ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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2-⑥

「虹ヶ咲学園普通科2年、上原歩夢です。自分の好きなこと……やりたいことを表現したくて、スクールアイドル同好会に入りました」

 

 

 年上新人スクールアイドルさんの自己紹介が、始まった。

 緊張はしつつも幾分固さの取れた様子に、一体何があったんだろうと不思議がったのも束の間……自分がやらかしたことを突きつけられるかのようなその言葉に、ハッとする。

 

 

「まだまだ出来ないこともあるけど……一歩一歩、頑張る私を見守ってくれたら嬉しいです」

 

 

 かすみんが教えたものとは全く違う。

 正直インパクトが足りないと感じてしまう。

 

 けれど、しっかり前を見据えて、画面の向こうの応援してくれてる皆に想いを伝えようとしている。

 目の前に居ない相手にすら真心持って接しようとする、歩夢先輩の誠実さが伝わってくる。

 歩夢先輩らしさに溢れた、素敵な自己紹介だった。

 

 あぁ……やっぱりかすみんはダメだったんだ。間違ったやり方を押し付けてたんだ。

 改めて、そう自覚して。また落ち込みそうになって。

 

 ……でも。スマホ越しの歩夢先輩は、まだ止まらなかった。

 

 

「よろしくね……えへっ♪」

 

 

 両手を頭の上に掲げる、ウサギの耳を模した仕草。はにかむ笑顔。

 しっかりと、かすみんの教えを、自分風にアレンジしてきた。

 かすみんの可愛いを、捨てずに大事に、取り込んできてくれた。

 

 かすみんがやるそれとは違う……けれど。

 

 ……可愛い。

 本当に可愛い、アピールだった。

 そう、思ってしまった。

 

 

「……か、かすみんの考えてたのとはちょっと違いますけどぉ……可愛いから、合格です!」

「ほんとぉ?ふふふっ!よかったぁ!」

「ぅわ……うぅ……」

 

 

 それをそのまま伝えるのはちょぉっと悔しいから回りくどく言ったのに、歩夢先輩ってば、満面の笑顔を向けてくる。

 あー……くっそぅ。この人、本当に良い人で、可愛い人じゃん。

 なんでこんなに喜んでくれるかな。一方的に色々事言って悩ませてた張本人なんだけどな。

 

 

(……負けたく、ないな)

 

 

 この可愛い人に、負けたくない。

 かすみんだって可愛いのに、認めっぱなしなんて癪。

 かすみんだって無敵級に可愛いんだって、この人に認めさせたい。

 

 そうだ。

 弱音吐いてる暇なんてない。

 挫けてイジけてる時間が勿体ない。

 自分を疑ってなんかいちゃ、この人にまっすぐ向き合えない……!

 

 

「多分、さ。やりたいことが違っても、大丈夫だよ」

「……え?」

 

 

 そして。

 そんな沸き上がる気持ちを更に勢いづけてくれたのは、侑先輩だった。

 

 

「うまく言えないけどさ。自分なりの一番をそれぞれ叶えるやり方って、きっとあると思うんだよね」

「……そう、でしょうか……」

「うん!探してみようよ、一緒に!それにさ……その方が、楽しくない?」

「あ……」

 

 

 目指すものが違うみんなが、同じ場所に居ながら、別々のてっぺんを目指す。

 自分の理想も、他の人の夢も諦めない。

 そんな方法、今すぐには分からない。

 

 それなら一緒に探せばいい。

 その過程だってきっと楽しいはずだから。

 

 だって――"同好会"だから。

 やりたいこと自体がバラバラだって、スクールアイドルを好きだっていう、"同じ者どうし"なんだから。

 

 まったくの理想論。上手くいく保証なんてない。

 でも。

 でも、それは。それが実現出来たら、ものすごく。

 

 

「ものすっごく楽しいし……可愛いと思いますっ!」

「ふふっ!」

「フフッ!でしょお?」

 

 

 自然と浮かんできた笑顔を、先輩たちと分かち合う。

 

 ……あ。この、気持ち。

 

 虹ヶ咲に入って、スクールアイドルを始めた時の、その時の気持ちだ。

 同好会が始まった時に感じていた気持ちだ。

 

 あぁ、そうだ。かすみんは確かにそう感じていた。なのにいつの間に忘れちゃってたんだろう。いつから辛いってばっかり考えるようになっちゃったんだろう。

 きっとそれは誰のせいでもなくて、誰のせいでもあるんだろう。もう昔の事だから、どうすることも出来ないけれど。

 でも。

 

 

「……あははっ!」

 

 

 なら、もう一度始めよう。

 

 間違えたことをちゃんと反省して、もう一回、この人たちと"夢への一歩"を踏み出そう。

 今度はこのワクワクのままに。ドキドキに正直に。

 かすみんは、かすみんの理想郷を、この虹ヶ咲に築き上げて見せる……!

 いろんなカッコいいも可愛いも一緒にいられる、世界で一番のワンダーランドを!

 

 

「あ!でも歩夢先輩!」

「へ?」

「どんなにステキな同好会でも、世界でいっちばん可愛いのはかすみんですからね!覚悟しててください!」

「え……えっと?」

「受けて立つってさ!かすみちゃん!」

「え!?侑ちゃん!?」

「あははははっ!――それでは先輩達、見てて下さい!」

 

 

 あぁ、もう我慢できない!

 

 胸が弾んで止まらない。

 

 夢が弾けて、止まらない!

 

 

 

 

 

 ――ここが新たなっ!かすみんのスタート地点ですぅっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かっすみぃんっ!かっわいっいよぉぉぉぉぉぉっ!

 

 

 はー良かった良かった!なんとか軌道修正出来たっぽくて!

 ホントどうしようかと思ったよ。あのままかすみちゃんが自身無くしちゃったり侑や歩夢ちゃんに頼り過ぎになっちゃったりしたらって。

 流石は主人公!頼りになりますねぇ!

 

 

 ……いや。うん。はい。

 するよ。します。反省。

 二人にフォロー丸投げしてごめんなさい。

 今回ワタシが関与しそうな"原作"シーンはなかったのに、危うくブレイクさせかけたのは本当に猛省しています。

 

 

 今回はもう意識が甘かったと言わざるを得ない。

 "原作"の皆と触れ合えば触れ合うほど、ワタシって爆弾が不測の事態を引き起こすリスク発生率は高くなる。そんなの当たり前なのにね。楽しくて普通に遊んじゃった。

 っていうか数日前にバタフライエフェクトがうんちゃらとか考えてたのに全然予防できてないじゃん。マジでアホなの?アホですね……

 

 

 まぁ今回は最終的に収まるところに収まったし、"あゆかり"の可愛いシーンは回収出来たし、結果オーライかな!かすみちゃんと別れた後、全力ダッシュで往復した甲斐があったよ!

 ……いやうん、浮かれてばっかじゃダメだよね。今後はちゃんと自重しないと。イチCP厨のヘンタイだって自覚をちゃんと持って、節度ある行いを心掛けないとね。

 

 

 

 そう言ってワタシは 湾岸の柵の向こう側から這い上がり、道路の色に似たバーカーからポンポンと汚れを払った後、凝り固まった身体をほぐすべく大きく伸びをした。

 うーん。色々あったけど……やっぱり"原作"のシーンは一味違うや!

 

 

 

 

 

 ――うんうん!やっぱ、ゆうぽむかすの間にも挟まるもんじゃないなぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういえば。結局、あの人は同好会には入らないんですか?」

「うーん……どうだろうね?いつも気まぐれだから分かんないっちゃ分かんないけど……」

「……入って欲しいってお願いするのも、ちょっと違うからね」

「……そうですねぇ。まぁ、そこまで入って欲しいってワケでもないんですが」

「ひどくない?」

「つーん!かすみんに色々言ってくれたあの人にはこれくらいで良いんですーっ!」

 

 

 ひとしきり笑いあった、その後。

 明日への希望を胸に秘めた彼女たちは、その場にいないもう一人へと意識を向けた。

 

 

「どっちかというなら、あの失礼な人には寧ろ入ってほしくないっていうか……いや口止めをするなら入ってもらわないとまずい……?」

「……あの子はなにをしたの?」

「さぁ。でも碌でもないことじゃないかなー」

「また侑ちゃんはそんな言い方するー」

「外れてないよ、絶対。ま、かすみちゃんが謝ってほしいなら明日首根っこ捕まえてくるけど?」

「……んー……まぁ、まだそこまでじゃないので。今後もしかしたらお願いするかもですけど」

「オッケー!任せて!」

「……侑ちゃんの筋力でそんなこと出来るかな……」

「ま!特に同好会に入る気のない人の事は良いです!何かしてあげる義理はないですし!明日からの予定を決めますよぅ!」

 

 

 さして語り続けることもなく、話題をころころと変えながら、そのまま3人で歩き去っていく。

 夕陽が照らすその背は、確かな達成感と意欲に満ちている。

 そこに半端な臆病者など介在する余地はない。

 果て無き自分の未来を夢見て歩む、その覚悟が無いモノには。

 

 

(…………)

 

 

 けれど。

 

 

 (……まぁ、かすみんから何かしてあげる気はないですけど)

 

 (あの人、ちょっと前のかすみんと同じで……"求められなかった人"、みたいですから。そんな感じが、しましたから)

 

 (かすみんから何かしてあげる気はないです。ないですけど……ちょっとだけ同族意識みたいなもの持っちゃった、()()()です。自分から加わりたいっていうなら、迎えてあげなくもないですよぅ)

 

 (かすみんワンダーランドは、そんな王国にするんですから)

 

 

 可能性は、誰の目の前にも常に存在する。

 どんな異物であっても場違い者であっても、それは変わらない。それだけは、変わらない。

 

 故に。この世界の結末もまた、未だ不確定のようである。




これにて2章完結となります。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
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