駕する雷を操る彼女は本当に何者なんだ!? 

 

 

(…あと、ヤバいかもしれない!)

 

 

 鎧の間から緑色の鼓動が漏れはじめている……キングフォームでも無効化しきれない過剰なダメージにアンデッド・ジョーカーとしての本能が刺激されているのだ。もしこの雷を耐えきれたとしても、最悪の可能性として理性を失い破壊衝動のまま無差別に暴れまわることだってありうる。キングフォームでそんなことになったらなんて考えたくもない。

 

 

(―――なら、いっそここで消し飛んだほうが……)

 

 

 ふと過る死の救済への考え。今なら永遠の命を終わらせることが出来るかもしれない…… 不滅に近いアンデッドのボディもこれなら完全に消滅させることも……

 

 ―――いいや、駄目だ!

 

 

「俺は…ここでは終われない!!」

 

 

 その時、腰のカードホルダーから飛び出す13枚のラウズカード。ハートのスートのそれは意思を持つように融合し、1枚の金色に輝く羅針盤が描かれたカードへ変化してキングラウザーのスロットへ滑り込む。

 

 

【 -WILD- 】

 

 

「ハジメ!?」

 

 

 すると、唸る暴風を纏い無想の一太刀を押し返しはじめるキングラウザー。理屈はわからない。ジョーカーの生存本能が為す技か、はたまたカードの本来の持ち主である亡き友からの助けなのか……何にせよ、逆転の切札がきられたことは間違いない。

 

 

「……生きて責任を果たせって言うんだなハジメ! ――ならっ!」

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ 

 

 

 

 

「ハァァァァアァァ……!」

 

「――なっ…」

 

 

 雷電将軍は己の目を疑う。魔物や名だたる猛者、果ては魔神まで幾度となく自らや稲妻に仇なす者たちを葬ってきた無想の一太刀が…押し返されはじめている!?

 ここ千年であり得なかった事態だ。いや…あり得てはいけない事態が起きている!

 

 

「ハァァァ!!!」

 

「!」

 

 

 ―――永遠のはずの稲光が…黄金の風に断ち切られた。

 

 

 弾かれた無想の一太刀は技を放った本人をかすめ、稲妻城の天守閣を半壊させ空に消える……残されたのは自らの象徴をふたつも傷つけられ唖然とする雷神のみ。

 

 

「――はぁ… はぁ……」

 

 

 一方のブレイドもチカラを使い果たし、黄金のオリハルコンエレメントが自動で身体を通り抜け変身解除。ひとりの青年が糸が切れたように地面に倒れ伏し、辺りにラウズカードが散らばる……

 

 もうこの場所に魔物の影は無い。しかし、残された人々は動揺し途方に暮れる……稲妻で『絶対』とされる無想の一太刀をあろうことか退けてしまった謎の騎士。放置はできない……ならば、恩人と助けるべきか?――あるいは将軍の威光に楯突く不届き者と斬り捨てるべきか?

 

 

「――沙羅様。この者はどういたしましょう?」

 

 

 その判断は今、沙羅に委ねられていた。部下からのすがるような視線……現場の責任者として指示をしなくてはならない。

 

 

「最低限の手当てをしてから連れいていき拘束しろ。事が事、流石に生き死にまでは私では判断はしかねる…奉行所の判断を仰ぐ。」

 

 

 これが自らの裁量で妥当なところだろう。

 幕府軍たちが倒れた青年の怪我の処置に入り、沙羅は今一度、天守閣を仰ぎ見る。半壊したそこに既に君主の姿は無い。

 

 

(―――一波乱は…避けられそうにないな。)

 

 

 今の稲妻は多くの問題を抱えている。

 その最中で、国の根幹に関わりうる新たなる問題…

 

 

 どうしてこう面倒事が次々と………頭を抱えずにはいられなかった。





Q.なんでブレイドを攻撃したの?

 雷電将軍「…アビスの魔物の新種かと思い……」

 ブレイド「えぇ……」


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