ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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9-②

 

 

 

 

 ラブライブ !虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。オムニバス式の各メンバー担当回がひと段落した10話、および11話は、起承転結の"転"とも言える展開を迎える。

 

 

 10話はいわゆる合宿回。水着でみんながわちゃわちゃワイワイする、1クールものの深夜アニメとかで良くあるサービス回……の皮を被った、超重要回だ。

 

 期末テストも無事(?)終えて夏休みの予定を話し合う同好会メンバーは、せつ菜の提案に乗り、学園での強化合宿を開催する。

 近場での合宿に文句を言うメンバーを宥めつつ、1日目は交流を深めるためにみんなで食事を作ることに。その中で語られる、各々のやりたいこと。それを聞いた侑は、みんなの個性がひしめき合うようなライブを見たいと、改めて強く想い直した。

 その思い冷めやらぬまま、夜に音楽室を訪れピアノを弾いていた侑は、そこに現れたせつ菜とひと時を過ごす。今の自分があるのはあなたのおかげだと。「大好き」が見つかったら、その時は応援させて欲しい、と。その想いを受け止め、音楽室から帰るところを歩夢に目撃され……1日目が、終わる。

 

 そして、2日目。愉快なトレーニングを夜までこなした面々は、ご褒美として学校施設でのナイトプールを楽しんでいた。侑と歩夢はこれまでの激動の日々を振り返り、懐かしんでいたが……そこで侑は、ひとつの想いを明かす。

 

  「今度の私たちのライブ、虹ヶ咲だけじゃなくて、もっと大きなライブにしたい!」

  「スクールアイドルもファンも、全部の垣根を越えちゃうような……ニジガクとか東雲とか藤黄とか、そんな学校とかも関係なく、スクールアイドル好きみんなが楽しめる、お祭りみたいなライブ……」

  「スクールアイドルが好きなみんなのためのお祭り……スクールアイドルフェスティバル!」

 

 その未来絵図に共感したメンバーは、花火が打ち上がる空を見上げ、心を一つにした。

 ただ1人。俯く歩夢を置き去りにして。

 

 

 そして、11話からは本格的にフェスティバルへの準備が始まる。

 企画立案。会場探し。他校への参加協力依頼。一般生徒からのアイデア募集。フェスに向けてのトレーニング。やることは山積みで、特に企画者である侑は休む暇も、歩夢とゆっくり話す時間も取らずに働き続けていた。

 目まぐるしく、たくさんの人達の思いを巻き込み大きくなり続けた結果、フェスティバルは街全体を跨る大規模な催しの姿を形作り、そして承認される。それを喜ぶメンバーの中……やはり歩夢はただ1人、その胸に悩みを抱き続けていた。

 その日の夜、侑は「伝えたいことがあるんだ」と、歩夢を部屋へと呼び出す。そこで告白されかけたのは、更なる"未来"のこと。

 一向に紐解くことが出来ない悩み。誰にも言えずに抱え込み、軋み続けていた歩夢の心は、侑の変化という最大の過負荷によって……遂に、決壊した。

 

 

  「聞きたくないよ……」

  「私の夢を一緒に見てくれるって……ずっと隣に居てくれるって、言ったじゃない……」

  「私、侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい……」

  「だから……私だけの、侑ちゃんでいて……」

 

 

 それまでの人生全てが覆るほどの変化の予感。

 それに恐怖した歩夢が望んだ、現状維持という逃避。

 歩夢と、侑。2人の運命の岐路が、否応なく目の前に迫っていた ――

 

 

 

 ……みたいな感じだ。10話と11話は。

 

 同好会メンバーの活動を通じて遂に夢を見つけかけた侑。未体験の自分の変化に戸惑って不安定になる歩夢ちゃん。2人で始めた物語が、終着点へと向かい始める……そんな感じの。

 活き活きとフェスティバルの準備を頑張る侑と、明らかに何かを溜め込み続けてる歩夢ちゃんの対比に震えが止まらなくなる。絵面は比較的明るいのに不穏さが蔓延して心穏やかに観られない。とんでもねー回だよ、ホント。

 

 

 

 ……はーぁ。

 

 

 

(見たいなー……侑を押し倒す歩夢ちゃん)

 

 

 

 ……なんだよ。見たいじゃん。

 もっと気にすることあるだろ?んなこと分かってるよ。でも見たいんだよ。見たくないの?見たいでしょ?

 

 いやそりゃクライマックスに向けてワタシもワタシなりに気を張ってるよ。でもさ?これ見たくないって言ったら嘘でしょ?ワタシはCP厨のヘンタイだぞ?実際にはそんな感情なんて本人達に無い……つーかあの時にそんな余裕無いことなんて百も承知だよ。でもその上で見たいんだよ。それがワタシだよ。僅かな供給から意味と関係性を見出して拡大解釈して楽しむオタクだよ。供給無いなら自炊するけどあるなら骨までしゃぶり尽くす妖怪だよ。

 その最推しCPが最大風速カマすんだぞ?そんなシーンを見たいと思わないわけないだろ!?見たくないオタクがいるわけないだろぉ!?おぉん!?

 

 

(あーっ!見たい!見たい見たい見たい!)

 

 

 最初の頃はさーっ!確かに諦めてたけどさーっ!他にもたくさんイチャイチャするシーンあるんだからそっちが見れるだけでも贅沢じゃんってさー!実際眼福だったんだけどさーっ!やっぱいざその時が近づいてくると見たさが勝るっ!勝っちゃうっ!

 

 

 ……あん?今まで似たようなシーンくらいあったんじゃないかって?旅行で一緒にお風呂入ったりとかもあったろって?

 

 うるっっっっっせぇわ!あったけどそれがどうした!?

 

 

 修学旅行で枕投げしてた侑に歩夢ちゃんが不注意で巻き込まれて、流れで侑が押し倒した感じになって真っ赤になってたこととかあったわ!

 露天風呂のある宿に家族旅行に行った時に、夜中にこっそり入りにいって夜空を見上げながら2人でなんか良い感じの雰囲気になってたこともあったわ!

 あったからなんだ!羨ましいか!?ははーんっ!せいぜい悔しがれっ!

 

 あ!?なんでお前が知ってるんだって!?そんなもん枕投げで侑をワタシが集中攻撃したからだし、こっそり後つけて露天風呂に"清掃中"の札掛けて後から忍び込んだからに決まってんだろ!

 

 

 で!?そういうの見たことあるんだから我慢しろってか!?それと!これとは!話が別!

 今この瞬間の2人の心境が反映されたシーンは、今その時しかねーんだよ!他にメロい場面見たことがあるからって"じゃあ今回はいっか……"なんてなるか!?なるわけーねだろ!

 

 分かんないか!?じゃあもっと分かりやすく言ってやる!1stライブのトキラン観てたらファイナルのトキランは観なくて良いのか!?むしろ追ってたからこそ観たいってなるだろーがっ!そういうこったよ分かったかーっっっ!

 

 

 …………ん?

 ……トキラン?なんでトキラン?

 

 

 トキランってあれだよね、"原作"の2期8話で披露されたやつ。TOKIMEKI Runners。

 いや、確かに侑が初めて手掛けた曲だし、大切な意味のある歌ではあるけど……なんでトキランが真っ先に頭に浮かんだんだろ。Dream with youとかじゃないのか……?

 

 

(……まぁ、いいか)

 

 

 うん。いや、なんかちょっと冷静になった。欲望は消えてないけど。

 

 うーん。徹夜明けで仮眠とっただけだからかな、頭がスッキリしてない。まだ昼だし、適当になんか食べてもっかい寝ようかな。なんかあったっけ……出来合いのパンとかインスタント製品の類はワタシが発作的に食べるもんだから、いつしかあんまり常備されなくなっちゃったしな……かといって料理するような気分じゃないし……一応なに使っても良いって許可は貰ってるから、何かしらは作れるけど……

 

 ……いいや。なんかめんどい。顆粒のポタージュだけ作って飲んで寝よ。夜までなんも食べなくても死にゃしないや。んで夜はなんか宅配でも……

 

 

 

 

 

 ピンポーン!

 

 

 

 

 

「……んあ?」

 

 

 そうしてヨッコラと腰を上げたのを見計らったかのように、訪問者を告げるインターフォンが鳴った。ディスプレイモニタを覗いた、その先には。

 

 

「……んあー?」

 

 

 先程まで悶えていた相手。

 侑と歩夢ちゃんが、汗を拭いながら立っていた。

 

 ……なんぞ?

 そう思いながらも玄関のロックを開け、迎え入れる。

 侑は堂々と、歩夢ちゃんはしずしずと入ってきた。まったく、侑は親しき中にも礼儀ありって言葉を知らんのかね?

 

 

「あー涼しー!生き返るー!」

「隣から来るだけで大袈裟な……」

「違うよ、合宿からの帰り!ほら見てこの大荷物!」

「いやそれは先に片付けてから来いよ」

 

 

 降ろしたバッグをぽんぽこ叩く侑に半目を向ける。

 ……合宿帰りだったのか。それにしちゃ妙にテンション高いな。なんで……いや、合宿帰り、だからか?

 

 ……ってことは……

 

 

「あ、あはは……ごめんね、急に来ちゃって……親御さんに迷惑じゃなかった?」

「しばらく居ないよ。言ってなかったっけ?」

「そうなの?じゃあご飯は?」

「今日は朝は抜いた。昼は食べてない。夜になんか食べよっかなって」

「もう。ダメだよ、夏バテしちゃう。お台所借りて良い?私が何か作るよ」

 

 

 ワタシが至ろうとしていた一つの結論は、その言葉でハルカカナタへとすっ飛んでいった。

 歩夢ちゃんの手料理?ワタシのために?

 

 

「え?天使?」

「歩夢です」

「それとも女神か……」

「歩夢だってば」

「五月蝿い人間。黙ってて」

「アナタもそれでしょ」

 

 

 茶々を入れてくる侑が本当に鬱陶しい。ワタシは今、この喜びを噛み締めてるんだ……歩夢ちゃんが同好会に入ってから、こういうのホントにご無沙汰だったんだ……!

 

 

「えっと、結局作っていいの?」

「おなしゃーっす!……あ。いや、違う違う。流石にお客さんに作らせるわけには……それに合宿上がりなんでしょ?疲れてるっしょ」

「いいよ。それにお客さんとか……ふふ、今更じゃない。じゃあ作るね?食材だけ一緒に見て?」

「お、おう……」

 

 

 上着を脱いでキッチンに向かう歩夢ちゃんに見惚れつつ、優越感を湛えた微笑みを侑に向けてみた。何を勘違いしたのか、ウンウンと頷いていた。

 とはいえ流石に凝ったものを作ってもらうのも、ってことでメニューは冷製パスタになりました。ついでにまだご飯食べてなかったらしい歩夢ちゃんと侑の分も一緒に。

 

 舌鼓を打ちながら、なんでもない話で、気を遣わずに笑いあう。そんな平凡な時間が、ただ穏やかに過ぎていく。

 ……ウチで3人だけでご飯食べるなんて……いつ以来ぶりかなぁ。

 

 

 

 

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