「早速これから同好会を始めますよぉ!」
「「「おー!」」」
「部外者はどっか行ってください!しっしっ!」
「えー?ひどくない?未来のファン候補相手にアピール足りてなくない?」
「ぐぬぬぬぬ……!」
そんな掛け声で始まった同好会活動……もとい、活動場所探し。
部室が取り上げられてる現状、活動場所を新しく探す必要があるといってあっちやらこっちやらに行ったり来たり。
行く先々で歩夢ちゃんが混ざったりワタシも混ざったりして実に有意義な時間だった。推しを眺めたい変態とはいえ、普通に一緒に遊ぶのも好きだかんね、ワタシ。ってか今この状況で別れたって後でストーキングするだけだし。しかし歩夢ちゃんって割とすぐその場に溶け込むよな……
まぁそんな感じの放浪の末、"原作"どおりあんま人気のない公園に落ち着きました、と。
「しばらくはここが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部室ですよぉ!ダンスや歌の練習はおいおい始めるとして、まずは部員をゲットです!」
「何で部員募集からなの?」
「人がいっぱい居た方が、可愛いかすみんが引き立つからです!」
「あはは……」
「うーんこの」
"かすかすは"って続けようとしたらギロっと睨まれた。めっちゃ敏感じゃん。
「ともかく!手っとり早く部員を集めるならこれでしょ!」
「これ?」
「こほん……」
侑の問いかけに、かすみちゃんはワザとらしく喉の調子を整える。
で……出るのか!?あれが!
「やっほぉ~!
みんなのアイドルぅ、かすみんだよぉ~!
かすみん~虹ヶ咲スクールアイドル同好会の部長になったんだけどぉ~……
そんな大役が務まるかとぉってもふあ~ん!
でもぉ!
応援してくれるみ~んなのために!
日本一可愛いスクールアイドル目指してぇ!
がん☆ばる☆よっ!」
……マジでか。マジでやりおったよこの子。まさか本当にやりおるとは。
「……は?」
「うわぁ~!スクールアイドルの自己紹介初めて生で見た!トキめいたよ、かすみちゃん!」
「ふふんっ!」
「は!?」
歩夢ちゃんが信じられないようなものを見る目で2人に視線を向け、最後にワタシを見た。肩をすくめてみせたら自分の感性への疑いが晴れたみたいで、目に見えて安堵してる。
まぁなぁ、これはなぁ……いや、人のそれを否定するつもりはないんだけど、侑はどの辺が刺さったんだろ?ちょっと寒くないかにゃー?
「むふん。これを動画サイトに投稿して、部員募集をします」
「マジで?」
「大マジですっ!次は歩夢先輩ですよ!今みたいな感じでお願いしますねぇ?」
「……えっ?えぇぇぇぇっ!?無理無理無理だよ!恥ずかしいよぉっ!」
「なぁにが恥ずかしいんですか!?自己紹介はスクールアイドルの第一歩ですよっ!?」
「目が怖いよかすみちゃん……ねぇ、こういうの本当に必要なの?」
「ん~……」
再び、今後は口に出して尋ねられた。少し考える。
……まぁ中身はどうあれ、なぁ。ごめんね、歩夢ちゃん。
「やってない人の方が少ないかな。避けて通らない方がいいんでない?」
「そんなぁ……」
「でしょう!?いやぁアナタもたまには良いこと言うじゃないですか!」
「まぁ偶にはね」
さり気に酷い事言われてるけど気にしない。このくらい可愛いもんだ。
え?元々お前が散々煽ったのが悪い?そうでしたっけ??
「でもかすみちゃん。コイツ結構これで色々詳しいらしいから、意見聞いてみるのもアリだと思うよ?」
「へ?そうなんですか?」
「いや、詳しいったって……」
そんなたわごとを考えていたら、侑が変なことを言い出していた。
なんだなんだ。いったいどうした。
そりゃまだ侑よかは詳しいだろうけど、別に意見なんてするつもりないよ?
「なんせ、昔ちょっとだけスクールアイドルやってたらしいから!」
ちょっ。
「え!?」
「侑ちゃん!?」
「おいおいおい……侑さーん?どういうつもりー?」
ウソだろ。こいつ、唐突に人の過去を勝手にバラしやがった。イキナリ何を余計な事を。
そう文句をぶつけようとしたら、侑に逆に睨まれた……なんやねん。
「なに?私の時みたいにずっと隠しといて訳知り顔でアドバイスしたかった?」
「いや、そもそもアドバイスするとか言ってねーし」
「いやするね。事実さっきからずっと歩夢に頼られてるし」
「おま、まさかそれの意趣返しで……」
「違うよ」
……あのさぁ。
本心かどうかはともかくとしてさぁ、そのキリッとした顔とセリフは11話までとっとけよ……勿体無いじゃん……
「私達は、大っぴらにアナタに頼りたいんだよ。アナタの過去を秘密にしておきたくない。無かったことにするのは可哀想だよ」
「別にワタシにそんな同情する必要なんて……」
「してるのは昔のアナタ。スクールアイドルだったアナタにだよ」
「……はぁ?」
昔のワタシぃ?何言ってんの?
「うまくいかなかったことを悲しむのは仕方ないよ。でも、アナタは人のために動いたんでしょ?珍しく」
「珍しくゆーな」
「当時の真剣だったアナタの行動が全部無駄だった……無駄になるなんてもったいないじゃん。珍しく真剣だったのに」
「だから珍しくゆーな」
「だったら、それを胸張って誇れるものに変えようよ。過去の苦い経験を糧にして、私達新人を導いて、さ。そしたらいつか私達が大成した時に"ワシが育てたんじゃ!フォッフォッフォ!"って言えるじゃん」
「……侑の中のワタシってそんなキャラ?」
「言わないの?」
「たぶん言う」
「だからさ、もう隠すのやめない?」
……ワタシの過去がもったいない、ねぇ。それを活かしてマネージャーやファンでもなく、コーチやれとでも?冗談きついぜ。
そんなにスペック高くねーよワタシは。むしろ低いよ。マジで少ししかやってないんだよ。そもそも失敗したっつってんでしょ。そんなのに大きな顔して指導なんてされたくないでしょ。
……まぁ、でも……
(……ワタシ、こんなんでも先輩らしいしなぁ)
文句を全無視して言いたい放題した侑から、少し目を離す。
気持ちうっとりしてる歩夢ちゃん、なんかちょっと微妙な顔してるかすみちゃん。
うーん、カオス。なんだこの空間。
……なんか見てたら「まぁいっか」って気分になってきたな。
コーチは無いけど……そうね。
そうだね。
どーせワタシのことだしな。
「……ま。いいよ。一番隠したかった人にはもうバラしちゃったし。せっかくの経験値、使える時には使うようにするよ。同好会には入んないけどね」
「……ふふっ。良かった。勝手にバラしちゃって怒られるかと思ってた」
「それは後でちゃんと怒る。あと今日は口出さない。かすみん先生の講義に集中しよーぜ」
「あ。それは確かに……ごめんね、かすみちゃん!遮っちゃって!歩夢も!」
「ううん、私は気にしてないよ」
「へっ?あっ、いえ!かすみんも……えっと、それじゃあ続けますよぉ!かすみん先生についてきてください!」
「「「おー!」」」
……そうしてかすみちゃんが仕切り直そうとしてる間に、侑の傍に近寄って。囁き声で。
「……侑。あんたさ……」
「え?何?」
「……いや、うん。ワタシが悪かった。忘れて」
「もう、なんなのー?」
語りかけようとして……止めた。うん、余計な事言いそうだった。
『大っぴらにワタシのこと喧伝して"歩夢ちゃんがワタシを頼る理由に特別なものは無い"って周りに知らしめたかったりする?』なんてさ。
見守り系オタクの風上にも置けない事しかけちゃったよ、まったく。
……とんでもねぇ独占欲してるくせに碌に表に出さないし、その大きさを本人が自覚してるかも怪しいんだから。無意識でやってるなら相当な
ちなみに、この後の流れはほぼ"原作"通りだった。
ノリを強要するかすみん。ノリノリで見守る侑。かわいいに苦悩する可愛い歩夢ちゃん。正直スクールアイドルじゃなくてバラドルの練習じゃね?と思うような夕方まで続いた特訓は、ついぞ成果をあげることはなかった。
うん。余計なパートが入ったけど、これなら明日も大丈夫でしょ。
なお、あゆぴょんはしっかり堪能した。なんなら動画にも撮った。怒られた。
いやぁ充実してんなぁワタシ!たーのしー!
次回より原作キャラに対するこれまで以上の改変・独自解釈が発生します。
ここまでご覧いただいた方の嗜好に合わないものになりましたら申し訳ありません。