ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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4-②

 

 

「……はぁ」

「……えっと。お疲れ様でした?」

「そう思うならもっと早く助けてくれても良かったのよ?」

「あ、あはは……」

「冗談じょーだん。ありがとね?」

 

 

 しずくちゃんの手を借りてようやく彼方さんの敷布団を辞職できたワタシは、かつての主人をソファに寝かせて一息つく。まさか新部室のソファくんも初仕事がベッドとは思わなかっただろうけど。

 

 

 事の経緯は単純だ。

 

 新しい部室の掃除の手伝いを頼まれた。

  ↓

 先に着いたら彼方さんがいて、一緒に片付けし始めた。

  ↓

 結構進んだと思ったところでスリープインした彼方さんを咄嗟に支えた。

  ↓

 そのまま押し倒されて敷布団化。(ギリギリソファには倒れ込めた)

 

 以上。

 変な風に絡め取られてたせいで自力じゃ抜け出せなかったんだよね。あー肩痛。

 

 

「てかなんでワタシ放置されたの?」

 

 

 あわれ身動きの取れないワタシは、彼方さんの高めの体温を感じながらみんながテキパキ働いてるのを眺めるしかなかった。

 悲しい事に歩夢ちゃんやエマさんにすら見捨てられてしまった……というかその二人は侑に止められてたんだけど。

 なんでやねん。正当な理由を述べよ。

 

 

「え?彼方さんは無事そうだったし」

「ワタシの心配をしろ」

「嬉しそうだったじゃん」

「……まぁうん」

 

 

 くそぅ。ぐうの音も出ない。侑のくせに。

 

 ……いやまぁね。うん。この前の騒動の後、彼方さんに捕まってエマさんと一緒に文句言われたんだけどね。

 彼方ちゃんを除け者にするなんて寂しいぜ、とか。

 元気ならちょっとくらい顔見せろ、とか。

 ……そう、元気そうで何よりだ、とか。

 そんなん聞いたらさ、敷布団くらいになら喜んでなるってばさ。

 

 まぁお金払ってでもなりたい人いそうだけど。

 

 

(……ただなぁ)

 

 

 元気がどうと言うなら、彼方さんこそ気になるわ。結局その問答の後、眠りこけちゃったんだから。話してる途中にだよ?

 "原作"の中じゃ割とコミカルに描かれてたからあんま気にして無かったけど、あの寝方を目の当たりにするとビビるって。今日だって直立状態で"すやぁ"だもん。単純に危ないです。

 

 前はこうじゃ無かったんだけどな。お昼寝大好きで枕をいつも携帯してるヤバい人ではあったけど、もっと常識的な寝方してたはずだし。気絶じゃん、これじゃあ。彼方さんが大丈夫っていうから、みんな踏み込んでないけどさ……はぁ。

 

 

「……そういえば、ずっと気になっていたんです」

「へ?」

「ちゃんと自己紹介してないなって」

「あ……確かに」

 

 

 少し遠慮がちに告げられたしずくちゃんの言葉に、思わず呆けた声が出た。

 "原作"知ってる弊害かな。なんか普通に知ってる気がしちゃってたぜ。

 

 

「愛さんと璃奈さんもいらっしゃる事ですし、改めて――国際交流学科の1年、桜坂しずくです。よろしくお願いします」

 

 

 とても綺麗なお辞儀をしながらの挨拶をいただいてしまった。

 ううん、育ちの良さが滲みでてる。どっかの誰かさんとは大違いですこと。

 

 

「堅苦しいなぁしず子は」

「かすみさんが適当すぎなの」

「同じ1年。よろしく。かすみちゃん係のしずくちゃん」

「不服だけどよろしくね?」

「かすみん係ってなに!?不服ってなにぃ!?」

「しずくね!よろー!」

「ちょっとは気にしてくださいよぉ!」

 

 

 部室の前で合流したらしい璃奈ちゃんと愛ちゃんが揃って返答する。早くもかすみちゃんとの距離感を把握したみたいで何よりだ。ってかこの二人と同好会のファーストコンタクト見逃すとか……くっそう。

 ……って、よく見りゃかすみちゃんがぶんぶん振り回してるの部室プレートじゃん。まだ部室プレートつけてないのか……"原作"だと愛ちゃん璃奈ちゃんが来る前に着け終えてたはずなのに。細かい差異が増えてきてないかね……怖いわー……

 

 

「改めてよろしく。演劇部と兼部してるって事だよね?凄いなー」

「……あれ?私、それ言いましたっけ?」

「言ってないよ。ワタシが一方的に知ってるだけ」

「一年生をストーカー?よろしくないなぁ」

「違わい。学内公演に行ったことがあるだけじゃい。歩夢ちゃんと二人で……」

「あぁ、私が行けなかったやつ」

「そうそれ」

 

 

 "歩夢ちゃんと二人で"のところで思い出すの笑う。

 ま、その時は名前まではちゃんと覚えられたわけじゃないんだけどさ。"原作"インストール前だったし。

 いやぁ、あれは見応えがあった。演劇部のレベルの高さが伺えたよ。全然詳しくないワタシがそう思ったってのがもう相当だ。推してしるべし。

 

 

「しずくちゃんは凄いんだよ。入学したての頃から演劇部のホープだったんだって」

「そ、そんな……褒めすぎですよ歩夢さん。私なんてまだまだで……」

「謙遜しなくていいのに。素人の私でも一際輝いて見えたもん。ねぇ?」

「おう。部長さんとのデュオも超ハマってたよ」

「え、えへへ……ありがとうございます!」

 

 

 そうそう!あの部長さんとの息の合いっぷりがねぇ!これがまたねぇ!……あん?悪い?そういう好み挟んで悪い?いーじゃんそれも込みの評価だもん!

 まぁ劇中で直接なんかあったワケじゃ無いけどね。ワタシほどにもなるとCPの気配は肌で感じ取れるからね。センサー優秀だかんね。

 

 

「上原さんも演劇に興味がお有りで?」

「演劇は初めてだったよ。題目に興味があって……あ、呼び方。歩夢でいいよ?私ももうせつ菜ちゃんって呼んじゃってるし」

「……えっと……それでは、歩夢さん?」

「はーい♪」

「…………」

「私も私も!」

「あ。ゆ、侑さん!」

「はーい!」

 

 

 ……なんかセンサー誤作動してっかなー?

 うん、誤作動誤作動。気にしなーい。

 

 

「そ、そろそろアナタの事も教えていただけませんか?」

「え。いやワタシはいいよ。同好会メンバーじゃないし」

「まだ言うか」

「言わいでか」

「まぁまぁ、それでも良いじゃない。知らない仲じゃないんだし!」

 

 

 しずくちゃんに促された自己紹介をやんわり断ろうとしたら押し切られた。

 くそぅ。エマさんに言われるとダメだな。今後は特にエマさんの近くにはいかない方が良いかもしれない。それはそれで寂しいけど……はぁ。

 

 

「えっと……ワタシは "――――" だよ。よろしくね。呼び方は……二人称で呼んでくれっと嬉しいなー」

 

 

 あー……自己紹介苦手ー……

 

 

「……え?二人称?」

「ににんしょー?変なあだ名ですねぇ」

 

「「「!?!?」」」

 

「ふぁっ?……えっ?」

 

 

 あまりの驚愕にその場に動揺が走った。その空気の変わりように彼方さんも異変を感じて目を覚ましたようだ。なんたる……その反応は予想してなかった……

 

 

「……か、かすみさん……?二人称だよ……?」

「うん?」

「マジで?かすかすマジで?」

「かすみんですぅっ!なんですかもう!」

 

 

 いや、まさかそこまでとは思わなかったよ……パねぇなかすかす……

 

 

「えっと……つまりその、"アナタ"などとお呼びした方が良いんですか?」

 

 

 驚愕に唖然としたしずくちゃんに代わり、せつ菜ちゃんがそうやって話題を戻してきた……うん、そうね。誰も幸せにならない話題を続けてもね、うん。

 

 

「……えっと……そうそう。そうです。"オマエ"でも"キサマ"でも"オヌシ"でもいいよ」

「どうして?逆に呼びづらい」

「自分の名前っていうか、固有名詞で呼ばれるのなんか苦手でさぁ。別に名前が嫌いってわけでもないんだけどね」

「あだ名は?」

「それもあんまり……ごめんね?」

 

 

 意外なほどの璃奈ちゃんからの追及を、口にし慣れた言い訳で躱す。というかそんなに変かな?割とそういう人いると思うんだけど。

 まぁ一番の理由はスニーキング中にターゲット外に見つかった時、ふいに名前呼ばれてターゲットにバレるのが嫌だからなんですけどね!てへっ!(激寒)

 

 

「これは逆張りオタクの予感。もしくは長引く厨二さん」

「初対面なのに遠慮がないねピンクきしめんちゃん。略してピンキー」

「あだ名。嬉しい。私はピンキー」

「ごめん。りなりーって呼ばせて?」

「ネトゲのHNハンネで使う」

「ごめんて」

 

 

 この一瞬で序列が決まってしまった。さてはこの子面白いな??

 ……後ろの方で(あ、二人称ってそういう……)という呟きが聞こえたのはスルーしてあげよう。うん。

 

 

「ふわぁ……変わってないんだねぇ、その自分ルール」

「あ、おはようございます……おはようございますで良いのかな?ともかく彼方さんやエマさんと活動してた時もそうだったんですか?」

「うん。ちらっと活動見にきた果林ちゃんの"コイツ何言ってんだ"、みたいな目が忘れられないよぉ」

「果林さんにまで迷惑かけてたなんて……困ったヤツ」

 

 

 うっさい侑。あんたはそっちで好感度稼いでろ。

 つーかもういいでしょ。早く本命の新人2人に自己紹介譲ろうぜ。

 

 ……はーぁ。これからどうしよっかなー……

 

 

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