ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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6-③

 

 

 そして、今に至る。

 同好会2年生組+お邪魔虫が、東雲学院の、遥ちゃんのライブを観るに至ってる。

 前に歩夢ちゃんと約束したスクールアイドルのライブツアーを利用して、その最後にここにみんなを誘導してきてる。

 

 ……はぁ。本当にただ応援したいと思ってやり始めたんだけどな。あんなブログ書くのでも迷惑になるのか。ほんとなんなんだろーねワタシって。

 ……運命のせいにすんな?今回は完全に自己責任だろ?……はは、まったくその通り。

 

 もうね、完全に裏切り者だよワタシゃ。あんだけ"原作"通りに進んで欲しいって思っときながら、いざ目の前に望ましい道が見えたら、コレだもの。今後一切被害者ぶれねーね。もし璃奈ちゃん、しずくちゃん、果林さんの回に支障がでたらハラキリだね。

 

 戒めよう。ワタシはもう、みんなの近くにいる資格も、デバガメを楽しむ権利もない。ワタシの責任でこれ以降の物語に悪影響が出てしまった場合に、それをなんとかする。それだけに邁進しよう。

 それが、ワタシに許される最大限の償いだと思うから。

 

 

『――ありがとうございましたーっ!』

『次はビーナスフォートでライブやりまーす!そっちもよろしくねーっ!』

 

 

 そうこうしているうちに、ライブは終わった。

 徐々にはけ始める観客たちを見ながら、少し離れたオープンスペースに居るよと皆にメッセを送る。寝不足を理由に、結局途中でその場を離れていたから。申し訳ないけど、ただ純粋にライブを楽しむのは、やっぱ無理だったから。

 こうしてステージから程近いところで固まってれば、そのうち遥ちゃんがくるだろう。そこでワタシはお役御免だ。キッカケが出来れば、うちのお人好し達の包囲網が勝手に出来上がる。

 

 同好会のみんなも彼方さんの様子は気にかけている。

 遥ちゃん達の事情を把握さえすれば、その上で彼方さん達の仲違いが起こりさえすれば。

 きっとみんなは、彼方さんを、助けてくれるに違いないから。

 

 

 ……"7話"で綴られるのは、近江姉妹のすれ違いだ。

 

 妹である遥ちゃんにのびのび好きなことをやって欲しいがために、家事やバイトに明け暮れる彼方さん。

 そうして疲弊していく彼方さんを、手助けしたい遥ちゃん。

 その想いを彼方さんは、"お姉ちゃんに任せなさい!"と、その一辺倒で断り続けていた。

 

 1年目まではそれでも何とか出来たのだろう。2年目までも、どうにかしたのだろう。けれど、スクールアイドル同好会が本格始動した3年目は、ダメだった。やりたい事を取捨選択せずにやり続け、エネルギーが尽きたら眠りにつく。そんな不摂生極まりない状態へと至ってしまった。

 そして、遂に遥ちゃんは爆発する。"お姉ちゃんのやりたい事を私が邪魔しているなら、スクールアイドルを辞める"、と。

 

 失意に暮れる彼方さんは同好会のみんなの言葉を受け、改めて自分の振る舞いを、見つめ直す……

 そんな"7話"が、もうすぐ、始まる。

 

 

「いよっす!チョーシどーよ?気分悪くない?」

「すみません、私達だけ楽しんでしまって……」

「ワタシがギブしただけだから気にしないで。結構調子戻ったし」

「……本当に?まだ何か、気にしてそうだけど……」

「……ごめん。やっぱせっかくのライブ楽しめなかったの心残り……」

「これに、懲りたら……自己管理は、しっかり、することだね……ひゅー……」

「そのザマでよく言えるな……?ほら、椅子座れ。これ食え」

「んー……?」

 

 

 最後の一滴まで絞り出したらしい侑にそう言いつつ、買っておいたアイスキャンディーをテーブルに並べた。美味しいんだけど硬くて食べ終わるのに時間がかかる、ちょっとお高いヤツである。

 

 

「え、なにこれ……どうしたの?」

「そこのブースで買った。珍しかったから。まぁあれよ、ホストが途中で潰れたお詫びだとでも思って?」

「そんな、悪いよ。お金払うよ?」

「いーからいーから。ほら、好きなの選んでー」

「んじゃこれもーらい。さーんきゅ!」

「愛さーん……」

「せっつー、こういうのは遠慮する方が失礼なんだぜ?それに気になるならいつか自分も同じよーにしてあげれば良いんだよっ」

「……な、なるほど……」

 

 

 一番乗りで手に取った愛ちゃんに説き伏せられ、せつ菜ちゃんもおずおずとテーブルの上に目を走らせる。こういう時の愛ちゃんのコミュ力は本当に頼りになるね。奢る側の配慮不足をスマートにフォローしてくれる。

 

 

「……なーんか、怪しー……変なもの、仕込んでない、よね?」

「ねーよ。さっさと選べ」

 

 

 侑のそんな失礼な疑いが挟まりつつも、みんな手に取ってくれた。

 愛ちゃんはマンゴー。せつ菜ちゃんはあずき。侑はショコラ。そして歩夢ちゃんはストロベリーだった。

 

 侑と歩夢ちゃんは大体好みに合わせたけど、こういうの種類合わせた方が良かったな。そういうところの気配りもワタシは足りない。考えれば考えるほどダメダメだね。

 ちなみにワタシは杏仁味。結構美味しい。

 

 

「んー!騒いだ後のアイスは格別だねー!」

「あはは。侑さんってば元気になっちゃいましたね?」

「歩夢ー?それ一口くれない?」

「良いよ、はい。マンゴーもくれる?」

「は、はわわ……」

「せつ菜ちゃんも私の食べる?」

「えっ!?」

 

 

 ……良い……

 ……じゃねーよ。悶えてんじゃねーよ。

 

 はぁ。こういうのに混ざれるのも今回までかなー……自業自得とはいえさみしーや。

 歩夢ちゃんの思いのほか大きい一口に愛ちゃんが目を瞬かせているのを観ながら、ワタシは残された今を、アイスと共に噛み締めていた。

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 で。そうしてアイスを食べ終わり、ライブの感想を話して、30分も経ったろうか。

 

 

 

 

 

 来ない。

 

 遥ちゃん、来ない。

 

 

 ……あっれぇ?

 

 

 

 

 

「そろそろ行こっか。テーブル占領し続けるのも悪いしね」

「そうだねー」

 

 

 そうしてこの場を離れる支度を始めるみんな。

 や、やばい!このままじゃアイス買ってまで引き留めてた意味がなくなる……!

 

 

「ごめ、ちょっと花摘んできていい?」

「あぁ、どうぞ。なら戻られるまで待ってますね?」

「すまぬー」

 

 

 苦し紛れにそう言って席を離れた。これであと少しは時間稼ぎ出来る。できるけど、最後の手段すぎてもう使えない。

 

 

(なんで?なんで遥ちゃん来ないん?)

 

 

 着替えとかあるのを加味しても、30分あれば十分だと踏んだんだけど……いや、真面目に片付けたりメイクし直したりしたらもっと掛かるよ?でも今回は裏で話を通してるんだ。遥ちゃんも早めに出てこようとしてくれるはず……

 なのに、なんで?ワタシ達を見つけられてない?そんなバカな。ワタシはともかくあんな目立つメンバーを見つけられないなんてある?見たくなくても目に入るやろ?

 もしかして、あのDMは遥ちゃんになりすました愉快犯の仕業だった?彼方さんのファンとかでワタシから情報を得ようとしたけど、他の同好会メンバーばっかり釣れたから諦めた、とか?いや、でも。それにしては近江家の事情を知りすぎてたし……あーだめだ!分かんにゃー!

 

 とにかく、遥ちゃんを探してみよう。そう思ってライブステージを見下ろせる2階のバルコニーに上がった。

 ステージ横の控え室を中心に目を凝らす。居ない。東雲の他のメンバーも居ない。

 ワタシ達が座っていた場所にも目を移す。みんながまだ談笑してる。うん、やっぱり控え室からでも十分見つけられる。あそこなら見過ごすこともなさそう。

 

 

(あぁ、もう!なら、本当にどこに……うん?)

 

 

 頭を抱えたワタシは、ふとみんなの様子がおかしいことに気がついた。どこかを指差している。

 その先にあるのは、ステージとはちょうど反対側の、木陰になっているベンチスペースだ。

 

 一体なにが……そう思って覗き込んだ先に、ようやく見つけた。

 

 

 

 

 

 件の、遥ちゃんを。

 

 

 そして、ベンチに座る彼方さんを。

 

 

 極め付けに、トレードマークのおっきなリボンをつけて彼方さんの隣にいる、しずくちゃんを。

 

 

 

 …………あっるぇぇぇぇえ……?

 

 

 

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