原神×仮面 〜剣‹ブレイド›、『永遠』の地にて〜   作:ジュンチェ

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 さ、寒い……




狐に包まれて

 

 

 ――地獄。 すでに安寧などこの世になく…

 

 

 仲間は… 友は… 皆、死に絶えた。

 

 

 

 風が吹き荒ぶ不毛な荒野で墓穴を掘るのはただひとり。ザクッ…ザクッ…と穴をスコップで掘る音が乾いた音が響き続けていた。建てた墓標はまともな材料が手に入るはずもなく、そこらの廃材を地面に挿して見立てることがせいぜいで、そんな物がずっと並んでいる。

 

 

「――立花さん… 夢月… ハジメ… 皆… ごめん、もうこんなことしか出来ない。」

 

 

 世界を救えなかった英雄はまるで罰を受けるように穴掘りを続け、そこに目を覚まさない者たちを弔っていく。せめて、生き残って…キングフォームの代償として死という手段を選べなくなった自分がしなくては。

 やがて、最後のひとりの埋葬が終わり彼は地面に腰を下ろす。

 

 

「…あとは俺がなんとかするから。安心して眠ってて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれれぇ〜??カズセンパイ、こんなところで何をしてるんですかぁ??」

 

 

 ――!

 

 不意にかけられた背後からの甘ったるくて…この世で一番に忌々しい声。

 勢いよく振り向けば…『奴』がいた。何処で手に入れたかわからないゴスロリのワンピースを着回し日傘をさして幼子のように笑む彼女は純真で邪悪だった。

 

 

「あ、皆さんのお墓を建ててあげてたんですね? わざわざ律儀で可愛い……なら、センパイに免じて手の一つくらいはあわせてあげましょうか?」

 

 

 パン!パン!と合掌する手に敬意や弔意なんてものはない…クスクスと緩む口許が雄弁に騙るのはそれらと真逆のものだろう。男は煮えくり返る怒りを抑えながら身構え、彼女を睨みつける。

 

 

「…シンジュ、何をしにきた?」

 

「釣れないですね…… ま、良いでしょう。 それじゃ、渡して下さい…『ゼインドライバー』を。センパイが持ってるんでしょ?」

 

 

 ――!

 

 

 思わず半歩引いた…それがもう答になってしまう。

 ゼインドライバー……この世界を善意の下、破滅へと導いた『仮面ライダーゼイン』への変身ツール。これが奴の手に渡ればロクなことにはならないのは明白である以上、従うわけにはいかない。

 冷たい汗が額を伝う男に対し、彼女はまたクスクスと微笑む。

 

 

「ふふっ… センパイはそうやってポーカーフェイスひとつ出来ないところも本当に可愛い。でも、そんな可愛いセンパイでも…聞き分けが悪いなら、こちらも手をあげないといけなくなりますよ?」

 

「黙れバケモノ! お前を封印して、ゼインドライバーは破壊する!」

 

「……そうですか。そんなに痛いほうがお望みなら…」

 

 

 憤怒と嘲笑。最早、戦いは避けられない。

 お互いの変身ベルトが竜のように飛来し装着されると、それぞれの主はラウズカードを装填する。

 

 

「「変身!」」

 

 

【 TURN UP 】

 

【 OPEN UP 】

 

 ぶつかり合うふたつの黄金に輝くオリハルコンエレメント。片や、仮面ライダーブレイド・キングフォームと同じく黄金の冠を戴くシルエットをした仮面ライダーグレイブが激突し……

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

「……うっ?」

 

 

 ――深いまどろみからの覚醒。

 

 …今のは夢だったのか。夢だとしても、過去に現実で起こったことには変わりはないのだが。

 霞む視界が映すのは木造の建物…神社だろうか?痛む頭と節々、朦朧とする意識で周りに手を伸ば………ん?なんだ、このすべすべした感触は?

 

 

「ほほう? 膝枕だけに飽き足らず、寝起き早々におなごの脚を撫で回すとは良い度胸をしておるのう?」

 

「…………は?」

 

 

 ――うわあぁぁあああ!?!?

 見知らぬ女の声に眠気なんてかけられていたかけ布団ごとふっとび、反射的に飛び退いた。

 

 

「これ、暴れるな。折角、縫った傷が開いてしまうぞ?」

 

「だ、誰なんだあんた一体!?」

 

 

 ピンク髪に巫女服の妖艶な雰囲気を醸し出す女…どうやら自分は彼女に膝枕をされていたそうだが、仮にもアンデッドである自分をそんなことをするなんて経験上、ろくな輩ではないのは確か。すぐにラウズカードとバックルを……な、無い!?

 

 

「落ち着け童。別に汝をとって喰おうというわけではない。」

 

「カードとバックルは何処だ!?」

 

「『かーど』と『ばっくる』?…ああ、あの珍妙な絵札とカラクリの箱のことか? それならば……」

 

「返せ!!」

 

 

 怒りのままジョーカーに変身し、詰め寄ってみるが…女は『おおう、怖い怖い。チビッてしまいそうじゃ。』とおどけてみせて余裕を崩さない。普通の人間ならそれこそ悲鳴をあげて失禁してしまいかねないのだが……本当に何者なんだ?

 

 

『解ってるのか!? 俺はアンデッドだ! バケモノなんだぞ!!』

 

「見れば判る。童は稲妻には珍しい類の妖じゃのう?」

 

『ッ! さっきからわっぱ、わっぱと! 俺は100年くらい余裕で生きてるんだよ!!』

 

 

 挙げ句の果てに子供扱い。こうなれば、流石に頭にも血が昇る。

 それでも、女は目をぱちくりさせながら一言。

 

 

「なんとたったの100年……やはり、童ではないか。」

 

『なんだと―――』

 

 

 次の瞬間、視界がぐるんと回って床に全身を叩きつけられた。

 すぐに立ち上がろうとするも腰に重みが伸し掛かる。

 

 

「ううむ、座り心地は最悪じゃなあ。」

 

『く、クソ!』

 

「妾に寿命マウントをとるなんぞ、1000年早いわ。それは良いとして…落ち着いて話をする気にはなったか?」

 

『誰がッ!! ――うっ!?』

 

 

 何としても取り返さなくては…!そんな気持ちと裏腹に肉体はついていけないとあっという間にジョーカーから普通の人間の姿に戻り崩れ落ちてしまう。そして、襲いかかる激痛にタールのようにねっとり重い疲労…頭が空っぽになる虚無感。  

 すると、限界を察したのか女が腰から降りて手を差し伸べる。

 

 

「それ見たことか。お主の心身は既に限界を超えている。」

 

「フーッ フーッ…!」

 

「怯えなくとも良い。妾は『八重神子』…この鳴神大社を預かる宮司じゃ。ここにおる限り、汝を傷つけたりすることは何人たりともさせん。」    

 

「…」

 

 

 声色はまるで、赤子をあやす母親のように優しい。

 本当に敵意はないのか?アンデッドである俺に……?

 

 

「――童、そなたの名前は何という?」

 

 

「…………『刃立 和平(はだち かずひら)』。 ――仮面ライダーだ。」

 

 

 

 ………信じていいのか?





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