ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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1-②

 ベランダ用のスリッパを履いて外に出れば、歩夢ちゃんは制服のまま。

 あのライブの後、侑に連れまわされてたのかな?だとしたら疲れてるだろうに。まったく、本当に気遣い屋さんなんだから。

 

 

「具合はもう平気なの?」

「うん、全然へーき。海外ハプニング集の動画見てたら元気でた」

「……好きだね、そういうの」

「そーそ、歩夢ちゃんも見る?ズボンずり落ちてパンツ丸見えになっちゃうやつなんだけど」

「うーん、要らない」

「え。じゃあおっぱい丸出しになっちゃうやつ……」

「要らない。そんなのばっかりなの?」

「おっぱいって言ってもダンディなオジサマのだよ?ご立派だよ?」

「どっちにしても要らないかなぁ」

 

 

 心配してくれた相手にこんな適当な話してはぐらかすのにはちょっと心が痛むけど、流石にまともに理由を言うわけにもいかないしグッと我慢する。

 

 "原作"じゃ侑にべったりみたいに描かれていたけど……いや、別にそれも間違っちゃいないけど。現実の歩夢ちゃんは基本的には誰にだって優しいし、気を許すのも結構早い。

 そのせいで勘違いさせていたことも1度や2度じゃない。伊達に中学の時にやってた"お嫁さんにしたいランキング"1位を堅持してたワケじゃないんだ。

 

 大切な幼馴染に対する想いが大きすぎて、付き合いの短い相手には見えづらくなっているだけ。

 歩夢ちゃんの愛に一度でも触れたら、一気にそれが実感できるんだ。

 弱ったり傷ついたりしてる誰かを、歩夢ちゃんは放っておくことなんてできないんだろうなって。

 

 ……だからマジで気を付けろよワタシ……!

 

 

「はぁ、心配して損した」

「帰ってきて直ぐ心配して声を掛けてくれるなんてやっぱり歩夢ちゃんは優しいなぁ。結婚しよ?」

「やだ」

「そろそろちょっとくらい靡いてくれたって良くない?」

「せめてもうちょっと本気で言ってくれるなら考えるよ」

 

 

 もしも誰かがワタシを監視しているのなら、ワタシの事情云々以上にまず懸念する事があるだろう。

 "お前、まさか侑への好感度を横取りしてないだろうな?"と。

 安心して欲しい。これである。

 

 

「おんなじこと侑に言われたら"もう!侑ちゃんったらー!"って言うくせに」

「……言わないよ?言わないもん」

「扱いの差に泣きそうだよ、ワタシゃ」

「はいはい」

 

 

 気安い間柄である事は間違いない。けれど歩夢ちゃんからの矢印は、決してワタシには向いていない。対してきっちり、侑の方には伸びているのである。

 その理由は、ワタシの性格。性癖ではなく、性格だ。

 端的に言って、気分屋で適当で、ノリが軽くて薄っぺらいのだ。

 

 あれやこれやに興味をもって幼馴染を巻き込むけど真っ先に飽きて2人きりにする。

 3人で出かけたのにもかかわらず、いつしかふらっと居なくなる。

 班決めなんかで別れざるを得なくなった時、"あ、じゃあワタシ抜けるわ"と直ぐ譲る。

 

 そうして出来上がったのが"良い子2人と面倒な子"ってグループだ。

 そんなん続けてたら2人の方が極端に仲良くなるよ、そりゃ。

 

 それもこれも、2人の関係を見守るため。良い感じに親友と友人の間に立ち止まって2人の世界を構築させつつ、他の誰かが入ってくるのを塞き止めるためである。いやぁ、なんて迷惑なやつだ。

 ……いや、別に2人の人間関係構築を妨害してたってワケじゃないからね?この子らがお互い無視して別のグループ作るとかまずないからね?あくまでワタシは空気を読まない身の程知らずをシャットアウトしてただけだから。うん。

 

 

 とにかく。少なくとも好感度の面じゃワタシは障害にはなり得ない。

 ……だから、現状残る懸念は。歩夢ちゃんが、あの事を忘れてくれてさえいれば……杞憂で済むんだけど……

 

 

「まぁせっかくだから見てみてよ。ホントに笑えるから。リンク送るからさ」

「要らないって…………あの、元気なんだよ、ね?」

「ん?元気元気、チョー元気」

「……から元気とかでも、なさそうだね」

「……あーやっぱちょっと怠いかもぉ。優しー幼馴染が看病してくれないと辛いかもー」

「侑ちゃん呼ぶ?お説教してもらう?」

「ごめん、ごめんって。ちゃんと元気です」

 

 

 はぁ、とため息をつかれる。

 うーん、そんな仕草もキュートだね!とか言ったらまた呆れられるんだろうなー

 ……でも言った方がいいかな。言ってこの場を流した方が良いかも。いや、どっちなのかな。

 あーもう即決できない。もうちょっとシミュレーションする時間が欲しかった。

 

 

「……本当に、大丈夫なんだよね?」

「え?あ、うんうん、本当に大丈夫……」

「……掘り返すべきじゃない、のかもしれないけど」

「う、うん?」

 

 

 ……しまった。ここまで強引に聴いてくるんだ。

 ……あ。あぁー……これは、もう……

 

 

「――だって、あれだけ泣いてたのに……」

 

 

 …………

 

 …………

 

 ……だよねぇ。気配り屋の歩夢ちゃんが、忘れてくれてるわけないよねぇぇぇぇえ……はぁ。

 

 

「……えっ、と……」

 

 

 ……虹ヶ咲スクールアイドル同好会の皆を眺めたい。

 メインストーリーのイベントをこの目で見たいし、描かれなかった幕間を覗いてみたい。

 その欲望を満たすには、まず主人公格である侑と歩夢ちゃんが同好会に入らない事には始まらない。

 

 

  ・ライブをきっかけにスクールアイドルに興味を持つ

    ↓

  ・色んなスクールアイドルの事を調べて居ても立ってもいられなくなる

    ↓

  ・翌日に同好会を訪れるが、既に廃部寸前であることを知り意気消沈する

    ↓

  ・諦めかけた侑の手を、一歩踏み出した歩夢ちゃんが掴み取る

    ↓

  ・2人で一緒に未知なる道へと歩みだす

 

 

 これがアニガサキ1期第1話の大雑把な流れである。

 運命の収束とかで絶対にスクールアイドル同好会に入ってくれるなら構わない。

 でもそんな保証なんて一切ないから、可能な限りこの通りに進んで欲しいわけだ。

 ワタシとしても絶対見たいイベントが盛りだくさんだしね。

 

 

 ……それを阻害しかねない、ワタシの昔の恥部。超絶ジャマなやつであるという理由。

 

 

 

 それは――『スクールアイドルになろうとして挫折した過去がある』こと。

 そして、それを『幼馴染の歩夢ちゃんに知られている』ということである。

 

 

 

 ……なにしてくれとんねんコイツ。

 

 

「……あっはは。うん、ないない。ぜーんぜんないって。スクールアイドル同好会、あんな人がいるんだね。すごいなぁ」

「…………」

 

 

 あーもう、考えてたら返答遅れた!ノータイムで返すべきだったでしょーに!

 ホントに今となっちゃ特に傷が痛んだりするわけでもないのに歩夢ちゃんが穿ち過ぎちゃうじゃん!

 

 

「……いや、マジで大丈夫だからね?強がりとかでも何でもないから。深読みもノーセンキューだから」

「……そう。なら、良いんだけど」

 

 

 ……くっ、疑いを晴らしきれない……まぁ仕方ないっちゃ、仕方ないか……

 

 

「そぉそぉ。あれはホントに偶々あのタイミングで頭痛が来たってだけ。悪感情とかほんっとうにないから」

「…………」

 

 

 いやぁもう何でスクールアイドルに中途半端に関わっちゃってるかなぁぁ!?

 しかも心折れた時に大泣きしてるところを歩夢ちゃんに見られてるとかさぁぁ!?

 挙句の果てに慰められたとかさぁぁ!?

 あ゛ぁぁぁぁぁっ!

 

 

 ……ん?そういえば"原作"では同好会って元々存在してたんだっけ?語られてなかった気がする。まぁ"あの人"がスクールアイドル始めてなかったのには違和感あるし……いやでもどうなんだろ……

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 って、違う違う!今それはいい!

 それよりも問題は"ワタシの過去に配慮して歩夢ちゃんがスクールアイドルへの興味を押さえつけちゃう"可能性があることだ!

 ほんとワタシとか放っておいて良いのに!この王道ヒロインはそうやって相手の事を慮っちゃうんだよ!あーもぅっ!好き!

 

 

 うん!今話しかけてくれたこと、やっぱポジティブに捉えるべきだわ!ほっといたら序盤の流れが潰れかねない!歩夢ちゃんには抱いた興味を我慢せずにスクールアイドルを深堀してもらわないとダメなんだよ!ツケのお支払いのお時間です!これだけはマジで回避しないとマジでヤバい!

 

 

 幸いな事に、侑にはその事実は知られてない!はず!

 歩夢ちゃんにも具体的なことは何にも話してない!"スクールアイドルの事で失敗しちゃった"って語っただけ!

 なんかその辺をどうにか活かして……どうにか……どうにか……

 

 

 ど、どうにかすっぞオラー!!

 

 




今更注釈する必要もないでしょうが、この主人公は基本行き当たりばったりのアホです。
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