ゆうぽむの間に挟まりたくねぇ!   作:ぁさ

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10-⑤

 

 

 

 

 

「侑っ!……あれ?いない?」

「侑先輩……ですか?先輩ならさっき、休憩だってどこかに行っちゃいましたよ」

 

 

 部室に走り込んだワタシを出迎えてくれたのは、しずくちゃんと璃奈ちゃんのただ二人。

 歩夢ちゃんの居場所は分からないけど、侑はここにいる可能性が高いと踏んできたのに。

 肩透かしだ。この勢いのまま、なんかいい感じに押し切れないかと思ったんだけどな……

 

 

「すれ違いか……後で出直すっきゃないか……?」

「ご用事があるなら、メッセでもした方が早いのでは?」

「いや……それはまぁ、その通りなんだけど……」

「……出来ない事情がある?」

「出来ないっていうか……したくないっていうか……しても多分誤魔化されるっていうか……」

 

 

 今の状況で、あいつが素直にワタシの呼び出しに応じるとは思えない。顔を合わせてひっとらえる必要があるだろう。フィジカルなら負けやしない。絶対逃がさない……っていうか()()()()()()()()()って自信はあるし。

 

 

「分かった。任せて」

「え?」

「今、フェスティバルで使う予定の警備用ドローンの試運転をしてる。空から侑さんを探してみる」

「えっ」

 

 

 歯切れの悪いワタシを見かねたのか、璃奈ちゃんは璃奈ちゃんボードっぽいもの……っていうか璃奈ちゃんボードだな、あれ。あれを被って、ヌンチャクっぽいゲームのコントローラーみたいなやつを操り始めた。

 ……え?あれでドローンの操縦してんの?ドローンの操縦ってあんななの?初めて見た。っていうか。

 

 

「……そんなもの用意する予算あったっけ?」

「璃奈さんの自前だそうです。家に転がってたから持ってきたとか」

「そんな家にホイホイ転がってるもんじゃないでしょ」

「でも、璃奈さんちですよ?」

「……まぁ、1台くらいなら有り得るか。しずくちゃんちにあったら違和感ありありだけど」

「今は手動操縦に切り替えてるけど、イベント前に自動操縦にするよ」

「……さいですか」

 

 

 あのトンデモない高層マンションに、ぎっちり詰め込まれたコンピュータの数々。璃奈ちゃんの実家にドローンなんて、寧ろ無い方が不思議と言っても良い。旧家のしずくちゃんちにあるよりは、想像が容易すぎる。

 

 

「……前からちょっと思ってた事があるんですけど」

「ん?なに?」

「もしかして……私のストーカーさんだったりします?」

「…………へっ?」

 

 

 璃奈ちゃんの行動に唖然としてたら、予想もしてなかったしずくちゃんの言葉に更に顎が大きく開く。

 ……え?ストーカー?えっと……してたけど、いつの事?

 

 

「……追跡のターゲット、変えた方がいい?」

「いやいやいやいや大丈夫大丈夫……えっ?なんでいきなり?」

「私、実家がどんなだなんて、同好会じゃかすみさんと璃奈さんにしか言ったことないですもん」

「……あー……」

 

 

 やっべ、油断してた。ベッタベタな"原作"知識持ちのミスしちゃった。知らないはずのこと知ってるってやつ。しずくちゃんちが鎌倉の名家だってみんなに明かされるの"2期"じゃん。

 

 

「……どうだったかな?しずくちゃんからじゃなくて、誰かに聞いた覚えがあったんだけど……」

「誰か?かすみさんや璃奈さんじゃないですよね?」

「う、うん……それ以外で……し、新聞部の記事だったっけ?」

「そんなインタビューは受けてませんし、答えてません」

「あ、あれー?じゃあどこでだったかなー?」

 

 

 しらばっくれようとするも、舌鋒鋭いしずくちゃんから逃れられない。えっと……どうしよ。

 

 

「……当ててみましょうか?」

「……お、おう」

 

 

 次の言い訳を思いつく前にそう言われ、思わず居住まいを正す。

 

 

「うちの演劇部の部長から、でしょう?」

「……おう?」

 

 

 そして出てきたこれまた意外な言葉に呆けていたら、それを図星を指されたが故の動揺と受け取ったのか、しずくちゃんは推理(?)を語り始めた。

 

 

「この前、部長が口を滑らせたんです。"アナタの予想も中々正確だ"みたいなことを。面識はなかったはずなのに、なんでそんな言葉が出てきたんでしょうね?そして面識があったのなら……いつ、お会いしたんでしょうね?」

「いつって……」

「3年生でもないアナタにもしそんな機会……演劇部と交流を持てるキッカケがあったとしたら、それは私がスランプに陥ってた頃しか……ないですよね?」

「まぁ……」

「あの時……アナタも私のことをなんとかしようって、動いてくれてたんじゃないですか?それで部長に、話を聞きに行ったのでは?」

「…………」

「……どうでしょう?」

 

 

 ……か。

 過程も結論も、微妙に正解かつ間違ってる……!ドヤ顔カワイイけど反応に困る……!

 ……いやでも、コレ乗っかるのが一番楽だな……

 

 

「……降参。お見事、名探偵しずくちゃん」

「ふふふ。わたし、探偵役も出来ますかね?」

「似合うと思うよ」

 

 

 パイプをふかすレトロタイプな名探偵のポーズをとるしずくちゃんに、本心から告げる。実際、似合いそうだし……なんとなくワトソン役の人に良いとことられそうな感じもあるけど。

 

 

「ま、ワタシは結局何にも出来なかったんだけどね……で?罪を暴かれたワタシはどう償えばいいの?」

「え?んー……そうですねぇ。じゃあ……」

 

 

 そう返されるのは予想外だったのか、少し考えこんで。けれど程なくして、ぱちり、と瞬きをした後。

 

 

「……侑先輩と、ちゃんと仲直りしてください」

「……それは……」

 

 

 しずくちゃんは、遠慮がちに、そう告げて来た。

 

 

「何も出来なかった、そう言われたって、私にとっては骨を折ってくださった恩人のお一人なんです。同好会のみなさん、そうですけどね。侑先輩も、演劇には素人なのに、あの演目の台本を読み込んで……舞台に映える素敵なアクセサリーをプレゼントしてくれました。本当に、嬉しかった……そんな人達がすれ違ってるのは……心が痛むんです」

「…………」

「寧ろ私が協力出来るなら、したいくらいです。どうか……どうか、お願いします」

 

 

 ぺこり、と。お辞儀と共に揺れたリボンを眺める。

 ……まったく、虹ヶ咲はほんと、良い子ばっかだよなぁ。

 誰かのためにワタシみたいな不審者にまで頭を下げられるんだから。

 

 

「……うん。する気になってる。めっちゃなってる。でも……結局上手く話す方法が……まだ思いついてないんだよね……」

「上手く話す必要、あるの?」

 

 

 そんな泣き言をもらしていたワタシに、いつの間にかボードを外していた璃奈ちゃんが指摘してくる。

 

 

「侑さんと仲直りするのに、上手に話さないといけない理由、あるの?」

「……それは……」

「想いを伝えることって、難しい。でも、一生懸命に話せば、何も伝わらないなんてことはない。心を繋げたいって、あなたとツナガリたいって、その気持ちがあれば……上手く言えなくたって、きっと」

「…………」

「私は、そうだったよ」

 

 

 ……私はそうだった、か。

 

 なんかなぁ。彼方さんも、エマさんも、璃奈ちゃんも、止めて欲しいよ。

 "原作"フリークなワタシがそんなん言われちゃったら……反論なんて、出来やしないんだから。

 

 

「見つけたよ、侑さん。今は中庭のベンチにいるみたい」

「……分かった。ありがとう」

「頑張って。璃奈ちゃんボード『やっちゃいな!』」

 

 

 

 

 

 その言葉を背に、三度、ドアを潜り抜けていく。潜る度に、足が軽くなっていく。はは、ゲームのスピードアップギミックみたい。

 

 ―― 待ってろ、侑。考えなしの馬鹿が、そっち行くからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちゃんと仲直り、出来るかな?」

「どうだろうね……でも、侑先輩も、きっとそう思ってる。だから……大丈夫だよ、きっと」

 

 

「少しはお返し、出来たかな」

「お礼って?」

「ライブの準備と、あだ名を貰ったことの」

「ピンキーちゃん?あれ、そんなに嬉しかったの?」

「うん。そんな風に呼んでくれたの、愛さんに続いて2人目だったから。アノ人にとってはなんでもないことだっただろうけど……私はすっごく、嬉しかった」

「……そっか」

 

 

「しずくちゃんは?結構、気にしてたみたいだけど」

「うーん……正直私は、侑先輩や歩夢さんの方にお世話になってると思ってるんだけど……ただ……」

「ただ?」

「……ちょっと、同類の匂いがするっていうか……それで気になってるっていうか……」

「……同類?」

「うん。まぁ、それはまた、おいおいね。じゃあ璃奈さん、ドローンで成り行き、覗こっか?」

「……うん。うん?」

「どうしたの?」

 

 

「……女神が降臨してる」

「……へ?」

 

 

 

 

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