ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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2-⑤

 ワタシはどうやら見誤ってたらしい。

 ワタシの影響力……違うな。ワタシという異物が"原作"に与える悪影響を、だ。

 

 

 改めて"原作"を思い起こせば、実は侑はそれほどかすみちゃんに手助けはしていなかった。ほんの少し、支えになってあげただけ。

 その『ほんの少し』が重要だったんだと、今、思い知った。

 

 

(傲慢に言うなら――()()()()……になっちゃった、のかな)

 

 

 自分を気遣ってくれる、「優しいマネージャー見習い」。

 戸惑いつつも自分を尊重してくれる、「真心溢れる後輩スクールアイドル」。

 ここに、自分をトキメかせてみろと期待してくる「元スクールアイドルの先輩にしてファン候補」が生えた。

 

 ――結果。満たされすぎた。

 自分を認めてくれる人が、自力で何かを達成する前に、増えてしまった。

 いずれ自分で勝ち取れていたはずの成果と幸福を、『ほんの少し』ではなく『()()()()()』、先に与えられてしまった。

 ちょっとくらいなら、ダメになっても支えて貰えるかも……なんて、甘い期待を抱いてしまう程度には。

 

 確証はない。合っているかも分からない。

 けれど、結果的にかすみちゃんの1人で立てる強さを揺らがせたのだけは、紛れもない事実だろう。

 ワタシなんかに。ワタシみたいなのに、大切なバックボーンを打ち明けちゃうくらいなんだから。

 

 

(かすみちゃんにとっての重要人物になっちゃった……だなんて、うぬぼれるつもりはないけども)

 

 

 本当に責任重大だった。

 本当に大戦犯だった。

 

 

(ホントに救えないわ、ワタシってヤツは)

 

 

 ……改めて、脳内の選択肢に意識を向ける。

 

 

 

→・もちろん。ちょっと落ち込んじゃってるかすみんも、可愛いよ。それにそれをバネにしてまた跳ね上がるって、信じてるから。

 

 ・かすみちゃんが自分に自信が無くなっちゃってたって、ワタシはかすみちゃんに"可愛い"って言い続けるよ。

 

 

 

 ……なんかなぁ。厭らしいなぁ。

 

 今の弱ってるかすみちゃんに寄り添って、慕ってもらえるような、そんな言葉だ。

 言ってること自体は大したことなくたって、時と場合と気持ちがあれば響くことだってあるでしょ……そんな言葉だ。

 かすみちゃんの好感度が、あがっちゃうような……?

 

 

(あ……もしかしてこの選択肢――ワタシの内なる欲望が湧いて出たやつ、なんじゃね?)

 

 

 魅力的溢れるかすみちゃん達"原作"のみんなと仲良くなって、あわよくばワタシも煌めきたい、みたいな。

 ついでにちょっとくらい頼られる美味しいポジションに座りたい、みたいな。

 他の誰も知らない"原作知識"って特権、活用したって誰にも文句言われないよね、みたいな。

 そのためになんかいい感じの選択肢を"原作知識"から導き出してた、みたいな。

 

 

(……あっはっは)

 

 

 なるほどなるほど。確かにね。そういう事もできちゃうかもねぇ。だって皆の事情、分かっちゃってるもんねぇ。好みとかも知っちゃってるもんねぇ。

 

 

(はっはっは)

 

 

 ワタシってば俗っぽいもんなぁ。俗人だもんなぁ。無意識のうちに?そういうヒーロー的なのに憧れちゃってたのかぁ?まったく小物だねぇ。ワタシらしいや。

 

 

(はっはっはっはっは……はーぁ)

 

 

 

 

 

 んじゃまぁ、選択しようか。

 ずっとお目目ウルウルさせてるかすみちゃんを、これ以上待たせても悪いもんねぇ。

 

 "こんな私でも、可愛いと思ってくれますか?"だっけ?

 

 うんうん。よしよし。

 そんじゃあ、応えよう……こほん。

 

 

 

 

……いんや?

「……え?」

 

 

→・もちろん。ちょっと落ち込んじゃってるかすみんも、可愛いよ。それにそれをバネにしてまた跳ね上がるって、信じてるから。

 

 ・かすみちゃんが自分に自信が無くなっちゃってたって、ワタシはかすみちゃんに"可愛い"って言い続けるよ。

 

 

 

 

 

いやだから、今のかすみちゃんは別に可愛いと思えないって

「…………ぅ」

 

 

→・もちろん。ちょっと落ち込んじゃってるかすみんも、可愛いよ。それにそれをバネにしてまた跳ね上がるって、信じてるから。

 

 ・かすみちゃんが自分に自信が無くなっちゃってたって、ワタシはかすみちゃんに"可愛い"って言い続けるよ。

 

 

 

 

 

 それこそ無意識に伸びかけていたのかもしれない、かすみちゃんの手を取らず。

 自覚的に呆れた顔をして、"いやいや"と腕ごと左右にフリフリした。

 

 そして……語る。めっちゃ語る。思うがままに、垂れ流す。

 

 

 

 

 

「違うんだよ……違うんだよなぁ……そうじゃないのよ。いやかすみちゃんのことを心配してないってワケじゃないのよ?でもさ、かすみちゃんのキャラと正直そのムーブ合ってない。"可愛い私を守ってね?"って路線で行くの?まぁそういう人もいるけどさぁ……かすみちゃんにはそういうんじゃなくて"可愛い私を思う存分愛でていいですよ!"ってこれまでの方向性の方が絶対合ってると思うんだよねぇ。アッサリ弱い面を見せるのは損だわ。そーいうのはそれこそもっと大成してTVで特集とか組まれたとき用に取っとけば良くない?今はとにかくイタくてサムいけど自分の好きな可愛いモノを一生懸命頑張る姿を見せつけた方がさぁ……」

 

「なっ……ちょっ……イタい!?サムい!?そんな事思ってたんですかぁ!?」

「え、うん……え?自覚無かったの?」

「はぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 野生動物が威嚇するくらいの勢いで立ち向かってくる。

 おぅおぅ、気炎あげちゃって。そんなにワタシの言葉に感動しちゃった?

 

 

「しんっじられません!昨日あんなに一緒に練習してたのに内心ではそんな風にバカにしてたんですか!?」

「バカにされるのには慣れてたんじゃないの?」

「慣れてようが言われてムキーッてなるのには変わりないんですよぅ!」

「まぁそりゃそうか。いやバカにはしてないけど」

「イタくてサムいとか口に出しときながらそんなワケないでしょお!」

「してないしてない。感心してたんだって」

「はぁ!?感心!?」

「イマドキこんな媚び媚びなアイドルも珍しいなぁって」

「ムキィィィィィっ!かすみんのカンペキなるキャラクタになんて言い草をぉぉぉぉっ!」

 

 

 ダンダンダンッ!と地団太を踏むかすみちゃん。

 うん、元気元気。やっぱかすみちゃんはこうでないと。

 

 ……あーもぅマジで反省した。今回は自分関係ないでしょって思って絡みすぎた。同好会に入らなきゃいいんでしょって過信してた。

 ワタシがいるだけで"原作"からどんどん乖離していくんだってのがよぉーく理解できた。

 

 

(ごめんね、かすみん。ワタシなんかに絡ませちゃってさ)

 

 

 まったく、なんなのかなー?

 ワタシってばネタバレを自分だけ知ってるからって調子乗っちゃってるのかなー?

 だとしたらマジで一回この"原作"知識、引っこ抜いた方がいいんじゃねーかなー?

 

 裏ワザ使って慕われてなんの意味があんのよ。本来自分で気づけることを教えるって要らないお節介でしかないでしょ。かすみちゃんをナメてんの?

 つーかかすみんが"原作"でしてない悩みを掘り起こしてんのワタシじゃん。それをワタシが解決するとかどんなマッチポンプよ。

 あーぁ。まったくワタシはホントにもう――ふざけんなよなぁ

 

 

 

「ま。それはともかく」

「それはともかくぅ!?煽った側が言うセリフですかそれぇっ!?」

「ワタシ的には煽りじゃねーもん。視点が違うだけで立派に誉め言葉。とにかくかすみちゃんは、あんな風に軽々しく弱音を吐き出さない方が絶対いいよ。辛くても寂しくても胸張って"私は可愛い!"ってふんぞり返ってて欲しいんだよ」

「え?べ……別に、軽々しく言ったわけじゃ……」

「……え?もしかしてかすみちゃん、私に本気でお悩み相談したかったの?そんなに心開いてくれてたの?」

「はぁ?……はぁ!?なっ、なに自惚れてんですか!?そんなわけないでしょう!?アナタが変なこと言ってくるから口が滑りかけただけですぅ!」

「かなりツルツル喋ってくれてた気がするけど」

「それは……その……ファンサービスですっ!」

「そっかそっか。確かに推しの昔話って興味あるもんね」

「でしょう!?」

「まぁまだ推しじゃないけど」

「くぅぅぅぅぅ……っ!?」

 

 

 やっちゃったものはもとには戻らない。かすみちゃんは今後、ふとした瞬間にさっきの想いをフラッシュバックしちゃうかもしれない。その可能性を取り除くのは、それを生んでしまったワタシの責任だ。

 でも、やらない。出来ない。

 それでもっと"原作"をグチャグチャにしちゃう可能性を、捨てきれないから。

 ワタシが絡めば絡むだけ、解けなくなっちゃうかもしれない。それが怖くて仕方ないから。

 

 だからワタシは、逃げる。逃げることを選択する。

 なんもかんも有耶無耶にして、打ち明けられた弱音を大したことがないもののように鼻で笑って、気の迷いだと思わせるように扱って、無責任に逃げる。

 テキトーでチャラいワタシには、それがピッタリ。救世主になんてなれやしない。まがい物ならそもそもなりたくないってね。

 一回逃げたワタシだぞ?逃げに臆すると思うなよ?

 過去の経験、活かしていこーねぇ?

 

 ……ははっ。ごめんね、歩夢ちゃん。やっぱワタシ、先輩には相応しくねーや。

 

 

「んじゃ今日はワタシ用事あるからそろそろ失礼すんね。ま、頑張ってワタシをファンにしてみせてよ。そんじゃね!かすかすちゃーん!」

「かすみんですぅっ!本当に失礼ですねぇっ!……言われなくてもぉっ!後で最初のファンになり損ねたこと、後悔したって知りませんからねぇーっ!」

「なっはっは!楽しみにしてるよーっ!歩夢ちゃん達とも仲良くねーっ!早く行かないと待ち合わせに遅れるよーっ!」

「待ち合わせにはまだ余裕ありますもんっ!…………ん?歩夢先輩?……あ!ちょっと!ちょっと待って!それはちょっと相談したいっていうか……あーっ!もーっ!?」

 

 

 そうやってワタシは背後からの叫びを聞こえないフリしつつ、その場を駆け足で後にした。

 あっはっは。これでかすみちゃんもワタシは全然頼りにならないって再評価したっしょ。うん、これでいい。

 

 ……分不相応なんだよ、ワタシが誰かの助けになるなんてさ。この物語、やっぱワタシに出来ることなんてねーやね。すべきじゃない事ばっかりだ。

 はーぁっ。

 

 

(侑。歩夢ちゃん。ワタシ今後の事、もっとちゃんと考えるよ。2人や皆の邪魔、しないようにさ)

 

 

 だから――今回は、ごめん。

 かすみちゃんのこと、よろしくね?

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