ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

4 / 87
1-③

 

「……ねぇ。あの時何があったのか、まだ教えてくれない?」

「えー?ヤダよ恥ずいもん……だぁいじょうぶだってば。思う所なんてないって言ってんじゃん?しっかし今日はずいぶん気にしてくれるねぇ。ワタシに乗り換える気になった?」

「またそうやって茶化す……それはないけど」

「こんなに優しい歩夢ちゃんが、なんでワタシのアプローチに関してだけはそんなに頑なななんだろう」

「本気でもない事を言われ続けたら、こうもなるよ」

「そんな事ないんだけどなぁ」

 

 

 へらり、と歩夢ちゃんに笑いかけると、眼を細められる……うーん。ぞくぞくする。

 ……しっかしなぁ。ワタシが"原作"に居ないのはもうわかったけど、この"歩夢ちゃん家の逆隣"ってポジションはなーんか引っかかるんだよなぁ……もしかしてまだ思い出してない裏設定でもあんのかな。うーん気になる。

 

 

 ま、現実逃避はほどほどにして、こなすべきことに集中しよう。

 "ワタシへの疑念を払しょくさせて、程よくスクールアイドルに対して意欲を向かせる"ことに。

 ……やれるか?じゃない。やるんだよォ……

 

 

「…………」

 

 

 手すりに頬杖をついて、ぼんやりと正面に目をやる歩夢ちゃん。

 ……この後、どう話を進めるべきか迷ってる感じ、かな。

 

 ワタシは"優木せつ菜"のライブを見たあと、興奮する侑を後目に体調不良を訴えてその場を離れている。マジで頭痛が酷かったとはいえ、これはあまりにも愚行だった。

 マイスゥィートエンジェル歩夢ちゃんは気配り屋さんで気遣い屋さんだ。その気働き振りったるや、助っ人でマネージャーを請け負った運動部から「普段より5割り増しでパフォーマンスがあがった。ずっと居てくれ」と泣いて引き留められるほど。さすがにそれは普段からもっと頑張れよとツッコミたくもなるけど、とにかくそれくらい相手の事をよく見てよく配慮してくれるという証左である。

 

 そんな歩夢ちゃんがスクールアイドルに焦がれて、でもかつてワタシがスクールアイドルに関して蟠りを持ってたと知っていたらどうなるか?そうだよ、こうなるんだよ。

 

 

 "友達が苦手なものを好きになっちゃっていいのかな?"って悩んじゃうんだよ。いじらしいね!

 

 加えて"自分の都合で相手のトラウマ掘り起こしちゃったらどうしよう"、"自分が安心したいためにこんな事聞くなんて不誠実だよ……"なんて色々考えちゃうんだよ!まいっちゃったね!

 

 普段ちゃらんぽらんなワタシが珍しくガチ泣きしてたせいで、こうしてずっと気に掛けられちゃってるっていうね!

 

 

 ワタシのバーカっ!

 

 

「やー……しっかしあの優木せつ菜って子、かーなーり凄かったねぇ。他の子はどうだった?」

「え?……あ。パフォーマンスしたのは一人だけだったよ」

「ん?そうなの?」

「ポスターには5人映ってたけど……」

「ふーん、なんか都合でも悪くなったのかね」

 

 

 とりあえずこっちから話を切り出して、主導権を握る。

 歩夢ちゃんは聞き上手であり、同時に話を遮るのが苦手だ。相手の意図を汲み取ろうとするあまり熟考しがちなところもある。

 だから話の流れをコントロールするの自体は意外と簡単なのだ。それだけはね。

 

 

「……スクールアイドル同好会、本格的に活動を始めるのかな?」

「かもねぇ。あれなら強豪ひしめくこの地区でも埋もれないんじゃない?いやぁ、華やかになるねぇ」

「……そんなに強い学校がいっぱいなの?」

「うん。東雲、紫苑、藤黄、青藍、千歳橋……この辺ってラブライブでも目立つような学校だらけなんだよ、実は。Y.G.なんてバラエティ豊か過ぎて面白いよー」

「ラブライブ?」

「スクールアイドルの全国大会みたいなやつ」

「へぇ……国際学校にも、グループがあるくらいなんだ」

「まぁね。ちょいちょいチェックしてるけど順調に新入部員も育ってるみたいだし。せつ菜ちゃんはどんだけ頭角を表せるかねぇ」

「…………」

 

 

 続いて"最近のスクールアイドル事情にも結構詳しいんだよー"とさりげなくアピールしていく。さりげなくない?うっせぇ。脳内のツッコミくらいワタシに賛同しとけ。

 未練があると思われる可能性もあるんだけど、それよりもまずは忌避感がない事を伝えないと。楽しみにしてる感も一緒に出してけば、()()()()()()の補強にもなるでしょ。

 

 ……なってる?伝わってる?伝わってるよね?よーし伝わってるよね!お願いだから伝わってて!

 そしてすかさず切り札で追撃だ!

 

 

「あんま気にかけられてなかったけど、侑、大興奮しなかった?」

「え?う、うん。最近だと、一番テンションが高かったかなぁ」

「トキメいてた?」

「……そう、だね」

 

 

 うむ、やっぱ侑の話が一番歩夢ちゃんの気を引けるね!

 

 今の歩夢ちゃんにとって、侑とスクールアイドルに対する心中はかなり複雑のはず。侑の夢中具合を引き合いに出してあげたら、少なくとも"まったく関わらない"って選択肢は選ばないでしょ。

 

 ……これで、一旦空気感はリセットできた。

 後はどこまでワタシへの罪悪感をどこまで削りつつ、スクールアイドルへの欲求を高められるか……ここが、正念場だ。

 

 

「ふぅん、そっか。そんじゃまた3人であの子のライブでも見に行こっか」

「……いいの?」

「…………」

「……?」

「歩夢ちゃぁん。いくら侑がスクールアイドルに取られそうだからって、そんなに不安そうな顔しなくてもぉ……」

「……え?へ!?してない!してないよ!?」

「大丈夫だって。アイツあれで独占欲強いから歩夢ちゃんが1番なのは変わらないって」

「そんな心配してない……っていうかなんの話!?違うから!そういうのじゃないから!」

「え?じゃあ3人じゃなくて2人で行きたいって不満?まぁ協力するのもやぶさかじゃないけど……」

「違うってば!もう!揶揄ってるでしょ!?」

「あはは」

「もう!」

 

 

 あーもぅ可愛いなぁ歩夢ちゃんは!こんなタイミングじゃなきゃ萌え散らかしてたのにさぁ!

 

 ……あぁ、でもいい感じだ。良い感じにいつものワタシ達の空気になってる。

 ワタシが好き勝手からかって、歩夢ちゃんがそれに怒って……そう。そーいう軽くて、良い空気だ。

 

 

「ま、またライブ見に行こうってのは本音だよ。なんならワタシが案内すっからさ」

「なんか……ノリノリだね?」

「そりゃね。スクールアイドルって可愛いもん」

「欲望に忠実だぁ」

「スクールアイドル側もそうだよ?"自分の好きな事やってる私を見て!"って叫んでる。だったらこっちも遠慮なくガン見するさ」

「……自分の、好きな事」

「そ。だからあんなに生命力迸ってんだろーね」

「…………」

 

 

 ん?なんか考え込んで……あ!?もしかしてヤバいか!?ここで"スクールアイドルになれるか"とか相談される!?

 そ、それはちょっと気が早い!ここでもし仮に決意が固まっちゃうと明日の展開に支障が出る!

 く、もうちょっと粘りたかったけど〆に行くしかないか……!

 

 

「よぉし。歩夢ちゃんも気になってるみたいだし、どうせだからツアー組んじゃうか」

「……ツアー?」

「そうそう。各校のスクールアイドルを訪ねて行脚すんの。休みの日って結構あちこちでライブやってるからねぇ。結構タフな予定になるよぉ?」

「……そう、だね。それも楽しいかも」

「ふっふー♪良い子が見つかるといいねぇ♪」

「……本当に、良いんだね?」

「ん?侑相手ならともかく、歩夢ちゃん相手に空約束はしないよ」

「侑ちゃんにもしてあげてよ……うん。分かった……信じるね?」

「うん、楽しみにしてるね」

「……ふふ」

「へへ」

 

 

 ……あぁ。そう、そうだよ。やっぱ歩夢ちゃんは笑ってるのが一番だ。

 ワタシのことなんか気にしないで笑っててほしいもんだよ、ほんと。

 

 

「……ん、そろそろ誰か帰って来たんじゃない?」

「あ、ホントだ。お夕飯の準備しないと……ごめんね。疲れてたのに」

「こっちこそ、気遣ってくれてありがと。ほんじゃまたねー」

「うん、ばいばい……また明日ね」

「ばいばーい」

 

 

 そういって、丁度返ってきたらしいご家族の気配に、話を切り上げて。

 一足先に戻っていく歩夢ちゃんを見送って。

 

 

 

 

 

 ……待って。

 

 ……待って。

 

 ……待って。

 

 ……たっぷり5分くらいは待って。流石にもう戻ってこないでしょって確信できるまで待って。

 

 そこまで待って、ようやくワタシも家に戻って。

 

 ソファにダイブして。そこで。

 

 

 

 

 

…………………………はぁぁぁぁぁあ……!?

 

 

 思いっっっっっきり、息を吐いた。

 

 

 

 

 

「……な。なんとかなった……?なったかなぁ……?」

 

 

 たぶん、あの感じなら、どうにかなったと思うんだけど……なったよね……?

 

 ヤバかった。マジでヤバかった。改めてマジでここが山だった。

 放置してたら受験生コース(ノーマルエンド)まっしぐらな上に、どうにかできるタイミングがホントにここしかないんだもん。

 だって歩夢ちゃんがスクールアイドルになりたいって宣言するの、明日だよ?ライブの次の日の夜だよ?しかもその時にアレを披露したって事は、たぶん夜中にこっそり歌詞考えたり練習してたってぇ事でしょ?

 

 つまりはこのタイミングで歩夢ちゃんの懸念を払拭しとかないと、ワタシへの配慮で二の足踏んで今日の夜中に何もしないって可能性が立ち上がるワケだ。そしたら侑の前で何も披露できない……どころか、踏ん切り付けて侑を呼び止められない、なんて最悪なルートへの突入すら考えられる。

 

 

 ……そんなのどうやってリカバれと?

 とんでもねートラップだよ。何してくれてんのワタシ。

 

 

「とにかく、なんとかはなった……と思いたいなぁ……」

 

 

 我ながら、かなりなんでもない風に振る舞えたと思う。アレなら思い込みの激しい……げふん。ちょい妄想癖がある……げふんげふん。共感性の高い歩夢ちゃんでも、多少心配は収めてくれるだろう。あとはもうワタシの幼馴染を信じるのみである。

 

 ……いや、本音を言うならスクールアイドルに何も思うところがないわけじゃないよ。そりゃワタシだって人間だし。

 でも溢れる萌えへの可能性の前に押し潰されたよね。萌えの前じゃ人間無力だよね。仕方ないね。

 

 

「……さぁて」

 

 

 それじゃあワタシは明日に備えてシミュレーションしよう。歩夢ちゃんの部屋とは隣接してないから、どんなに頑張っても練習の様子は見れないしね。こっからはどう転ぶか分かんないからなぁ……今回みたいな即死トラップはないハズだけど。ないと思いたいなぁ……

 

 ……とりあえずお風呂に入ってリセットしようかな。あんま時間はかけらんないけど、侑に倣って今流行ってるスクールアイドルでも一緒に予習しとこう。

 さっき上げた"原作"作中で触れられてた学校のスクールアイドル自体は、ある程度押さえてるけど……もうちょっと詳しく聞かれたときに応えられるようにはしときたいしね。ただ他の学校までは、あんまり調べてる時間はないかな……いや、ザッピングくらいはしとくか。うん、そうしよ。

 

 

「えっと、そういやなんか気になってたグループがあったような……あ、そうだそうだ」

 

 

 

 

 

"μ's"

 

"Aqours"

 

 

 

 

 

 なーんか頭の片隅に引っかかってたんだよね。どこで聞いたんだっけ?調べてみよ。




フラグは後から回収できりゃいいやのスタンスです(出来るとは言ってない)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。