ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

1 / 87
えいがさきに滾ったので見切り発車で書き始めました。とりあえず1期1話の最後までは書ききるつもり。
お付き合いいただけますと幸いです。


ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!
プロローグ


 

 

 

  ――  飛び立てる Dreaming Sky 一人じゃないから……  ――

 

 

 人気のないマンションの前で、一人の少女が歌い、踊る。

 技術は拙く、練度は低い。BGMもなしに制服を翻すその姿を、滑稽だと笑う人もいるだろう。

 

 なのに、目を離せない。

 

 羞恥で立ち止まりそうな足を、緊張で震えそうな声を、その想いを伝えたいという一心で押さえつけている健気さが。

 初めて見つけた"なりたい未来"、隠していた"本当の自分"、目の前の扉が開いたその興奮のまま笑う初々しい艶やかさが。

 心を捉えて、離さない。

 

 

  ――  ずっと隠してたの ココロの奥 芽生えてた気持ちを見ないフリして……  ――

 

 

 リサイタルは続く。どんどんぎこちなさが薄れていく。

 殻を破った新芽が思うがままに背を伸ばすように、閉じこもっていた頃が嘘のように、変わっていく。

 

 ただの高校生が"スクールアイドル"に成っていく、その瞬間を、目の当たりにしている。

 

 スクールアイドル。

 それは、学生という限りある時間を精一杯生きる者。

 押さえきれない自分の心と想いを、思い思いに表現する者。

 そのありようと生き様を、全身全霊で魅せる者。

 

 上原歩夢は。

 それに今、成ろうとしている。

 

 

  ――  歩き出そう Dreaming way 未来へと続く……  ――

 

 

 見つけかけたときめく未来を追いかけようと。追いかけ始めようよ、と。

 大好きな幼馴染へと訴えかける。

 

 新しい事を始めるのには勇気が要るけれど。

 やりたいと感じた気持ちにウソはつけない。

 だから、少しだけ背中を押して欲しい。

 それだけで私は、頑張れるから。

 きっとあなたを支えられる人に、なってみせるから。

 

 ――幻視する。

 制服じゃなく、ピンク色の可愛らしいドレスに包まれている姿を。

 無骨なビルの間に、桃色に飾り付けられたステージが浮かんでいる様を。

 

 パフォーマンスはお世辞にも凄いとは言えないけれど。

 あの、優木せつ菜と同じものを。

 観るものを虜にする、その素養を。

 スクールアイドルとしての確かな資質を、彼女は確かに、持っていた。

 一角の存在になりえる片鱗を、見せつけていた。

 

 

  ――  あなたに 届いてほしいよ Beating my heart……  ――  

 

 

 ……歌が、終わった。

 一人の少女の、始まりの歌が。

 

 高揚を頬に残したまま階段を降る彼女の姿は、あまりにも尊くて。

 見惚れるその子の胸に灯った確かなトキメキが、目に見える気がして。

 

 

「……私の夢を、一緒に見てくれる?」

 

 

 あぁ……この光景を壊しちゃいけないなって。邪魔しちゃあいけないなって。

 強く。強く、そう思ったんだ。

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』。

 

 

 そのアニメにおける物語は、幼馴染である『高咲侑』と『上原歩夢』が、『優木せつ菜』のソロライブを偶然目にしたところから始まる。

 せつ菜のパフォーマンスに言い表せない衝撃を受けた2人は、とにかく一度会ってみたいとスクールアイドル同好会の部室へと赴いて……そして紆余曲折の末に、自分達もスクールアイドルに関わる立場となっていく。

 

 時にライバルとして、時に仲間として。各々の夢を追い続ける、12人と1人の少女達の物語。

 その始まりとなる、そりゃもうとっても大切なワンシーンで……

 

 

 

 

 

 "……ごめん。ちょっとワタシ、体調イマイチみたい。先帰るわ。じゃね"

 "え!? あ、うん……またね?"

 

 

 2人と一緒に居たワタシは何故か、その"原作"の知識をインストールされたのである。

 

 

 

 

 

 ……いや。『インストールされたのである』じゃないんよ。

 

 

 

 

 

 (あー……頭ガンガンするー……)

 

 

 歩夢ちゃんと侑と別れたあと、まっすぐ家へと帰ったワタシは部屋着に着替えてリビングのソファに寝転がり頭を抱えていた。文字通りでも比喩表現でも頭が痛い。

 普通に生きてた人間がいきなり原作知識なんてものをぶち込まれたらこうなるんだね。初めて知った。はっはー使い所無ぇトリビアが増えちゃったぜぇ。誰に言ったら信じてくれんのかねぇ。

 

 

 (えっと、つまり……なんだろ?)

 

 

 キッカケは間違いなく、さっきまで観戦していた『優木せつ菜』のライブ。生で見た彼女のそれに、ワタシもトンデモないインパクトを受けた。で、その衝撃と一緒に、こう……別次元からの"原作知識"が、なんかこう……ズドッとワタシに突っ込まれたってこと、なんだろうか。

 ……いや分かんないよ。知らんよ記憶が次元超える仕組みなんて。この現実が創作物かも知れないなんて。説明できんし証明の仕方も分かんねーわ。いいよもう、ワタシが"そうかもしれない"って思ってるだけで。

 

 ……そう。正直何がどうなってこうなったのかは重要な事じゃない。

 ワタシのこの頭痛も別に大したことじゃない。

 本当に重要なことが、確かにある。

 それは。

 

 

 (この物語通りに進められれば――現実で濃厚な"ゆうぽむ"が見られるって事じゃんか。ねぇ?)

 

 

 ワタシにはあまり人には大っぴらにしていない趣味……いやさ、性癖がある。

 "イチャイチャしてるカップルをニヤニヤしながら眺めたい"。そんな性癖である。

 

 

 異性同性Xジェンダー、人種歳の差なんでもござれ。そりゃまぁ好みはあるにせよ、食わず嫌いはしない主義。まずは一口味見を失礼つかまつる。

 あとイチャイチャったって、別にアダルトなアレやそれやを伴わなくたって構わない。むしろ無い方がいい時だってある。愛欲と肉欲は別物なのだ。何でもかんでも最終終着点をそっちに置かなくたっていいじゃない。なおワタシの基準じゃ百合は性欲を伴わないものである。

 

 

 そんなワタシの長年のターゲット、それが幼馴染たる歩夢ちゃんと侑の2人なのだ。

 

 

 ワタシは2人に萌えている。

 奔放でひとたらしな侑と、優しく可愛く乙女な歩夢ちゃんの関係に悶えている。

 ちっちゃい頃からの付き合いで、気心知れた2人の絡みを反芻して、美味しくご飯を食べている!

 

 

 そんなワタシにぶち込まれたのだ。

 運命的な出会いを果たした子達の物語が。

 自分の理想を追い求めてキラキラ煌めく素敵な少女達の物語が。

 共に悩みを乗り越え、切磋琢磨しあい、心を通じ合せていく女の子達の物語が!

 めっっっちゃイチャイチャしてる"ゆうぽむ"の!物語が!!

 

 

 

 うっひょぉぉぉぉお!大好きが咲き誇ってんねぇぇぇぇぇえ!!お腹減ってきたぁぁぁぁあっ!!!

 

 

 

「…………はっ!?」

 

 

 い、いかんいかん。思わずレトルトご飯をチンしかけていた。

 買い置き無くなってるのがバレたらまたお母さんに叱られるじゃん。

 最近は控えられてたんだけどな、こういう衝動的にバカやるの……いや、それだけ衝撃が大きかったってことか。『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の物語は。

 

 

 とはいえディテールまで一気に理解できたわけじゃない。現状では飛び飛びでインパクトのあるシーンを思い出してるような感じだ。ちゃんと順を追って思い出せば、具体的なストーリーまで思い起こせることだろう。

 ……こんな物事ハッキリ記憶できるようなオツムじゃないはずなんだけどな。どうなってんだろ。

 

 

(……ま!わかんないものは仕方ないよね!)

 

 

 何がどういう仕組みでどうなってるかなんてどうでもいい。別にそんな事は今は重要じゃない。些事でしかない。

 重ねて言おう。今重要なのは……この先にトキメく物語が待ってるって事である!

 

 ふへへへへ……いやぁ、楽しみだなぁ。この"原作"どおりなら、あれやこれやのイチャイチャをこの目に焼き付けられるって事っしょ?はー……なにこのご褒美?特に日頃の行いは良くなかったんだけどなー?

 まぁね。どうしてもデバガメが難しそうなとこはあるけどね。観覧車のシーンとかね。でもいくつかはエンカウントできるっしょ。この先の1年は忙しくなるぞぉ!

 

 さぁて、じゃあ復習しよう。

 この"原作"通りに進めるためには、変な行動をしちゃいけない。細心の注意を払って、"原作"通りの行動をするのだ。未来ってのは少しのボタンの掛け違いで大きく変わっちゃうものだってなんかで見たしね!要らん事はせずに、必要な事だけを間違いなくこなしていこう!

 

 よっし、そんじゃまぁ一番最初からしっかりとだ。とりあえず1期1話からじっくりいきますか!

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 …………ん?

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 …………あれ?

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 …………おっやぁ?

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ?ワタシ、居なくね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。