ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

46 / 87
挟まらざるを、えなかった……!
7-①


 

 

「はよっす」

「おはよー」

「いやー……こうして侑と二人で登校するのも馴染んできたなぁ」

「そうだねぇ、不本意ながら」

「まったく。お姫様抜きじゃ華がないったら」

 

 

 彼方さんのライブから数日経った、ある平日の朝。そんな気の抜けた会話をワタシと侑は交わしていた。

 歩夢ちゃんが早朝ランニングを始めて以降、二人で登校する朝が続いている。その寂しさに初期こそローテンションだった侑も流石に慣れて来たのか、こうやって軽口を叩けるくらいには調子が戻っていた。ったく、手間かけさせやがって。

 

 

「歩夢は今頃、河川敷あたりかなぁ……」

「河川敷?」

「最近走れる距離が伸びたから、コース変えるんだって。愛ちゃんやせつ菜ちゃんと昨日考えてたよ」

「へぇ……もうそんなに走れるんだ……」

「休日も欠かさず走ってるし。本当、歩夢は一度始めたら止まらないんだから」

 

 

 歩夢ちゃんのトレーニングはどうやら順調に成果を上げているらしい。コツコツ系の本領発揮ってとこだろうか。

 にしては、随分成長が早い気もするけど……もしかして、長距離走の適性があったのかな?こりゃまた意外な一面を開花させたもんだ。

 

 

「しっかし、こうして一緒に居る時間が減ると感じるね……今まで何気なく過ごしてた日々の大切さってやつを……」

「……え?なに、どうしたの?変なもの食べた?アナタがそんな風に感傷的になるなんて……」

「侑の中のワタシはそんなに無感情な人間なの?」

「情はあるけど割と淡白な人間だと思ってる」

「卵白?そんなに色白じゃないよ」

「あはは」

「白々しい笑いをありがとう」

 

 

 うーん。軽口が言えるようなったのは良いけど、ワタシに対する態度も適当になってきてる気がする。

 良いのか?バラすぞ?歩夢ちゃんに。なっさけない時の様子。実は撮ってたんだぞ?……ダメか。歩夢ちゃんが喜ぶだけか……

 

 

「真面目に言うと、話す時間が減ってんだからそりゃあ寂しいさ。なんだかんだ10年近く一緒に登校してたんだし」

「そっか……私達、そんなに長く一緒だったんだ……止めてよ、言葉にされると私まで寂しくなっちゃうじゃん」

「ごめんごめん。なんか、ふと気になっちゃってさ」

「まぁ、アナタは勝手にどっかに行くことも多かったけど。そういや最近はそういうの減ったね?」

「ん?侑が寂しかろうと思って行かないようにしてんだけど?」

「あはは」

「そこはもっとちゃんと笑えよ」

 

 

 愚痴る私に何も言わず、ぽん、と二の腕を叩かれた。

 ……まったく。素直じゃねー奴……

 

 

「朝も一緒じゃない、夕方も一緒じゃない。ワタシに許されたのは昼間だけ……悲劇だね……」

「アナタだけ一緒のクラスなのはずっと恨んでる」

「それは学校に訴えてください」

「っていうか、そんなに寂しいなら夕方も一緒に居れば良いじゃん。同好会に入って。そしたら休日の練習でも会えるのに」

「うーん。それもなんかなー」

「ほら、やっぱり淡白」

「ワタシにはワタシの考えってのがあるんですーぅ」

 

 

 侑もしつこいね。入らないって言ってんのに。

 同好会に邪魔者が入ってこれ以上ひっかきまわしちゃったらどうすんのよ?ほんと毎日戦々恐々としてんだよこっちは……

 

 ……そうだ。それで思い出した。聞いときたいことがあるんだった。

 

 

「あ。でも同好会の最近の動向は気になるな」

「ぷひょっ」

「えっ」

「…………」

「……同好会の、動向、どう?公開してる?」

「ぷくくっ……!」

「……愛ちゃんに弱点開発され過ぎじゃない……?」

 

 

 何かを隠すようにそっぽ向いて俯いてるけど、震える肩が雄弁に語ってる。今必死に笑いをこらえてるってことを。

 ……昔はここまで沸点低くなかったと思うんだけどな……赤ちゃんでも笑わないでしょ、こんなの……

 

 

「はーっ……はーっ……えほっ。えっと、何だっけ?同好会の動、向?……ぷ」

「お願いだから自分で言って自分で笑わないで。話が進まん」

「ごめんごめん……はぁ、よし。えっと、動向だよね。今後どうしようとしてるかってこと?」

「そーだよ。全員分のPVは見たけど、次どーすんの?ライブすんなら手伝わなくもないし」

 

 

 "7話"は終わった。時系列は狂った。次に誰の回が来るのかは、もう確証がない。

 だからこそ、今まで以上にアンテナは張っておく必要がある。

 侑は有益な情報源だ。この二人きりの時間を有効活用しないとね。

 

 ……とはいえ……実は、"次"のアタリは付いてるんだけど。

 

 

「ライブの予定はまだ無いなー……あ。でも同好会主催じゃないけど、たぶんしずくちゃんが歌うよ」

「ライブじゃないけど、歌う?」

「藤黄学園との合同演劇祭、アレのヒロインになったんだって!歌手を目指す女の子の役だから、ステージで歌う場面があるみたい!」

「……そっか……そうか、次はしずくちゃんか……」

「なに?不満?」

「んなわけ」

 

 

 ……そう。"8話"の舞台となる合同演劇祭は、日程が確定している。故に、その日付から逆算して、おおよそ"8話"が始まる期間は予想出来ていた。

 侑の言葉ではっきりした。次は、"8話"。しずくちゃんのお話で、確定だ。

 ……また飛んじゃったよ、もー……

 

 

「……んー……ま、いっか。ねぇ、今日の放課後、時間空いてる?」

「ん?空いてるけど」

「偶には一緒に遊ぼーよ。遊ぶだけなら同好会のメンバーと一緒でも気にしないんでしょ?」

「……ん。ま、そりゃ寧ろ大歓迎だけど……いいの?そんなに急に」

「いいと思うよ。その予定も昨日決まったばっかりだし。歩夢も喜ぶでしょ」

「…………」

 

 

 ワタシの反応をどう思ったのか、そんな風に急に遊びに誘ってきた。

 けど歩夢ちゃんも一緒なのか……まさかとは思うけど、こいつデートの予定に第三者混ぜようとしてねーよな……?侑ってそういうところは普通にやらかすからなぁ……

 

 

「……どこに行くの?侑と歩夢ちゃんだけ?二人のデートならご遠慮するのもやぶさかじゃないけど?」

「デートじゃないよ。2人きりじゃないし」

「……あ。そ、そう。そっか」

「デートならそもそもアナタは誘わないよ。あはは!」

「おいこらぁ」

 

 

 ……あれ?なんだ、そういう ゆうぽむ めいた事も言えるようになったのか……成長したネ!もしそうならコッソリついてくから教えてネ!

 

 

「メンバーは私と歩夢、愛ちゃんと璃奈ちゃんね」

「へー」

 

 

 ふーん。結構大所帯。

 

 

「んで行くのはジョイポリス!」

「……へー?」

 

 

 ジョイポリス?あそこも色々あるけど何するんだい?

 

 

「体験型ゲームしに行くんだ!楽しみー!」

 

 

 ほーん。体験型ゲームね……まぁ偶にはそういうのも悪くない……

 

 

 

 

 

 ……ん?

 あれ?

 

 

 侑に愛ちゃんに璃奈ちゃんに歩夢ちゃん?

 ジョイポリス?

 体験型ゲーム?

 

 

 …………あれ?

 

 

 

 

 

「知ってる?あのおっきい設備の」

「…………VRゴーグルの奴?」

「そっ!」

「……そっかぁ」

 

 

 

 

 

 ………………おい。

 おいおいおい。

 おいおいおいおいおい。

 

 

 

 

 

 それってさぁ……"6話"の導入じゃねぇっすかね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "6話"と"8話"!

  被っちゃってませんかねぇぇぇぇぇえっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌われたくないから、人と距離を取る。

 

嫌われたくないから、本心を隠す。

 

 

自分の何かが嫌いで、でも、それを変えるのは難しい。

 

そんな時、望まない次善策を人は見出すようになる。

 

自分が傷つかないように、相手を傷つけないように。

 

偽りの仮面を心に被る。

 

 

人間関係は頓に難解で、築くのは難しいのに崩壊するのは一瞬で。

 

取り返しがつかなくなるくらいなら、自分が我慢すればいい。

 

そう考えてしまう人は確かにいて、そういう人ほど苦しむことになる。

 

そうして、いつしか我慢に慣れてしまって、誤魔化すことそのものが得意になる。

 

自分の胸の、痛みすら。

 

 

 

……そんな怖がり屋さんを、誰なら救うことが出来る?

 

 

 

泣く子も笑う、底抜けに明るいスーパーヒーロー?

 

何があってもへこたれない、カッコ可愛い王子様?

 

……あるいは……ともあれ。

 

彼女たちは幸運にも、そんな人たちが、傍にいる。

 

 

もしもあなたの傍に、何かを押し殺している、そんな人が居たとして。

 

もしあなたが、その人を放っておけないのだとしたら。

 

 

少しだけ、勇気を出して。

 

あなたの心の仮面も、そっとずらして。

 

声を掛けてあげてみては、どうだろうか。

 

 

 

そうしたら……もしかしたら、見れるかもしれないよ?

 

 

仮面の奥の、一等可愛い素顔が。特等席で。

 

 

 




1つの時代のフィナーレと、新たな物語のスタートに敬意を表して。
今章もよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。