ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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7-⑦

 

 

「ごめんね、買い物は任せていいかな?」

「ちょ、ちょちょちょっ……ちょぉーっと待ってくださいっ!なに唐突にストーリー進めようとしてるんですかっ!?」

「ストーリー?それはちょっと分からないけど……今まで話してたこと、根拠はあるけど全部想像だよね?だから解決策を思いついても、ちょっと違うかなってなっちゃうかもしれないし」

「それは……そうですけど……」

「だよね。だから、直接しずくちゃんに聞いてみるよ」

だから!待ってくださいって!

 

 

 どこか遠慮がちな声音に反して、歩夢ちゃんの視線は揺らがない。歩夢ちゃんは、一度決めたらそれを貫く子だから。つまりはもう、覚悟完了してるってことだった。

 そのまま踵を返そうとした腕を、かすみちゃんが慌てて掴んだ。

 

 

「しず子は構われるのを拒否したんですよ!?今行ったって追い返されるのがオチですって!だから、もうちょっと……もうちょっと、何か取っ掛かりを……!」

 

 

 その覚悟を持てなかったかすみちゃんが、吠える。

 悲哀の籠った嘆きを、けれど歩夢ちゃんは微笑みで受け止めた。

 

 

「なら、私が今からそれを掴んでくる。私はしずくちゃんに嫌われちゃうかもしれないけど……そうなっちゃったら、後はよろしくね?」

「んなっ……!」

 

 

 無遠慮に行ったら嫌われちゃうかもしれない。だから、もっと確証が欲しい。

 そう二の足を踏んでいたかすみちゃんには、あまりにも刺さり過ぎる言葉だった。

 自分の代わりに嫌われに行く。そう言っているようなものだから。

 

 

「なんでっ……なんで歩夢先輩がそこまでするんですか!」

「だって……しずくちゃん、このまま終わったら、ずっと後悔し続けちゃうかもしれないから。言いたい事を言えなくて、好きなものを好きだって言えなくて、本心を押し込めて我慢し続けてるキモチなら……私も少しは、分かっちゃうから」

「だとしてもっ!嫌われてまでやる事ですか!?嫌われても良いって思ってるんですか!?」

「思ってないよぉ」

「だったら!」

 

 

 気炎をあげる姿を前にしても、どこまでも穏やかに。

 

 

「思ってないけど……でも、きっと何とかなるんじゃないかな」

「なっ……!」

 

 

 思い通りには決していかない現実を知りつつも、それを受け止めて、なお。

 

 

 

 

 

「だって ―― 同好会の、"みんな"がいるから

「……は?」

 

 

 上原歩夢は、夢物語を紡ぎ出す。

 

 

 

 

 

 

「しずくちゃんは本心を隠してたのかもしれないけど……それでも今まで一緒に活動してきて、悩んで、笑って、驚いて。そうやってきた時間が全部ウソだとは思わないの。少なくとも、私はしずくちゃんの事が、好きになっちゃってる。真面目さんだけど時々お茶目で、大人びてるけど偶にとっても無邪気になる、そんな可愛いしずくちゃんが」

 

「だからね?もし自分じゃどうしようも無くなってるなら、何かしてあげたいの。確かに大きなお世話かもしれない。放っておいて欲しいって言われるかもしれない。邪魔だって嫌われるかもしれない……それでも、何かを」

 

 

 歩夢ちゃんの生来の真心と、思いやり。

 

 

「それに……私だけじゃなくて、"みんな"が居る。侑ちゃんや同好会のみんなが」

 

「私が失敗しても、まだみんながいる。せつ菜ちゃんや彼方さんの時みたいに、みんなでならなんとか出来る。きっと、仲直りだって」

 

「だから、私も怖いけど……それでも行ってみようって、そう思ったの」

 

 

 それに重ね合わされた、仲間への信頼。

 

 

「私達はソロで、考え方も価値観もみんな違うのに。思いつく解決策ですら相容れないかもしれないのに」

 

 

 重ねて、重く。

 愛と優しさに溢れた。

 

 

「不思議だね。確証なんて無いのに……"きっとみんなとなら"って、なんとなく思っちゃうんだ」

 

 

 歩夢ちゃんの、心からの宣言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……それを間近で浴びた、かすみちゃんは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………くぁぁぁぁぁあああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

 爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?か、かすみちゃん!?どうしたのっ!?」

 

 

 掴んでいた歩夢ちゃんの腕を離して、髪をわしゃわしゃと掻き混ぜながら地団駄を踏む。一見機嫌が悪そうにも見える振る舞い、けれど醸し出す雰囲気がそれを否定している。

 

 

「ちょっとだけほっといてください!なんかもう……なんっか、もう!ちょっと敗北感に苛まれてるだけですぅっ!」

「え?敗北感?え、えぇぇぇぇ……?」

 

 

 自分が躊躇っていた"一歩"を、隣で先に踏み出されたのだ。歩夢ちゃんに微妙に対抗心を抱いてるかすみちゃんならそりゃこうなる。

 しかも歩夢ちゃんはただただ善意100%。勝負してるつもりなんてカケラもないから負け惜しみを言っても虚しくなるだけ。だからあぁして不貞腐れるしかない訳だ。可愛いね?

 

 ……けれど。もちろんそれだけじゃあ終わらない。

 

 

「……歩夢先輩っ!」

「は、はいっ!」

「部長命令ですっ!しず子の所にはかすみんが行くので抜け駆けしないでくださいっ!」

「め、命令?抜け駆け?」

「歩夢先輩ばっかに良いカッコさせてたまるもんですか!しず子の事、この学校で一番知ってるのはかすみんなんですから!そのお相手を搔っ攫われるのを黙って見ちゃ居られません!」

「そんなつもり無いけどぉ!?」

 

 

 ビシィッ!と指を突きつけて言いたい放題に捲し立てる。歩夢ちゃんの困惑なんてお構いなしだ。

 

 そう、たとえ負けたと思ったとて、そのまま泣き寝入りするかすみちゃんじゃない。先を越されたなら追い越し返してやるとガムシャラになるのがかすみんだ。それが仲良しのしずくちゃんのことなら尚更に。黙ってらんないよなぁ?

 

 

「とにかく禁止でーすっ!ソッチの人!黙って歩夢先輩抑えておいてください!」

「あ、はい」

「え!?」

 

 

 空気になってたワタシは、反射的に歩夢ちゃんの腕を握った。いやまぁ、こんな事しなくても状況についてけてない歩夢ちゃんは何もできないだろうけど。

 

 

 

 

では!行ってきます!何かあったら後は頼みますねっ!

 

 

 そういってかすみちゃんは。超絶真剣な顔をして、学校の方へと走り去って行った。

 

 

 

 

「……行っちゃった。かすみちゃん、なんで突然あんなテンションに……」

「……くくっ!あははははっ……!」

「え?あ、アナタまでどうしたの?」

 

 

 どうしたって、ねぇ?そんな自覚のないこと言われちゃったら、我慢なんて出来ないって!

 

 

「いやぁ……やっぱ歩夢ちゃんはサイコーだなって!さっすがワタシのイチ推し!あははははっ!」

「……どうしよう。全然わからない……」

 

 

 ホントさぁ!かすみちゃんの迷いを吹っ飛ばして、ワタシの悩みも蹴っ飛ばして、それを自覚なくやってんだから溜まったもんじゃないよねぇ!鈍感系ヒロインですかぁ?せつ菜ちゃんの時といい、やっちゃう頻度多くないっすか?おいおい侑、ほっといたら大変な事になっちゃうぞ!はははははっ!

 

 

「はは……そんじゃ、ワタシももう一仕事すっかな!」

 

 

 流石に今回は歩夢ちゃんとこのまま買い物しないとだから、"しずかす"シーンのデバガメはできないけど……ま、爽快な気分だから、いっか。推しが活躍したら気持ちがいいもんだ。"あゆかす"も見れたわけですし。

 ともあれ、ここまでやっちゃったんだ。最後にもう一つ、やっちゃいますか。

 

 

「仕事?」

「お膳立てってヤツ。しずくちゃんと持ち場代わって一人にさせたげてくださいって彼方さんに連絡すんの。他に誰かがいる場じゃ、しずくちゃんも身構えて何も言えないかもじゃん。それくらいならまぁ、許されるっしょ?」

「それは……そうかもしれない、かな?」

「うし。歩夢ちゃんのお許しも貰えたことだし、早速……」

「……なんか、全然心配じゃなくなってない?」

「ん?うん、無くなった」

「どうして?」

 

 

 なるほど?歩夢ちゃんからしてみれば、深刻な雰囲気が無くなったワタシを訝しんで当然か。かすみちゃんの説得が上手くいくか、まだハッキリしないもんね。

 

 ん~……でもまぁ、上手く説明なんて出来ないし。"条件全部そろったかんね!"なんて言ってもちんぷんかんぷんだろうし。

 ここはあえて根拠なく、こう言っとこうかな。

 

 

「あのモードになったかすみんは、無敵っしょ!」

「……分かるような、分からないような……」

 

 

 ふふっ! 信じてるぜ、プリティルミエール!

 

 

 

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